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『未知の魔法道具は魅惑的に』
シリューナ・リュクテイア3785)&ファルス・ティレイラ(3733)

 シリューナ・リュクテイア(3785)の緋色の瞳に金属と化した少女を映す。
 石、魔法ガラスとは違う……と呟きながら思わず笑みを溢す。
 魔族が魔法道具を使いファルス・ティレイラ(3733)を金属に変えたのだ。
「この魔法道具は素晴らしい……」
 ファルスの金属化した体に触れると、つるっとした感触というより銅製の鍋の底の様な丸い凹凸が手に馴染む。
「小さな盗人のおかげね」
 盗人の魔族の少女は、シリューナの石化の魔法で石像にされていた。
 これで、邪魔者は居ない……いや、至福の時のシリューナを見る者はネズミ1匹も居ないだろう。
 さて、この状態になってしまったのは数日前にさかのぼる。

 知り合いの女館長から連絡があったので、シリューナはファルスを連れて美術館へと赴いた。
「突然のお呼び立てに答えていただきありがとうございます」
 と、スーツ姿の女館長は、応接室のソファーに座るシリューナに笑顔を向けた。
「いえ、丁度暇だったので良い。それに少し興味があってね」
 シリューナは出された紅茶を口にする。
「えっと、よろしくお願いします!」
 明らかに緊張しているファルスは、背筋を伸ばして女館長を見つめる。
「近頃、魔族の盗賊があちらこちらに出ているようでして、先日うちの美術館にも入られてしまいました。それで、エサを用意して貴女方に捕まえて欲しいのです」
 女館長はシリューナを見つめる。
「分かった。ティレ、囮の美術品の監視と作戦を練ろう」
 シリューナは頷くと、ファルスと共に応接室から出ようとする。
「気を付けて下さい。魔族はどうやら金属に変える魔法道具を所持している様です」
「ほう……分かった、気を付ける」
 女館長の言葉にシリューナは口元を吊り上げると、そのまま重たいドアを閉めた。

「お姉さま、お姉さま、囮の美術品とはドラゴンの鱗ですか?」
 ファルスがガラスケースの中にある美術品を見ながら声を上げた。
「本物じゃないが、術具として大昔の術師が使っていたモノだそうよ。囮の美術品とはいえ、相手の惹き付けるそれ相応の品ではなければならい……重要な仕事ね」
 シリューナはファルスに視線を向けると、彼女の体は震わせながら『緊張してきました……』と呟いた。
 日が沈み、夜の帳が下りる。
 閉館した美術品は、最低限の灯りと美術品を残して施錠されるのを確認する女館長を見送り、シリューナとファルスは2手に分かれて美術品の周囲を音を立てずに歩く。

「ひゃっ!」
 ファルスが歩いていると、自分より小さな何かとポンとぶつかる。
「ドコ、に……目ヲ付けてル、んダ?」
 ギラリと猫の様な瞳を光らせ、魔族の少女はファルスを睨みながら言った。
「ごめんなさい! よそ見をしてて、あまり下を見てなかったの、で……ん?」
 ファルスは魔族の少女が懐に隠しているモノを凝視する。
「厄介、カ」
 と、呻くと魔族の少女は魔法道具を発動させた。
 何となく、何となくだ、ファルスが魔族と接触しているのを感じたシリューナは、彼女が居る方へと駆け出した。
「えっ……えーっ!? 尻尾が金属に!」
 魔力を感じ、体の1部に違和感を感じたファルスは自分の尻尾が金属と化しているのを見て、悲鳴に近い声を上げた。
 その様子を見たシリューナは、口元を吊り上げ不敵な笑みを浮かべる。
「魔の者を石化せよ」
 シリューナが魔力を込めて言葉を発すると、逃げようとしていた魔族の少女は足先から頭部に向かって、石化は侵食していき完全に石と成った。
「お姉さまーっ!」
 ファルスがシリューナに駆け寄ろうとする。

