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『なるようになれ 』
Gacruxka2726

●再会
(確か、あちらの方でしたかねえ)
 一仕事終えての帰り道、Gacrux(ka2726)は記憶を頼りにとある村を目指して歩く。
 何故かと言われて真面目に答えるならば、それは現状が気になったら。以前村長が歪虚に脅されていたのを解決した彼だ。その後の様子を知りたいと思ってもおかしくはない。
「あの…」
 そこで発見した第一村人に声を掛けて、振り返った顔にハッとする。
「はい?…ってGacruxさんじゃないですか! お久し振りですー」
 短めの髪の快活な娘。年の頃は二十歳前か。彼女は以前の依頼人の一人である。
「その、この近くで一仕事終えたばかりでして…ついでといっては何ですが、その後はどうですか?」
 見知った顔なら話に早い。唐突であるが、彼が尋ねる。
「ええーと、普通に平和ですよ。あんな事があったなんて嘘みたいに。あ、そうそうそれよりこれ見て下さいよ〜」
 彼との再会もそこそこに彼女は手にしていた苗箱を持ち上げる。
「これは…」
「ピーマンですよ、ピーマン。種から苗に育てたんです! 凄いでしょ。これから植え付けなんですが、よかったら一緒にどうですか?」
 都会の娘であれば汚れるとかで嫌がるだろうが、ここはジェオルジ。農業促進地域の村娘だから気にしない。
「あー、しかし…」
 簡単な仕事だったとはいえ依頼帰りだ。汗を気にする彼に彼女は一言。
「楽しいですよ。ほら、このパルムちゃんも興味持ってるみたいだし」
 彼の傍にいたパルムが青々と茂ったピーマンの葉をつつく。
「そうですねぇ…でしたら少しだけ」
「本当ですかっ! いや〜桃の収穫もあるので、ぜひ宜しくお願いしまーす」
 女子だけでは大変なのだろう。彼はやれやれと思いつつも乗り掛かった舟と収穫作業を手伝うのであった。

●宿
 そんな訳で思いもよらぬ追加仕事を終えた彼は紹介された宿へ。
 作業のお礼という事で村娘のコネで宿泊料をうんと割り引いて貰えたから気分がいい。
 それに普段はやらない土仕事だったが、太陽の日差しを浴びつつ触る土の感触は彼に、思いの外安らぎと満足感を与えてくれた。
「はぁ〜、けれど流石に疲れましたね。慣れていないからでしょうか?」
 戦闘で使う筋肉と農業で使う筋肉は全くの別物。けれど、どちらにしても心地いい疲労感が彼について回る。
 そこで武器を床に下ろて、彼はどかりと椅子に腰かけると、傍では彼のパルムがふかふかベッドで跳ねていたり。
(全く気楽なもので…とそういえば、ここには内風呂があるんでしたか?)
 宿に着く前に軽い食事を済ませてきた。であるから後やる事と言えば風呂位だ。
 小さな村の宿屋であるから狭さを覚悟していたが、一人ならば十分ゆったりと入れる広さで大満足。彼はいつになく長風呂を楽しんだ。すると汗の引きも緩やかであるから、彼は一時の解放感を味わおうとベットの上へ。真っ白なシーツが彼を包み込む。
(はぁ〜気持ちいいですねぇ。ここに来て正解でした)
 素朴な造りの温かい空間。窓からの心地よい風に吹かれていると次第に瞼が重くなる。
 もう寝てしまおうか、そう思い始めたその時だった。廊下の先からのノック音に渋々上体を起こす。
「開いていますが…」
 そしてそう声をかけると、その先からは聞き覚えのある声。
「おぉ、そうかそうか。では早速」
 これはきっと村長だ。村長は彼の訪問を知り以前の礼を言いに来たらしい。手には葡萄酒と少しのチーズの入った籠を下げて…しかし、彼を見るなり紡いでいた言葉がぴたりと止まる。
「どうかされま…ッ!?」
 そこでようやくGacruxは今の事態を理解した。
 風呂上がり、汗が引くのを待っていた事もあって今の彼は全裸に近い。慌ててシーツを引っ掴み体に巻き付けるとシーツの上のパルムがぽんっと床に転がり、寝ぼけ眼で目を擦っている。
「し、失礼しましたっ。今すぐ身なりを」
「いやいや、構わん構わん。こちらこそ突然尋ねてすまなんだのう」
 焦る彼をなだめる村長。男同士であるから、まぁ見えてもセーフといえばセーフである。けれど、やはり両者の気まずさというのは拭えない。
「す、すみません…そちらにどうぞ」
 シーツを巻き付け着替えを探しながら村長を近くの椅子に促す。
 が、またそれが事件を呼んだ。そろりそろりと進んだ先に適当に下ろしていた彼の錬金杖があって、村長は何とも見事に足を取られ、綺麗な弧を描きつんのめる。そこへ新たな訪問者がやってきて…。
「Gacruxさん。収穫し立ての桃をお持ち……ってきゃああ!!」
 彼が村長を引き寄せたのと悲鳴がほぼ同時だった。転ぶのを阻止したGacruxではあったがその拍子に押さえていたシーツがはらりと落ちる。加えて、引っ張った勢いがよく村長は華麗にくるりと体を回して、それはまるで社交ダンスをするが如く華麗にGacruxの腕の中に納まって見せる。
「いや〜、これはキュンキュンするぞい」
 村長がはにかむ。彼は彼で大事な所が見えてやしないか焦りと動揺でいつもの様な冷静さではいられない。三人の間に言いようもない間が生まれる。
(まさか、どうしてこういう事に…)
 Gacruxが心中で呟く。
(ウソでしょ! 村長とGacruxさんが何でダンス…)
 村娘も混乱しているようで言葉にならず、口をパクパクさせている。
「あっ、いや…これは」
「え、えと…お邪魔しましたー!」
 弁明しようとしたGacruxだったが、それより先に耐えられなくなった村娘が一目散に駆け出していく。
 そんな中、残された二人は暫し硬直。パルムが桃を拾いに動いた辺りで我に返って、
「村長さん、さっきの発言はちょっと…」
「うーん、すまぬのぅ。出来心じゃて」
 呆れるGacruxに村長は悪びれもせず童心に返ったような微笑みを返す。
「笑っても駄目ですからね」
 Gacruxはそう叱るも疲れが先立ち、その日は村長と別れ早めの床につくのであった。

