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『雪山で…決着を! 』
アリア・ジェラーティ8537

 雪合戦とは、これ程に苛烈なものであったのだろうか。

 …と、そんなような事を思っていたのは…まぁ、巻き込まれた面子の方になる。なし崩しに雪妖の姫君――雪姫の住まう雪山への同行が決まってしまったあやかし荘管理人の因幡恵美に、勝負なら! と好き好んでくっついて来た柚葉辺りの感想がまずそれ。雪姫の住まいを渋々ながら一行に教えざるを得なかった嬉璃だけは、己が姉の雪姫とそれに張り合おうと言う氷の女王の末裔――アリア・ジェラーティの様子からして薄々想像が付いていたかもしれないが――何にしろ、今置かれている状況は、そんな皆の想像を遙かに超えていた。

 雪玉を当て合うだけの雪合戦ではなく、トロフィーを奪い合うチーム戦との勝負形式を確認後、守るべきトロフィーとして双方造り上げた雪像の規模がまず凄かった。
 が、それより凄かったのは開始早々の『挨拶』で。

 その『挨拶』の結果、早々に皆の居る「ここ」の足場自体が怪しくなっている。元々凄まじい吹雪だったところ、辺り一帯に影を落とす程の巨大な雪玉が落下――これがアリアの『挨拶』――した事による振動での雪崩…がまず初めの天変地異。アリア側は氷の壁でそれを堰き止め、雪姫側は小竜巻の風圧で個々の味方や雪像をガードはしていたが――そもそもその防御方法もまた足場を安定させるようなものでは無い。
 むしろ、逆。アリアや雪姫当人は何の問題も無かろうが、他の者はそうでもない。雪崩のガードに使われた筈の小竜巻でそこかしこの雪が舞い躍り新たに無軌道かつ強力な吹雪が発生、更には雪崩を堰き止める筈の氷の壁の乱立も相俟って、予想外に出来ていた新たな深雪部分に足を取られたり呑み込まれて身動きすらままならなくなる場合もあり――と、あちこちで雪合戦どころでない事態に陥っている。

 とは言え、氷雪の加護を受けた乙女二人の方は――その辺の周囲の事情は何だかあんまり関係無い。…いやむしろ、互いのチームメイトどころか雪合戦の勝敗を決するトロフィーの筈の雪像すら何だかおざなりになっている。
 彼女らの意識は、最早、互いにのみ向いている――アリアに返っていた雪姫からの『挨拶』は、雪玉と言うより暴風に舞い上げられた雪の塊。それらがアリアを連続して襲っている――いや、雪の塊と言うよりかなりの加速度が乗った雹の飛礫と言った方が正しかったかもしれない。…雪合戦で雪玉に石を仕込むのは駄目との認識は共有しているが、石が無くとも石と大差無いとしか思えない威力。そんな雪姫の攻撃を、再び作り出した氷の壁でアリアは真っ向から受け止める。その陰で、極低温の冷気を仕込んだ雪玉をせっせと準備、同時に空中に頑丈な氷の足場を幾つか作成し、上空からのステルス攻撃を試みようとする。
 と、アリアはその時にちょっとした事に気付いた。雪の中に半分埋まり、氷漬けになっている人型らしい何かがある――良く良くみれば見覚えのあり過ぎる人物、不運の申し子な三下忠雄だった。…あれ、一緒に来てたんだっけ? と思いつつ、少し考えてから因幡ちゃんに渡したのと同じ寒さ耐性付与のアクセサリを三下ちゃんの首にかけてみる。…何かあった時の予備として作っておいたものである。
 ひとまずこれで最低限は大丈夫だろうと見、アリアは雪姫との対決にすぐ戻る。作った雪玉をよいしょとばかりに全て持ち、氷の壁を保持したまま、こっそり雪姫の死角になるよう考えつつ、天空に設置した氷の足場を上って行く。



 他方、因幡恵美は――嬉璃と共に居る事で、何とか諸々事無きを得る事が出来ていた。
 あっちに行くがよい、今ぢゃ雪玉を作って投げろ! 等々、嬉璃の号令に従い恵美は奮闘。結果、深雪にも嵌らず、雹飛礫にも当たる事無く、逆にこちらの投げてみる雪玉はどれ程へなちょこであろうと何故かからくりめいた複雑怪奇な連鎖を経、最終的に強威力の攻撃と化して敵チームの妖怪さんを一人一人無力化させている。
 要するに嬉璃が座敷童の幸運をフルに使って自チームを有利に導いていると言う事らしいのだが…その効果は何処まで影響しているかは謎である。柚葉の方を見れば――何があったのか妖怪さんたちの作る雪玉に巻き込まれて転がされている。うわああああボクは雪じゃないよう! と喚いても、何だか相手にされていない。…つまり経緯はどうあれ、取り敢えず運が良くは無い。
 …ただまぁ、勝負そっちのけにさせている、と言う意味では多少の囮効果はあると言う事になるのかもしれない。地道に敵戦力を削っている嬉璃&恵美ペアの功績を鑑みれば、役割分担として、まぁ、上手く行っているとも言えるのかもしれない。

