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『 そしてすべてが丸く収まる。 』
杏子aa4344)&カナメaa4344hero002

 氷柱との戦闘から数日。
「うう、変わり果てた姿に」
 初めての共鳴と戦闘、そして家宝の悪趣味な改変にショックを受けたカナメは杏の自宅に引きこもっていた。
 それを心配した杏子の娘夫婦がお見舞いに来たり、それで一悶着あったりしたのだが。どんちゃん騒ぎの夜に杏の自宅の電話がなり。
「今どき自宅にかけてくるなんてろくな連中じゃないと思うんだけどねぇ」
 そう訝しみながら杏が電話をとるとそれは菊男からの電話だった。
「なんだい? こっちは久しぶりに家族水入らずの空間を楽しんでるんだけどねぇ」
「無粋なのはお前だ、なぜ連絡をしない」
 告げると杏の背後を冷ややかな気配が通り過ぎていく。
「あれ? お父さんもういいの?」「え? お父さん? そんな……いったいどこに」
 そう怯える婿の恐怖の声をBGMに杏子は言葉の先を促した。
「連絡?」
「薙刀を取り返したのだろう? なぜ連絡をよこさない」
 その言葉に杏子は両手を叩く。つまりはすっかり忘れていたのだ。
「わかったよ、明日行く。けどねぇあんた。度肝をぬかれるよ。かわいそうに」
 そう少しだけ気分よく告げる姉の声を菊男は、まるで昔の姉のようだと思い。電話を切った。

   *   *

 翌日、また長らく電車を乗り継いで杏子はカナメと共に3度目、伏見邸を訪れた。
「おお、家宝がもどったか、……なんだそれは」
 そんなふたりを迎え入れるとまず最初に菊男は薙刀の心配をする。
 むき出しではまずいために昔使っていた練習用の薙刀、それの入れものにいれて持ってきたのだが、ひんむいた直後に菊男は悲鳴にも似た声を上げる。
「改造されてたんだよ。ざんねんだったね」
 そうあっけらかんと杏が告げると思わずその場にへたれこむ菊男。
「たしかに、これは度肝をぬかれる話だ。これは、これは衝撃を隠せない」
「いやぁ、すまないねぇ、もうワンパンチあるんだ」 
 告げる杏子、その袖から顔を出したのはカナメである。
 杏子に瓜二つ、しかし神聖な雰囲気を纏う少女に菊男は首を捻った。
「……だれだ?」
「ご先祖さまさね」
 さらに首を捻る菊男。
「祖先?」
 菊男は何を言っている、そんなわけ、そうカナメの頭をガシッと掴むと、菊男はその瞳を、表情をのぞき込む。
 そこで菊男ははたりと、動きを止めた。
「どうしたって言うんだい?菊男」
 菊男の表情は吸いつけられるようにカナメに向いたまま。
 だが杏のその言葉に我に返った菊男はすぐさまカナメから身を放すと取り繕ったように告げる。
「?」
「いや、なんでもない。祖先。そうか、祖先か」
 首を傾げるカナメである
 告げると菊男は全てに納得したようにうなづくとその薙刀を杏に差し出した。
「始祖であるカナメに使って貰えるのなら薙刀も本望だろう、それは杏子達にやるよ」
「やけにあっさりだねぇ」
「ああ、そもそも刃とは倉に眠らせておくものではないからな」
 その日。遅いから泊まっていけという話になった。
 心底杏は嫌がったのだが、カナメが割とこの家を気にったようで1泊したいと駄々をこねたのだ。
 やれやれと首を振ると杏は未だに存在していた自分の部屋に驚きつつ2組の布団をしく。
 その上で足をばたつかせながらカナメは杏子に問いかけた。
「そういえば、杏子がこの家を継がなかった理由は何だったのか?」
 そう告げるカナメは満足そうに体をのばす。
「夕餉も美味かった。金持ちでもあるのだろう?それにここは都会と違ってそういう力に満ちている。とても良い場所だ」
「かもしれないねぇ」
 告げると杏は寝巻きに着替え終え、布団の中に潜る。
「けどねぇ、昔からこの家で生活していれば、そう、息が詰まることも多かったのさ。まるであやつり人形のようだった」
「それが理由か?」
「他にもたくさんだ、教師になりたいという夢を反対されたことも。この村から出してもらえなかったことも。弟とすら気軽に接することが出来なかったことも」
 告げると杏子は菊男をおもった。もしかすると彼は自分を恨んでいるかもしれない。
「ただ。1番許せなかったのは」
《許婚との結婚が嫌だった》という事らしい。
「何度か会ってはいたがどうしても好きにはなれなくてねぇ、こうなんて言うか。黒いモヤのようなものがかかって見えたんだ」
 何度も逢瀬を重ねた。沢山の言葉を重ねた、しかし心の距離は一向に縮まらなかった。
 その男と正式に結婚しろと両親に言われた時。だときかされた時、初めて両親に逆らった。
 声を張り上げて、今までのうっぷんを叩きつけるように、両親へ感情をぶつけた。
 それを淡々と聞いている父親。そしてふすまの隙間から瞳だけのぞかせる菊男。
「そこからは怒涛の日々だったね。都会にでて一人暮らしを始めて、初めて貧乏をして。それなりに楽しかったけどね」
 そう自嘲気味に笑う杏子。そんな杏子の頭をカナメが撫でた。
「子孫がしっかり者でうれしいぞ」
「そうかい? ご先祖様にそう思ってもらえるなんて光栄だね」
 そう二人は布団の中で笑いあう。
「こんな奴と結婚するのかって、ずっと思ってたけどね。意外とおさえきれなくてね。
 それなら、家を出て自分の好きなように生きた方が良いっておもってね、実際それは当たってたよ。
 結果、家族に恵まれた。
 ただ置き去りにしてきた菊男の事はたまに気にしていた。
「すべてよくなる、大丈夫」
 そうカナメが告げると杏子は眠りの世界に引き込まれていく。
 実家の匂いに包まれて見たのは、幼少期幼いころの夢だった。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『杏子(aa4344)』
『カナメ(aa4344hero002@WTZEROHERO)』
『伏見 菊男(NPC)』
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 お待たせしてしまって申し訳ございません! 
 鳴海でございます。
 長らく発注いただいておりましたシリーズノベルですが、この度終了となりまして感慨深いものがあります。
 本編ではまだまだ物語は続いていくのかと思いますが、またよろしくお願いします。
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2018年05月30日

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