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『『2人、同じ約束』 』
アレスディア・ヴォルフリート8879

 寒い日々は続いていたが、年末年始の喧噪も落ち着き、街は日常の姿を取り戻していた。
 都内であっても、都心から離れれば、自然あふれる場所や、駅の周りでさえ人の姿がさほど見られない場所もある。
 アレスディア・ヴォルフリートは、そんな東京の外れの、木々に囲まれた広場にディラ・ビラジスを誘い、訪れていた。

「いつまでも休み気分ではいられぬ。今まで渡り歩いてきた世界に比べれば平和な世だが、助けを求める者は少なからずいる」
 気持ちを引き締める為にも、手合せを願えないか。
 そんなアレスディアの申し出に、ディラは二つ返事でOKをした。
 彼女が選んだ武器は、槍。ディラは大剣で応じた。
「はあっ!」
 躊躇なく、ディラの身体に真っ直ぐに繰り出される穂先。
 ディラは大剣を打ち下ろし、渾身の力で穂先を逸らす。
 振り上げられ、互いに打ち下ろされる刃。空中で交わり、音を立てて弾かれる。
 一切の油断が許されない、真剣勝負だった。
 冷たい空に、2人の汗が飛んだ。
 汗が目に入り、ごく若干ディラの動きが鈍ったその瞬間に、アレスディアは自身の身体と槍を回転させ、柄でディラの胴を突いた。反動で、自分も地面に転がる。
「……っ」
 プロテクターを装備していたが、かなりの衝撃、ダメージを受けてディラは倒れたまま呻いていた。
 アレスディアは荒い呼吸を繰り返しながら仰向けになり、青い空を見ていた。

 しばらくして。
 先に起き上がったアレスディアは、「立てるか?」と、ディラに手を伸ばした。
「大丈夫だ。アレスも帰ったらちゃんとケアしろよ」
「ああ。久しぶりに筋肉痛に悩まされそうだ」
 疲れた顔で、2人は軽く微笑み合った。
 立ち上がり、体の土を払うディラをアレスディアは眺めていた。
 彼と共に、この地に訪れて1年と少し。
 アレスディアの人生の中で、彼と共に過ごした時間は、まだそう長くはないけれど……。
「……ディラ殿。私と共に居たくて居ると言ってくれたこと、とても……嬉しかった」
 ディラが視線をアレスディアに向ける。
 人々の普通の幸せを護る生き方を続ける自分。
 それは、普通の幸せとは縁のない生き方。
 それでも彼は、自分の側に居たいから居ると言ってくれた。
「だからこそ、一つ、約束してほしいことがある」
「約束?」
 怪訝そうな表情の彼に、アレスディアは頷いてからこう続けた。
「私を置いて、一人で逝くな」
 ディラの眉がぴくりと動いた。
 本当は『私より先に逝くな』と言いたかった。だけれど、自分だけ良ければいいのかと思うところもあり。
 眉間を寄せながら、アレスディアは想いを語る。
「私も、我が身がどうなろうと構わぬ、などと……できるだけ、その、言わぬようにするから」
 自信のなさが言葉に表れてしまい、アレスディアは目を伏せて息をつき、改めて彼の――ディラの瞳を見詰めた。
「……ディラ殿も、私を置いて一人で逝かぬと、約束してくれぬか」
 2人は、見つめ合いながら少しの間沈黙した。
「それなら」
 と、ディラは軽く笑みを浮かべながら言う。
「出来るだけ、俺もそういうことは言わないようにする。それが対等な約束じゃないか?」
「そうかもしれぬが……」
「アレスを置いて死なないよう、気を付ける。それでいいか? けどさ」
 ディラは悪戯っぽい目でアレスディアを見詰めた。
「アレスと一緒に居ない時に、うっかり命を落としちまうかもしれないだろ。だから、契りでも交わしておくか?」
「……どんな?」
「さーな」
 声を上げて笑い、ディラはアレスディアの肩を叩いた。
「帰ろう。アレスが同じ約束をしてくれるのなら、俺も約束すると約束する」
 同じ約束――。
 ディラより先に逝かないという約束。
 出来るだろうか、そんな約束が。言えるだろうか、彼に。
 先に歩きはじめた彼の背を、アレスディアは静かに眺めていた。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/外見年齢/職業】
【8879/アレスディア・ヴォルフリート/女/21/フリーランサー】

NPC
【5500/ディラ・ビラジス/男/21/剣士】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ライターの川岸満里亜です。
ご依頼ありがとうございました。
いつもいつもお届けがギリギリで申し訳ございません!
ディラのお返事の真意は、おまけの方で書かせていただきました。
2人の関係がどのようなものになるのか、今後も楽しみにしております。
東京怪談ノベル(シングル) -
川岸満里亜 クリエイターズルームへ
東京怪談
2018年03月06日

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