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『変身少女と脱皮少女 』
焔・楓ja7214)&猫野・宮子ja0024


「だからぁ、あの難民キャンプ動画がそもそもの元凶なわけ。社会人がアレやっちゃいかんでしょ、監督のクセにアニメ作りのルールってもの全然わかってない。降板させられて当然だっつーの。しかもそれ逆恨みでツイートしてみたりとか、もう何? 社会人ってゆうか大人じゃないよね! 老けた子供が調子に乗っちゃったようなもの」
 得意げに語っていた男の顔面に、不良の拳がめり込んだ。
「キモオタが語ってんじゃねえぞ! 監督をバカにしやがって」
「さては工作員だなオメー」
「腐れ公式の回しモンが! クソ原作者のクソ信者があ! もう生かしちゃおけねえ」
 筋骨たくましい身体で、美少女キャラクター柄の服を恥ずかしげもなく着こなした不良3名。
 若者か中年か判然としない小太りの男が1人、彼らによって袋叩きにされ、蹴り転がされ、まるでサンドバッグかサッカーボールのように扱われている様が、焔楓の視界に入ってしまった。
「こらー! 乱暴はやめるのだ!」
 とある公園の、人通りの少ない一角。
 アルバイトに行く途中であるが、こんな場面を見て見ぬふりしたままでは仕事にも身が入らない。
 楓は助走をつけ、跳躍し、小さな全身にギュルルルルッと捻りを加えていった。
 まるでドリルのようなスクリュー式ドロップキックが、不良の1人を吹っ飛ばしていた。
「な……何だ、てめえ!」
 他2名の不良が、楓を威嚇する。
 ぼろ雑巾のような様を晒しながら泣きじゃくる、小太りの男の眼前で、楓はしゅたっと着地を決めた。そして言い放つ。
「暴力は許さないのだ! どうしても暴力を振るいたいなら、あたしを殴るといいのだ。もちろん殴り返すのだ!」
「このガキ、てめーも工作員か! 火消し業者かあああ!」
 蹴り飛ばされた不良が、鼻血にまみれながら起き上がり、吠える。
「クリエイターを使い捨てるクソ会社の回しモンはあ、女子供でも容赦はしねえええ!」
「ひっぐ……うえぇぇ……な、何だよ、結局は暴力かよおぉ……」
 小太りの男が、泣き声を発する。
「二期が無くなったのだって結局、お前らが騒ぎ過ぎるからじゃないかよおおお……!」
「騒ぐに決まってんだろボケが! 理不尽だと思ったらなあ、すぐ声上げなきゃダメだって事わかんねーのかあああああッ!」
「じ、じっと耐え忍ぶ日本人の美徳は失われた……」
「いいからっ、余計なこと言ってないでさっさと逃げるのだ」
 小太りの男に囁きかけながら、楓は、正面から迫り来る不良の巨体を駆け上った。
 鳩尾、喉元、顔面に、蹴りを叩き込んでいた。
 不良の大きな身体が後方によろめき、少女の小さな身体が軽やかな宙返りを披露して着地する。
 着地したところへ、他2人の不良が迫り来る。
「やるじゃねーかぁあ小娘。だがよ、これまで幾多のキモオタどもをブチのめしてきた俺らのコンビネーションを」
「おうよ、ナメるんじゃねーぜえええ!」
 襲い来る4つの剛腕を、楓はかいくぐった。かわすのが精一杯だった。
「や、やっぱり3人が相手だとキツいのだ……」
「のだのだ言ってんじゃねえ! その喋り方していいのはなぁー」
「だっ駄目だよ、名前出しちゃったらアウトだよぉ」
 意味不明な事を言いながら、1人の少女が、いつの間にかそこに立っていた。
 楓よりも幾つか年上の、中学生と思われる女の子。
「あ、あと性犯罪は駄目なんだよ。しかも、そんな小さな女の子に」
「どーこーがー性犯罪だゴルァ、こちとら1人ぶちのめされてんのが見えねーのかぁあああ!」
「ぶちのめされてねーぞぉゴルァ。チビガキの蹴りなんざぁ効かねえぞオラ!」
 よろめいていた不良が踏みとどまり、手鼻をかんで鼻血を噴き捨てる。
「そこの中坊女、テメーもクソ会社の工作員かあ! ぶっ殺す!」
「ひーん、ここは変身するしかないよう」
さらに謎めいた事を言いながら、その少女は近くの木陰に駆け込み、何やらごそごそとやっている。
いいから警察を呼んで欲しい、と楓は思わなくもなかった。
「よいしょ、よいしょ」
変身と言うか着替えを終えた少女が、木をよじ登って公衆便所の屋根の上に飛び移り、口上を述べた。
「そこまでにゃ! 小さな女の子を大人の男が寄ってたかって襲うなんて許せないにゃ。そんな人たちは、この魔法少女まじかる♪みゃーこが猫に代わってお仕置きにゃ!」
何の変哲もない女子中学生が、まさしく魔法少女に変身していた。ひらひらとしたコスチュームも、猫耳と尻尾も、似合ってはいる。
 不良の1人が、ぽつりと言った。
「……何か、痛々しいのが出て来やがったな」
「アニオタDQNに言われたくないにゃー!」
 不良の顔面に、魔法少女の飛び蹴りが炸裂していた。


