▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『『緑喰』の隙間にて 』
三ッ也 槻右aa1163)&泉 杏樹aa0045)&迫間 央aa1445)&荒木 拓海aa1049)&皆月 若葉aa0778
「下がれ!」
 荒木 拓海が二世を誓った比翼の君――三ッ也 槻右を背にかばい、ウコンバサラを横薙いだ。
 びじゃり。斧刃に湿った重みがまとわりつく。そうなればもう、結末はひとつだ。びぢり、べぢっ、ぶづづづづ……折り重なったスライムにスイングの速度を喰われ、絡め取られるばかり。
「拓海、合わせて!」
 拓海の左脇から踏み出した槻右が左に佩いた守護刀「小烏丸」を抜き打った。“硯羽”の銘を与えたその刃は、槻右が世界でただひとり、心預けた拓海から贈られたもの。その彼を護るため、今こそ深き墨黒まといて空をはしる。
 果たして。ウコンバサラの柄に鎬をすべらせた“硯羽”が、斧を下へ引きずり落とそうとしていたスライムを削ぎ落とした。
「くっ!」
 その斬撃に合わせ、スライムの内から斧刃を強引に引き抜く拓海だったが、しかし。
 痛みを感じることのないスライムどもはひるむことなく、ふたりまとめて飲み込まんと、互いを支えに不定形の体を持ち上げ、押し寄せんと弾みをつけた。
 刃を振りきった直後の槻右と、斧を取り戻したはいいが崩れた体勢を立てなおしきれぬ拓海。互いにカバーしようと気を急かせるが、その足はびくとも動かず――
「拓兄様と、槻右さんの、ピンチ。杏樹に、お任せ、なの」
 ふわり。ふたりの鼻先を涼やかな風がかすめ。泉 杏樹がスライムの波壁の前に立ちはだかった。
 共に立つ友を守り抜くがためならば、ためらうことなく死線の先へと踏み入り、幾度倒れようとも立ち上がっては踏み出して、踏み越える。
「通さない、の」
 藤神ノ扇を拡げれば、香り立つ藤香。
「契りきな藤の名にかけ幾たびも皆を癒して生き帰り来む」
 口ずさむのは扇に書きつけられた歌――それこそが泉 杏樹という少女を表わすすべてであり、その全なる一こそが杏樹だ。
 しかし。杏樹目がけて雪崩落ちるスライム。
 その先端が杏樹の藤の装束を侵し、その内にまで這い込んだ。
 彼女の白き柔肌が粘質の酸に焼かれ、濁った音をあげた。しかし、それでも杏樹は拓海と槻右を護って立ち続ける。“不死”を名乗る命の巫女は、この程度で揺らぎはしない。
 と。
 杏樹を飲み下そうと泡立つスライム津波の先端に白光が突き立ち、爆ぜた。
 一部を失った津波がばぐりとのけぞったところへ。
「こういうときは急急如律令、って言うんだったか」
 冷めた声音と共に飛んだ呪符が空で砕け、顕現させた無数の氷杭で津波を縫い止めた。
「まずは数を減らそうかって、思ったんだけど……どこからどこまでが1匹なのかぜんぜんわかんないね」
 射終えた雪弓「シュネーグリューエン」の奥から皆月 若葉が吐き捨て。
「物理攻撃無効がないだけでも感謝しておくところだろうさ」
 迫間 央は右手に魔導銃50AEを、左手にデザートイーグルを取り、若葉の肩に合わせていた肩を押し離した。
「――了解」
 央の意図を察した若葉が、右へ跳んだ央の左の逆へ駆けつつ雪弓を引き絞る。
 いくら物理攻撃が効くとはいえ、スライムの特性を考えれば刺突に準ずる攻撃の期待値は低かろうが。
 貫通する必要、ないからね。核まで届けばそれでいい。
 いかな脳を持たぬ不定形生物であれ、核という弱点までもを捨て去ることはできない。そして、たとえ慎重に隠したとしても、このライヴスを灯した眼から逃れられはしないのだ。
 見えた。
 弱点看破で射るべき点を捕らえた若葉が、その右手の人差し指、中指、薬指、小指の間にそれぞれ挟み込まれた3本の矢を、文字どおりの矢継ぎ早で射放した。
 雪弓の放つ白光には灼熱が宿る。スライムの湿った粘肉を焼きながら潜り込み、ついには核へと届いて、突き割った。
 若葉に次々と核を射貫かれて崩れ落ちるスライムのただ中、わずかに残された大地を辿って央が進み出る。
「こんにちは、とでも言っておこうか?」
