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『銃とゾンビと美人とお酒 』
アーテル・V・ノクスaa0061hero001)&シロガネaa1195hero002


「美人の真顔って怖い思いました」
 後にシロガネ(aa1195hero002)はそう語った。


 きっかけは、シロガネがアーテル・V・ノクス(aa0061hero001)に誘いをかけたことだった。
「ハルはん、良かったらこのゲーム一緒に行ってくれまへんか? や、無理なら全然、断ってくれてええですから」
 きちんと逃げ道と言葉を置きつつ、シロガネが見せたのはゲームの参加権。二枚。バーチャル空間で行えるゲームのβ版参加権。二枚。バーチャル空間で行うことはまったく問題ないのだが、問題なのはそれが、銃でゾンビを撃退するタイプのゾンビゲームだったことだ。
 アーテルはゾンビが苦手である。ホラーものはホラーが大の苦手な能力者をからかえる程度に平気だが、ゾンビはダメだ。公言はしないし、表情に出ないが苦手である。そしてそのことはシロガネも知っている。とは言え、アーテルのところにいる第二英雄であり、シロガネの妹分でもあるホラー大好き少女経由でちらっと聞いただけであり、どの程度苦手かは知らないし、何故苦手なのかも知らない。
 そして本来アーテルを誘うつもりは微塵もなく、本当に誘う予定だったのは妹分の方だった。だが年齢制限に引っ掛かった。ホラー好きスプラッタ好きという、ゾンビゲームを楽しむのに一番大事であろうステータスも、年齢制限には勝てなかった。許すまじ年齢制限。
「うちの二人はバーチャル空間っていう辺りであかんでしょうし……でもほんま、無理なら断って」
「行きます」
「ええですから……って、うん?」
「行きます。大丈夫です。銃でゾンビを撃つタイプですね。了解しました」
 と、アーテルはとても冷静な態度で返答した。例えるなら「従魔討伐に行って下さい」「了解しました」、という流れとまったく同じテンションで。とは言え行くのは従魔討伐ではなくゲームだが。任務ではなく遊びだが、シロガネはそこまであまり拘っていなかった。アーテルは元々冷静クールなタイプだし、少なくとも「ゲームですか!? よっしゃ行きます!」などと盛り上がるようなタイプでは、ない。直後の日程合わせにしたって、ゲーム参加前にしたって、常日頃と変わらぬ冷静な態度だったのだ。故に「あれ、苦手聞いてましたけど、これは意外と大丈夫かもしれまへんね」、とシロガネはのんきしていた程だ。

 そして今シロガネの隣では、アーテルが無言で、真顔で、ひたすら目につくゾンビを片っ端から撃ち続けている。
 
 それはもう見事な真顔だった。背筋をピンと伸ばし、二挺拳銃を両手で構え、迫りくるゾンビ(臨場感たっぷり)を撃ちまくる様は実に堂に入っている。スタイリッシュと言ってもいい。が、よくよく観察すると、どう考えても目に映るゾンビを殲滅する事しか考えていない。いや正確には、目に映った瞬間に、ただ反射的に引き金を引いているとしか思えない。耳を澄ませば引き金が壊れんばかりにガチャガチャガチャガチャ引かれているのがよく分かる。
 一応味方(シロガネ)を撃たない理性は残っているようではあるが、真顔。真顔。もうひたすらに真顔である。そしてひたすらに無言である。銃の扱いに慣れていないシロガネからしてみれば、そういう意味では頼もしいと言えなくもないのだが、心配は心配である。主にメンタル的な意味で。
「ハルはん? ハルはん?」
「……」
「ハルはん、大丈夫です?」
 ステージが一つ終了し、ちょっと余裕がある隙に声を掛けてみたのだが、返事はない。ただの真顔の美人のようだ。美人と言ってもアーテルはシロガネと同じくれっきとした男だが、美人が美人であるという事実にまったくもって変わりはないし、美人の真顔が怖いという真理もまったく変わりはない。あかん様子なら中断も要検討だが……とりあえず今すぐ卒倒するようなことはないと思う。多分。
 まあ大丈夫なようなら、と、シロガネは開始のブザーと共にゾンビへと狙いを定めた。銃の扱いは慣れていないが、ホラー耐性もゾンビ耐性は高い方だ。ゾンビ映画も笑って見られるメンタルである。つおい。
 今回のゲームにしたってホラー好きの妹分に、という理由も確かにあるが、第一は自分が楽しむため。最初はぎこちなかった銃も段々と慣れてきて、アーテルのフォローも入れられるレベルにまでなっていた。
「ハルはん、大丈夫です?」
 またステージが終了し、シロガネは再びアーテルに声を掛けてみたのだが、返事はない。やはりただの真顔の美人のようだ。


