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『貴女と過ごす優しい時間 』
芦屋 乙女aa4588)&アクレヴィアaa4696hero001


 それは1月の、とある昼下がりの出来事。

「あの……! よかったら、今度一緒にお出かけしませんか……!」

 顔を赤くして両手を祈るようにぎゅっと握り、一世一代といった風情でそう告げた、芦屋 乙女(aa4588)にアクレヴィア(aa4696hero001)はおや、と瞳を瞬かせた。彼女――アクレヴィアとは縁のある英雄の契約者である乙女は、こんな風にいっぱいいっぱいの様子の時は特に、第一印象でもあった『いかにも可愛らしい子』という雰囲気が強くなる。
 ゆえに、というわけではなかったけれどアクレヴィアは、突然のお誘いへの驚きが過ぎ去った後は微笑んで、良いですよ、と快く頷いて。

「良ければ、少し買い物もしたかったので付き合って頂けますか?」
「……! もちろん!!」

 そんなアクレヴィアの申し出に、何を断ることがあろうかと、乙女はぶんぶん何度も大きく頷いた。我ながらあまりにも唐突な『デート』のお誘いを受けてもらえただけでも嬉しいけれど、一緒に仲良くお買い物出来るなんて最高じゃないか。
 良かった、と心から胸を撫で下ろす。引っ込み思案な乙女にとって、アクレヴィアを誘うのはひどく思い切った、勇気の要ることで――それに快く頷いてもらえたのは文字通り、天にも昇る心地。
 だから。

(早く約束の日になれば良いのに……!)

 アクレヴィアと待ち合わせの日時を約束してからというもの、乙女が暇さえあればそう考えてしまうのは、無理からぬことなのだった。





 さてその日、約束の場所にやって来た乙女はフェミニンな装いを厚手のコートとチェックのマフラーでまとめた、大変少女らしく可愛らしい雰囲気だった。やはり可愛らしい人だ、とそんな乙女に知らず目を細めアクレヴィアはといえば、黒のダッフルコートにマフラーという、大人びたシックな装い。
 そんな姿で待ち合わせ場所に立つアクレヴィアに、ぱっ、と乙女が顔を輝かせた。タタタッ、と駆け寄ってきて「お待たせ!」と屈託なく笑う。

「早かったんだね、アクレヴィアちゃん」
「いえ、それほどでも」

 実際、待った時間など5分かそこらなのでその通りに告げたアクレヴィアに、良かったぁ、と乙女は心底ほっとして胸を撫で下ろした。せっかくの初デート(!)なのに待たせてしまったりしたら、申し訳ないじゃないか。
 今度があれば絶対アクレヴィアちゃんより早く着くんだからね、と未来の自分に決意して、乙女はさて、とアクレヴィアの顔を覗き込んだ。

「ところで、買い物したいって言ってたよね?」
「ええ――実は服を買いたいと思っていたのです」
「服?」
「はい。乙女、良ければ服を選んで頂けませんか? 私はこの世界の服には詳しくなくて……」

 どうでしょうか、と気遣うような眼差しで見上げたアクレヴィアに、見上げられた乙女は「もちろん!」と大きく頷いた。そういうことならむしろ得意分野、それがイマドキ女子高生の矜恃である。

 じゃああっちのお店かなー、と迷うことなく歩き始めた乙女に連れられて、アクレヴィアがやって来たのはいかにも少女たちが好みそうな、可愛らしいアイテムの取り扱うショップが多数揃う、ファッションビルだった。なんと言うかもう、全体的に雰囲気がまず可愛らしい。
 こんな場所が、と瞬くアクレヴィアの手を引いて、慣れた様子で乙女はファッションビルに足を踏み入れた。そうして恐らくすでに目星をつけて居たのだろう、迷いのない足取りでその中のショップの1つに入っていく。
 それは乙女がよく身につけているような、愛らしい服装が所狭しと並ぶショップだった。店内のあちらこちらで、アクレヴィア達のように一緒に買い物に来たらしい少女達が、楽しげに服を選んでいる。
 1人ならば到底そこに混ざることも、そもそも訪れることすらなかっただろう、その場所。つい物珍しげに辺りを見回してしまうアクレヴィアの傍らで、乙女は「そうだなぁ……」と並べられた色とりどりの服に眼差しを巡らせた。

「アクレヴィアちゃんはシックな色が多いけど、明るいのもどうかなぁ」
「明るい色――ですか」
「うん。このピンクのスカートとか……今年流行だし合わせやすそう」

 そう言いながら乙女がほら、と手に取り見せたのは、砂糖菓子のように甘い色合いのスカートだった。けれどもデザインそのものはシンプルなので、確かに他のアイテムにも合わせやすそうだ。
 そうですね、と考え込むように見つめていると、その間にも乙女がカチャカチャとハンガーをアクレヴィアに渡していき。え、と渡されるままにハンガーを受け取っていく、アクレヴィアに乙女が笑顔で言った。