 彼の一歩は、スライムを踏まないためばかりでなく、先に打ち込んだ氷杭との位置関係をも読んだものだ。
 氷杭の柵に突進を制限されたスライムが苦し紛れに伸ばしてくる触手を二丁拳銃のグリップと神経接合ブーツで打ち払い、鎧われたつま先で蹴り払っては、空白を埋めるようにライヴス弾と鉛玉とを交互に撃ち込んでいく。
 ここまで近づけばマスタリーなんて関係ない。目をつぶってたって当てられる。それに。
 央は重心を踏み下ろした蹴り足に乗せて自らを横へ流す。的確に死角を読み、一切の無駄なく繰られる央の足捌きが触手を置き去り、さらに加速した。
「弾込めする手間が惜しいんでな。爆ぜろ」
 魔導銃のライヴス弾を浴びせ、粘肉ごと核を微塵に刻んで、踵を返す。
 鈍重な手をかわして近づき、引き金を引く。H.O.P.E.最高位の迅速を誇る央にとっては、簡単すぎる仕事だ。
「たまにはこういう戦いかたも悪くない」
「なんか新鮮だよね。――だからってあんまり出すぎないでよ」
 央に言い返した若葉の矢が穿つのは、央に迫るスライムならぬ、その後ろにいる“順番待ち”だ。
 もしかすれば、思わぬ特殊能力を発動してこないとも限らない。状況の把握と危機管理、そしてチームのサポートこそ、中遠距離から戦場を見渡すジャックポットの役割だと彼は心得ていた。
「ありがと、です」
 央と若葉の支援に応えたのは杏樹。藤に染め上げたライヴスの刃でスライムの波壁を断ち、拓いた裂け目から踏み出した彼女は、畳んでいた扇をぱん! あえて大きな音をたてて解く。
 その音に引き寄せられるがごとく、八方から襲い来た触手を、彼女は扇ですくいあげ、巻き取っていった。軸と腰とを据え、重心をけしてぶらすことも跳ねさせることもなく、体を巡らせる様は、まさに舞と呼ぶにふさわしいものであった。
 かくて津波を成す勢いを失い、わだかまるスライム。そこへ。
「もらった時間は無駄にしない! ……できないだろ、みんなが繋いでくれた大事な時間なんだから」
 ドレッドノートドライブで加速した拓海の踏み込みが地を穿ち、チャージラッシュを乗せたウコンバサラが低く吼えた。上から叩きつけ、柄の半ばを蹴りとばして斬り上げ、膂力のすべてをもって袈裟斬り――形なきスライムを粉砕する。
 その様、まさに獅子の轟然。
 スライムどもは巻き込まれるのを避けるべく、重なっていた体を引き剥がして逃げを打つが。
「槻右!」
 ウコンバサラを地に突き立てた拓海が背を丸めて愛する者を呼ぶ。
 ここまで拓海の後ろに護られてきた槻右はその背を蹴って跳んだ。宙で一回転、蠢くスライムのただ中へと降り立つ。
 もちろん、なにも考えずにここへ来たのではない。モスケールで戦場を俯瞰し、スライム密度がもっとも高いポイントを選んでいた。
「逃してあげるとでも?」
 その指が天を指せば。
 晴天を一気に塞ぐ暗雲――いや、何処とも知れぬ世界より顕現した数千、数万に及ぶ“硯羽”が、その切っ先を閃かせ、偽りの命に穢されし大地へと殺到した。
「槻右さんナイス。これは俺からおまけだよ」
 青を取り戻した空へ、若葉が白光の矢を射放した。
 大きな弧を描いて飛んだ矢が降り落ち、起爆。衝撃波でまわりのスライムを消し飛ばす。
「さあ。追撃戦、ですね」
 槻右は冷たく引き締めた面を傾げ、残るスライムどもへ“硯羽”の切っ先を突きつけた。


 愛用のノートパソコンに映した報告書に“。”を打ち、報告官――電気石八生はフルベントと呼ばれる型の大振りなパイプを口から離した。
「と、ここまではそんな感じ?」
 やけに響く低音でつぶやいたのは、実に太ましい坊主頭のおっさんである。
「あ、はい。すみません……」
 木のテーブルの向かいに座した槻右が首をすくめてうなずいた。
 そんな彼が、左隣の拓海の肘をちょこんとつまんでいる様を見て、おっさんはぼってりとした唇の端を吊り上げて。
「仲いいねー。旦那さん頼られてー、いいねいいねー……いい、ねぇ」
 てれてれうつむくふたりの尊さに、深いダメージを負ってうなだれるおっさん。ほぼほぼ切腹状態である。
