▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『『契りのカタチ』 』
アレスディア・ヴォルフリート8879

 仕事を終えて自室に戻り、1人食事を終えたあと。
 アレスディア・ヴォルフリートは、カップに茶を入れてリビングのソファーに腰かけた。
 明日の仕事は昼からということもあり、1人過ごす夜の時間が長く在った。
 普段ならば、買っておいた本を読んだり、何かと作る機会が増えたお菓子の試作でもして過ごすところなのだが。
 最近、1人でいるとどうしても考えてしまうことがあって――彼女はカップを手にしたまま今日も物思いにふけていた。

 先日。ディラ・ビラジスと手合せをした時のこと。
 アレスディアは彼に、約束してほしいことがあると、告げた。
 彼が自分の意思で、アレスディアの側にいたくていると言っていたから。
 それが、とても嬉しかったから。
『私を置いて、一人で逝くな』
 と、彼女は彼に素直な気持ちを語った。
 自分も、自分の身がどうなろうと構わないとは、なるべく言わないようにすると、約束をすると。
 ディラは、そんな彼女の想いに対して、『俺もそういうことは言わないようにする』それが対等な約束ではないかと答えた――。
「私は矛であり、盾である。矛とは、盾とは常に誰よりも前にいるべき存在。故に、断言できなかった」
 断言すれば、嘘になるから。
 手の中の、茶を眺めながら、アレスディアは呟いていた。
「嘘をついて、誰かに約束を求めることなどできないことぐらい、わかってはいた」
 それでも、求めずにはいられなかった。失いたくないから。
「もし、彼の身に凶刃が迫ろうものなら、この身を盾にしてでも」
 手に力が入り、茶が揺らいだ。
 心を落ち着かせようと、アレスディアは茶を一口、飲んで息をついた。

 アレスディアには、家族がいた。
 苦楽を共に生きてきた仲間たちがいた。
 護るべき人たちがいて、護るために共に耐えてきたのに。
 護れずに、護られて、アレスディアは生き残った。
 だから、解っている。
「……否。自身を犠牲に誰かを護っても、それは護ったとは言えない。護った方も護られた方も共に笑いあえなければ、真に護ったとは言えない」
 眉間に、皺が寄っていく。
「けれどそれは、一人では困難なことで」
 そのまま、目を伏せた彼女の脳裏に、ディラの顔が浮かんだ。
 あの時、彼が続けた言葉が、思い浮かぶ。
『アレスを置いて死なないよう、気を付ける』
 だけれど……。
『アレスと一緒に居ない時に、うっかり命を落としちまうかもしれないだろ』
 だから。
『契りでも交わしておくか?』
 彼は、悪戯っぽい目で、そう言ったのだ。
 そして、アレスディアが同じ約束をしてくれるのなら、自分も約束をすると。
 その契りについて、ディラはアレスディアに深く説明をせず、笑ってはぐらかした。
「でも、その契りが、互いを護りあう契りならば。一人ではなく二人ならば」
 そこまで口に出し、アレスディアは首を左右に振って、ため息をついた。
「……ディラ殿の真意もわからぬのに、先走りすぎだ」

 だけれど。心のどこかで、それを……望んでしまう、自分がいた。

*****

 同日。
 ディラは仕事を終えた後、スーパー銭湯で入浴と食事を済ませてから、自室へと戻ってきた。
 コンビニで買ってきた酒とつまみで、1人晩酌をしながら彼も考えていた。
「一緒の仕事すること多いし、別に部屋借りてんの無駄じゃないか? 同居……じゃなくて、ルームシェアしようぜって言えば案外あっさり乗ってくれそうな気もするな」
 苦笑して、酒をあおる。
 寂しいなんて感情はないが。
 より、彼女の近くに居たいと思うことが多々ある。
 自分が側に居ない時に、つっぱしって彼女は独り逝ってしまうのではないか、などという恐怖心がある。
 普通の人々の普通の幸せなんて望んでいない。
 だが、彼女の、自分にとっての、幸せが欲しいという気持ちは、芽生えていた。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

【整理番号/PC名/性別/外見年齢/職業】
【8879/アレスディア・ヴォルフリート/女/21/フリーランサー】

NPC
【5500/ディラ・ビラジス/男/21/剣士】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

ライターの川岸満里亜です。
そしてまた、納期ギリギリで申し訳ございません。
同棲したいとディラが言ったらアレスディアさんは断りそうですが、ルームシェアしないかと持ちかけたら、良くも悪くも前向きに考えてくれそうな気がするなぁ……。
ご依頼、ありがとうございました!
東京怪談ノベル(シングル) -
川岸満里亜 クリエイターズルームへ
東京怪談
2018年04月24日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.