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『Rの独白 』
R.A.Yaa4136hero002
『最期は』
 眉と眉の真ん中にめり込んだ弾のケツ、そいつの真ん中に切っ先が突き立って。
『ボロ雑巾みてーに捨ててやる』
 頭ん中に硬ぇ刃が入ってきた。
『あ、あ――』
 なんか言おうと思ったけど、言えねーよな。喉も肺もボロボロこぼれ落ちてくんだから。あげく、ボロボロボロボロ、本体まで落っこちて。で、必死でしがみついたんだ、さっきまで本体の中身だったもんに。
 いや、結局どっかわかんねー穴ん中、いっしょに落ちてくしかなかったわけなんだけどな。

 いつまでとかどこまでとか、よくわかんねー。
 とにかく落ちて、落ちて、落ちた。
 ま、その間にいろいろ考えたさ。悪魔を殺した連中のこと、悪魔をこんな俺にしてくれやがった“オリジナル”のこと。……って、二個しかねーじゃん? いや、“俺ら”はもっといろんなこと考えてたんだけど、悪魔がさ、恨みがましくねちねちさー。
 ――“俺ら”が悪魔じゃねーのかって?
 後で教えてやんよ。何回もおんなじこと言うのめんどくせーじゃん。

 と、話がズレちまった。
 落ちてる間に悪魔はあれこれがんばったわけよ。引っつかんだまま旅の道連れにしてきた機械部品組み立てて、機械の端っこに残ってたナノマシン増やしながら盛りつけてさ――あ、ここ伏線なんで憶えとけよ。テストに出んぞー。
 ってことで、なんとか再生した悪魔はバーニア噴かして飛んだ。やっとこさ落っこち生活にサヨウナラってわけ。
 たださ、どこ行くんだよって思ったら魔界帰りやがんのなー。ミュージシャンになるとか言ってた奴がやっぱ無理ーって田舎に逃げ帰んのといっしょじゃんな。マジクソダセー。
 たださ、再生できなかったもんがいっこだけあんだ。そいつがまた致命的ってーか……こいつがなきゃどうにもなんねーアウルリアクターがね。
 しょーがねーんだって! だってあれ、ブラックボックスだぜ!? ナノマシンがおかしくなっちまったとき、リアクターっていう心臓喰われたら“オリジナル”が死んじまうから。ナノマシンの逆流厳禁ってことで、まあ悪魔にも“俺ら”にもよくわかんねーシロモンだったんだ。

 こいつを踏まえて結果ハッピョー。ナノマシンでこさえた燃料電池頼りで魔界に帰った悪魔はさ、チンケな小悪魔に後ろからグサーでお亡くなりー。リアクターがあったら挽回できたんだけどな。再生も増幅も制限ありまくりで、間に合わなくってよ。
 正直笑えねーよな。あんなに強かった悪魔が、こんなあっさり死んじまうんだぜ? 盛者必衰って、“俺ら”ぁ武士じゃねーけど――サムライとか、なんかムカつく。
 また話がズレちまったけど、ようするに“俺ら”は“オリジナル”だけじゃなくて悪魔って宿主も失くしちまった。マジお悔やみ申し上げてやんぜガチで!
 命令がなきゃ、“俺ら”っていう“俺ら”はどうにもなんねー。でもどうにかしねーと“俺ら”も死んじまう。
 だから“俺ら”は必死で思い出した。悪魔が残してった最後の命令を。
『憎き者を滅せよ』
 わかった。滅してやんよ。で、その憎き者ってやつなんだけど、誰だっけ? “俺ら”って代替わりはえーし、シノビみてーに口伝とかもねーからすぐ忘れちまうんだ。
『悪魔を――俺のクソ父ぶっ殺してクソ母ひでー目に合わしやがった悪魔、ぶっ殺せ!』
 これ、悪魔の命令じゃねーよな? “俺ら”に焼きついてる、本能っていうか原初の記憶?
 ともあれ“俺ら”は一致団結、悪魔の死体ん中で行動開始した。
 止まっちまった心臓、リズム合わせて拡大、収縮、拡大、収縮。機械用の血に酸素とかぶっ込んで活性化して“俺ら”増やす。
 増えた“俺ら”が古参からやるべきこと教わって交代、壊れたとこせっせと修復してくんだけど、それだけじゃねーぜ? 悪魔が“オリジナル”から盗んだ形は生きもんじゃねー“俺ら”にも都合いい形だったから、そいつを再現しながらだ。
 さて、アレを再現するにゃーデザインとか監修とかきっちりしねーとなんねー。心臓から引っぱってきた栄養使って“俺ら”は脳みそになった。合議とか時間かかってめんどくせーから、いっこにまとまって“俺”になれー。
「俺は」
 ギヂギギ。あちこちから油が足りてねー音がする。生きてんのもめんどくせーけど、生きてねーのもめんどくせーな。でもしょーがねー。悪魔が選んだ「強い」って形まねっこしてるだけだし。って、悪魔も“オリジナル”のまねしやがったんだっけ。あっちは好きでこうなってたわけじゃねーけどさ。それに。
 俺が“オリジナル”ん中で繋いでた生身、俺にはねーから。ってこた、俺は――
「俺だ」
 見えねーくれーちっちゃい口そろえて言ってやった。
 弱っちい生身なんざカケラもねー。
 硬くて強ぇメタルで覆ったマシンの体。
 悪魔に義理があるから、黒頭巾つきのコートも装備しとく。そんで完成。
 俺が俺になるために造った、俺。

