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『貫くべき信念 』
君島 耿太郎aa4682)&アークトゥルスaa4682hero001

●稲妻の最期
 一人の少年と雷公が切り結ぶ。少年は地に倒れ伏し、雷公トール(ゲストNPC)は立ち尽くす。全身に無数の傷を刻み込まれ、愛用の刃を砕かれた彼は天を仰いで何事かを呟き、そのまま果てる。
『……』
 アークトゥルス(aa4682hero001)は剣を胸の前に掲げ、彼に祈りを捧げる。その所業そのものは赦せるものではなかったが、彼は彼なりの信念に拠って生き抜いたのだ。同じく剣を取って生きる者として、敬意を払わざるを得なかった。
 雷鳴にも似た音が空を引き裂く。流星のように光の尾を曳いて、ギアナ支部の開発した弩砲の一射が飛んでいく。雷公の身体は炎へと包まれ、光の粒となって宙へ散っていった。

 やがて、共に戦場で戦っていた者達の快哉が聞こえ始める。トール以下、全ての愚神従魔を討ち果たして砦を制圧したのだ。君島 耿太郎(aa4682)とアークトゥルスは共鳴を解き、二人並んで戦場を見渡す。戦いの興奮冷めやらぬ中、同じようにトールと戦い、その死を悼む者、あるいは純粋に戦いの勝利を喜ぶ者。その姿は様々だ。
「終わったんすね」
 耿太郎はぽつりと呟く。戦いの行方を、ただひたすらに彼は黙って見守っていた。ようやく口を開く事が出来たのは、全てが終わってしまってからだった。
『……そうだな』
 アークトゥルスは耿太郎の肩を叩く。二人は黙り込み、じっと空を見上げていた。

●少年の悩み
 アマゾンでの劇的な大勝利の後、いくつかの戦後処理を手伝い二人はようやく自宅へと戻って来た。豪奢でも粗末でもない、どこにでもあるような1LDKアパート。アークトゥルスは先に足を踏み入れると、居間の照明を灯す。そして、手に提げていたレジ袋をテーブルの上にどさりと置いた。
 既に外は真っ暗、アークはぴしゃりとカーテンを閉める。そのままレジ袋からカップ麺を二つ取り出すと、台所に立ってお湯を沸かし始める。流石に今から料理する気にはなれなかった。
 一方、耿太郎は口を閉ざし、暗い顔をしたままだった。棚から小皿をいくつか取り出し、惣菜やサラダのパックを開いて取り分け始める。一向に笑顔を見せない。アークはそんな彼を遠目に見遣ると、鳴き始めたやかんを取ってお湯をカップに注ぐ。そのまま彼は盆を手に取ってテーブルへ向かい、耿太郎と向かい合うように腰を下ろした。
 蓋の隙間から、湯気がふわりと漂う。二人は黙り込む。しんとした沈黙が、部屋の中に漂った。耿太郎は膝に手を載せたまま、俯きがちに何度もアークの顔を窺う。アークはただ首を傾げ、何も言わずに彼の言葉を待っていた。
「俺の……」
 やがて、耿太郎は思い立ったように口を開く。何度も何度もつっかえながら、彼は言葉を繋いだ。
「俺の出番、マジで無かったっす……」
『出番、か』
 アークは顎を撫でる。耿太郎はようやく顔を上げた。
「あの戦いで、皆は自分なりの答えを見つけて、トールにぶつけていたっすよね」
 耿太郎の脳裏に戦いの光景が蘇る。己の身が傷つくのも構わず、皆が渾身の力をぶつけ合う戦場。血生臭い戦というよりは、儀式のような風情があった。その儀式の中で、トールを追い続けた仲間は何かを見つけていた。
「皆の答えを聞いて、あいつは……何だか嬉しそうだったっす。その最期を見届けた皆の顔もどこか晴れやかで……そう、憑き物が落ちたみたいな感じだったんすよ」
 耿太郎はとうとうと話す。
「でも、俺は……よくわからないんす。これから俺はどうすればいいとか、自分はこう生きるんだっていうのが無くて……そんな俺が、希望って言われても、ピンと来なくて」
 アークは耿太郎の表情をじっと見つめる。彼はすっかり落胆してしまったように見える。肩を落として、言葉にも覇気が感じられない。
「だから、トールに言うべき言葉が何にも見つからなくて」
『言葉が無かった、か』
 前髪が被さり、影の差したその顔。それは、アークがかつて彼と出会った時の彼の顔に少しだけ似ていた。親を失ってから亡羊としてこの世を漂い、そのまま冷たい現実に彼が呑み込まれかけた時、アークと耿太郎は出会った。
 今となっては、そうした記憶もろくに残っていない。目の前の現実に向き合い続けるのが精一杯で、何かを深掘りして考える機会は中々無かった。
「俺、トールと戦う時も、それ以外の時も、ずっと王さんに戦いの事は任せっきりだったじゃないっすか」
 耿太郎はこれまでの戦いを振り返る。自分は戦いを知らないからと、アークに全てを委ねて彼はそれを見守るに徹してきた。そうでなければ潜り抜けられなかったであろう戦いは幾つもあるが、それでも今は何やら居心地が悪い。
「そのせいだと思うんすけど……すごく大切なものを渡されたのに、俺だけ台無しにしてるような気がして……何だかすごくもやもやしてるんす」
『もやもやしている、か』
 アークは眉を開いた。耿太郎は今まで戦いを知らなかった。そんな彼が、死線を潜り抜けてきた者達と同等の覚悟を抱けというのも土台無茶な話だ。記憶と共に、幼少の頃から積み重ねてきた物の大半を失ってしまった今、自分の事に集中してもらって構わないと思っていた。
 だが、耿太郎はそんな境遇が物足りないと言う。それは、紛れもなく彼が成長した証だった。
『それでいいんだ。今大事なのは答えじゃない』
 彼はゆったりと耿太郎に語り掛けた。人生の先達として、彼を諭すように。彼なりに答えを導き出そうとしているなら、それを正しく導いてやるのも家族としての務めだ。
『最も大事なのは、理想を見失わない事、お前が何を感じて、どう生きたいかをきちんと考える事だ。ここで焦ってはいけない。焦って手を伸ばした答えは、間違いだったりする。勉強でもそうだろう』
「……そうっすね。数学なんかは特にそうっす」
 耿太郎はこくりと頷く。
『ああ。だから、ゆっくりで良い。どれだけ時間がかかったとしても、自分でしっかり答えを見つけるのが大事なんだ』
 アークの言葉を聞き、耿太郎は肩に圧し掛かったモノがほんの少しだけ軽くなった気がした。背負うべきものが何なのか、少しだけ分かった気がした。ようやく彼も眉を開いた。
「善性愚神が出てきて、今までの愚神は単純な悪、って構図が崩れようとしているっす」
『そうだな。既に一度共闘が行われたとも聞く』
「H.O.P.E.の人達の様子を見ていても、何だか色々っすよね。愚神とも分かり合えるかもしれないって、素直に喜ぶ人や、こんなのは愚神の嘘に違いないっていう人……そもそも、端から愚神との共存なんて有り得ない、なんて人もいるっす」
『愚神という存在は、この世界の人類の存立にとってそれだけ根深い問題だという事だな。この世界で言うなら、ヨーロッパにおけるモンゴルのようなものなのかもしれない』
 13世紀、かつてユーラシア大陸の大半を制覇し、その勢いでヨーロッパへと押し寄せたモンゴル騎兵の大軍。ヨーロッパは文字通り“屍の山”を築きながらそれをどうにか防ぎ止めたという。今の状況は、どこかそれに似ていた。
「俺、本当に善い愚神がいるのかとか、まだよくわかってないっすけど……それでも、自分で考えて、自分なりに今の事についての答えを見つけていきたいと思うっす」
 耿太郎は真っ直ぐにアークを見つめた。
「王さんに、任せっきりにしないで」
『ああ。……それがいい』
 アークは深く頷いた。この世界で得た家族。その成長を見るのは、何やら胸がくすぐられるような、感慨深い思いがした。
 彼は微笑むと、割り箸へと手を伸ばす。ぱきりと、景気のいい音が部屋に響いた。
『すっかり話し込んでしまったな。そろそろ食べるとしよう』
「はい!」
 耿太郎はようやくいつもの笑みを取り戻した。彼も割り箸を割ると、カップ麺の蓋を開いて箸を中へ差し込む。現れたのは、すっかり柔らかくなってしまった麺の束。
「えーと、のびてるっすね……」
『……そうだな』
 二人は苦笑する。すっかり夢中になって話し込んでいたようだ。しかし今日の夕飯はこれしかない。諦めて二人はそれを啜る。
 伸びたカップ麺でも、今日はどこか美味しく感じられた。