●噂              
 そして朝、宿の朝食には以前協力して貰ったパン屋のパンが届けられ、昨日の騒動が嘘のようだった。
 幸いにも宿で起こった事であったから、その場に居合わせた者達にしか広まっていないらしい。
(まずはあの娘の誤解を解いて…後は、騒がしくしてしまった事をお詫びしておかなければ)
 きっと昨日の悲鳴は他の部屋にも聞こえているだろう。宿に迷惑をかけてしまったかもしれない。
「昨日はすみませんでした」
 まずは宿の受付に謝罪する。
「いえいえいいのよぉ〜。きっと何か事情があったんでしょう? あの子もいい子なんだけどねぇ、臆病な所があるから」
 後ら辺の意味に首を傾げつつも、彼はとりあえず愛想笑い。
 それは宿を出ても続いて、どうやら何か昨日の事が変に伝わっているらしい。
「ねえねえ、あの子の事幸せにしてあげてね」
 人の良さそうな女性が彼に言う。
「驚いただけで根はいい子なのよっ。料理も美味いし」
 とこちらも女性から。どうやら推測するにこの感じ、自分と村娘の間に特別なものがあると思われているらしい。
(あー…確かに収穫も手伝ったりしていましたしねえ。そう見えても仕方がないのでしょうか)
 村を巡りながら彼が思考を巡らせる。
「あ、Gacruxさん。おはようございます」
 が渦中の村娘はこの噂を嫌がってはいないようで、訂正も面倒になりこの一時彼はこの状態を受け入れるのであった。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka2726/Gacrux/男/25/闘狩人(エイフォーサー)】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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再びのご依頼
誠に有難う御座いました、奈華里です
アドリブOKとありましたので、流れから発展させまして少し遊ばせて頂きました
が、こちら系の噂は大丈夫だったでしょうか?
そして余談ではありますが、ピーマンはご依頼頂いた辺りが植え付けの適期だった筈
今だと少し遅いかもですが、その辺はクリムゾンウエスト仕様という事で
それでは誤字等ありましたら、ご遠慮なくご連絡下さい

これからのGacruxさんの旅路が良きものでありますように
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ファナティックブラッド
2018年06月19日

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