年末年始 9/7 集合写真公開!

▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『反旗を翻すその前の前に…… 』
ナイチンゲールaa4840)&御代 つくしaa0657

 これはまだ、【森蝕】事件が解決していない頃の物語――。

 南半球、それも熱帯雨林地帯は高温多湿だけれども、日本に戻れば乾燥注意報も度々起こる真冬の季節。気温差と湿度さに風邪を引きそうだ。
 だから建物の中はこれでもかと暖房を利かせている。ナイチンゲール(aa4840)と御代 つくし(aa0657)は防寒具をすっかり脱いだ状態で、ファーストフード店にて隣り合って座っていた。
 二人がファーストフード店で遭遇したのは偶然である。待ち合わせなどはしていない。その上、お昼時で店内の席はほとんど埋まっていて、こうして隣り合って座ることになったのもある種の必然状態であった。
「……」
「……」
 されど既知であるはずの二人の間に会話はない。店内の賑やかさや、ポテトフライヤーのアラーム音だけが沈黙に拍車をかける。そうしている間にも揚げたてだったポテトは萎びて冷めてゆく。

 ナイチンゲールはというと、共鳴によって眼鏡を必要としない目で時折つくしの横顔を見て、沈黙のままでは彼女に申し訳ない、悪い気にさせてしまうのではないか……と懸念しつつも、結局は話題がひねり出せない喉に甘ったるいシェークを押し流すのだ。
 彼女は今、気落ちしていた。【森蝕】でのフレイの死――それが棘となって心にずっと引っかかっている。割り切らなければならない、そんな正論も分かってはいるけれども……。

 一方のつくしもナイチンゲールを気にしつつ、表情だけは常の快活な様子で、ハンバーガーを頬張っていた。そう、表情は常通りだ。明るく前向きな御代つくし。だけどそれは空元気である。無理矢理に、彼女は明るく振舞っていた。友人の目が愚神商人によって喪われたことが与えた衝撃、自身の力の至らなさへの憤り……心に沸きあがるそれらを、つくしは自傷的なまでに笑顔で硬く蓋をしていた。

「……、」
 幾度目か、つくしはナイチンゲールにそっと目をやる。元気のない様子が見て取れる。依頼に関係したことだろうか……と、何となく胸中を察していた。ハンバーガーの最後のひとかけらを頬張って、飲み込んで、セットで頼んだオレンジジュースで押し流して。
「ナイチンゲールさん」
 彼女の名前を呼ぶ。不意打ちだったのか、ナイチンゲールが肩をビクッと跳ねさせて、弾かれたようにつくしへ振り返った。つくしは笑顔を浮かべていた。

「どこか遊びに行きませんか?」

 そう、気分が塞ぐこんな状態だからこそ。楽しいことをしたら、少しでも気が晴れるかもしれない――彼女も、自分も。
 つくしのそんな想いを込めたお誘いに、ナイチンゲールは目を丸くした。それから、ふわりと微笑んだ。
「……いいかもね。よし、行こっか!」
 きっと、明日も明後日もずっと辛い。心に刺さった棘は、きっと一日二日で処理できるようなモノじゃない。だからこそ、今日ぐらいは、楽しく乗り切ろう。
 何か他にやることや考えることがあれば、自分の心のことを考えなくって済む。現実逃避と言えば聞こえは悪いが、ストレスと上手く付き合う方法と表現することもできる。
 どこに行こうか? 何したい? そんなやりとりを交わしながら、二人の乙女は空の包み紙に紙カップが乗ったトレーを手に立ち上がる。ごちそうさまでしたの後に、良く晴れた冬の空の下へ――。







 どこに行こうか? 寒いし、とりあえず地下の商店街へ。そんな話になった。
 休日。町は賑やかだ。ファッション店が並ぶそこは、オシャレな冬のトレンドが並んでいる。照明に光るショーウィンドウに、通り過ぎる二人の姿が映った。
(ナイチンゲールさん、綺麗だなぁ……大人って感じで……)
 チラとそれを横目に、つくしは思う。ナイチンゲールのシンプルで落ち着いた服装は、大人の魅力をいっそう引き立てているようで。服装の色味は白や黒、控えめなベージュと派手ではないが、それが彼女の赤茶色の艶髪を映えさせている。素敵だ、と素直に思った。
 奇しくも――ナイチンゲールも似たようなことを考えていた。隣を歩くつくしは彼女より十センチ以上低く、視線をやればつくしの頭が目に映る。つやつやと光の輪を作る真っ直ぐな黒髪。健康的な肌に映える黒い睫毛。少し、羨ましかった。
「お、スカート可愛い!」
 そんなつくしが、ふと足を止めて指で示す。ナイチンゲールが指先を視線で辿れば、ディスプレイされているマネキンが。青緑色のチェック柄スカートだ。裾の方はフリルになっており、白いレースが派手過ぎずにあしらわれている。冬物らしいシックな色合いながら、ガーリーで乙女心をくすぐるデザインだ。
「ほんとだ……つくしに似合いそう」
「そうですかね? えへ……」
 私にはかわいすぎないですかね? と言いつつも、そう言って貰えたらはにかみ笑いを見せるのだ。
「いいなあ……私そういうコーデうまくなくって」
「似合うと思いますよ? ナイチンゲールさんはスタイルいいですし……」
 つくしの視線がそっとナイチンゲールの豊かな胸部に向けられ、そして残酷なまでに控えめな自らのそこに向けられ、フッと遠い目になった。これが日本人と外人の差なのか。
「そういえば……ナイチンゲールさんってどこの国の方なんです?」
 また気ままに歩き始めつつ、つくしが問うた。
「今はイングランドだけど……生まれは北アイルランド」
 そう答えたナイチンゲールは、冗談っぽい眼差しを隣の少女に向けて。
「つくしはどこ出身だっけ」
「どこだと思います〜?」
「んー、どこだろうー」
「ヒントはねー、日本」
「日本かー、それもう答えだー」
 交わす冗談。あはは、と二人して笑う。

