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『桜と流れ 』
氷鏡 六花aa4969)&日暮仙寿aa4519)&不知火あけびaa4519hero001)&アルヴィナ・ヴェラスネーシュカaa4969hero001
 今、南極の空は青々と晴れ渡っていた。
 その下でこっそり、ライヴス通信機のインカムに話しかけていた氷鏡 六花はおっとり笑んで。
「……ん、大丈夫、です。あの、気をつけて……」
 いきなり辺りを見回し、通信機のマイクを抱え込んでかがみこみ。
「せ、仙寿っ」
 きゃーっと通信オフ。吹き込んでしまった名前から少しでも離れたくて、インカムを乗せた両手を思いっきり前に伸ばしてぱたぱた駆け回る。
 ああもう! どうしてこう、慣れないんだろう? ああ、何度も「仙寿」と呼んでいるはずなのに、もう。
「――ペンギンっていうより犬みたいねぇ」
 どこからか忍び寄っていたらしい六花の契約英雄アルヴィナ・ヴェラスネーシュカは、契約主の起こした風圧で浮き上がる羽衣をその美しい肢体へと引き寄せつつ、あきれ顔を傾げた。
「いつの間にか“さん”がとれたのね」
 ぎくり。動きを止めた六花がギギギ、やたらとぎこちなく振り返る。
「ふたりの関係は進展してるのね」
 ぎくぎく。
「言えないようなことはしてないわよね?」
 こくこく!
 必死でうなずく六花に苦笑を投げ、アルヴィナは遠くからこちらを窺っていたペンギンたちを招き寄せた。
「だったらもっと堂々としてなさい。ペンギンにまで気をつかわせちゃだめよ」
「……ん、ごめん、なさい」
 アルヴィナとペンギンたちにあやまる六花。
 通信機を取り上げたアルヴィナは契約主から見えないよう電源を入れなおした。チャンネルは六花が合わせたままになっているはずだから、コールすれば先ほどまで彼女が話していた相手が出るはず。
「私だけど。ありがとうって、それだけ言いたくて。空回りはしてるけど、六花はすごく幸せだから――あなたが六花を幸せにしてくれたから」
 通信を切ったアルヴィナは、北の空へ目線を投げた。六花の想い人で、今は想われ人でもある日暮仙寿がいる日本へと。
 一方、六花は突撃してくるペンギンの相手をしながら思い悩んでいた。
 憧れてただけだった仙寿さ――仙寿が、六花のとなりにいてくれる。離れててもいっしょだって、言ってくれる。すごくすごく大事にしてくれる。
 でも。
 六花は子どもだから、大人の仙寿に無理ばっかりさせちゃってるんだ。待たせて、やさしくさせて、我慢させて。六花が仙寿と同じくらい大きかったらそんなことしなくていいのに……。
 心を繋いだからこそわかる。「好き」は気持ちだけで完結するものじゃないんだと。
 でも、十一歳の六花は十七歳の仙寿にそれを強いて、おままごとに付き合わせているのだ。
 心苦しくて切なくて、怖い。仙寿の気持ちが離れてしまうんじゃないかと、不安でたまらない。
「……ん。六花、大人に、ならなくちゃ」
 もし仙寿が望むなら、できうる限りの気持ちで応えよう。
 それを知らせるためにも、もっともっと大人にならなければ。せめてそう、心だけは。
「お弁当、がんばろう……」

「ありがとう、か」
 通信機をキッチンの作業台へ置き、仙寿は息をつく。
 礼を言うのは俺のほうだ。
 俺みたいな奴を信じて、大切な“雪”を預けてくれて。
 ……唇を重ねたあの日から、仙寿と六花はひとつずつ、重ねつつあった。
 歩を重ね、手を重ね、心を重ね。もちろん、小さな雪の結晶を手折るようなことはしていない。急く気持ちがないわけではなかったが、それよりも六花が大切だから。
