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『暁探検隊! 』
煤原 燃衣aa2271)&エミル・ハイドレンジアaa0425)&大門寺 杏奈aa4314)&阪須賀 槇aa4862)&無明 威月aa3532)&一ノ瀬 春翔aa3715)&楪 アルトaa4349)&藤咲 仁菜aa3237)&世良 杏奈aa3447)&アイリスaa0124hero001

プロローグ

「ははは、それでだな、隊長」
 それは前回の探索がすみ食堂にて、『アイリス(aa0124hero001@WTZEROHERO)』や『無明 威月(aa3532@WTZERO)』がまともな栄養摂取を行っている時の話。
「まだまだ彼を蘇生させるには材料が足りていないんだな」
 その言葉に『煤原 燃衣 (aa2271@WTZERO)』は思わずうどんをかみ切る。
 マナー的にどうなの?
 そう『エミル・ハイドレンジア(aa0425@WTZERO)』 は思うが、彼女も久しぶりのうどんだったので、そんなこと気にせずうどんを啜る。
「そ、それはどういう」
 燃衣は思った、蛍丸を蘇生できないのでは? と。
「いや、正確には多いのだよ。効果がね、あれは不老不死の霊薬だから」
 アイリスはそうおそばの汁を飲み干すと燃衣と向かう。
「ジャムはそのままだと効果が強すぎのだよ、なのでその効果を短時間に限定する必要がある」
「短時間?」
「コノハナサクヤの伝承に基づいた。短命の桜。それを異界に尋ねに行かなければならない」
 それはアイリスからの新たな冒険の提案。
「そ、そうなんですね」
「不老不死の英雄殿に仕立て上げたいのならばそのまま飲ませてもいいと思うよ?」
 燃衣は想像した。彼が不老不死の天使のような存在になったら、いったいどうなるのだろう。
「割といつも通りそうですけど、本人が望まない気がするのでやはりひと手間加えましょう」
 告げると燃衣は『阪須賀 槇(aa4862@WTZERO)』に指示を出す。
「では暁の戦力をまとめてください、今度は短命の素材を取りに行きます」
「K……了解したお。メンバーはいつもの……」
 ここに暁探検隊が結成された。


