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『トップ、ぎゃーっ!?』
加賀崎 アンジュjc1276)&大空 彼方jc2485


 さあ、いよいよ始まる第一回マニアックな中古車で無難な新車を買う同級生達にどっちがスタイリッシュに差をつけられるか勝負しようじゃない大会、長い!
 長いからスタイリッシュマニアック選手権、略してSM選手権!
 なんだかヤバそうな名前になったが気にするな!

 なお当番組の企画発案は自動車部、アナウンス担当は名もなき放送委員でお送りします。
 対決の模様はドローンによる空撮でリアルタイムにネット配信、およびハイライト編として編集を加えた映像を久遠ヶ原のローカルネットで放送する予定ですので、お楽しみに!

 さて、テストコースには既に準備万端整った二台のマシンがスタンバイ!
 まずはドライバーの紹介のからいってみよう!

 最終チェックに余念がないのは、漆黒のレーシングスーツならぬ真っ黒に汚れたツナギに身を包んだ加賀崎 アンジュ(jc1276)!
「ツナギに染みついたこのヨゴレが、私とこの子の戦いの歴史よ」
 アンジュが「この子」と呼ぶのは真っ赤な○ンダ13xxクーペ9S、フェンダーから飛び出た目玉か触覚のようなサイドミラーが可愛い、1960年代に颯爽と登場した1300cc空冷式エンジン搭載の迷車だ!
 超高性能なエンジンを載せながら、その取り回しの難しさからジャジャ馬と呼ばれ短命に終わったこのシリーズ!
 あの、失礼ですがこの車はちゃんと走るんですか?
「ほんと失礼ね、走れるからここにいるんじゃない」
 ごもっとも。
 しかしこの車は今や部品取り用の車体さえ満足に残っていないとか、一体どうやって整備を?
「そりゃもちろん、作ったのよ」
 部品を?
「そう、なかったら作ればいいってね」
 それは想像を絶する苦労があったのでは……
「だから言ったでしょ、戦いだって。でも、お陰で仕上がりは最高よ」
 なるほど、確かにそれは整備という名の戦い!
 この油にまみれたツナギは歴戦の勇者の証!
 アンジュと13xxちゃんの走り、これは期待できそうだ!

 続いては蒼のボディカラーが爽やかなトヨ○MRx AW11型Sグレード(初期型後期仕様・1500cc)のドアにもたれかかり、観客席に手を振る大空 彼方(jc2485)!
 ずいぶんと余裕のある様子、これは仕上がりに余程の自信があるのか!?
「まあね、なんたってカーオブザイヤー受賞の伝説の名車に、外付けターボとスーパーチャージャー、強化ブレーキングシステムまで導入したんだから!」
 なるほど、元々の性能の上に更に強化を図ったと!
「それに見て、スタイリッシュって点では走る前から勝負は決まってるようなものでしょ?」
 確かに、フェンダーミラーがドアミラーになるだけでも、なんかスタイリッシュな感じが!
 それにこの爽やかな蒼!
 レーシングスーツも蒼一色ですが、これには何かコダワリが?
「んふふー、聞く? 聞きたい? でもそれは勝利のインタビューでね!」
 ではそれを楽しみに、スタイリッシュな走りに期待しましょう!

 さあレース開始も目前、ここでコースの紹介だ!
 テストコースと言っても、やはり久遠ヶ原学園自動車部のコースは普通じゃない!
 どの辺りが普通じゃないかと言えば、そこは見てのお楽しみだ!

 カウントダウンが始まる!
 両者運転席に乗り込んだ、いや13xxちゃんはコックピットと言うべきか!
「んじゃ、楽しんで行こう!」
 彼方の右手がスタイリッシュに挙げられた!

 3、2、1、イグニッション!!

 ばすん、ぼすん、ぼんっ!!

 おぉっと、さっそく13xxちゃんにトラブルか!?
 開いたボンネットから煙が吹き出ているぞ!
「大丈夫、想定内よ」
 アンジュは慌てず騒がずボンネットを閉じ、改めてコックピットに乗り込む!
 再度、エンジン点火!

 ぼすぼすぼすぼすぷすん、ごぉーーーーーっ!!!

 今度は無事に動き出したか、しかしエンジン音がものすごい!
 そしてスタートでモタついている間にMRxは華麗に遙か彼方だ! 彼方だけに!!
 さあどうする13xxちゃん!
 追い付けるのか13xxちゃん!
「この子の身上は直線の加速よ。世界で最初で最後と言われた伝説の空冷エンジンの底力、見せてあげるわ」
 アンジュ、アクセルを踏み込む!
 吠えるエンジン、タイヤの跡が路面に黒い筋を刻む!
 摩擦熱から生まれた白い煙とゴムが溶ける異臭を残し、真っ赤な車体が飛ぶように走る!
 いかに久遠ヶ原コースと言えど、最初はやはり平坦な直線!
 カーブさえなければ13xxちゃんは無敵だ!

