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『そして世界へ 』
彩咲 姫乃aa0941

『彩咲 姫乃(aa0941@WTZERO)』は『三浦 ひかり(NPC)』の車いすを押して入室する。
「どうぞどうぞ、お茶は用意しておいたわ」
 そう『西大寺 遙華(az0026)』はお茶菓子を二人の目の前においた。
 ここで姫乃は早速本題に入る。
「あのさ。アイドルの事なんだけど」
 告げると遙華はティーカップから口を放してソーサーにカップを置く、カチンという音がやけにはっきり聞こえてひかりは身をすくませた。
「そんなに緊張しなくてもいいぞ」
「そうよ、とって食べはしないのだから」
「そう言う西大寺は叔母さん臭いな」
 その言葉に複雑そうな表情を浮かべる遙華である。
「わ。私もリンカーアイドルに!」
 光がそう前のめり気味に告げると、姫乃は不服そうな表情を向ける。
「動かない足のかわりにアイアンパンクになって、歌って踊れるアイドルになりたくて、それで」
「俺はそれ、いやなんだけどなぁ」
 告げる姫乃は背もたれに深くもたれかかってクッキーをかじった。
「姫乃どうしたの?」
「おれさ、ひかりがアイドルになるの全力で応援してやりたいんだ。でもリンカーになるのは反対なんだ」
「でも、それは……」
 姫乃はひかりが荒事に首を突っ込むのが心底心配なのだ。
 それは少し前にかけがえのない友人を失ってしまったことでも、思いに拍車をかけている。
「怖いんだろ? ひかり、戦う事」
 その言葉に小さく頷くひかり。しかし遙華はあっけらかんと光に告げる。
「え? ならなくてもいいんじゃない?」
「え?」
「え?」
「え?」
 三者三様のえ? が室内に木霊した。ちなみにひかりが発した最初のえ? はその言葉の真意が分からず問いかけており。続く姫乃のえ? はそれほんとうか? のえ? であり、最後の遙華のえ? はなんでえ? っと言われたか分からないえ? である。
「詳しく聞かせろ!」
 そう詰め寄る姫乃。
 その姫乃が揺らしたティーカップにお茶を注ごうと、遙華はポットに手を伸ばした。
「まぁ、おちつきなさいな」
 告げると姫乃はまた背もたれに深く腰掛けて遙華の言葉を待った。
「アイアンパンクになる必要もなければ、歩ける必要もないんじゃない?」
「そんな簡単になれる物なのか? アイドルって?」
「簡単ではないけど。一流を目指すなら、苦労は計算の内よ。どの道も簡単には目指せないわ」
 ただ、その苦労の方向性を決めることはできる。と遙華は告げる。
「そもそもアイドルって、どういうイメージを持ってるの?」
 そう遙華がひかりにといかけると、おずおずとひかりは答える。
「歌って踊ったり」
「まぁ、それはそうね。アイドルって可愛くないといけないもの」
「そう、可愛くて」
「それで?」
「勇気をもらえる」
「あなたは勇気をアイドルからしかもらってないの?」
 言いよどむひかり。
「それは」
「ちょっとまて」
 姫乃が問答を遮った。
「お前、それ、パンが無ければケーキをっていうのに似てないか?」
「違うわよそもそも、私はこの子のルーツを探ってるの、どうしてアイドルになりたいのか」
「姫乃ちゃんが、みせてくれた映像が」 
 すごくかわいかったから。
 そうひかりは顔を赤らめて告げる。
「そうね、みんな可愛いわね」
「うん」
「可愛くなりたいの?」
「ちょっと違う」
「歌は?」
「歌いたい」
「どんな歌が好きなの?」
「みんなが笑ってくれる歌が」
 その言葉の押収をテニスのラリーを見るように首を振りながら見つめている姫乃。
 これは話が進んでいるのか、ちがうのか。どうなんだろう。
「で? 結論は?」
 姫乃がそう問いかける。
「そういう、テンポがいいところ私は好きよ」
「あ〜、そうか?」
 そう首をかしげた姫乃である。
「歩けなくてもいいじゃない、地べたに座って謳いましょう。歩けなくてもいいじゃない。誰かの手を借りるアイドルになりましょう。その代り、あなたは歌でみんなを笑顔にすればいいわ」
「できるの?」
 遙華の言葉にひかりは首をかしげる。
「やるのよ、あなたが」
 告げると遙華はひかりに手を差し伸べる。 
 なんだかわからないが話がまとまったようだった。
「一件落着だな。よかったよかった」
「まだよ」
 胸をなでおろしている姫乃に向けて遙華が突如そう言った。
 まるでロボットのようにぐりんっと首をむけたために姫乃は少しだけ背筋を跳ね上げてしまった。
「なんだよ、今日は調子いいな」
 そう遙華の不穏な視線に耐える姫乃。
「姫乃。あなたにもまだやれることはあるわよ」
「な、なんだよ」
「そのために採寸が必要ね。きて。今からあなた達をアイドルにしてあげる」
 たち?
 その言葉に首をひねるも遅かった、部屋の隅で起動したアルスマギカロボ。
 その肩に担がれてなんと姫乃もひかりもどこかへと運ばれていく。
「おい! ちょっとまて! 俺をどうするつもりだ」
 小脇に抱えられた姫乃と、俵のように抱えられたひかり。
「あら、協力は惜しまないんでしょ?」
「何をするか、言ってからにしろよ!!」
「あなたには王子様になってもらうわ!」
「はぁ?」

