▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『 それは古の…… 』
アイリスaa0124hero001)&ルゥナスフィアaa0124hero002

 それは穏やかな午後の事。友人からいただいた茶葉で紅茶なぞ入れている穏やかな午後。
 久しぶりの休みのせいか契約者は小さな友達と森の中に行った。
 日差しが気持ちいい。まるで羽を乾かすようにまどろんでいると、契約者についていき損ねた『ルゥナスフィア(aa0124hero002@WTZEROHERO)』が『アイリス(aa0124hero001@WTZEROHERO)』の膝に乗った。
「ひまー」
「ひまかい?」
 そう穏やかに微笑むとアイリスはルゥナスフィアの頭を撫でる。
「アイリスママ、何かお話しして」
「お話し。と言ってもこちらに来た当たりの話はあらかたしてしまったしね」
「だったら。前のはなし」
 まるで伸びきった餅のようにアイリスの上でリラックスしているルゥナスフィア。そんな彼女が楽しめる話。
 少しアイリスは頭を悩ませるとゆっくり話し始めた。
「だったら。こんなのどうかな?」

   *   *

 それはかつての話、しかしうんざりするほどに生きてしまった後の話。
 アイリスがまだ、黄金の妖精と呼ばれていた時の話。
「それって今もじゃないママ?」
「ああ、ニュアンスが違うんだ。あちらの世界では黄金に特別な意味があるんだよ」
 告げるとアイリスは咳払いをして話を続ける。
 それはアイリスの駆け抜けた時代の中でも特に穏やかな時間の事。
「突如山が動いてね。一瞬何が起こったか分からなかったんだが。そのうち思い出したんだ」
「なにを?」
「そう言う友人がいたってことにね」
 山はアイリスを見下ろして告げる。
「はははは! 久しいな黄金の。少し見ない間にまた小さくなったのではないか? 危うく見落とし踏み潰すところだったぞ」
「いやいや、大地の……妖精は通常この程度の大きさなんだよ、きみが大きいだけなんだ」
 告げるとアイリスは飛び上がる、そのころ背中の翼は羽ばたかせるだけで自在に空が飛べていた。
 その勢いでもって山のような古妖精の背後に回ると森が傷ついていないかを確認する。
「おや、飛んできたのか、律儀なことだ」
「きみはそれをすると烈火のごとく怒るからな、私が言い含めた」
 その『大地の古妖精(NPC)』の方向から発せられた凛とした別の声。
 それに反応してアイリスは身を寄せるとそこには『原書の古妖精(NPC)』と呼ばれる友人が立っていた。
 ダークブラウンのショートヘア、隠者のように肌と顔をさらさないローブ姿だが、アイリスの前では気兼ねはないのかフードをとる。
 サイズ的には人間に近いかもしれない。エルフと言った方が伝わりやすいだろうか。
「二人が一緒とは、珍しいじゃないか。今日は何かの記念日かな?」
「たまたま目が覚めただけさね」
 告げたのは大地の古妖精。
「目覚めて見れば体がなまってしょうがない。そこで」
「ケンカを吹っかけに来たわけかい?」
「腕試しと言ってほしいものだ」
 アイリスは呆れたように首を振る。
「それで、原書の……君はおもり役かな」
「こいつが本気で暴れれば星が危ない。監督役は必要だろう?」
「きみも苦労する」
「お互いにな」
「それで、ええ? やるのか? やらないのか?」
 告げる言葉にアイリスは武装を召喚する。
 周囲を舞い散る色とりどりの宝石たち。するとアイリスの戦いに喚起するように森の花々がつぼみをほころばせた。
「森を傷つけたなら許さないからな」
「ああ、それは原書のやつにいいな。私はかんよしない」
「全く」
 次の瞬間不意打ち的にアイリスがレーザーを放った。宝石を束ね、または散布させ、360度からのレーザー攻撃。
 それが山の様な巨体をなめて、そして。
「まずはその垢を落したらどうかな」
 大地の古妖精はその攻撃に身を震わせるとその表面に蓄積した土砂。岩石、そこに根付いた木々を振るい落としていく。
「何年寝ていたんだい?」
 その言葉には原書が答えた。
「ざっと千年。まぁ地形の一部となるには十分な年月だ」
 次の瞬間、大地の妖精は腕を天にいっぱいに伸ばした。その腕は太陽がつかめそうなほどに大きく太く。
 もはやアイリスなど比較にならない大きさをしている。
 まさしく山。 
 そして人形の姿に戻ると。
「気を使わせたねぇ、それじゃ。はじめようか」
 次の瞬間には拳を叩きつけていた。