「追い付いて来たね、そう来なくちゃ!」
 抜きつ抜かれつ白熱のレース展開、両車並んだまま斜度33.3の急斜面へ!
 しかもただの急斜面ではないぞ、坂の途中でコースの幅が一車線になっている!
 更にこの先は崖っぷちに貼り付くような一方通行の砂利道だ!
「つまりここで前を取れば、暫く抜かれる心配はないってことよね」
 13xxちゃん、坂の途中で更に加速!
 噴き上がる煙は摩擦によるものか、それとも熱膨張したボンネットで肉でも焼いているのか!?
「残念、目玉焼きよ」

 じゅわーーーっ!

「修理のついでにマニピュレータを取り付けておいたの」
 なんと、ロボットハンドが器用に目玉焼きを焼いている!
 これは何ともスタイリッシュ……なのか!?
 そしてアンジュは目玉焼きに何をかける派なのか!?
 しかし煙が晴れた時には既に食後のコーヒータイム、そして勝負にも決着が付いていた!
 前に出たのは13xxちゃん!
「でも、まだこれで終わりじゃないよ」
 おっと、コースは既に崖っぷち!
 物理的に追い越し不能なこの道で、彼方はどうやってアンジュを抜こうと言うのか!?
 まさかMRxには飛行機能が!?
「そこまでやったら、なんか趣旨が違うじゃない。これはあくまで、中古車でスタイリッシュに走るのが目的なんだから」
 しかし飛ばずにどうやって抜くつもりだ!?
「こうするの! 道がなければ作れば良いってね!」

 がごん!! ガガガガガッ!!!

 おぉっと、MRx斜面に接触……いや、斜面に取り付いた!
 ほぼ直角に切り立つ斜面をそのまま走るMRx、重力はどうした、仕事しろ重力!
「ふふふ、超改造MRxは伊達じゃないわっ!」
「ちょっと、そんなのアリ!?」
「何でもアリ! お先にっ!!」
 ぎゅおぉぉぉん!
 追い越しざまに、バラバラと小石や土砂のお土産を降らせていくMRx!

 ガッシャン!!

 あぁっ、ひときわ大きな落石が13xxちゃんのフロントガラスを直撃だ!
 貫通は免れたがヒビだらけで前が見えない!
「丁度良いわ、熱くて困ってたのよ」
 アンジュ、スタイリッシュに足でガラスをブチ破る!
 これで視界と風通しが良くなったが、今度はいよいよ高熱を帯び始めたボンネットから吹き付ける熱風がドライバーを直撃だ!
「あっつ……」
 アンジュ、ここで前を取りゆっくり走ってエンジンを休ませる計画だったか、しかし計算が狂った!
 どうする、クールダウンは諦めて更にスピードを上げるか!?
 しかしMRxは既に遙か先を行く!
 今更ここで急いだところで追い付けるのか!?
「追い付けるかどうかじゃないわ、追い越すのよ!」
 アンジュ、更にアクセルを踏み込んだ!
 ガードレールのないギリギリの砂利道、コースアウトは即ち奈落に真っ逆さま!
 制動に不安のある13xxちゃんには厳しい環境だが、路肩をぶち壊しながら勢いで突き進む!
「私の後に道はない、私の前に道は出来るのよ!」
 確かに! その後には道と呼べるものは残っていない!

 一足先に難所を抜けたMRx、その目の前に横たわる幅100メートルの川!
 先へ行くにはここを渡る必要がある、しかし橋はない!
 さあどうする!?
「どうするって、渡るしかないでしょ」
 水深はどれほど……あっ、今入った情報です!
 この川は通る場所を慎重に選べば水深10センチ程度、エンストの心配なく乗り切れるそうです!
 ただし深いところは1メートル以上!
 これはコース取りの見極めが重要になってくる、ドライバーの腕の見せ所だ!
「なるほどね、見せてやろうじゃない!」
 ギアを低速に、ゆっくりと浅瀬に乗り入れるMRx!
 しかし、その背後から13xxちゃんの爆音が!

 じょぼごごじゅぼばぁぁぁーーーーーーーーっ!!!