第一章 異界へ急ごう

 異界とはこの世界のいたるところに開いた、穴であり、その先には別の世界が連結されていると考えられていた。
 その探索を行うのもリンカーの務めであるが。
 今回のように大規模な部隊を投入するのはなかなかないことであり。
 とどのつまり。暁部隊の全員が心を躍らせていた。
「見てください槇さん、キノコなのに僕より背が高い」
 そこは巨大な森林と言った世界だった。まるで自分たちが小人になってしまったかのように巨大な世界。
 そんな世界に迷い込んだエミルは怯えるどころかむしろ目をキラキラさせて。
 あっちへふらふら。こっちへふらふらと、好奇心に身を任せていた。
「ああ、あんまりはなれちゃ」
『大門寺 杏奈(aa4314@WTZERO )』 がその対応に追われ、『藤咲 仁菜 (aa3237@WTZERO)』も調子よさ気にそれについていく。
「見てくださいこの大きな葉っぱ…! 私小さい時映画で見たことあります!こうやって傘にする葉っぱ!」
 そう目をキラキラさせて蓮状の葉っぱをかさにして見せる。
「ああ、仁菜まで」
 杏奈はそんな暴走する少女二人をはらはらと見守っていた。
「あぁ大きい木苺らしきものが! これ食べれますかね?」
 燃衣を中心とした部隊の周りからつかず離れずぶらついているので、はぐれることはないが。何が起こるか分からない状況である。
「気を引き締めていきましょう」
 そう燃衣は仲間たちを見るが。『一ノ瀬 春翔 (aa3715@WTZERO)』は煙草をふかしてリラックスしているし『世良 杏奈 (aa3447@WTZERO)』はリュックに鍋や料理道具を下げているし、これでは異界探索というよりピクニックである。
「隊長! あっちに塞がれた洞窟があったっす」
 そう茂みの隙間から顔をのぞかせたのは『ヴァレリア・ヴァーミリオン(NPC)』 短パンに迷彩に帽子という探検者スタイルだったが、彼……彼女? は今回技術解析等の役割でくっついてきているのであたりを飛び回るのはよろしくない。
「ちょ、ちょっとまってヴァレリアさん」
『三船 春香(NPC)』 が息も絶え絶えに追いついてくる。
 ためしにその地点まで案内してもらうと、やけに怪しい文様が付いた石に、それによって入り口が封鎖されている洞窟に出会った。
「あー、どうしましょう」
「吹っ飛ばすか?」
『楪 アルト(aa4349@WTZERO)』がピグマリオンの全兵装を開いて告げる。
「ちょちょちょちょ、まずいお。今度は入り口が粉々になるお」
 そうあわててとめる槇。
 その間もエミルと杏奈はあちこちの葉っぱや木の実を採取していた。
 と言ってもどれもこれも抱えるほどの大きさなのだが。
「かえる〜。つんつん」
 カエルでさえエミルとどっこいの大きさである。
「たべられちゃうよ?」
 そう杏奈が心配そうにエミルに声をかけた。
「心配ないだろう私もいる、この世界の生命体はそれほど強くはない」
 告げたのは『月奏 鎖繰(NPC)』彼女は部隊の護衛役、と言ったポジションだ。
「まぁ、この程度障害にならないお」
 そう鞄をガサゴソと探る槇。
「こんなこともあろうかと!」
 そして取り出したるはコードやら基盤やらがむき出しななにか。
「てってれ〜リモート式ライヴス爆弾」
 槇はそれを使えるような状態にセッティングしながら説明を口ずさむ。
「これは使用者のライブスをため込んで爆発する超兵器だお。ただ持ち主のライブスの性質によって爆破のされ方が変わるお」
「へー、例えばどうなるんです?」
 燃衣が問いかけると槇が燃衣に爆弾を抱かせる。
「それで三分待つお」
「カップラーメンが食べられますね」
 しばらくして燃衣がその爆弾を石の前に設置すると槇は全員離れるように告げた。