 二人は親友、というような深い仲ではまだない。でも、だからこそ見せられる顔もある。
 貴重な巡り合わせ。だからこそ、気楽に大事に過ごしたい。

「ナイチンゲールさん、好きなものはなんですか?」
「気さくなもの。母が変に固くってさ、子供の頃、縁がなかったから」
 トレンドを横目に会話は続く。いくつもの着飾ったマネキンが視界の後ろに流れて行く。まだ親友ではない、ということは、これから仲良くなれる、お互いをちょっとずつ知ることができる、そんな余白の喜びがある。
 好きな色とか、好きな花とか、それから英雄の話とか、最近食べたスイーツの話とか。
 弾む会話、最初のファーストフード店の時よりも、二人の距離は確実に近付いていた。表情もそうだ。柔らかく、穏やかな雰囲気になっている。
 と、地下街の広場に出た。最近流行りの音楽が流れていて、ついでに人通りも多くて。歌の音量と雑踏に、二人の会話が一度途切れる。
「……自分だけじゃどうしようもないよね」
 最中、雑踏を遠く見やりながら、ナイチンゲールが小さな声で呟いた。
(私は、弱い)
 外出さえ共鳴に頼り、なお物憂い。なのに隣にいる少女は――自分より年下で、独りだというのに、こんなにも明るくて。でも、その明るさの奥に何か思いつめたモノを感じる。詮索はしないけれど、そこもまた親近感で。それでも太陽のように元気に振舞ってくれて、おかげで、今だけは――……。
「ナイチンゲールさん、どうかしましたか?」
「ううん、……なんでもない」
 こちらを見上げる丸い瞳に、穏やかな笑みを返した。するとつくしも、にこ! とヒマワリのような笑みを浮かべるのだ。と、つくしはふと違う方向に目を奪われて。
「あ! たい焼き屋さん……甘いものは苦手じゃないですか? 大丈夫でしたら、たい焼き食べに行きましょう!」
「賛成! ……って食べたことないんだけど」
「きっと気に入りますよーっ」
 疲れている時は甘いものに限る。甘いものは元気になれる。
(少しでも、元気になってくれるといいなぁ)
 餡子入りのたい焼きを注文しつつ、つくしは思う。隣にいるナイチンゲールと一緒に戦ったことは少ないけれど、強い人というイメージがある。だからこそ元気付けたかった――そんな想いを秘めて、あつあつのたい焼きを「はいどうぞ!」と彼女に手渡す。
「これがたい焼き……本当だ、魚の形……! なんだか精巧なフィッシュアンドチップスみたい」
 ナイチンゲールはしげしげとたい焼きを眺めた。横目につくしを見やれば、舌を火傷しないようにちまちまと齧って食べている。なるほど、ああやって食べるのか。では、と真似て食べてみる。
「……!」
 焼き立てのパリッとした香ばしい皮に、ギッシリ詰まった甘い餡子。一口で気に入った。これは、美味しい。そんなナイチンゲールの表情に、つくしも嬉しそうだ。
「お持ち帰りでいくつか買っておきます? カスタード味とか、チョコ味とか、白餡とか、いっぱいありますし」
「……うん!」
 つくしの提案に、ナイチンゲールは目を輝かせて頷いた。







 楽しい時間は一瞬だ。そろそろ、帰る時間である。

「今日はありがとう。……本当、ありがとう。楽しかった!」
 別れ際、ナイチンゲールは笑みと共に心からの感謝を伝えた。
「こちらこそ! また一緒にお出かけしましょうね! 絶対ですよ!」
 そう言って――「はい!」とつくしは小指を差し出すのだ。ナイチンゲールがキョトンと瞬きをする。
「あ。えーと、これはジャパニーズ約束スタイル……?」
 つくしは“指切りげんまん”をナイチンゲールに伝える。そういうことかとナイチンゲールは微笑むと、つくしの華奢な小指に、機械の小指をそっと絡めた。
 つくしはニッコリ笑みを浮かべる。そして唇で紡ぐのは約束の歌、心で紡ぐのは小さな祈り。

 ゆびきりげんまん、うそついたら……。

(どうか彼女が怪我をしないように)

 はりせんぼんのーます。

(どうか、どうか、死なないように)

 ……ゆびきった。

「じゃあ、また!」
 もし針千本飲んで祈りが届くなら、何万本と飲んでやるのに。笑顔の裏でそう思い、つくしは離した手を振った。ナイチンゲールの姿が雑踏に紛れて見えなくなるまで、振っていた。



『了』




━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
ナイチンゲール(aa4840)/女/20歳/攻撃適性
御代 つくし(aa0657)/女/17歳/防御適性
パーティノベル この商品を注文する
ガンマ クリエイターズルームへ
リンクブレイブ
2018年03月01日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら







年末年始





©Crowd Gate Co.,Ltd All Rights Reserved.