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『『2年目のバレンタイン』 』
アレスディア・ヴォルフリート8879

 街がバレンタインの装いを始めた某日のこと。
「去年はトリュフを作ったんだっけな」
 ……と、アレスディア・ヴォルフリートはお菓子作りの本を手に思い起こしていた。
 去年のバレンタインに作ったトリュフは、形は本の通りとはいかなかったが、味や食感は悪くはない出来だったと思う。
 少なくてもプレゼントした相手、ディラ・ビラジスはとても喜んでくれた。
 チョコレートを使ったお菓子のページに指を挟んで、見比べていき、しばし考えていく。
「そうだな、うむ。今年はこのチョコマフィンでも作ってみるか」
 最近、お菓子作りの試作をよく行っていたため、チョコマフィンならば試作分の材料はあるはずだ。
 早速、アレスディアはエプロンを纏って、チョコマフィンを作ってみることにした。
 材料と器具を用意して、混ぜてカップに生地を入れて、チョコレートをトッピングし、熱してあったオーブンで焼く。
 甘い香りに、部屋が包まれていった。
「すぐに出来上がらないのがもどかしくもあり、楽しみでもある」
 焼きあがるまでの間にアレスディアは家事をこなし、明日の仕事の準備をしていく。
「生チョコを入れたり、粉砂糖を振るってみるのもいいかもな」
 出来上がったものを試食し、アレスディアはそう呟いた。

 バレンタイン当日――。
「まずまずの出来か」
 アレスディアは出来上がったチョコマフィンを前に、満足げに頷いた。
 そして、ディラに連絡をしたのだった。

 夕方。
 噴水広場のある大きな公園に、アレスディアはディラを呼び出していた。
「急な誘い、すまなかった」
「いや、いいけど……。仕事の用意はしてないぞ?」
「不要だ。昨年のこともあるし、もう予想はついているだろうが……」
 アレスディアは袋の中から、チョコマフィンを入れた箱を取り出した。
「上出来とは言えないだろうが、悪くはないと思う。良かったら受け取ってくれ」
「さんきゅ」
 ディラは笑みを浮かべながら、箱を受け取りアレスディアに確認をとったあと、蓋を開けた。
「今年も手作りか」
 嬉しそうなディラの顔を見て、アレスディアの心に温かな感情が生まれる。
「う、む……何というか、自分の作ったものを喜んでくれる人がいるというのは……良いものだな……」
「今年は何人の男に喜んでもらったんだ?」
 そんなディラの悪戯気な言葉に、アレスディアは不思議そうに眉間を寄せた。
「マフィンを贈った相手なら、ディラ殿だけだが?」
「他のヤツには、マフィンじゃないものをあげたのか」
 ディラが何が言いたいのか、アレスディアには良く分からなかった。
 ディラはその場で一つ、指で挟むと、自らの口に運んだ。
「うん、美味い」
 そう微笑む彼を見て、アレスディアの顔にも笑みが浮かぶ。
 同時にふと、アレスディアの脳裏に去年のことが思い浮かんだ。
「……言っておくが、お返しは気にしなくてもいいからな」
「そうはいかない」
 即座にディラがそう答えると、アレスディアは首を左右に振りつつ言う。
「それなら、また依頼にでも誘ってくれ」
「依頼、か。それなら気になってる依頼があるんだ、つきあってくれるか?」
「もちろんだ」
 依頼と言えば、だれかを護ることをイメージしてしまうアレスディアだったが。
「それじゃ、3月14日あけておいてくれ」
 楽しげに言うディラは――街で見かけたホワイトデー単発バイトに応募する気満々だった。
 イベント会場でメイド服を纏って、お菓子を販売するバイトである。賃金の他に、お菓子の詰め合わせが貰えるそうだ。
 勿論ディラは警備員として参加して、会場整理を担当するつもりだ。
 警備は小人数で十分だが、売り子の女の子は沢山要る。
(いやこれだと、ホワイトデーにも俺がプレゼントをもらうことに?)
 何か他に贈り物を用意したいところだが。
 アレスディアが物欲がないということはよく分かっており……。
(いっそ、打ち粉というか、砥粉なんかを贈った方が喜ばれるんだろうか)
 マフィンの箱を手に、どこか遠くを見ながらそんなことを考えているディラを、怪訝そうにアレスディアは眺めていた。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/外見年齢/職業】
【8879/アレスディア・ヴォルフリート/女/21/フリーランサー】

NPC
【5500/ディラ・ビラジス/男/21/剣士】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ご依頼ありがとうございました、ライターの川岸です。
バレンタインのお話がホワイトデー近くの納品になってしまい、すみません!
今年も嬉し美味しい手作りお菓子を、ありがとうございます。
そして今年も何やらディラは企てているようですが、アレスディアさんに似合うタイプの制服のお店かと思いますため、検討いただけましたら。
勿論、拒否して警備を担当していただいても構いませんが、代わりにディラが販売員をというのは無理かと思います(笑)。
イベントノベル(パーティ) -
川岸満里亜 クリエイターズルームへ
東京怪談
2018年03月13日

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