 そして手に持ったスイッチを槇は握った。
「ぽちっとな」
 次の瞬間。シューっという音と共に、大地を揺るがす衝撃と、当たりの木々を枯れさせるような熱波が散らばり。
「わああああああ! ちょっと」
「何やってるんですか!」
「ははははは、景気がいいね」
 杏奈と仁菜、そしてアイリスが盾となり、その爆風から隊を守る。
「こ。これは」
「うーん、調整に失敗したお」
 槇が後ろ髪をかく矢先。
 地面にびしりとヒビが入る。
「あ……」
 誰もがその崩落を予感しながら逃げられず、そして。
「ああああああ!」
 全員がその大穴の中に飲み込まれていった。
 結果から説明すると。まぁリンカーは落下しても死なない。
 なので多少前後不覚に陥ったが、全員無事であった。
「点呼いいですか?」
 燃衣が暗闇にそう告げると、直後灯りが灯った。
「こんな目に遭うのも二度目ですね。今回はかなり範囲が広いですが」
 その視線の先には杏奈がいる。彼女の掲げる救国の聖旗「ジャンヌ」が光を発していた。
「探索なら私の盾である程度照らせますから」
 そうパラディオンシールドを構えると一行は杏奈を先頭に洞窟を進んでいく。
「まぁ、私も光るんだけどね」
 そう最後尾でアイリスがその輝きをアピールしていた。
「で? 隊長今回の目的はなんなの?」
 鎖繰が燃衣に問いかける。
「今回はアイリスさんの頼みの品で、短命を司る桜を採取しに行きます」
「短命ねぇ、行先に当てはあるの? 隊長」
 鎖繰が問いかけると、燃衣は苦笑いを浮かべる。
「いや、それがさっぱり」
「だから探検。なんだよね」
 そう春香が微笑みかける。
「……あ、たいちょ……その」
 そんな燃衣に威月は気になることがあってそれを伝えようとした。 
 しかし、楽しそうにお話しする燃衣にそれを伝えることができず言葉を飲み込んでしまう。
「それにしても、落陽の隊長から、隊長と呼ばれると変な気分ですね」
 そう鎖繰にむけて苦笑いを浮かべる燃衣。
「けど、名前で呼ぶのも変じゃない?」
「そうですか? 僕は気にしませんよ」
「じゃあ……燃衣」
「…………」
 いきなり名前で呼ばれてむず痒くなる燃衣である。
「何か間違ったかしら」
「え? いや違うんですよ。ただ煤原さんではなく、そうきたのかと驚いて」
「失礼だった?」
「いえ、僕はきにしな……」
 そこで気付いてしまった。
 仁菜や槇の視線に。
「ちが! そんな、なにを考えてますか! お二人は!!」
 慌てふためく燃衣である。
 そんな燃衣の言葉を背に、杏奈はどんどん先へと進んでいく。
 エミルが空腹を訴えるように杏奈の袖を引くと、杏奈は微笑みかける。
「もうすぐしたらでられるからね」
「……ん? わかる?」
「風が吹いてきたから」
 その言葉の通り洞窟は長く続かなかった。
 徐々に坂を上っていくと光が見えるようになり。そして。
「わあああ! 綺麗」
 世良が真っ先に光のたもとへ駆けだす。
 そこは小川のそばの土肌見える場所で。空から花びらが降る春という言葉にふさわしい場所だった。
 光もとおりからっとしていてひなたぼっこにちょうどいいそんな大自然。
「ここをキャンプ地とする!」
 そう、台所担当である世良は手早くキッチン道具を並べていく。
 しかし。
「あら? どうしたの?」
 一人AGWを携えた春翔が森の向こうへと視線を向けている。
「気づかないか?」
 その体に霊力が通うと、衣装が赤く染まりハートのエースとしての覇気をみせる。
 それにつられて世良は。食べられそうな木の実や野草を足元に置いた。
 調味料を鞄に手早くしまうと。
 燃衣が告げる。
「これは……皆さん、こんばんは豪勢に。焼肉といけるかもしれません」
 その瞬間、暁メンバーの瞳がギラリと輝いた。