 と、そこに。

 嬉璃さん皆さ〜ん! と声を張り上げ呼びつつ駆け寄って来ようとする三下の姿があった。やっと見付けたとばかりに安堵と喜びが混じった情けない声。ある意味それだけで誰だかわかるので、何ぢゃ三下か、あ、三下さん、と嬉璃&恵美の方でもすぐに気付く。そして恵美が続けて口を開こうとしたところで。
 ずべっ、と三下がすっ転び、漫画のように恵美の胸に向かって突進する形になる。つまりこれはラッキースケベのコースか――と思いきや、そうなる前にすかさず嬉璃からかなり本気の飛び蹴りが炸裂。三下は来た方向そのまま鋭角に跳ね返され、近場にあった氷の壁…の一角に激突した。
 その衝撃が最後のひと押しか何かだったのか、三下が激突した辺りから何やら雪原に罅が入り――そこから雷の如きジグザグの深い亀裂が四方八方に密やかに走り始めた。即ち、再びの雪崩の予兆。

 そして、その再びの雪崩が襲いかかるだろう方向には――雪姫側の、雪像が。



 上空の何処からともなく飛来する、シャーベットに近い雪玉が雪姫を襲う。それが自然現象ではなくアリアの攻撃だとわかったのは、その雪玉の着弾地点――雪姫チームの妖怪含む――が一気に凍り付き動きを止めると言う様を何度か見届けて。…極低温の冷気が仕込まれている。ひとまずそう察しは付いたが――雪姫としては風をも用いて何とか躱し切れてはいるが、どうも投擲されている源が見えない。
 ならば炙り出すまでよ、と雪姫は吼え、その気合いと共に上方へと風圧ある吹雪を吹き付ける。みしり。程無く氷の足場が崩れ、自由落下状態となったアリアが落ちて来る――が、その最中にもアリアは己の足下、足場のように雪の塊を――見る見る内に大きな雪玉を作り出し、自分の乗ったその雪玉自体を雪姫の上に落とす――着弾と同時に凄まじい白が舞い散り、周辺の視界を奪う。
 が、雪姫も黙って踏み潰されてはいなかった。いつの間にそこに移動していたのか着地直後のアリアの真上中空、アリアの作り出したものよりも数段大きい雪玉を作り出し、アリアに狙いを定め投擲。するが――これもまた、アリアの氷の壁がぎりぎりで阻む。
 その氷の壁の上と下で、雪姫とアリアは暫し対峙。

「相変わらずなかなかやりおるな。アリアよ」
「うん。雪姫ちゃんも…やる、ね」

 すごく、楽しい…。

 と、思ったところで。
 やったー、と何やら歓声が聴こえて来た。アリアも雪姫も、ん? と思いその歓声の方を見る――と。

 雪姫側のトロフィーである雪像が、雪崩に押し流されクレバスに呑み込まれ掛け、半分以上崩れていた。
 つまり。

 ここに氷雪の加護を受けし乙女の対決は、決着を見る事になる。

【了(?)】



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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■PC
【8537/アリア・ジェラーティ/女/13歳/アイス屋さん】

■NPC
【-(公式イベント・雪姫の戯れNPC)/雪姫/女/外見10歳/雪女郎】

【NPCA011/嬉璃(基本)/女/999歳/座敷わらし】
【NPCA033/因幡・恵美(21歳)/女/21歳/あやかし荘の管理人】
【NPCA012/柚葉・−/女/14歳/子供の妖狐】
【NPCA006/三下・忠雄/男/23歳/白王社・月刊アトラス編集部編集員】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 いつもお世話になっております。
 今回は続きの発注有難う御座いました。…お手紙でもお気遣い有難う御座います。
 そして今回もまた結局、期間いっぱいまで使ってしまってお待たせしております。

 内容ですが、結局、文字数の関係で駆け足になってしまったような気がしています。また更に続きと甘えていいものかどうか少々悩んだ結果です。
 ほぼお任せでしたので、PL様の当初の予定…からは逸れたかなとも思うのですが、各部分についてもっと詳細をとの御希望がありましたら、続きと言うより回想…のような形ででも改めて書かせて頂きたいと思うので、お気軽にどうぞ。

 如何だったでしょうか。
 少なくとも対価分は満足して頂ければ幸いなのですが。

 では、この後のちょっとした続き(まとめ?)…のようなお話は、おまけノベルで。

 深海残月 拝
東京怪談ノベル(シングル) -
深海残月 クリエイターズルームへ
東京怪談
2018年05月07日

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