「とりあえず試着してみよ?」
「は、はい」

 その、笑顔に込められた気迫のような何かに気圧されて、ついでに背中もほらほらと押されて、アクレヴィアは気付けば試着室の中でそれらの可愛らしいアイテムに腕を通していた。なぜこんな事になったのか。否、服を買いたいから見立ててくれと頼んだのは自分なのだけれど、なぜ。
 自問を繰り返しはすれど、嫌な気分というわけではない。むしろどちらかと言えば――そう、どちらかと言えばこう言った時間を過ごすのも楽しいと、感じている自身にくすぐったさすら覚える。
 ゆえにアクレヴィアはどこか弾む気持ちを感じながら、生まれてこの方初めてと言っても過言ではない少女らしい装いに身を包み、乙女、と見立ててくれた少女に声をかけた。

「どうでしょう?」
「う……わぁぁぁぁッ、可愛い!」

 そうして試着室から現れたアクレヴィアに、乙女はパッと目を輝かせ、掛け値なしの賞賛を贈る。いつもの大人びた装いももちろん素敵だけれど、やっぱり、こういった少女らしい甘い雰囲気もよく似合う。
 となれば俄然、服を選ぶ意欲も湧くというもの。だから、乙女がアクレヴィアに「そのジャケットは少しボタンを開けた方が可愛いかも」「このスカートも合わせてみて」と着こなしをアドバイスしながらも、可愛い可愛いと大騒ぎで店内を駆け回りアクレヴィアに似合いそうな服をかき集め始めたのは、無理からぬ事なのだった。





 幾つかの大きな袋と共に、少女達が休息のため訪れたのはファッションビルからほど近くにあるカフェだった。小さな庭を臨む見晴らしの良いテラス席では、数名が温かな飲み物と共に景色を楽しんでいる。
 そんな庭を眺めながら先の買い物や普段の話を他愛なく重ねて。やがて運ばれてきた、季節のケーキと紅茶のセットに揃って目を輝かせた。

「うわぁ……! 可愛いなぁ」
「これは――とても綺麗で美味しそうですね」

 つやつや輝く瑞々しい果物と、繊細に絞られた純白のクリームのコラボレーション。その可愛らしさに思わず歓声をあげながら写真を撮ってしまった乙女の正面で、アクレヴィアもまた芸術のようなケーキにほぅ、と感嘆の息を漏らす。
 フォークでそっとすくい上げて、口に運んでまたため息。さらにセットの紅茶を口に含んで、2つの味が奏でるハーモニーにまたため息。
 美味しいなぁ、と幸せに目を細めながらなんとなくアクレヴィアの視線の先を追った乙女は、その先にいた中学生くらいの男子の集団に、そういえば、と呟いた。

「アクレヴィアちゃんはご兄弟が多いんだよね。賑やかでいいなぁ」
「ええ、確かに賑やかですね」

 そんな乙女に眼差しを戻し、そう頷いたアクレヴィアはけれども、賑やか過ぎるのも時には厄介だと苦笑いで肩をすくめる。どんな物事も、良い部分と悪い部分は紙一重だ。
 特に年の離れた兄が一番子供のようなのだと、思い出しながらつい困ったため息を吐き出すアクレヴィアである。実際には成人しているアクレヴィアよりもさらに年上なのだから、兄はそれこそもういい年だというのに、落ち着きという言葉とは残念ながら縁がない。
 そんなアクレヴィアに乙女は、そうなんだぁ、とふわふわ頷いた。詳しくは解らないけれども、そう語るアクレヴィアはやっぱりどこか楽しそうで、だからきっと賑やかで楽しかったのじゃないかなぁと思うのだ。
 だからその様子を、何となく想像する。もちろんアクレヴィアの兄弟のことを知っているわけではないから、あくまで何となくのイメージで。
 きっと皆、凛々しい騎士の姿で。アクレヴィアもその中で可愛く、凛々しく――