 小悪魔ぶち殺した俺はすぐ脳内会議の開催だ。
 駆動効率がどうだ、武器選択がああだ、戦術パターンがそうだ……各担当の俺同士で報連相しながら改善策を弾き出す。
「経験値増やして、いっしょに火力増やさねーとだな」
 ありきたりな結論にたどりつくんだけどね。
 でも、そういうこった。“俺ら”は自壊命令出るまで存在維持ってのが本能だし、前に言ったとおり、命令に従ってナンボだからさ。
「もう俺に命令出す“マスター”はいねーけど、最後の命令だけは遂行するよ。クソ悪魔のヤローども、全員まとめて37564だぜ――!」

 そこからはもう、トライアンドエラーってやつだった。
 悪魔殺しながら勉強して、次の悪魔で成果試す。繰り返してるうちに狙われるようになって、返り討ちにしながらまた勉強。そのうち最大効率とかわかってきて、一対多にも手こずらなくなってった。……慣れてくんだよなー。自分でもわかるわー。
 で、気づいたら殺す悪魔いなくなっててさ。あー、これで“マスター”の命令、終わったわーとか思ってたら。
 チョー強ぇ悪魔――なんか人間界から駆けつけてきたっぽい――がすげー顔して襲ってきやがってさ、もりもり俺のことしばき倒して「乾・坎・艮・震・巽・離・坤・兌」とか言うんだ。
 なんだよオマジナイかよって思ったらマジおまじないってか呪文で、俺は哀れ封印されちまったわけ。
 後でわかったことなんだけど、八卦炉ってんだってね。神様がクスリ作ったり猿捕まえたりするやつ。で、炉だから熱っちいんだ。俺の金属ボディもうっかり溶けちまいそうになったけど、風吹いてくるとこに逃げ込んでなんとかやり過ごしてさ。強ぇ悪魔のまぬけな手下が「もう溶けたかなー?」って蓋開けたとこで逃げ出してやった。
 もちろん追っかけられたさ。しっかし仙術っての? 空間ぐにゃぐにゃ歪むのなー。そんで空間の裂け目に俺は落っこちた。
 悪魔もいねーからぼっちでずーっと落ちてって、偶然引っかかった世界の隅っこで行き倒れだよ。ほんと、リアクターがあったらどうにでもなったんだけどね。ないからどうにもなんなくて。
 そんなとき、空とおんなじ色の髪の毛のてっぺんからあほ毛伸ばしたちんまい子が、俺の前にかがみこんだんだ。
「食い倒れでありますか?」
「なんも食ってねーから倒れてんだよ」
「なにか食べたら起きるでありますか?」
 めんどくせーから起きねー、って言おうと思ったんだけど、口が勝手に答えてた。
「それが“命令”ならな」
 本能だからしかたねー。
 で。俺はよくわかんねー世界でめんどくせーけど英雄のR.A.Yっての、やり始めたわけさ。


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【R.A.Y(aa4136hero002) / 女性 / 18歳 / 悪の暗黒頭巾】
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2018年04月18日

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