 いや。それは本当の気持ちだが、それだけじゃない。仙寿は恐れているのだ。
 六花は仙寿のすべてを受け入れてくれる。闇底に潜めた過去も、落ち着いて見せているだけでガキのままの今も、きっとその裏にうねる衝動すらも。
 結局、無理させてるんだよな。相手が年相応の奴だったら、六花は受け入れる覚悟なんてしなくてすんだのに。
 だからこそ、自身と状況とをコントロールしなければならないのだ。
 六花の準備がきちんと整うまで自分を抑えてみせる。
「ゴールが見えないのは辛いけどな……」
 頭を振って理不尽な苛立ちを追い払い、仙寿は雪平鍋の内へ濾し落とした白餡に卵黄を加え、弱火にかけた。
 練るにつれ薄黄に色づく餡。本当はクチナシでさらに鮮やかな黄へ染め上げるのだが、あえてそれはせずに火を止め、冷ます。あとは折を見てパイシートでくるみ、焼き上げれば黄身餡パイの完成だ。
 菓子はいい。計量さえしっかりすれば、かならずうまいものができあがるのだから。しかし人の心はちがう。どれほどきっちり思い定めようと溢れ、こぼれ、不足して、予想外の結末を導き出してしまう。
「だから! 弱気になるなよ俺! 大事と大切、それだけ考えて」
「悩んでるね、仙寿様」
 仙寿の横からひょっこり顔を出したのは彼の契約英雄、不知火あけびである。
「趣味が悪いぞ」
 心が乱れていたせいでまったく気配に気づけなかったが、かろうじて大声をあげる失態は避けられた。
 あけびはそんな彼を追い越し、黄身餡とパイシートを指して。
「六花と食べるの?」
「ああ。花見をするから、俺が菓子を作って六花が弁当をな」
 思わせぶりに顎を突き出したあけびがにやにや。
「ちょうど八重桜の季節だね?」
「たまたまな」
「いつでも会えるんだから普通の桜でもよかったのにね?」
「……たまたまだ」
「もう少し待てば、めずらしい御衣黄だって咲くのにね?」
「たまたまだ、たまたま!」
 ついつい言い返してしまう仙寿。
 あけびはふと表情をやわらげ、彼に背を向けた。
「悩むのも幸せの内だよね。うちの若様を幸せにしてくれたお姫様に感謝しなくちゃ」
 仙寿に言葉を継がせる間を与えず、あけびはキッチンを出て行った。
 取り残された仙寿はひとり、重いため息をつく。
 俺は幸せだ。でも、六花を本当に幸せにできてるか? 歳上のくせにこんなにも未熟で悩んでばかりな俺が、あいつを。
 仙寿はしかめた眉根を解き、先のため息を吹き払うように、あらためて息をついた。
「歳上ぶりたくて悩む。小さいな、俺は」

 とある地方都市の片隅。
 住宅が建ち並ぶすぐ脇に幅十数メートルの水路が流れており、家と水路の間の細い道路を、仙寿と六花は並んで歩いていた。
「そもそもこの辺りは水はけが悪かったらしくて、その水抜きのために掘られたんだそうだ」
 説明する仙寿の姿はいつものモノクロームに着物の合わせではなく、ゆったりしたシルエットの青いオックスフォードシャツとカーキのカーゴパンツ、しかも足元は編み上げブーツならぬスニーカーだった。
 六花にとってすごく意外で、でも気取らない屋外デートを考えて選んでくれたんだろうことが知れて、六花は思わず笑んでしまう。
「……ん、鴨さん、泳いでます」
 その笑みを自然に見せたくて水路を指さした。
 水路には数十羽の鴨が行き交っており、向こう側には青鷺が、水中の獲物を狙って立ち尽くしていたりもして。
「それだけ魚がいるんだな。農薬も少ないのか……でも泳ぐには時期が早いぞ?」
「泳がない、です! 今日は」
 今日は。それを聞いた仙寿がほろりと笑んだ。
「泳ぐ六花は見てみたい。水路よりも……そうだな、やっぱり南極か」
 ペンギンと追いかけっこしながら泳ぐ六花は、海の上からだとどう見えるだろう?