●リオ・ベルデへ
 数日後、ラグナロクの潜伏地を漁っていたエージェント達から、トールが遺したと思われる手記やタバコが見つかったとの一報が入った。その内容を確かめる為、彼らはすぐさまアマゾンへと飛んだ。
 そして彼らは知ることになった。トールがかつてリオ・ベルデでの内戦に参加していた事、彼らは一度はH.O.P.E.のギアナ支部を目指そうともしていた事を。しかし、運命の悪戯に翻弄されて、彼は耿太郎達と対峙する事になったのだという事を。
 そんな彼は、英雄を介して一つの挑戦状を残した。リオ・ベルデに蔓延る陰謀を調べろ。彼はエージェント達にそんな依頼を残していたのだ。

「早速、って感じがするっすね」
 リオ・ベルデと唯一アクセスが繋がっているというコロンビアへと向かう道中、耿太郎は表情を引き締めて呟く。アークも頷くと、タブレットに落とし込んだ手記に目を落とす。
『ああ。……あの男の期待には応えておきたいものだな』



 二人の戦いは、今まさに熾烈を極めようとしていた。

 To be continued…



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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君島 耿太郎(aa4682)
アークトゥルス(aa4682hero001)
トール(ゲストNPC)

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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影絵 企我です。この度は発注いただきありがとうございました。

世間話も交えて長く語らい合うよりは、話すべき要点を押さえてストンと明確に話す……といった雰囲気の方がお二人には合うかなと思いましたので、付け足す要素は控えめにさせて頂きました。若干ボリューム不足になってしまったかもしれません……申し訳ありません。
時系列的には最終決戦後、リオ・ベルデ編開始前という形にしています。

何か問題がありましたらリテイクをお願いします。
ではまた、御縁がありましたら……

カゲエキガ

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2018年04月02日

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