 それをアイリスは大きく旋回して回避。次いで平手が飛んできたが指の隙間を縫って回避するが風圧ですら体制を崩しかねないほど圧を持っている。アイリスは紙きれのように宙をまった。
 それに対して大地のは両手を打ち合わせるようにアイリスを叩く。。
 その衝撃音はソニックムーブのように暴力となってあたりに吹き付ける。
 結界で守られていなければそれで地表がめくられていただろう。
 しかし。
「目覚めの体操はおわったかい?」
 アイリスはその親指の上で座り大地のを見つめていた。
「ほうほう、寝て過ごしていたわけじゃないみたいだね」
「きみと一緒にしないでほしいね」
 次いで宝石を束ねてレーザーを照射。
 両目を狙う。
 それは直撃、呻き上半身をそらした大地の古妖精。
「さて、満足したならお引き取り願おう。私は私で用事が……」
「だれが!!」
 そう大地の古妖精の咆哮が轟くと戦いは突如加速した。
 先ず天が暗くなる。
(光が歪んだ……そう言う事か)
 急に体勢が保てなくなるアイリス、次いで地面から突き立った岩の柱を避ける。それが無数に地面から生えると、その柱から杭のように枝が伸びる。その追撃をアイリスは高速で飛行しながら回避。
 しかし。
(行動を誘導されている)
 目の前に現れる大地の妖精の手のひら。あえて重力に従って直下に逃げることでそれを回避するが、地表に近いのはまずい。
「終わりだ!」
 大地のが足を踏み鳴らすと地面が持ちあがり、それは無数の手となってアイリスを捕えにかかる。
「やれやれ」
 絡みつく腕。しかし。
「この程度で妖精を捕まえられるなら、人間たちは苦労しないだろうね」
 羽の形が組変わった。それは一つの文様を描くように円状に広がる。
 アイリスの翼は結晶の集合体なのだ。そしてその粒一つ一つが宝石としても機能する。
 それを使った魔方陣の牽制、意味のある言葉さらに意味のある魔方陣を組むことにより儀式をより強固にするように。
 アイリスは何重にも重ねられた魔法を一気に発動し。
 先ず発動の余波で腕を吹き飛ばして。そして発動するためにため込んだ光エネルギーで目をくらませ。
「少し大人しくしたまえ」
 発射された光の球体は大地の心臓をえぐるように打ち出される。
 だがそれも大地のにとっては野球ボールに当った程度のダメージでしかない。
 人間程度なら蒸発する攻撃、それを最大まで束ね圧縮したエネルギーでもだ。
「はははは! 捕えるのが無理なら、まとめて死ね」
 次いで大地のの背中から打ち出された鉄の塊は空中で水銀のようにうねると弾丸を絨毯爆撃のように打ち込んでいく。
 それに対してアイリスは真っ向から対応することを放棄。
「だが、忘れてはいないかな、私も大地には適性があるのだよ」
 次いで先ほど生成された岩石のツリーが動いた。
 ドームのようにそれが広がり一瞬視界をふさぐ。
 だがそれは一瞬弾丸の衝突を遅らせるに過ぎない。
 それでいい。
 しかしそれでいいのだ。
 アイリスは視界をふさぎたかっただけだ。
 次いで地面の中からレーザー斉射。足を集中的に削るとあたりに焦げ臭いにおいが漂う。
「そこか!」
 手を突っ込む大地の。地中は大地の古妖精の胃の中も同然である。
 だがそれは違う、それは誘導だ。むしろ。
 その腕の表面を蔦が張っていく、花が咲いていく。
 大地の妖精は地面に縫いとめられた。
「本当はこちらだ」
 さぁっとアイリスは姿を現す、何もない空中で。
「お前! どこに隠れてた」
「光は波であり、粒であるというのはしっているかな?」
 首をかしげる大地の古妖精。
「まぁ量子返還とは違うんだけどね、光によって空間に干渉して光学迷彩と共に球自体に避けてもらったというか」
「しゃらくさいね!!」
 大地のは腕を途中で腕を切断するとその断面から鉄片を無数に発射。
 アイリスはおたてられるようにその攻撃からにげる。
「これはまともに戦っても勝負がつかないねぇ」
 困ったようにつぶやくアイリス。
 アイリスも古からの妖精として誇れる戦闘能力を有しているが大地の古妖精は別格である。
 何せ星そのものを相手にしているような耐久力と物量なのだから、しかも奴はまだ本気を出していない。
「どうするか」
「どうもできないよ!」
 アイリスが地面を見るとばらまかれた鉄片が姿を変え鉄板のように地面を覆っていた。
 地面全部である。
「君……」
 アイリスの声が一瞬冷えた。
「森に手を出したらわかっているね」
「そ。それ大丈夫だ、私を信頼しろ」
 あわてて告げたのは原書の古妖精。