「――あ。えっと、男装をして騎士をしてた……んだよね?」

 その姿を思い浮かべようとした乙女は、ふと気付いて確かめる。つい今のアクレヴィアの姿で想像してしまいそうになるけれども、思い返せば、前にそんなことを聞いたことがあった。
 だから小首を傾げて確かめる、乙女にアクレヴィアは「ええ」と頷く。別に騎士たるもの男の姿でなければならない、などと思って居たわけではない――単にあの頃のアクレヴィアは、女であることが嫌で仕方がなかったのだ。
 だから、姿だけでも男に。否、もしかしたらそもそも騎士を志したのすら、女である自分を否定する手段であったのか。
 そう、考えながら言葉を紡いて行くうちに、乙女の顔が困ったような、惑ったような、なんとも言えない表情になって行くのに気がついて、あ、とアクレヴィアは首を振った。

「今は違いますよ。今日のように、女性としてお洒落を楽しむのも良いものです。――乙女に選んで頂いた服も、勿論」
「そ、か? ……うん、なら良かった!」

 そうして穏やかに微笑み告げたアクレヴィアに、乙女はほっと笑顔を浮かべて胸をなで下ろす。アクレヴィアに似合う服装を! と気合を入れて楽しくお買い物してしまったけれど、もしかして彼女の意に沿わないものを押し付けてしまって居たのでは、と心配になって居たのだ。
 だから、ほっとして。そうして、ならばアクレヴィアがお洒落に目覚めた(?)理由はなんだろう? と考えて。
 もしかして、ふと閃いた理由に乙女は知らず、胸をときめかせた。

「えっと……好きな人っていますか?」

 だから男装だけではなく、女性らしいお洒落も楽しむようになったのではないか。だとしたら、それって何だかステキじゃないか。
 そんな想いにワクワクしながら尋ねた質問に、けれどもアクレヴィアはほんの少しだけ考えるそぶりを見せた。好きな人、と口中で小さく呟く。
 好きな人。胸高鳴らせ、甘い想いに身を焦がす相手――
 考えて。そうですね、とアクレヴィアは透明に微笑んだ。

「――婚姻を結んだ方なら……小さい頃から一緒に遊んでいた方でした」
「こん……いん……?」
「はい。親が決めた結婚でしたが、後悔はなかったかと――そういう貴女は好きな人は?」
「え……えぇぇッ!? い、いないよぉ……!!」

 うわぁ、と思いがけず飛び出してきた単語にドキドキしていたら、逆に質問し返されて乙女は思わず顔を真っ赤に染め、ぶんぶんと大きく首を振った。とっさに脳裏に、自分の英雄達や幼馴染の顔がポンと思い浮かんだが、どうなんだろう、と首をひねる。
 好きな人、という言葉はどこか砂糖菓子めいていて、秘密のようなくすぐったさがある。けれどもそのくすぐったい甘やかさに、思い浮かんだ顔はどれも何だかそぐわない。

(……ッて! そうじゃなくて)

 今は自分の事じゃなくてアクレヴィアの話をしていたのだと、火照る頬をぺちぺち叩いていたら、クスクスと笑われた。その声色はとても優しく、耳に心地よい。
 ちら、と顔を見たら穏やかな笑顔。その表情が大人のお姉さんに見えて、ドキッ、とまた胸が鳴る。

(いや……アクレヴィアちゃんは本当は大人のお姉さん、なんだけど)

 見た目こそ小さな可愛い女の子のアクレヴィアだけれど、転移前は大人だったのだということは、もちろん乙女は知っている。というか、結婚していたと言うのだから、大人のお姉さんだったのは間違いない。
 けれども。やっぱり今、乙女の目の前にいるのは小さな可愛い女の子だから、どうしてもその印象が拭えなくて、こうして大人の面影を見せられると何だか、知らない人のようにも感じられて。
 不思議だな、と思う。可愛くて、優しくて、憧れるヒト。
 そんなアクレヴィアの事をもっと知りたいと、もっと仲良くなりたいと、思いながら乙女はこくり、紅茶を飲む。この後はどうしようかと、楽しい想像に胸を躍らせながら。





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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号   /  PC名   / 性別 / 年齢 /   職 業 】
 aa4588    / 芦屋 乙女  / 女  / 17  /   能力者
 aa4696hero001 / アクレヴィア / 女  / 12  / シャドウルーカー

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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初めまして、蓮華・水無月でございます。
この度はご発注頂きましてありがとうございました。

お2人でお買い物デートをしながら過ごす物語、如何でしたでしょうか。
可愛らしい女の子2人――いえ、お一方は実質大人の女性ではあられますが――でのお出かけ、ふわふわ可愛らしい雰囲気で、とても楽しく書かせて頂きました。
もしイメージと違うなどあられましたら、いつでもお気軽にリテイクをお申し付けくださいませ(土下座

お2人イメージ通りの、互いの距離を縮めながら過ごす楽しいノベルであれば良いのですけれども。

それでは、これにて失礼致します(深々と
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2018年05月01日

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