「……ん、でも」
 たたっ。三歩分前へ駆け出して、六花が体ごと仙寿へ向きなおる。
「仙寿と、ふたりで泳ぎたい」
 六花がタメ口――きっと、今までずっと考え続けてきたはずだ。言おうと決めて、失敗して、それを繰り返して繰り返して、ようやく言い切ったのだろう。わざわざとなりから向かい合う位置まで行ったのも、決意を声に換えるため。
 それだけじゃない。今日の六花は、深緑と黒のボーダートップスにチュールスカート、デニムのパンプスというガーリーなコーディネートでゆるふわに決めていた。
 かわいらしく、それでいて大人っぽく見せたいという努力が、無粋な男子たる仙寿にも伝わってくる。
 どうにも胸が詰まって、気の利いたひと言どころかなにも言い返せなくて、仙寿はただうなずいた。
 かくて下を向く仙寿の視線。
 すると六花の小さな両手を塞ぐ大きなバスケットが見えた。仙寿が持つと言っても、これだけは自分で運ぶと言い切ってここまで来た荷物。
 唐突に思い知る。
 そうだ。六花は年下の女の子じゃない。俺の彼女なんだ。
 大事にされたいばかりじゃなく、対等な立場で仙寿を大事にしたいと思ってくれる、恋人。
 六花に無理させてるのは、空回りしてる俺だ。
 仙寿は自嘲すると同時、六花の手のバスケットを小指で引っかけ、持ち上げた。
「……ん、大丈夫、だから」
「俺が大丈夫じゃねーんだよ。彼女にこれじゃ、彼氏的にかっこつかねーし」
 どう見たってかっこつけに成功した顔じゃなかったけれど。
 仙寿の端から漏れ出した幼さと、それを隠さない仙寿の覚悟はなによりもうれしくて、凜々しく見えた。
 一方、仙寿の心中はなかなかに騒がしい。
 言った。それだけのことなのに、なんで俺はこんなめんどくさい感じでうろたえてるんだよ。
 ――いや、わかってる。俺は結局、体がでかくなっただけの餓鬼だってことだ。それはもう十二分に思い知ってるのに、俺はまだどこかで格好つけたくて、隠したがってるんだ。
 口を閉ざしておくのが辛いなら開けばいい。開いてしまうなら言えばいい。言わずに悟れと関白ぶったところで意味はないんだから。
 それに。六花がすごくうれしそうに笑っているから、この選択はまちがってなかった。
 うん、そういうことだ。

 水路の縁に置かれたベンチへ腰を下ろしたふたり。
 対岸には大きな八重桜があって、いっぱいの花が水路にまで枝垂れているのだった。
「綺麗……」
「船があれば近くまで行けるんだけどな」
 六花はかぶりを振って桜に見入る。
 仙寿はいつか、「八重の蕾」と言われたことがあるという。それは染井吉野より遅咲きである八重桜と彼の未熟とを重ねた皮肉ではあったが。
「おまえに見てほしかった。咲いた八重桜を――いつかああして咲きたい俺を」
 桜に目を向けたまま、仙寿は言った。
「俺は自分でも嫌になるくらい未熟で、それでも到達したい先があって。未だ咲けていない蕾だから焦って、急いてる」
 先へ進みたくて。
 未熟の蕾をこじ開け、咲きたくて。
「あの桜みたいに、流れへ自分の有り様を預けられる余裕が欲しい」
 語られたものは弱音。仙寿にとっては誰にも聞かせたくないはずの、本音。
 六花は指先を伸ばして仙寿の頬に触れた。
 自らの足で進んでいこうともがく男を抱きしめ、引き留めるのは女の我儘だと思うから。
 誰にも言えないはずの思いを預けてくれた仙寿に、ありったけの理解と慈しみを込めて告げる。
 導くなんてできないけど、六花は仙寿が枝垂れる流れになる。だから焦らなくていい。急かなくてもいい。だって蕾はかならず開くもの。
 八重桜は八重咲く――花弁同士が重なり合って咲く――からこその、八重桜。それが成す鮮やかな咲き様は、まさに才開いた仙寿の美しさそのものだ。
 ああ。
 ここから見ていたい。
 対岸に咲く八重の桜――仙寿を、ここからでいい。ずっと。
 って、となりにいるのに六花、なんでこんなこと思うんだろ?