「あ……あの。いつも、お仕事、お疲れさま、です。素敵な報告書、何度も、読み返してるの」
 拓海の左にちょこんと座った杏樹がにこにこ顔でうなずいた。
「いやいやとんでもない! それより申し訳なくてねぇ……なんかぜんぜん、みんなの活躍、報告する機会ねぇから……」
 申し訳ねぇ。手刀を切り、電気石は煙草を詰め替えたパイプに火を点けた。
 パイプから漂い出す紫煙は甘いチェリーの香り。非喫煙者がそろう前では吸わないのが常だが、報告書を作成するためのひとつのスイッチングになっているので、報告書作成に際しての聞き取りには紫煙が欠かせない。着香――バニラやベリー、蜂蜜等々の香りづけ――煙草を選ぶのは、せめてもの……というやつだ。
「あー。あと、ここまででなんか特記事項みたいなのある?」
「あ、はい。今回、近隣への被害はありませんでした!」
 杏樹の向かいにいる若葉がぴしりと声音を張って言う。
「ん。いいねー。依頼達成度に加算しとくわー」
 よし! 拳を握る若葉。しかしその左隣では、央がアイスコーヒーのステンレスカップを傾けていて、この喫茶チェーン店のコーヒーよりも苦い笑みを浮かべていた。
 ちなみになぜ電気石が支部ならぬ喫茶店にいるかと言えば、報告官というものが業務請負だからなのだがともあれ。
「ここまでなら大成功つけられたんだけどねぇ」
 そう。問題はここからだ。
 最初にうっすら聞いた……そしてまわりに集まったエージェントたちの妙にぼろっちい姿から、電気石は依頼の顛末を思い浮かべて鼻息を吹き。
 とりあえず、聞き取りを再開した。


 自らのウェポンズレインと若葉のアハトアハトの連撃により、スライムの半ば以上を粘酸の溜まりへと変えた槻右。
「先陣、行くぞ」
 殲滅されたスライムの奥へと跳ぶ央に続き――
「きみたちを産み落とした愚神に祈りなさい。僕たちの手で、苦痛なき死を賜れるように」
 ――右足を踏み出して。
「え?」
“ずりー”からの“どばしゃー”。ちゃんと説明するなら、ブーツのヒールが粘液を引っかけたせいでコーティングされ、下ろした瞬間、そのまま前へ滑ったことで背中からぶっ倒れたのだ。
「あ、コケた……バナナ?」
 ぴんと天を指す槻右の右足を見やり、若葉は思わずつぶやいてしまったが――今はネタの時間じゃない。
「世話の焼ける」
 カバーに入った央が再び呪符を飛ばし、粘液のただ中でわたわたもがく槻右の前に氷杭の柵を形成した。
「援護!」
 柵に触れて凍りついた仲間を乗り越え、槻右に迫ろうとするスライムへ矢を射込み、次の射撃ポイントを探る若葉だったが。
 彼の視界を埋め尽くす、スライム、スライム、スライム。
「どこから沸いてきたんだ、こいつらは……拓海!」
「わかってる!」
 央が舌打ち、拓海と共に前へ駆け出した。拓海に盾役を任せ、自らは攻めに専念して――と、思っていた時期が、彼にもありました。
「たくみ……」
 涙目で訴える槻右に、拓海は背中越しに言葉を投げる。
「ふっ。鍛え抜いたこのマッスル、今こそ躊躇なく見せつける! 槻右も惚れなお」
「みえる……ぼく、みえそう」
 どういうこと? 格好つけて言い置いていこうとしていた拓海が、決めゼリフを切って振り向けば。
 槻右の軍服風にアレンジされた忍装束が、じぶじぶ、溶け出していた。
 スライムは強酸性。粘液にライヴスがどれほど残されているものかは知れないが、エージェントの体は無理でもその装備を溶かすくらいの効果はあるらしい。
「えーっ!? なんで溶け――ちょ、見える見える! 夫さんゆるしませんよ! よそんちの人に妻がスライムまみれで柔肌晒すとかぁ!」
 さらにそこへ。
「拓兄様と、槻右さんの、ピンチ。杏樹に、お任せ、なのーっ!」
 どどばしゃー。駆けつけようとした杏樹が豪快としか言い様のないヘッドスライディングを決めた。まあ、ローション相撲の土俵へ普通に入ってこようとすれば、舞踊家だってこうなるに決まっているわけだが、そんなことよりも。
「杏樹、溶けちゃう、のー!」
 ぬたぬたの杏樹が「きゃー」のポーズを決めた瞬間、その装束がぼろっと溶け落ちて大変なことに!