第二章 モンスターハンター

 ここで暁メンバーがどれくらいの縮尺になっているかおさらいしておこう。
 基準となるのは小型のカエル、そのカエルはよく葉っぱの上に乗っているような可愛い、小さいサイズのはずで。
 しかし、今やそのカエルは小柄なエミルとどっこいの大きさである。
 大隊全員が、小石三つ分の身長になってしまった。
 ということはだ。
 イノシシなんて、もはや大怪獣である、
「あー、荒れ狂っているねぇ」
 最初の突撃を春翔が斧でいなすと、その体に朱線が走る。するともうお怒りモードのようで、地面を踏み鳴らしてリンカーたちを睨みつけた。
「まぁ、イノシシ肉は栄養価が高い、晩御飯としては最適じゃないか?」
 アイリスが告げると、開幕の砲を鳴らしたのは槇。
「ヒャッハー、汚物は消毒だお!」
 それに暴れ狂うイノシシ。このあたりの主なのだろうか、槇たち相手に一歩も引かない、
 牙で気を削り、石を巻き上げ、リンカーたちへ激しく抵抗する。
 その突撃を止めるにしても三人がかりである。
 仁菜と杏奈、そしてアイリスが動きを制限すると、エミルは木の側面を駆け上がり、身を翻しながらイノシシへと刃を突き立てた。
「シシガミよ、なぜそのようにあらぶられるでありますか」
 そうしたったらずにヴァレリアが告げるとその足に鎖を巻きつけて動きを封じようとする。
 槇がその非力な研究員を気遣うように近くに歩み寄りながらイノシシに鉛玉をぶち込んでいく。
「一ノ瀬さん! ご教授お願いします」
「いや、それほどの事はねぇぞ?」
 春翔の隣に立つ春香。
 次いで春翔はその体を白く変える。まずは範囲火力、春香とタイミングを合わせると複製した斧をイノシシに向けて射出した。
 ぶもおおおおっと悲鳴をあげながら無数の斬撃を受けるイノシシ。
 そしてその柄に絡みついていたピアノ線ががんじがらめにイノシシの自由を奪うと、周囲に荘厳な音色が響き渡る。
 音に気をとられたイノシシが次いで春翔に視線を向けるとすでにその場に春翔はいなかった。
 空中に飛んだ春翔は瞬時に色を白から赤へと変える。
 回転力、加速力、重力加速度、腕力、その他etc。ありったけの力でイノシシを側面から切り裂くと鮮血が吹き上がる。
 ただ、まだだ。
 血に濡れた衣装は拭えばすでに白に変わっている。
 ゼロ距離で斧を傷口にあて、体内で複製。
 イノシシの体内から無数の白い斧が体を食い破って顔を出した。
「……すごい」
 思わず声を出した威月、イノシシの装甲は異常に硬く、槇の弾丸などはほとんどはじかれていたのだが、これはおそらく致命傷。
 しかし!
「ダメ……です」
 威月のか細い声に気が付いた春翔はあわてて距離をとる。
 するとイノシシはまるで最後の力を振り絞るように暴れはじめた。
「まだ、体力があんのか」
 しかしイノシシの体はピアノ線でしばりつけられている。
 あと一撃春香がくわえれば。そう思った矢先銀色の影が、威月の視界から迫る。
 それはピアノ線をひきちぎると同時に地面を駆け春翔に突進。
 それを春翔はいなすと、すぐに目標を変えてかけ始める。
 それは全身とげだらけのテンの様な細長い生物。
 とても可愛いお顔、つぶらな瞳をしているのだが、暁の皆さんを獲物と認識しており、威嚇の表情はちょっと怖い。
 そのテンはイノシシを抑え込もうと近づいた杏奈やイリスをその速度で攪乱しつつ、削るような体当たりをすると、素早く木を上って枝まで上ってしまった。
「ったく、何だってんだ! ……あんにゃろーゼッテー許さねーからな!!
 早々に吹き飛ばされたアルトが土にまみれた体をはらうと空を見上げ叫び声をあげた。
「あー、あそこまで行くと、ちょっと手が出せないですね」
 燃衣と鎖繰がテンを見あげる。二人とも近接アタッカーなので、てが届かない。
「春香ちゃんか槇さんにお願いするしか」
 その時アルトがピグのブラスターを唸らせて告げる。
「うえのほーに行きたいってんなら…あたしが足だしてやんよ」
 腕を組んだまま仁王立ちしてミサイル担ぎ設置。
「つまりこれに乗れと……?」
 あからさまに嫌そうな顔をする鎖繰だが、アルトはそれに笑顔を帰す。
 結局二人はピグマリオンにしがみつき、アルトはテイクオフの姿勢をとる。
「あー。アルト……これはどうやって」
 サクリが風で髪をバタバタなびかせながら問いかける。
「あ? 緊急停止? どーやって止めるって? ……んなもんねーよ。死ぬ気で飛び移れ!」
 そのままアルトは射撃体勢、ガトリングを撃ちながらテンの動きを制限する。
「やるしか、ないですね!」
 燃衣は両腕の爆発力で。鎖繰は鎖鎌を枝に巻きつけてアルトから分離。
 敵の背中を追う。
 その逃走経路の先にいつの間にかアイリスがおり。その両手の盾でしたたかに、テンの耳にあたる部分を撃ちつけた。
 軽い脳震盪で動きが止まる。
 それを燃衣と鎖繰で刈り取った。
 その眼下では眩い光がイノシシに降り注いでいた。見れば世良が魔導書片手に妖艶な笑みをうかべている。
 サンダーランスにて全身しびれさせたイノシシは最後に。
 威月の居合斬りにて首筋の血管を切断され。その場に倒れた。
 クエストクリアである。