「そういえばいつ俺は六花の弁当を食わせてもらえるんだ?」
 赤らんだ頬を笑ませ、仙寿がわざとらしく言葉を弾ませた。照れ隠しが下手すぎる。でも、そんなところがなんともかわいらしい。
「……ん。今、出すから」
 ぽんやり和みつつ、傍らに置いていたバスケットを膝の上に乗せて蓋を開ける。
「六花の握り飯は俵型か」
 ひょいと握り飯をつまみ上げ、口に入れる仙寿。
 ひと口で食べちゃうんだぁ。そっか。六花のおにぎり、ちっちゃかったもんね。仙寿用は大きくしないとだめだよね。
 反省する六花に「塩の加減がちょうどいい」とうなずきかけ、今度は出汁巻を食べた。
「出汁が利いてる。六花のは甘くないんだな」
「……ん」
 本当は甘いのも好きなのだが、ちょっと子どもっぽいのかなと……見栄を張ってみたのだった。
「いっぱい……食べて、ね」
「帰りは空のバスケットを持たせてやるさ」
 かろやかに言い置いて、仙寿は自分が持ってきた包みを開いた。
「六花の白を意識して白餡もいいかと思ったんだが、黄身餡にした。……キザったらしすぎて耐えられなかっただけなんだけどな」
 桜花の形を摸したパイをひと口かじれば、薄黄の黄身餡がほろり、六花の口の中で解けて溶ける。
「……ん、おいしい」
 これもと仙寿が水筒から注いでくれた緑茶がまた甘みに合う。
「紅茶も、合いそう……」
 仙寿は茶にこだわりがある。それゆえの六花の言葉だったのだが。
「そういえば紅茶も緑茶も中国茶も、使う葉は同じだ。ちがうように見えても茶は茶で、人も人だってことだと思う。……うまく言えないんだけどな」
 いきなり聞いたら首を傾げてしまいそうなセリフだったが、六花にはわかった。
 同じ人間なんだから、歳の差も生まれの別も関係ない。仙寿が言いたいのはそういうこと。もともと用意してきた言葉でないことは、仙寿の顔が真っ赤になっているから容易に知れる。
 仙寿はいろいろなことを伝えようとしてくれているのだ。不器用な例えながら懸命に。
 いつだってそうだった。
 多くを語らずとも、その背で、挙動で、視線で、いつも六花へ伝えてくれた。
 俺がここにいる。
 戦場でも日常でもずっと、示し続けていてくれる。
 気がつかない人もいるかもしれない。でも、六花にはわかるんだ。
 だって六花、ずっと仙寿――仙寿さんのこと、見てるから。
 だから。
 対岸の桜からはらり、八重の花びらが一枚散り落ちた。
 流れに乗ってしずしず流れゆく、薄紅。
 はらり。はらりはらり、はらはらはら。
 いつしか水面は花びらで塗り潰されて、六花の前に薄紅だけが残される。
「仙寿……いっしょに、泳いでくれる?」
 六花が仙寿に問うた。
「ああ」
 理由を訊き返すことなく、仙寿はうなずいた。
 六花は仙寿の手を引いて、薄紅のただ中へ跳び込んだ。
 もう終わるんだ。夢みたいだって思ってた夢が、終わる。
 だから最後に感じさせて。
 仙寿って呼んでもゆるしてもらえるこのときを。
 六花の体にまとわりついた薄紅の水が服を解いていく。今日のために買いそろえた、本当は持ってなんかいない服が。
 仙寿ももう、なにもまとってはいなかった。六花が思う“意外な仙寿らしさ”を映した様は消えて、ずっと見つめてきた仙寿が顕われる。
 六花は仙寿の手を強く引きつけて、その剥き出しの体を剥き出しの体で抱きしめた。
 この夢のことは絶対に忘れない。
 思い出と想いを胸に抱えたまま、それでも水の流れさながらのゆるやかさと確かさをもって、流れ行こう。仙寿を導いていけるように――彼のとなりはお姫様に任せて、彼の一歩先を。
「……大好き、だよ。ずっと……ずっとずっと」
 仙寿。
 六花の声が、水底へ落ちて。
 かき消えた。


 声もあげずに六花を取り巻き、その顔を心配そうにのぞきこむペンギンたち。
