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『今ひとたびの蜜月 』
天谷悠里ja0115)&シルヴィア・エインズワースja4157

 目が覚め、陽が落ち、月が登っても、少女たちが言った通り魔法の店は消えることなくそこにあった。

  ※※※

 ぼんやりと、だが間接照明としては十分な光量を持ったランプが、部屋に一人佇む白薔薇の騎士、シルヴィア・エインズワース(ja4157)の横顔を照らしていた。
 一つに束ねられた金糸の髪と薄い化粧が施されたその横顔は、元々美人である彼女を凛々しくも美しい紳士へと変貌させていた。
 光の加減で愁いを帯びたようにも見えるその表情を見るだけで多くの女性が彼女にくぎ付けになるだろう。

 部屋の隅では音もなく、砂時計がその砂を落としている。
 上に溜まった砂の量をみるに愛し合う時間はたっぷりと残されているようだった。

 ノブの回る音に彼女は扉の方へ体を向ける。
 花嫁が今宵の衣装を身に纏い戻って来たからだ。

「……」

 言葉が出なかった。
 かけようと思い描いていた言葉がシルヴィアの中にはあった。今夜のエスコートの事を考え、彼女の姿を想像するだけで言葉は無限かと思うほどに湧いてきていた。
 だが、花嫁の姿を見た瞬間、その全てがかき消えたのだ。
 唇からはただただ感嘆の息だけが出て行く。

「どうかなさいましたの?」

 天谷悠里(ja0115)、いやユウリ・エインズワースが不思議そうに小首を傾げる。
 学園で、この店で、日常的に何度も見たことのあるはずの少し幼い【可愛い】という形容詞が似合う姿とは全く異な異っていた。
 一瞬の間があってから、それは施されたメイクとドレスが悠里を美しい大人の女性に見せているからだと気が付く。

「いえ、昨日とは随分雰囲気が違ったので。少し驚いてしまいました」

「変、かしら」

 そう言いながらシルヴィアの元へと歩を進める彼女の立ち振る舞いは堂に入っていて、生まれた時から姫君であったかのような錯覚を新郎に起こさせた。

 優雅な動きで一歩前に進む度、純白のドレスにあしらわれた銀糸のレースや刺繍が光を反射して瞬く様子は光を付き従えているようにも見える。
 今ここにヴェールやブーケがあればウェディングドレスとしての役割を十分に果たすだろう。
 シルヴィアはその姿を見てみたいような気もしたが、結婚式はもう終わっている。もう一度式をやり直すのは昨夜の儀式を否定するようだとも思った。

 従者が主人に傅くように膝をおったシルヴィアが乞う様に差し出した手に、シルヴィアより少しだけ小さな悠里の手が重なる。

「この日が来るなんて夢のようです。ユウリ私だけの姫としてずっと愛させてください。いかなる時も貴女だけの騎士でいると誓います」

 まっすぐに悠里を見つめ誓うシルヴィアと悠里の瞳が合う。
 それだけで誓いは正しく受け取られ、愛する許しを得たのだと新郎には分かった。
 シルヴィアは嬉しそうに微笑み重ねられた彼女の手の甲へその唇を触れさせる。

「私は……ユウリ・エインズワースは貴女のもの。身も心もすべて貴女に預けるわ」

 慈愛に満ちた優しい声と口付けが顔を上げたシルヴィアの額に落とされる。
 何度も交わしあった誓い。重ねれば重ねるほど絆が強まっていくようにも感じられる。

「…………」

 悠里が自分のラストネームを名乗ってたことでシルヴィアの中で結婚した実感が沸きあがる。
 結婚式で指輪を交換した時、ここで夫婦として初めての夜を過ごした時も感じてはいたが、彼女の口から直接聞く自分のラストネームは、少しこそばゆいようなそれでいて幸せな実感で胸を満たし涙がにじみそうになるほど嬉しくなる。

「来て……」

 悠里はそっと立たせるとそのまま背中に腕を回す。
 腰に回る新郎の手を感じ抱き合いながら今にも触れ合いそうなほどの近さで互いの瞳を見つめあう。
 黒曜石のような悠里の瞳と、サファイアのようなシルヴィアの瞳と吐息が絡み合い二人を甘い雰囲気が包み込んだ。

「ユウリ……」

「シルヴィア……」

 騎士と姫としての神聖な触れ合うだけのキス。
 ここに、目の前に自分の愛しい人がいるのだということを確かめる行為、この人と共に一生歩いていこうという誓いにも似たそれに二人は小さく微笑みあう。

「やっとこの日が来たのね」

「はい。短いようで長い日々でした」

「愛しているわ」

「私も……いえ、私の方がきっと」

「まあ。私も負けないわ」

 幸せそうに微笑みながら愛を囁きあい、もっと近づきたいと限界まで体を近づけ視線を絡ませ合う。
 二度目の口付けはどちらからともなくとても自然な流れだった。
 先ほどまでのような触れ合うだけの軽いキスではなく、相手を求めあう深く長いそれが終わる頃には二人の肌は少し紅潮し吐息は少し甘くなっている。

 一瞬視線をベッドへ投げたシルヴィアに悠里は頷き、惜しむように体を離すと二人は並んで腰かけた。

 睦言を交わしながらバードキスを何度も交わしては、はにかむように微笑む姿は、初めて夜を共にする男女のようだ。

「大切にします。私だけのユウリ」

「私もよ。私のシルヴィア」

 しばらくしてもう我慢できないとばかりにベッドにもつれるように倒れこんだ二つの影。

 甘くしびれるような声の間を縫うように互いの肌を全身で感じあう音が月明かりに照らされた部屋に響いていた。



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 ja0115 / 天谷 悠里 / 女性 / 18歳 / 愛し嫁御前 】

【 ja4157 / シルヴィア・エインズワース / 女性 / 23歳 / 我が背の君 】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 こんにちは。
 今回もご依頼頂き本当にありがとうございます。

 以前ご依頼頂いた物語の続きということで以前納品させて頂いた物を読み返しながら執筆させて頂きました。女王と姫となられたお二人とはまた違う愛の物語ということでお楽しみいただければ幸いです。

 お気に召されましたら幸いですが、もしお気に召さない部分がありましたら何なりとお申し付けください。

 今回はご縁を頂き本当にありがとうございました。
 またお会いできる事を心からお待ちしております。
イベントノベル(パーティ) -
龍川 那月 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2018年06月18日

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