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『再会 』
天谷悠里ja0115)&シルヴィア・エインズワースja4157

「これが届いておりました」

 白の姫がそう言って天谷悠里(ja0115)に差し出したのは一通の手紙だった。差出人は黒の女王。
 文面には自らの姫のお披露目に夜会を開くので白の姫と共に出席して欲しい。と書かれていた。

「どう致しますか?」

「参加しない理由はないわ」

 文面を見るに黒の少女、いや、黒の女王が言っている姫というのが、自分の姫であったシルヴィア・エインズワース(ja4157)の事だろうと悠里は考える。新しい紅の姫との時間の中にあっても彼女のことを忘れていたわけではないが、彼女が自分のものではなくなったことに何か思うところもない。

 自分が女王として目の前にいる幼い姫に導かれたように、彼女が姫として導かれただろうシルヴィアが、新しい女王に愛と忠誠を誓うようになっていることに違和感は感じないし、元とはいえ自分の姫がどこまで新しい女王に染まったのか純粋に興味もある。そして、かつての女王である自分が目の前に現れた時、どんな反応を示し、どう振る舞うのか。

「楽しみだわ」

 悠里の口元に自然と笑みがこぼれた。


「夜会……ですか?」

 黒の女王にそう告げられシルヴィアは訊ね返した。

「ええ。貴女を私の姫として紹介しようと思って。真紅の女王を招いて、ね」

「女王の姫として……。ありがとうございます」

 言葉を反芻する姫の表情には嬉しさが溢れていた。
 かつての女王にどうこうと言うよりも黒の女王の姫として紹介されることが純粋に嬉しいと言った表情だ。
 実際、今のシルヴィアにとって真紅の女王は数多の貴婦人の一人であり、特に何も思うところはなかった。今の彼女にとっては黒の女王こそが至高であり全て。それ程までに想っている女王が自分のものとして紹介してくれる。その純粋な事実がシルヴィアに喜びをもたらしていた。


 真紅の女王と紅の姫、黒の姫と黒の女王。
 月明かりと蝋燭の灯が四人を照らす。

「お初にお目にかかります」

 黒の女王の紹介に応えるようにシルヴィアはモノトーンのドレスの裾を軽くつまみ頭を下げる。
 その気品溢れる優雅な仕草を引き立てるように彼女の白銀の髪が、ダークトーンの装飾品と共に揺れる。

「私は真紅の女王。私の姫も紹介していいかしら」

 こめかみのあたりに一房ある赤い髪を耳にかけ、悠里もまた自らが寵愛する姫を紹介する。

「以前のように【悠里様】でも【女王】でも好きに呼んでいいのよ?シルヴィア」

「お戯れはお止め下さい、紅の君。私のことはどうか黒の姫と」

 多少でも心は惑うのかとした提案に返ってきたのは崩れない社交辞令の微笑みと予想外の言葉。

 敬意を払いながらではあるがはっきりとした拒絶の言葉に、心身ともに黒の女王に染められきっているのだなと悠里は感じた。

【紅の君】

 敬愛の意をこめた呼び方ではあるし、親愛を込めた呼び方にも聞こえるが、黒の姫の声からは社交辞令的なものしか感じない。もし黒の女王が他の誰かに紹介したとしても、躊躇いなく○○の君と相手のことを呼ぶだろう。

 その反応すら悠里には面白い。

「これは失礼したわ。黒の姫は忠義に厚いのね。まあ、それは私の姫も変わらないのだけれど」

 悠然とした態度を崩さないまま忍び笑いを漏らすと、黒の姫を見据えたままそう言って紅の姫を抱き寄せその唇に口づけを落とす。かつて、花嫁にしたように。
 それでもシルヴィアの表情は少しも崩れない。

「ええ。私の可愛い姫だもの」

 そう微笑みながら黒の女王も自らの姫にキスをする。

 その瞬間、社交辞令的に微笑みを浮かべていた姫が、喜びと悦びをないまぜにした表情を浮かべもっととねだる。
 女王からの口づけに没頭するシルヴィアの姿に黒の女王への絶対の愛を悠里は感じた。

『素晴らしいわ』

 心からそう思う。

 目の前の黒の姫に以前の面影はなく、そこにいるのは深く契りを交わし染め上げる前の可憐な姫。
 彼女の愛と忠誠がそのまま自分に捧げられたらと考えるだけで悠里は昂ってしまう。
 それと同時に、かつての主人である自分には目もくれず今の主人へ全てを捧げる彼女の姿を見ているだけで、自らの姫がありながら他者の姫に惹かれてしまう自分という背徳感が甘美な喜びとなって体を駆けていく。


 ふと女王同士の視線がかち合う。

「……シルヴィア。女王のお相手をして差し上げなさい」

 黒の女王はふふっと口元に悠然と笑みを浮かべ、そして、そう口を開いた。
 胸中を見透かされたのかと一瞬目を見開いた悠里だったが、すぐに口元に笑みを浮かべる。黒の女王の思惑はどうあれ自分の中で湧き出る欲望を抑える必要もない。

「それは嬉しいわ。もし黒の姫がいいのなら是非。お願い出来るかしら」

「かしこまりました。では……外の薔薇園へ参りましょう」

 二人の女王の言葉、己の主の言葉だけでもそうしただろうが、シルヴィアは一礼すると、少し辺りを見渡してから、部屋から繋がっている薔薇園の方へ視線を投げた。

「えぇ。素敵ね」

 夜を吸い込み色を深くした紅と月明かりを浴びて冴える白のが咲き誇る園へと二人は足を踏み入れた。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 ja0115 / 天谷 悠里 / 女性 / 18歳 / 夜紅の薔薇 】

【 ja4157 / シルヴィア・エインズワース / 女性 / 23歳 / 月明の薔薇 】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 こんにちは。
 シルヴィア様はお久しぶりです。
 今回もご依頼頂き本当にありがとうございます。

 仕上げが終わって再会したお二人ですが、シルヴィア様については仕上げ前とだいぶ心境に変化があったようでしたので違いが出るよう心がけて執筆させて頂きました。表現できていれば幸いです。

 今回もお気に召されましたら幸いですが、もしお気に召さない部分がありましたら何なりとお申し付けください。

 今回はご縁を頂き本当にありがとうございました。
 またお会いできる事を心からお待ちしております。
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龍川 那月 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2018年04月24日

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