「アンー!? 大事な大事なお年頃の妹が大胆になっちゃうとかお兄さんゆるしませんからー! アンをくださいとかいうオトコは全員ボッコボコだよ!? あー! 槻右はもっと人妻なんだって自覚をですねー!」
 槻右と杏樹をなんとか覆い隠そうとする28歳。青くなったり赤くなったりしながらじたばたするその様は実に哀れで、たまらなくぽんこつだった……。
「で、俺はどっちにコートをかけてやるべきなんだろうな?」
 スライムをかわしつつ、装備していたライヴスコーティングのレインコートを手にしてため息をつく央へ、若葉がゆっくりかぶりを振ってみせた。
「どっちにかけても拓海さんのぽんこつ、治らないんじゃないかな」
 と。
「こうなったら夫で兄の俺がやることはひとつ!!」
 唐突に上半身の装備を脱ぎ捨てた拓海が、そのへんで蠢いていたスライムを引っつかんでゆらり、立ち上がる。
「たくみ……かっこいい」
「拓兄様、鋼の体、なの」
 ちょっと錯乱中なのかなーって感じの槻右と杏樹が、自分で言っても確かにはずかしくないほど鍛え上げた拓海の体にうっとり。
 ふたりの視線を独占する夫であり、兄様である拓海は、それはそれは見事なワインドアップを決め、央に全力投球ならぬ投スラ!
「当てさせないさ。なぜなら俺のスーツは――水洗いできるタイプじゃないからだぁ!」
 サイドステップであっさりかわして、眼鏡の端をキランと光らせる央だったが、発言はなかなかアレだった。
「溶けたらクリーニングもいらないだろー! っていうか槻右とアンだけはずかしい目に合わせとくわけにいかないんだよ! おとなしくスライム喰らえ! ちくしょー、華麗にかわしてんじゃねーや! そういうかっこいいの、俺がするはずだったのにぃ!」
「おい、後半おかしくなってるぞ拓海! それに生きスライムが当たったら服だけじゃすまないだろう!」
 スライムを拾っては投げ、投げては央を追いかける拓海と、レインコートを闘牛士のムレータ(赤いフランネル布)よろしくひらめかせて拓海の投げスラをかわし、いなし続ける央。
 ふたりがわーわーやり合っている最中、槻右と杏樹はなんとか拓海に加勢しようともがいていた。
「僕と杏さんで背中合わせになって、前だけ隠して」
「早く、行かないと、拓兄様、負けちゃう、です」
 動くたびに崩れ落ちる衣装。前を隠すにはすでに相当トリッキーな技が必要なはず。
「なんにも見てないから! 俺なんにも見えてないからね!」
 固く目を閉じたまま弓を射まくる若葉。その射撃による熱がスライムやら地にわだかまる粘液やらをでたらめにふっと飛ばし、央と拓海、それどころか槻右と杏樹までもを追い詰めているわけだが――見えていないのでしょうがない。
 まあ、というわけで。
 ぽんこつ仕様の拓海を粘液溜まりに放り込んでサヨナラした央が残る仲間に目を向け。
「泉さん、フットガードを自分と槻右にかけて全力離脱! 若葉は目を開けてまっすぐ走れ! そっちに見ちゃいけないものはいない!」
 果たして央は極獄宝典『アルスマギカ・リ・チューン』を開く。副作用のハイテンションがいい感じで眼鏡を輝かせ、“魔王様モード”を発動させた。
「ふふふははは! そろって消し飛べゴミ雑魚どもォ!!」
 よくわからない力場が央を中心に膨れ上がり、消し飛ばした。
 そのへんのスライムと、本人を含めたエージェント全員の服という服のすべてを――

 その後は、槻右がどこからか取り出した弱アルカリ性洗剤の活躍なんかもあり、スライムは無事掃討されたということは、とりあえず追記しておこう。


「それでみんなレインコートだったかー。いや、気にはなってたんだけどね、最近そういうファッションはやってんのかなーとか」
 電気石は報告書のテキストデータをセーブし、消えてしまったパイプの煙草に火を点けなおした。
 聞き取り中、皆がずっとカサカサしていた理由が若人のおしゃれじゃなかったことに安堵しながら……時代に取り残されるが常のおっさんは、いろいろ複雑なんである。
「その、報告官は、どう思いました、か?」
 おどおど、槻右が訊く。それだけやらかしてしまった悔いが深いんだろうが――
「なにを思いますーってのはないけど」
 声は低いがまるで重々しさなんか欠片もない口をあっさり開き、電気石は槻右のほのかに赤く色づく顔へ目を向けた。