第三章 休息

 その後リンカーたちは川で体を洗いつつ世良の料理を待った。
 血まみれのまま食べても平気と主張する者もいたのだが、この血。何やらリンカーの体に干渉するようで、精神的にも肉体的にも徐々にしんどくなっていくことが分かった。
 その正体はよくわからないのだが、威月だけはなぜか平気そうな顔をしている。
「こんがり上手にやけました」
 そう杏奈が骨付き肉をテーブルに並べていくと、燃衣などはそれに抵抗なくかぶりついたが、槇はそれをみて青ざめていた。
「ははは、たべないのかい?」
 アイリスがそう、槇へ肉を差し出すと槇はおずおずそれを受け取る。
「ちょっと、これはきついものがあるお。アイリスさんは食べないのかお?」
「ああ、私はね」
 そう告げるとアイリスは優しくお腹のあたりを撫でた。
「このこが嫌がることはできるだけしたくないと思ってるんだよ」
「ふーん、その気持ち愛だね。なーんて」
 そうガブリと肉にかじりつくと、今度は槇は顔を青くした。
「う、犯人はヤス」
 倒れ伏す槇、駆け寄る仁菜と杏奈。
 その隣で慌てふためく威月が、元凶だと皆が知るのは、もう少し先の話。


   *   *

 そんなてんやわんやな食事がすめば、一行は交代で休息をとることになった。
 たき火を囲んで、男子たちはマシュマロを焼いたり、残った肉を炙ってみたりした。
 でも、なぜここにいるのは男子だけなのだろう。
 それは女子はお風呂だからである。
 鎖繰が周辺探索の際に見つけたのだ。
 今は女子の入浴時間なのである。
「そう言えば、一ノ瀬さん、二重共鳴できるようになったんですか?」
 燃衣が問いかけると春翔は煙草をくゆらせながら空を見た。
「まぁ、それはぼちぼちって感じだなぁ」
 可もなく不可もなく、もう少し自分で研ぎ澄ませたい。そんな回答だった。
「あの共鳴切り替えは……」
「副産物だな。ほとんどノータイムで二人の力を使い分けられる」
 それは春翔と英雄のつながりが深いからできる芸当なのだろう。英雄の性質が近いためというのもあるかもしれない。
「それにしてもVVがいないお?」
 槇があたりを見渡すと、春翔が告げる。
「風呂に行ったんじゃねぇか?」
「え? VVさんって女の子?」
 その言葉に槇が反応する脳内で会話するように上空を見あげ、そして思わず口が滑る。
「ばっか、弟者。こんなにかわいい子が女の子なわけ」
「確認するしか……なさそうですね」
 告げると槇と燃衣は顔を見合わせた。
 それに対して春翔は手を振る。
「あれ? 行かないんですか? お約束ですよ」
「見張りがいなくなるとまずい……」
 一ノ瀬さんは大人だなぁと二人は彼の背中を一瞥すると、一目散に森をかけた。
 だんだんと女子たちの声が近くなる、それだけで二人の胸は早鐘をうつようだった。
 そこに桃源郷が広がっている感覚がしてならない。
 もしかしたら二人はこの桃源郷を探しに来たのではないかと思った。
 それくらいに二人は、その仕切りの向こう。鎖繰が竹や木の破片を集めて作った仕切りの向こうに思いをはせた。
「せーので行きますよ」
「OK」
 そしてぬっと仕切りの上から頭半分だけだすと。
 同じように頭半分だけ出した世良と目があった。
「え?」
 しかも視線が二人に集まっている。
 ほとんど世良の頭部に遮られて桃源郷は見えないのだが。
 仁菜がバスタオルを巻いてこちらを睨んでいるのと。
 威月があわてて湯船の中に入るのが見えた。
 そのちらっと見えた体つきだけで、燃衣は、着やせするんだなぁと思ったのだが。
 そんな悠長なことを考えている場合ではない。
 空から石像が降ってきた。
「ふわっぷ!!」
 二人があわてて飛びのくと、周囲の木片や石が降り注ぐ。
「なんでばれたんだお!」
 槇が悲鳴交じりに告げると仁菜がそれに答えた。
「隊長も兄者さんも前科があるんですから、ガードするのは当然でしょう……」
 侮蔑交じりに。
 ちなみに二人の接近に気が付けたのは世良の父のおかげである。
 幽霊となっている彼は見張りを買って出てくれていたのだが。
『娘の裸を見ようなんざ1000年早いわ!!』と怒り狂い、世良がむしろ止めようとする始末。
「はははは、まぁ諦めることだね」
 そう涼しい顔をしてレディケイオスに背を預けるのはアイリス。
 彼女は一段高い場所に足を組んで座っており、二人を眺めながら足を組み替える、すると。
「アイリスたんナイスカット!」
 謎の光が無いアイリスを見て倒れかける槇。
「あ?」
 そのふざけた態度に、いよいよぶちぎれた人がいた。
 温泉のお湯が左右に割れて、ごごごごごと何かが現れる。それは武装を施したバスタオルアルトであり、大変マニアックな姿だが喜んでいる場合ではない。
 あれ……全部AGWだ。
 そう気が付いた二人は英雄がそばにいないことに気が付く。
「で、覚悟はいいですね?」
 仁菜も盾を装備していた。
 そして響く銃声。爆発音。そのあと、めちゃくちゃに暴行された。
 そのぼろぼろになった二人の隣を平然と歩いていくエミル。
「ん、入らないの……?」 
 彼女はまだ知らないのだ。
 その体を隠す意味と、男どもの果て亡き欲望。その恐ろしさを。