 だがそれでも、大丈夫とわかっていても気分は悪くなるものである。
「そろそろ私も本気を出そう」
「できるかな!」 
 次の瞬間打ち上げられる鉄板。アイリスは手に宝石を纏わせ、そこから発せらる光の束で鉄板を切断。
 穴を作って潜り抜けるが背後で鉄板が形状を変化させる。
 球体のようになったそれに対してアイリスはまたも風穴を開けるために宝石を円状に配置、レーザーを照射。その隙に大地ののパンチがさく裂し、アイリスはそれをもろに受けて吹っ飛んだ。
 対岸の山(本物)に激突し、土ぼこりを舞い上げるアイリスに。
 それに追撃しようと大地のは重力操作。上空に打ち出されると吸い寄せられるようにアイリスが突っ込んだ山に突っ込む。
 なんと大地に古妖精は山ごとアイリスを粉砕したのだ。
「本当に、規格外でやりにくいね」
 片羽を吹っ飛ばされながらアイリスは命からがら逃げだすが。その背後から手が伸ばされる。
 捕まる。そう思った矢先、舞い上がった木々が枝を伸ばして大地の妖精をがんじがらめにしようと体をはっていく。
 間一髪のところでアイリスを逃したと思われた大地の古妖精。
 しかし。
「どーん!!」
 大地の古妖精がそうつげると、地面がオレンジ色に燃えたち。炎の柱が地面から伸びてアイリスを襲った。
 大地の溶岩脈を操作したのである。
 アイリスは草木に比重を置く妖精だ。なので火には弱い。
「はははは!! 燃えろ燃えろ!」
 しかし。
「知っているかね? 火山口付近に咲く花の存在を」
「あ?」
 溶岩がやむ、するとアイリスは小さくコンパクトにまとまって空中を漂っていた。琥珀の様な宝石に包まれて、熱を遮断しながら。
「そして植物が育つには気温と土の温度が重要なんだ」
 次の瞬間、アイリスの背中から花咲くように翼が大きく空に広がった。
「見せたことがなかったね。これが私の祝福だ」
 次の瞬間、大地の古妖精は首を抑えながらそのまま倒れた。
「な! 苦しい、力が!!」
 みればその体のあちこちから草木が芽吹き華が咲いている。頭からは桜が顔をだし今にも花咲きそうなまでに成長するほど。
「おまえ、まさか私に種子を埋め込んだな、さっきか? 腕の時か?」
「精確には一番最初、君の垢を落した時のレーザーと一緒にだ」
 アイリスの纏う琥珀に亀裂がはいる。そして新しく生まれ直したアイリスは首を振るといつもの笑顔のまま大地の古妖精に告げた。
「どうかな? 幻覚、過回復、そして直接養分を吸われ。新たな種子が芽吹いて君に降り注ぐ。これが」
 これが黄金の祝福の力だ。その本質は進化を促すこと。
 その力をもってすれば。千年の生態系変化もほんの数十分で終わる。 
「どうする? 続ければ続けるほど、不利だと思うがね」
 桜が咲いた。桜は美しい桜吹雪を原書の古妖精の肩にかける。
「勝負ありだな」
 そう告げると、アイリスは全ての祝福を解いた。


   *   *

「え! もりはどうなったの!!」
 ルゥナスフフィアが顔をあげた。
「元通りにしてくれたよ、原書のが、どういう種か仕掛けかはわからないけどね」
 そう告げるアイリスは一口冷めた紅茶を飲みほして。そしてルゥナスフィアに視線を戻した。
「そろそろ晩御飯の準備をしようか」
「はーい」
 告げると二人は能力者を探しに森の中に戻っていく。
 これが、アイリス一家の何気ない日常の話と、何気なくなかった日常の話である。 

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
『アイリス(aa0124hero001@WTZEROHERO)』
『ルゥナスフィア(aa0124hero002@WTZEROHERO)』
『大地の古妖精(NPC)』
『原書の古妖精(NPC)』
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

納品が遅れて申し訳ありません、鳴海でございます。
 今回はいつものアイリスサンの戦闘スタイルとは対極的でありながら、性格はいつものアイリスさんを意識してみました。
 そしてチート級の力同士での戦闘というものもかけて楽しかったです。
 気に行っていただければ嬉しいデス。それでは本編でお会いしましょう。
パーティノベル この商品を注文する
鳴海 クリエイターズルームへ
リンクブレイブ
2018年06月08日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.