「ハルはん? ハルはん?」
 ポンポンと肩を叩かれて、アーテルは肩を跳ねさせた。跳ねさせたと言っても、目に見えてそれと分かる程に大げさな跳ね方ではなかったが、叩いてきた当人には多分伝わったことだろう。
「あ、シロガネさん……」
「お疲れさんでした。今、水持ってきますね」
 アーテルを適当なベンチに座らせた後、シロガネは水を買いに自販機まで歩いて行った。シロガネの背を見送りながら、アーテルはゲームが終わったことにそこでようやく気が付いた。肩を叩かれて驚く程に集中していた。あるいは周りがまったく見えていなかったと言ってもいい。戻ってきたシロガネに「ありがとうございます」と言いながら水入りペットボトルを受け取り、シロガネも自分の飲み物を両手に保持して口を開く。
「ハルはん、大丈夫です? 無理させてしもうたらすみまへん」
「無理じゃありませんよ。今回参加したのは、その……苦手を克服しようと思って」
 普段の彼には似つかわしくない、歯切れの悪い調子であった。「克服?」とシロガネが尋ねると、アーテルは気まずそうに声を落とす。
「普段は、耐久性が高いといった戦闘面を挙げるんですが、実際のところは、嫌いな肉を連想してしまうので……」
「肉?」
「ええ、特に腐った部分がダメで……他にも、なんていうかこう、じんわりとした恐怖を覚えるんです。ひょっとしたら元の世界で何かあったかもしれないな……なんて」
 ペットボトルを弄びながらアーテルは視線を床へと向けた。それは自分の弱い所を晒す所在なさ故かもしれないし、自分でも思う所の多い理由故かもしれなかった。
 そんなアーテルの横に腰掛け、シロガネは微塵も、笑わなかった。アーテルはシロガネと同じく英雄で、今二人がいるこの世界とはまったく別の場所から来ている。そこでゾンビが苦手になるような何かがあっても不思議ではない。
 それに、例えそうでなくとも、同じアパートの住人仲間を、たまに酒を一緒に飲む仲を、笑う理由などシロガネにはこれっぽっちもありはしない。
 シロガネはふむと顎に手を当て、それからぽんと膝を打った。「よし!」と立ち上がったシロガネを見上げてくるアーテルに、シロガネは一見すると軽い若者の笑みを浮かべる。
「水だけじゃやっぱ足りまへんな。どうですハルはん、このまま一緒にお酒でも」
「お酒?」
「水で流しきれないものは、酒で流すに限りますわ。ハルはんの苦手も嫌いも、酒を飲んで流しましょ。
 それに、美人にそんな顔させて帰したら、男が廃れてしまいますわ」
 そう言ってシロガネは悪戯っぽく片目を瞑った。その言葉を聞いただけでは、女性顔のアーテルを揶揄っているようにも聞こえるが、シロガネはこう見えて義に厚い性格だ。軽い言動とチャラい見た目、飄々とした空気に隠されてはいるものの、アーテルはそのことを十分に知っている。
 だから、アーテルもまた悪戯っぽい笑みを返した。
「そうですね。酒に流すためにこのまま飲みに行きましょうか。俺の好みの店でいいですか? 野菜と果物が美味しい所で」
「もちろんですって! ハルはんお料理上手ですから、選ぶお店も美味しい所でめちゃくちゃアテにしてますわ」
 そうと決まれば善は急げと、二人は会場を後にした。美味しい野菜と果物を肴にどのような飲みが行われたか……それはまた別の話。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【アーテル・V・ノクス(aa0061hero001)/性別:男/外見年齢:22/ソフィスビショップ】
【シロガネ(aa1195hero002)/性別:男/外見年齢:20/ブレイブナイト】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 この度はご指名下さり誠にありがとうございました。またの機会がありましたらどうぞよろしくお願いします。
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2018年02月19日

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