第四章 暗闇を抜けてココにいる。
 
 その後女性たちの怒りをなだめきれなかった二人は危うく火あぶりにされるところだったのであるが。春香や威月など穏健派の説得によって命を得た。
 今はたき火を囲って談笑中である。
 そんな中ヴァレリアが姿を見せた。
「お待たせしたッス、何の話してたのでありますか?」
「特に何も、他愛のない話ですよ」
 その燃衣の言葉に頷くと、ヴァレリアは鎖繰の隣に座って、彼女に体を預け寝息を立て始めた。
「あら、おつかれだおね」
 槇が上着をかける。すると鎖繰が代わりにありがとうと言った。
「普段は部屋にこもっているからな」
「月奏さんもそんな表情するんですね」
 杏奈が告げると、鎖繰は笑った。
「仲間だからな。VVは、ただ私は道を外してしまったから……。面と向かって接するのは難しい」
 告げると鎖繰は全員を見渡してポツラポツラと話しだす。
「懐かしい雰囲気を感じた、私達も昔そうだった。まだ憎悪に凝り固まっていない頃。私も昔はそうだった」
 そして鎖繰はたき火をかきまわしながら暗い表情で告げる。
「君たちはそうならないでくれ。私のようになってからでは遅い」
「月奏さんはまだ何も、手遅れじゃないですよ」
 そう仁菜が告げると、鎖繰は少し嬉しそうな顔をして、それを隠すように頭をかいた。
「ああああ! むずがゆいな。私はそう言うキャラじゃないんだ、そして私の事は鎖繰でいい。さん、と呼ばれるようなたいそうな奴ではない」
「ああ、じゃあ、鎖繰たん」
「たん?」
 驚き振り返る鎖繰に槇は首をかしげる。
「鎖繰たんは鎖繰たんだお?」
「あ? ああ? まぁ、月奏よりましか」
「そいで、鎖繰たん」
「なれないな……」
「…………」 
 黙りこくる槇。
「ああ、話しの腰を折ってすまない、続けてほしい」
「鎖繰たん、VVも落陽だおね?」
「そうだな」
 頷くと、幼い横顔にかかった髪を鎖繰は払う。
「VVたんは何で落陽にいるんだお?」
「それは……」
 話していいものか鎖繰が悩んでると、ムクリとヴァレリアが体を起こした。
「自分の話は自分でするッス」
「起こしてしまいましたか」
 燃衣が申し訳なさそうに告げると、ヴァレリアは気にする必要なしと首を振る。
「でも、気分いい話じゃないであります」
「それは……」
 言いよどんでると春翔が口を開く。
「ここにいるメンツなら大丈夫だろ、大なり小なりそれなりの事情を抱えてる」
「一ノ瀬さんもでありますか?」 
 ヴァレリアが問いかけると春翔は苦笑いを浮かべた。
「まぁ、多少生き汚いこともやったな、話せと言われれば話すし、話したくなきゃ話さない。そう言うスタンスが一番いいんじゃないか?」
 春翔の言葉にヴァレリアが頷くと、ポツラポツラと話しだす。
「両親をね、食ったんすよ。自分。人食いなんっす」
 その言葉を理解するのに、暁の面々は少し時間を必要とした。
「狭い部屋で、家族で閉じ込められて。生きるために家族を食う事。喉の渇きを潤すために、家族を食うことを強要させられたのであります」
 悲惨な光景だったという。硬く、歯を突き立てるのもままならない肉を何度も何度も噛みながら。咀嚼する。
 冷たくなっていく母の体。徐々に硬くなっていく血。
 一週間も飲まず食わずの自分の頭の中には、早くこの液体を喉に通さなければ、そう言う思いしかなかったのだという。
「ご丁寧に、胃袋だけ弱らせないように……、ご丁寧に味覚まで増す愚神を、自分に取り付けて……」