 がーー……

 まるで、いや、確実にファルスの魔力に反応して金属化した尻尾が体を侵食していく。
 ファルスがもがき足掻こうと、叫ぼうとも、無慈悲にも金属化は進む。
 そして、今に至る。
 完全に金属と化したファルスをシリューナは、思わず吐息を漏らしながらその体に手を伸ばす。
 思った通りの感触が手を通して感じる。
「ティレ、金属の姿も美しいよ……」
 緋色の瞳を細め、聞こえない耳元で囁きながらシリューナは、ファルスの金属な体を撫でる。
 いつもは柔らかいであろう顔は、昔の肉質で美しい彫刻の様だ。
 体のラインが金属なのに何処か艶かしく、思わず指先でなぞってしまう。
 健康的な太ももに布が食い込み、段差が出来ているのを見ると思わず頬を寄せたくなる。
「あぁ、この素晴らしい姿のティレを好きな様に出来るのは私だけよ」
 平らでもなく、磨き上げられた上質な金でもなく、浅い凹凸や波が残った金属だからこそだろうか、どんなに体に手を滑らせても摩擦で熱くならない。
 キュー、と音も出ない。
「良いわ、ティレ。この魔法道具はとても素晴らしい」
 石化した魔族の足元に落ちていた魔法道具を手に取り、シリューナは報酬として貰おうと思いながらポケットに仕舞う。
 満月が金属のシリューナを照らす。
 幻想的で美しい少女ファルス、魔族を追いかけようとして生やした翼と尻尾は今にも空に舞いそうだ。
「続きは、家でしましょう」
 熱を帯びた瞳でシリューナはファルスを見つめた。

 慣れた様子でシリューナは、女館長に連絡を入れて呼び出すと石化した魔族と、盗まれた美術品を渡す。
「ありがとう、報酬は送っておきます」
「その魔族が持っていた魔法道具も頂ける?」
 女館長が一礼すると、シリューナはポケットから魔族が持っていた魔法道具を取りだして見せた。
「こちらの依頼はこの盗人を捕まえる事ですので、それに関しては貴女の方が詳しいでしょうから」
 と、意味ありげな表情で女館長は言うと、警備員達に石化した魔族を運ばせる。
「ええ、珍しいので私の方で色々と調べさせていただくわ」
 と、シリューナが言うと女館長は踵を返し、その場から去って行った。
「さぁ、時間はまだあるから……楽しめそうね」
 恋する少女の様にシリューナは、金属と化したファルスを抱えて帰宅する。
 いつもの様に、いつもの部屋で、ファルスを楽しむ為にシリューナは吐息を漏らす。
 体がいつもより熱い気がする。
 新しい姿のファルスは、ライトの光を浴びて鈍く光る。
「やはり、どんな姿でも……ティレ、貴女は美しく愛らしい」
 普段は見せない表情で、声色で、シリューナはファルスを見つめながら言う。
 ファルス・ティレイラという名の生きた芸術を越えたドラゴンは、シリューナにとって至高、いや、何者にも変えられぬ少女だ。
 幼さが残る顔に頬を寄せ、体を寄せ、普通なら金属の香りがするハズなのにファルスの甘い香りがした。
 頬に舌で舐めると、上質な砂糖の様に控えめな甘さを感じた。
 もう、魔法道具はシリューナのモノだ。
「思う存分に楽しませて」
 シリューナは耳元で『貴女を沢山楽しんだら戻すから』と呟いた。
 それに、楽しみたい時は楽しめる様にコレ(魔法道具)を報酬として、女館長にお願いしたのだから。
 夜明まではまだ長い、ファルスの知らないシリューナは彼女を愛でる為に“愛する”


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【3785/シリューナ・リュクテイア/女/212/魔法薬屋】
【3733/ファルス・ティレイラ/女/15/配達屋さん(なんでも屋さん)】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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今回も発注していただき、本当にありがとうございます。
流行りの病に掛かり、1度流してしまい申し訳ありませんでした。
普通に見せない愛情、芸術品にして楽しむ姿はとても甘美です。
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
リテイクは気軽にして下さい。
東京怪談ノベル(パーティ) -
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東京怪談
2018年03月01日

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