「このクソメスガキがぁ、安直なコスプレしやがってよおお!」
 不良の1人が激昂し、猛然と殴りかかって来る。
「けもの系コスプレやるには資格が要るんだよおお! テメーなんぞが考えなしに猫耳付けたってなあ、風俗にしか見えねーっつうぅーの!」
「みゃーこのマジカル正装に文句付ける人はお仕置きにゃ! 必殺、シャイニング魔法少女!」
 猫野宮子は跳躍し、膝蹴りか延髄斬りかレッグラリアートか判然としない蹴りを、不良の横面に叩き込んだ。
 吹っ飛んで行く不良を見送りながら、少女が拍手をしている。
「魔法少女さん本当にいたのだ! おおおおお、かっこいいのだー!」
「ありがとにゃ。さっ、君は早く逃げるのにゃ」
 不良たちに襲われていた、とおぼしき小さな少女が、しかし逃げようともせず信じがたい行動に出た。
「なら、あたしも! 脱衣戦闘部として負けていられないのだ♪」
「脱衣戦闘部……? ちょ、何で脱いでるにゃ!? 駄目、下手するとみゃーこが通報されるにゃー!」
 宮子の悲鳴を無視しながら、脱衣戦闘部員の少女が縦横無尽に躍動し、屈強な不良たちに超高速の連続攻撃を打ち込んでゆく。
「ぐうっ、強えぞ! この火消し業者ども!」
「まっ負けらんねえ! こんな奴らが使うパターン23なんぞに負けるワケにゃあいかねええ!」
「俺たちも野性解放でいくぜぇー!」
 不良3人の巨体が、さらに猛々しく膨れ上がったように見えた。
 凶獣そのものの眼光を輝かせながら、不良たちが突進して来る。
 脱衣戦闘部の少女が、さらなる暴挙に出た。
「ふふふ、こっちも全力全開で行くのだ! 焔楓のファイナルフォーム、しかとその目に焼き付けるのだ。きゃーす、おふ!」
「キャストオフは駄目なのにゃー!」
 荒ぶる焔楓に追いすがり、隠すべき部分を隠す努力をしながら、宮子も暴れた。
 少女2人による連続攻撃の嵐が、不良3人を容赦なく叩きのめし、地に這わせる。
 3人とも、もはや立ち上がってはこなかった。
「助かったのだ、まじかる♪みゃーこさん」
 楓が、ぺこりと頭を下げる。
「今度、みゃーこさんの魔法を教えて欲しいのだ! 我々脱衣戦闘部にとっても、得るところ大なのだ」
「えっと、あの、脱衣戦闘部って……いやそれよりも服を」
「いっけない! もうこんな時間、遅刻しちゃうのだー!」
「服を……」
「みゃーこさん、またねー! なのだ」
 別れの言葉を残し、少女が駆け去って行く。
「服……」
 呆然と見送りながら宮子は、倒れた不良たちを紐で縛り上げた。
「脱衣戦闘部……恐ろしい部活にゃのだよ」
「ぐうっ……こ、こんな連中に負けるとはあぁ……」
 力尽き、縛り上げられるままの不良たちが、無念そうに呻く。
「こんな、頭おかしい女どもに負」
 宮子は拳を叩き込んで不良を黙らせた後、同じく呆然としている野次馬たちに向かってポーズを決めた。
「魔法少女まじかる♪みゃーこ、次の大活躍に御期待にゃ! ……はぁ、駄目にゃん。今回はインパクトで負けたにゃ。でもだからって、みゃーこも対抗するために脱いだりはしにゃーよ。残念?」



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登場人物一覧
【ja7214/焔・楓/女/10歳/ルインズブレイド】
【ja0024/猫野・宮子/女/14歳/鬼道忍軍】
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小湊拓也 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2018年04月16日

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