「お父さんも、お母さんも、美味しかったんす、涙が出るほど美味しかったんすよ」

「その時、自分に愚神を取りつかせたのがまた別の愚神で。それがラグストーカー所属だって知るのにそこまで時間は、かからなかったっすね」
 そして周囲を見渡してヴァレリアは壊れそうな表情で告げた。
「みなさんが思ってること、解るっす。誰かを食べてまで生きようとするなんておかしい、そう言う人には沢山であってきたっす。自分でもそう思います」
 しかし、どうしようもなかったのだと語った。
 徐々に死んでいくからだ、乾いていく肌と喉。
 ヴァレリアが生きるためにと、父がまずは自分の命を差し出した。
 ヴァレリアにはそれが死体となっていても父に見えた。
 食材には見えなかった。けれど締め付けるような胃が。死にたくないと叫ぶ心臓が。
 悪魔の甘言に耳を貸してしまった時、全てがどうしようもなく終わってしまったのだ。
「だから、自分はラグストーカーが憎いって気持ちもあるっす、けれど、それは自分の罪の様な気がして、けれど黙っていることもできなくて、こうして活動してるっす。自分が正しいのか、死んでしまった方がいいのかもわからないまま。お父さんとお母さんに生きながらえさせてもらった命と体を抱えて生きるのであります」 
 せめて、自分と同じような被害者が出ないために。
 そうヴァレリアは自分の言葉を締めくくった。
 その話を離れて生きていたアルトは潤んだ瞳を隠すようにそっぽを向いた。
 少し皆と距離があるのは、アルト自身誰かが苦しんでいる時に役にたてないと思っているからで。
 そんな自分をさらに嫌いになりそうで……
「私は、ヴァレリアさんが悪いとは思いません」
 真っ直ぐ告げたのは杏奈だった。
「私は、愚神が絶対に悪いと思う、だってヴァレリアさんはそんなことしたくなった、そう仕向けたのは愚神。その状況を作り出したのは愚神。それに」
 杏奈はいまだにお肉にかじりついているエミルを一瞥し、ヴァレリアに向き直った。
「被害者でも悪いところがあったなんて、この子の前で言いたくないから」
 その言葉にアイリスがほう、と声をあげ。
 対照的にエミルは首をひねった。
 かつてエミルは被検体だったことがある。非人道的な実験の、その実験体。
「すごく、真っ直ぐな人っすね、そう言う人がいると、すごくうれしい気持ちになるであります」
 そう涙を湛えて微笑むヴァレリアを包みこむように世良が抱き寄せた。
「お母さん」
 そう世良の胸に顔をうずめて泣きじゃくるヴァレリアは幼さそのままに、この場ではいられた。
「すごいですね、大門寺さんは昔からそう言う人だったんですか?」
 燃衣が問いかける。すると杏奈は思い出しながら昔を語った。 
「うーん、普通の女の子だったかと、まだリンカーになる前は特に変わったことは無かったのであまり言えることは無いので、お話しできることもあまりないんですよね」
 普通に学校に通って、普通の人間として生きていた。
 そう、杏奈は言葉を締めくくる。
「それは俺も同じだお」
 槇は告げる。普通に生活して普通に学校いって普通にオタクやって特に何もないと。
「私も同じね」
 そう世良がヴァレリアをよしよししながら告げる。
「読書もゲームも好きだったんだけど、外で遊ぶ事が多かったわ」
 昔を懐かしむように世良は告げる。
「外で騒いでいたからこそ、彼にも会えたの」
 そう幸福そうに語る世良、おかげで場が少し明るくなった。
「んー私は結構やんちゃでしたね。田舎だったので遊ぶところなんて山しかなくて、山を駆け回っては泥だらけになってました。髪も短かったのでよく男の子に間違えられたリして」
「暁女子はみんなやんちゃなのかもしれないわね」
 そう世良は告げて笑った。
 そんな中暗い顔をしているのが燃衣である。
「燃衣さん?」
 春香が問いかけると、燃衣は顔をあげて取り繕うように笑った。
「ああ、すみません、少し昔のことを」
 そして自分の組んだ指を見て、小さく言った。
「僕は小さい頃化物っていじめられていて。でもそれでも仲良くなってくれる幼馴染がいて、でも結局裏切られて」
 そんな燃衣の背後にいつの間にかアルトが立っていた。トイレ帰りに暗い顔をしていた奴を見かけたので。
 蹴り飛ばしてやろうと足を振り上げた。
 そして前に転がる燃衣である。
「なぁーにしけった爆薬見たよーな顔してんだよ。たいちょーさんよ! 帰ったら『あのメイド』にあっつあつの紅茶運ばせるからな!!」
 そう精いっぱいの強がりと、少しでも元気を、そうアルトは燃衣の方を叩いた。
「……あたしがしけた面してる分には何も言えねぇ、言われたって仕方ねぇ。でもな、あたし以上に他の奴がしけた面にはさせねぇ、ゼッテー許さねぇ! てめぇらはヘラヘラ呑気に過ごしてりゃあいーんだよ!」
 だって、だってアルトからすれば、燃衣はすごい人で、強い人で。
 暁の仲間だってそれぞれ何かができて、けれど自分には何もなくて。
 結局何をしたって足を引っ張るのは自分なのだと決めつけて。
「ありがとうございます。やっぱりアルトさんがいると、気持ちが明るくなりますね」
 そう燃衣が笑顔を向けると、アルトは顔を赤く染めて、そっぽを向いた。
「ふん、そんな強がりが言えるなら。もう大丈夫だな」
 そんな燃衣を見て笑う威月。
「え? どうしたんですか」
 恥ずかしげに頬をかく燃衣に威月は告げた。
「……隊長は、変わりました、ね」
 そう暖かな笑みを燃衣に向ける威月。
 そんな談笑をしているうちにやがて世はあけて、交代で休みをとっていた暁部隊は朝日と共に出発することになる。
   