 これはものすごい音と水蒸気!
 真っ白で何も見えないが、どうやら 13xxちゃん何も考えず川に突っ込んだか!?
 これはエンスト待ったなし……いや、進んでいる!
 発生する蒸気を推進力に川を渡るだと!?
「空冷が水冷に変わっただけよ、問題ないわ……おかげで良い具合にエンジンも冷えたし」
 これが蒸気機関の新たな可能性か!
 無事、かどうかはわからないが、とにかく川を渡りきった13xxちゃん、ボディの継ぎ目という継ぎ目から大量の水を撒き散らしつつ河原の砂地を走る!
 通常ならここは砂にタイヤを取られて立ち往生する車が続出するポイントだが、予期せぬ散水のおかげで難なくクリア!
 遅れて川から上がったMRxも、ちゃっかりその跡を走る!
「利用できるものは何でも利用しなきゃね♪ ごっちゃんでーす☆」

 次のコースは低μ路、通常は滑りやすい状況でのブレーキやハンドリングを評価し、或いはドライバーの腕を鍛えるための設備!
 しかしここは久遠ヶ原、そんな真っ当なコースであるはずがない!
 ご覧ください、この円形の広場!
 表面は鏡のように磨かれ、スケートリンクよりもツルッツルだ!
 華麗なワルツの調べに乗って、優雅ににクルクル回り踊る13xxちゃんとMRx!
 ハンドリング無効、ブレーキもアクセルも仕事をしない!
 そんな状況でどうやってこのコースを抜け出すのか、それは運!
 そして車体の強度!
 コースのあちこちに突き出た氷山のような突起物、あれにぶつかり、或いは車同士でド突き合いながら、運良く出口に弾き出されるのを待つしかない!
 ボディの大破が先か、ドライバーのリタイアが先か、命がけのカービリヤード、あるいはカーピンボール!
 おぉっと、熱で膨れ上がっていた13xxちゃんのボンネットがとうとう弾け飛んだ!
 MRxは右のライトが大破、片側だけが辛うじて繋がっているバンパーを引きずりーーそれも今、力尽きて路面を滑り、13xxちゃんを直撃!
 その衝撃で13xxちゃんの進路が僅かに変わる!
「ラッキーv」
 MRxのアシストで、13xxちゃんゴォォーーール!!
 一方のMRx、独壇場となったリンクで華麗に舞う、舞い続ける!

 これは大差が付くかと思いきや、次のコースはクラッシュ必至の連続ヘアピンカーブ!
 ここは無理せず堅実な運転で切り抜ける13xxちゃん、その間にMRxが猛然と追い上げて来た!

 ギョギョギョギョごん、ガッ、ズガガガガッ!

 スピードを落とさず、むしろ上げる勢いでドリフトからの横転前転、しかし転がりながらも前に進み、何事もなかったようにコース復帰!
 これは完全に根性論だ、しかし根性で走るのはMRxだけではない!
 剥き出しになった13xxちゃんのエンジンから噴き上がる黒煙、マフラーから噴き出す炎!
 それでも、彼女の走りは止められない!

 さしかかった吊り橋の一本道、今度はMRxが前を塞ぐ!
 しかし13xxちゃんはMRx目がけて突進、カマを掘るかと思いきや……
 乗り越えた! いや、越えずにそのままルーフに乗っかっている!
「少し休ませてもらうわ、頑張って走ってね」
「く……っ」
 突然の過積載に、さすがのMRxも悲鳴を上げる!
 重さでひしゃげるフレーム、弾け飛ぶドア!
 しかし不安定な吊り橋の上では振り落とすこともままならない!

 そして最後の難関、地雷原を抜けて勝負は最終直線へ!
 両車とも既にボディはない!
 その姿はまるで板きれにエンジンを載せただけの四輪台車、いやMRxに至っては既に三輪だ!
 シートも吹き飛び、ドライバーはどちらも空気椅子状態、煤と油と埃にまみれ、髪まで真っ黒に縮れたその様子からは全く見分けが付かない!
 しかしどちらもスピードは落ちない、むしろまだまだ上がる!

 両車鼻先を並べてゴール!
 だがそれでもスピードは落ちない!

 これはお約束のブレーキ故障か!
 ガス欠が先かクラッシュが先か、はたまたバラバラに分解するまで止まらないのか!
 あぁっと、またひとつタイヤが転がった!
 これは一体どちらのーー


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【jc1276/加賀崎 アンジュ/女性/外見年齢16歳/赤の雷鳴】
【jc2485/大空 彼方/女性/外見年齢20歳/蒼の疾風】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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いつもお世話になっております、STANZAです。
この度はご依頼ありがとうございました。

レースはまだまだ続くようですが、残念ながら放送枠(ジスウセイゲーン)が……!
なおライターは車に関して「バンパーって何、ワイパーとは違うの?」というレベルなので、技術的なことにはあまり触れず、演出面で頑張ってみました。
参照動画、めっちゃ楽しかった……!

なお大人の事情により、社名および形式の一部を伏せ字とさせていただきました。
申し訳ありませんが、脳内で変換の上お楽しみいただければ幸いです。

誤字脱字、口調や設定等に齟齬がありましたら、ご遠慮なくリテイクをお申し付けください。
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エリュシオン
2018年06月14日

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