 雪原のただ中で眠ってしまっていたらしいことに気づき、六花はペンギンをなでてやりながら身を起こした。
「よく眠ってたわね」
 となりに座っていたアルヴィナが、前を向いたまま六花を抱き寄せる。
「いい夢見れた?」
「……ん、すごくいい夢、だった」
 目尻に浮いた涙を指先でこすり落とし、六花は笑んだ。
 その口の端に、美しく彩づいた大人の成熟を映して。


「八重桜もいいねー。侘寂の儚さって感じじゃなくて、確かな強さがあって」
 左右を八重桜で挟まれた路の真ん中、くるりとあけびがその身を巡らせた。
「花が重なって咲く八重咲きだからな。互いが支え合うからこそ強く見えるんだろう」
 トートバッグを手に下げた仙寿が薄笑みを返し、ふと後ろを行く六花とアルヴィナを見やった。
「弁当を作ってきてくれたんだってな。楽しみにしてる」
「作ったのは六花。私は食べるだけよ」
 アルヴィナがそっと六花の背を押し出すが。
 六花はその手を背で止めて。
「……ん。クリスマスに、いっぱいごちそう、してもらっちゃいました、から……」
「ほんとは私も作ってこようって思ったんだけど、さすがにお弁当お持ち帰りは怖いし。今日は六花に甘えてごちそうになるね」
 両手を合わせるあけびにかぶりを振ってみせて、六花は大きなバスケットを抱えなおした。
 今日は八重桜見物で、アルヴィナとあけびもいっしょで。でも。今日の弁当を食べてほしいのは――
「菓子だけ作ってきた。口に合うといいんだけどな」
「楽しみ、です」

「こっちこっち! お手伝いさんに教えてもらった情緒スポット!」
 手招くあけびに促されて着いてみれば、そこは水路の縁だった。
 ……もしかして、ここって?
 六花が夢で見たあの場所によく似ている。だとすれば、もしかして。
「対岸に枝垂れ桜か。確かにこれは情緒だな」
 感心する仙寿。
 六花は彼と同じ桜を見た。水路に枝垂れた八重の枝を。
「花より団子じゃないけど、お昼にしましょうか」
 アルヴィナの音頭でベンチに腰かけ、六花がバスケットを開けば、現われたものは大きめにむすんだ俵型の握り飯と出汁巻玉子。
「塩加減がちょうどいい。出汁巻も出汁が利いててうまいな」
 そして仙寿がトートバッグから取り出した包みの中身は。
「桜をイメージした和風パイだ。内は桜関係ないけどな。六花の白を意識して白餡もいいかと思ったんだが、黄身餡にした。……白合わせなんてキザすぎだろうって、あけびがうるさくてな」
 六花は笑みをうなずかせ、パイをかじった。
 ほろりと解ける黄身餡の甘みが胸のほろ苦さをやさしく癒やす。
 対岸の八重桜を見やれば満開の八重桜が水の流れに薄紅を添えていて。
「……ずっと、見てたい、です」
 六花は祈りを込めてつぶやいた。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【氷鏡 六花(aa4969) / 女性 / 10歳 / 絶対零度の氷雪華】
【日暮仙寿(aa4519) / 男性 / 17歳 / 八重桜】
【不知火あけび(aa4519hero001) / 女性 / 18歳 / 染井吉野】
【アルヴィナ・ヴェラスネーシュカ(aa4969hero001) / 女性 / 18歳 / シベリアの女神】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 夢尽きせず。強く儚き祈りあるかぎり。
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2018年03月30日

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