エピローグ

 出発した暁探検隊。
 川を越え、方角を確認し、地図を記しながら未開の土地を探索していく。
 だがそんな中、威月が徐々に怯えるようになった。
「ここ、なんだか……」
 不吉。その言葉を口にするのもはばかられるようで身をすくめる。
 昨日は元気にあたりを飛び回っていたエミルも、
 木に生えた水晶を見つけるとつぶやいた。
「……ん、なんか、ヤな感じ……。ここは、嫌……」
 まるで焼失したはずの負の感情を揺さぶられるようで杏奈と仁菜のそばに戻る。
 その時、ふと背後から大きな物音がした。
 次いで草木をかき分けて何かが突き進んでくる音。
 本当の災厄はこれから始まるのかもしれない。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『煤原 燃衣 (aa2271@WTZERO)』
『無明 威月(aa3532@WTZERO)』
『大門寺 杏奈(aa4314@WTZERO )』
『エミル・ハイドレンジア(aa0425@WTZERO)』
『アイリス(aa0124hero001@WTZEROHERO)』
『阪須賀 槇(aa4862@WTZERO)』
『一ノ瀬 春翔 (aa3715@WTZERO)』
『藤咲 仁菜 (aa3237@WTZERO)』
『世良 杏奈 (aa3447@WTZERO)』
『楪 アルト(aa4349@WTZERO)』
『三船 春香(NPC)』
『月奏 鎖繰(NPC)』
『ヴァレリア・ヴァーミリオン(NPC)』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 いつもお世話になっております鳴海でございます。
 今回はNPCましましでお届けしております。
 そして次回は戦闘回? の様なので危機感をあおる終りにしてみました。
 夜の会話も皆さんの中が深まってたらいいなぁと妄想しております。
 それではまた近いうちにお会いしましょう、鳴海でした、ありがとうございました。
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2018年03月08日

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