「荒木さんは三ッ也さんにかっこいいとこ見せたいんだろうなって思うしさ、そういうとこ隙あらば褒めたげるといーんじゃね?」
 思いもしない角度からの言葉に、あわあわと拓海の影に顔を隠そうとする槻右。
 それをあたたかな表情で受け入れた拓海はふと、顔を曇らせた。
「最後のはまあ、あれでしたけど。もっとうまく戦うコツってあるんでしょうか?」
 三ッ也さんにかっこよく見せるコツもってことか。さすがにそれは言わず、電気石は少し考えて。
「H.O.P.E.でも選りすぐりのみんなにアドバイスできること、ないとは思うんだけど」
 電気石は少しだけ姿勢を正し、エージェントたちに向きなおった。
「みんながごく自然に調節してる間合を考えるとおもしろくなるよね」
 と、左右の掌で一定の長さを示し。
「たとえばウコンバサラの全長が70センチ。刃が先端についてるから、敵との間合も先端部を規準に考えるよね。でも、あと一歩間合が縮まったら、当然振り回して攻撃はできない。そしたら持ち手のすぐ近くにある柄頭で急場を凌ぐ、もしくは膝とか肘で突き放して敵の体勢崩す。そういうのが組み込まれてると戦術的にも見せ場的にも効果的だよね」
 次いで手刀を作ってみせ、話を続ける。
「迫間さんの刀は“引いて斬る”得物だから、刃の真ん中くらいから敵に当たってないと引き斬るだけの距離が稼げない。だとしたら思った以上に踏み込んでるはずだし。皆月さんの弓にしても位置取りって“そこじゃなきゃいけない”理由があるっしょ? 泉さんがいつも最前線に向かうのもだけど」
「一刀での必殺を狙えば確かにそうなりますね」、央は自身の間合を思い描き。
「戦局を見て取りたいってのと、確実な支援ができるようにって理由ですね!」、若葉が強く応えて。
「はい、です」、杏樹が胸の前できゅっと右手を握り締める。
 電気石はうなずき、あくまで僕個人の意見だけどねと付け加えておいて。
「そういう行動の必然性はもちろんだけど、依頼に向かうみんなの気持ちが見たいかな」
 エージェントが聞き取りに際して語る内容は、言ってみれば「行動の結果」だ。そこへ至る式を為すものこそが、エージェントの心情であり、時に漏らす言葉である。
「“エージェント”の行動だけじゃなくて、内側の魅力まで伝えたいのが報告官だからさ。失敗だって彩りっしょー。ま、僕の場合は力不足で伝えきれないこともあるんだけど……」
「報告官――」
「ぎょーがん! おぜわになりまず!」
 電気石的には不思議なほど感動してくれた槻右と拓海に「申し訳ないねー、歳取ると語りが長くてさー」と応えつつ、報告書に最後のデータを打ち込んだ。
「報告書名『緑喰』、依頼達成度は成功と。あ、みんな服とか買って帰ってね。特に泉さんは……ガチやべぇから」
 おっさん的気づかいを見せる電気石に、その杏樹がカサカサとナイロンを鳴らし、そろえた両手を伸べる。
「これ……おみやげ、です」
 そこにあったものは、キューバ産プレミアムシガーを収めた小さな木箱。
「甘いものと、迷ったけど……こっちのほうが、お好きかな? と思って。選んだのは、英雄さんなのですが、お口に合うといいな……って」
 礼を言って受け取った電気石は、語り合いながら店を出て行くエージェントたちを見送った後、行儀悪くシガーの先端を噛みちぎって吸い口を作り、火を点けた。
 上質な煙草葉の甘香が紫煙に乗ってたゆたい、電気石はその芳醇に浸る。
 成功も失敗も思いきってやってくれたらいいよ。報告官はみんなのいちばん近くにいるファンなんだからね。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【三ッ也 槻右(aa1163) / 男性 / 22歳 / 拓海の嫁///】
【泉 杏樹(aa0045) / 女性 / 17歳 / 厨房出禁系アイドル】
【迫間 央(aa1445) / 男性 / 25歳 / 素戔嗚尊】
【皆月 若葉(aa0778) / 男性 / 20歳 / 大切な日々と共に】
【荒木 拓海(aa1049) / 男性 / 28歳 / 槻右は嫁!】
【電気石八生 / 男性 / おっさん / 報告官】
イベント交流ノベル -
電気石八生 クリエイターズルームへ
リンクブレイブ
2018年06月11日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.