▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『問うて鳴かずの小夜啼鳥 』
真壁 久朗aa0032)&御代 つくしaa0657


 きっかけは、すなわち真壁 久朗(aa0032)が“小夜啼鳥”捜しに乗り出したのは、バレンタインに“小夜啼鳥”からショコラを贈られたことであった。
 もっとも、この小夜啼鳥捜しは彼の英雄がそれとなく差し向けたものであったが、根っからの朴念仁がそれを知る由もなく、女の直感で色々を感づいた第二英雄が後押しにとジト目でつつき、久朗はつつかれるままにアテを辿ることとなった。
 まずはショコラに添えられた、五本のレインボーローズのブーケ。手がかりになるだろうかと調べてみると、レインボーローズには《無限の可能性》という意味が。そして五本束のブーケには《貴方に会えて良かった》という意味があるとか。
 何より、音符柄のメッセージカードに綴られていた言葉。『鴉さんへ。新月の夜のように心細かったあの場所で、一筋の光をくれたあなたに感謝を込めて。――小夜啼鳥より』
 だが、ブーケを見ても、カードを見ても、久朗は眉間に皺を作って唸る事しか出来なかった。
「何度見返しても……身に覚えが無いな」
 小夜啼鳥。差出人の名は知人に当てはまる者はおらず。エージェントの登録名とも照合してみたが見つからない。
 ならば、と単純に鳥の名前として調べた所、ネットで見つけた名前には見覚えがあった。
 幼少期に父親から贈られた鳥の図鑑を本棚から探して開く。夜鳴鶯。墓場鳥。そして小夜啼鳥。数多の別名と美しい声を有する、褐色の羽を持つ小さな鳥。


 久朗からの連絡を受け、御代 つくし(aa0657)は相手には見えないにも関わらず、「はい! 分かりました!」と思わず背筋をぴんと伸ばしていた。
 つくしにとっての久朗は【鴉】の部隊長にして、尊敬する対象である。そんな彼から呼び出しを受け、つくしは緊張の面持ちで喫茶店へと赴いた。
 が、元々屈託のない明るい性格。もちろん久朗がいきなり本題の事は切り出さず、先日行った初詣の話や、これから行きたい場所の雑談を振ったのも理由かもしれないが、いずれにせよ緊張は一体どこへやら、つくしは向日葵を思わせるような笑顔で嬉々と話し始めた。
「初詣、楽しかったですね! もう毎年の恒例行事みたいになってるのも嬉しいですし! 春はお花見、夏は海水浴とかプールとか……? 秋は紅葉狩りとかも楽しそうだし、冬は雪合戦……あ、かまくらも!」
 次から次へとアイディアが湧き出すようで、つくしは指折り案を挙げる。【鴉】の仲間と、大切な友達と、一緒に過ごす想像だけでワクワクし始めてしまう。みんなと一緒にいられるというのが『いつものこと』になるのが嬉しい。
 その背景にある気持ちは、今は、決して表に出さない。
「やりたいことはいっぱいですね! 時間が足りなくなっちゃいそうです」
「……そうだな」
「……あの、真壁さん。……頼りないかもですけど、何か出来ることがあったら頼ってくださいね! 応援とか、それぐらいならできますから!」
 ふいを突かれたような久朗につくしはぐっと拳を握った。真剣なつくしの表情に、久朗はわずかに目元を緩め、普段よりも穏やかさを込めた声音で仲間に告げる。
「……頼りにしている。それじゃあさっそくと言ってはなんだが、ひとつ相談に乗ってくれないか?」
「はい! なんでしょう?」
「……“小夜啼鳥”を、知っているよな? 確か≪彼女≫と友人であったはずだと思ったんだが……」
 『本題』を切り出され、つくしはぽんと手を打った。「≪彼女≫との連絡先を知っているか」との問い掛けに、つくしは悩む暇もなく即行で答えを返す。
「はい! 知ってますよ! この前電話したばっかりで……」
 と、そこまで言い掛けて、「もしかしてチョコの件か」とつくしははっと気が付いた。先程手を打ったのは自分が呼ばれた理由に合点がいったからであり、何故“小夜啼鳥”と連絡を取りたがっているのかは今初めて気が付いた。
「ちょっと待ってて下さいね」
 つくしは「連絡先を教えていいかな」と本人に確認のメールを送った。だが、すぐに返事がこない。どうしようか、もう少し待つべきかと思ったが、久朗は人の連絡先を悪用するような男ではない。「真壁さんなら大丈夫だよね」と結論付け、つくしは久朗に連絡先を伝えてやった。
 とりあえず確認の手段はこれで手に入れたことになるが、しかし……。
(でも、何故だろうか?)
 やはり久朗には覚えがなかった。彼女と関わりがあったと明確に覚えているのはフレイとの……ラグナロクの幹部の一人との、あの愚神と化した青年との戦いの時。
 彼の捕縛を行うべきか判断にあぐねていた時に、彼女から提案を貰ったのだ。その提案は長く盾役として立ち回って来た自分にとって素直には承服しかねるものだったが、だとしても彼女の決意を尊重すべきだとその時は思った。
 その結果についてはここでは問わない事にするが、だが、やはり、いずれにしろ、確信に至れる程ではない。『鴉さんへ。新月の夜のように心細かったあの場所で、一筋の光をくれたあなたに感謝を込めて』……どちらかと言えば世話になったのはこちらのような気がするが……。
 つくしはジュースを飲むフリをしてチラチラ久朗の様子を見ていた。実はつくしはチョコの件の一部始終を知っている。当の本人からチョコを渡すか否かの相談を電話越しに受け、久朗に渡す事まで聞き、当人の代わりに渡して欲しい、とまで頼まれた。そして「直接渡した方がいい」とめいっぱいに励ました。
 とは言え知っているのはそれぐらいで、花束やメッセージの内容、“小夜啼鳥”の想いまでは知らないが、だから、つくしは部外者であり、一部関係者であるとも言えた。
 内心ドキドキしながら自分の様子を伺うつくしに、しかし久朗は全くもって一向に気付いていなかった。もしもここで挙動不審なつくしの様子に気付いていれば、この先の話はもう少し違っていたかもしれないが……いや、恋愛や人の機敏に関して朴念仁通常装備の男に、ふわふわとした独特の空気を読めと言うのはかなり無理だし、気付いたとしても話はあまり変わっていなかったかもしれない。
「直接本人に訊くか」
 久朗はそうして懐から携帯を取り出した。壁があるならブチ破れと言わんばかりの選択だったが、久朗は元々喋るより行動派の男である。心当たりのないことを一人で考え続けたって答えなど出るはずもない。
 それに、第二英雄にもジト目で釘を刺されたが、贈られたものには誠実に返したいという想いもある。
 つくしは思わず息を飲んだ。頬をわずかに紅潮させ、テーブルの下で拳を握って久朗の様子を見守った。久朗はそれにも一切気付かず、今しがた教えてもらったばかりの番号へとコールを掛けた。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

【真壁 久朗(aa0032)/性別:男/外見年齢:24/能力者】
【御代 つくし(aa0657)/性別:女/外見年齢:17/能力者】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

 こんにちは、雪虫です。この度はご指名下さり誠にありがとうございました。
 少々アドリブを加えさせて頂きましたので、口調、設定等齟齬がありましたら、お手数ですがリテイクをお願い致します。
 この後どのような展開になるのか、私も密かにドキドキしております。またの機会がありましたらよろしくお願い致します。
パーティノベル この商品を注文する
雪虫 クリエイターズルームへ
リンクブレイブ
2018年02月21日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.