   *   *

 そこからの日々は電撃のように瞬く間、刹那のように一瞬で、姫乃とひかりは採寸をとられ、大慌てのままに衣装を発注された、その間にデビュー曲の手配とステージの配置。先輩アイドルたちへのあいさつと。ステージの練習。
 学校を休まされる日もあった。
「中学の勉強なんて私があとで教えてあげるから」
 そう告げる遙華に。
「本当に……おれ、こんなことやるのか?」
 そう頭を悩ませる姫乃。
「だって、あなた達しかできないんだもの、このスタイル」
 そして、そして早くも三週間、お披露目の日はあっという間にやってきた。
 ステージの上にはひかり、彼女は純白のドレスと美しいティアラで飾っているが、足は使えず。地面に倒れている。
 ライトが一つ悲しげに当たった。
 そんな彼女が、Aメロを切なげに歌い上げると。
 突如リズムが変わった。
 軽快な音楽と共に舞台上空から姫乃がハングドマンにてアクロバットな登場。
 だがその姿が少し変わっていた。
 姫乃が身を包んでいるのは純白に金の王子様衣装。
「姫、迎えにあがったぜ」
 告げると姫乃は光をお姫様抱っこして舞台上を走った。
 そのままひかりは顔を赤らめながら謳いつつ、会場の観客に手を振る。
「王子様役を男の子がやると角が立つけど二人とも女の子だったら問題ないのよね」
 告げる遙華は観客の盛り上がり具合に手ごたえを感じていた。
「お姫様系アイドル。そして姫乃を王子様系アイドルとして売り出せば、ふふふ」
 そう悪い笑みを浮かべる遙華。
 それと対照的にひかりは華やかな笑みを浮かべた。
「たのしいね。ひめの」
 そんな笑顔を見て、姫乃はひどく恥ずかしかったがそれでも。
「ん……。そうだな」
 そう頷けるだけの温かい気持ちは受け取っていた。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『彩咲 姫乃(aa0941@WTZERO)』
『三浦 ひかり(NPC)』
『西大寺 遙華(az0026)』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 いつもお世話になっております、鳴海でございます。
 今回は二人の物語の一つの締めくくりになるのかなぁと思いながらかきました。
 いや、お二人には思えば辛い選択ばかり強いてしまったので最後暗い笑顔を……と思いまして。
 ただ、これからの本編次第ではどうか分かりませんが。
 それでは鳴海でした、ありがとうございました。
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2018年05月24日

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