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『お礼は いかほど? ―おいちゃんと仲間たちの休日― 』
バーリグ=XIIka4299)&ジェシー=アルカナka5880)&クレア=Ika3020

 ある晴れた昼下がり。
 リゼリオの端にある洋館で、バーリグ=XIIはウロウロある部屋の前で行ったり来たりを繰り返していた。
「……別のやましいことはないのよ。ただ、買い物に誘うだけで……そう、買い物に誘うだけでデ――いやいやいやいや! 買い物に誘うだけって言ってるだろぉがっ!」
 ガンッとめり込みかけた壁。
 それを見て、何故か上がった息を整えると、バーリグは大きく息を吸い込んで1つの扉の前に立った。
(そうだ。これはショッピングへの誘いだ。何のやましい思いもない……ない!)
 なんとか自分に言い聞かせて振り上げた拳が扉をノックする。その音に、涼やかな声が返って来た。
「――はい。どなた?」
 ゴクリ。喉が小さく鳴って口を開く。
「……、俺ちゃんよ〜」
 何時もの調子で声を出すが、出だしがちょっと遅れた。
 不自然に思われていないか、むしろ変じゃなかったか。そんなことを考えていると、唐突に扉は開いた。
「珍しいわね。どうしたのかしら?」
 小首を傾げて可愛らしく訪ねてくるのは、この部屋の主クレア=Iだ。
 彼女は小さく笑んで扉を大きく開くと、いつもの様に中へ入るよう促した。
「あ、いや。今日はちょっと……」
 そう言うことじゃないんだ。そう口中で呟き、二の句を告げずに視線を逸らす。
 当然クレアは首を傾げ、そんな彼女に咳払いを1つして心を決めた。
 いつもの調子で肩を竦めて、ウインクなんぞ零して笑顔を浮かべる。
「良い天気だし、外に出ないか?」
(ちっがーう! そうじゃねえだろ! ショッピング!! ショッピングって決めてただろぉっ!!!)
 何で決めた事が言えないのぉ! そう心の中で項垂れるバーリグに目を瞬き、クレアは室内に目を向けた。
 彼女の部屋に置かれたデスクの上には、大量の書類がある。
 いつもなら日暮れまでこの書類たちと過ごして、夜になってから散歩に行ったりしているのだ。つまり――
「あー……仕事が忙しかったかね? 天気も良いし、たまには息抜きにショッピングでも……と思ったんだが」
「ショッピング?」
 苦笑気味に頷いて頭を掻く。
 そんなバーリグから視線を外して、クレアは僅かに思案すると、次の瞬間、笑顔で頷きを返してきた。
「良いわ。折角のお誘いだもの。たまには日中のお出かけもいいかもしれないわね」
「い、いいのか?!」
 いや、誘ったのは自分なんですけど!
 意気込むバーリグにクスリと笑って、クレアはもう一度頷いて見せた。
「急いで準備をするから、待っててくれるかしら?」
「勿論よ! 外で待ってるから、準備が出来たら早速行こう!」
 そう言って彼女の手を掴んでハッとする。
 慌てて手を離したが、クレアは気にした素振り1つ見せずに微笑むと、「それじゃあ館の外で待ち合わせね。楽しみね」と声を残して部屋へ戻って行った。
(いよっしゃー! やったぜ俺!! デートだぁ!!!)
 ガッツポーズとスキップと。
 バーリグは盛大に喜びながら館の外へと向かうのであった。

 ***

 館の前で待つこと暫し。
 待ちに待ったクレアとのショ――デート? の瞬間がやって来た。
「お待たせ。それじゃあ行きましょうか……あら?」
 よそ行きの服を着たクレアも可愛いが、笑顔で駆け寄る姿も可愛すぎる。
(正真正銘、今日の俺勝ち組っ!)
 ヘラッと笑ってクレアを招くも、彼は直ぐに異変に気付いた。
「あら、クレア……それに、バーリグじゃない」
「げっ……」
 何でよりによって今日お前と出会うんだっ! そう顔面に台詞を張り付かせながらバーリグが睨み付ける相手はジェシー=アルカナだ。彼はクレアの後に館から出てくると、2人の姿を見付けて近付いてきた。
「ジェシーもお出かけかしら?」
「”も”ってことは、クレアもかしら? それもバーリグと……ぶふっ?!」
「ジェシー?」
「な、何でもないわ……それより、どこかへお出かけだったのかしら?」
 完全に噴出したのに持ち直すとは流石ジェシー。
 だがバーリグは許さない。顔を引きつらせて「どこか行けー!」と口に出さないながらも訴えかける視線はそのままだ。
 まあつまり、この時点でジェシーにバーリグの企みはバレた訳だ。
「彼がショッピングでもって誘ってくれたの」
「へぇ〜〜、ほぉ〜〜、ショッピングでもぉ〜〜?」
 ニヤリと笑うジェシーにバーリグが「や・め・ろ」と口パク。だが聞いてやる義理はない。
 ジェシーはいつもの笑みを顔に浮かべると、飄々と言葉を紡ぎ始めた。
「それは良かったわね。最近、仕事ばかりで心配だったのよ。だからこうして外に出ている姿を見て安心したわ」
「ありがとう……ねえ、もしよければ、ジェシーも一緒にどうかしら?」
(なんですとぉー?!)
 思わず頬に手を添えて驚愕のポーズを取ったバーリグに、ジェシーがフンッと鼻で笑う。
 そして申し訳なさそうな顔で小首を傾げると、わざとらしく腰をくねらせて見せた。
「あらあらぁ〜、いいのぉ〜? でも、嬉しいわ〜♪」
「ええ。良いわよね、バーリグ」
「……うん。おいちゃんOKしちゃう……ジェシーも一緒に行こうちゃん?」
 へへっ。そう敗者の笑みを浮かべるバーリグにジェシーが再び噴き出す。
 こうしてバーリグの野望は断たれ、三人で一緒にショッピングと言う不本意な流れが出来たのだが、クレアだけはずっと笑顔だった。

 ***

「すごく綺麗な色のドレスね」
「これは今年の流行色ね。アースカラーをベースとした淡い色が流行ってるのよ」
 ここは館から少し離れた位置にあるショッピングエリア。まあ、ショッピングエリアとは言っても、武器屋や防具屋も立ち並ぶ商店街なのだが、今日は敢えてショッピングエリアと呼んでおこうと思う。
 そんなショッピングエリアにあるブティックと言う名の洋服屋で、彼らは買い物を楽しんでいた。
 今の話題はクレアが目に止めた服から派生して、彼女に似合う服のようだ。
「クレアは足が綺麗だから、ミニも似合うわね。これとこれを合わせたらどうかしら?」
 ジェシーが選んだのは今年の流行色であるミントグリーンを混ぜ込んだファッションだ。
 ショートパンツを組み合わせているところが、彼女の女性らしさと活発さ、その両方をアピールできる感じに仕上がっている。
「ジェシーは相変わらずセンスが良いのね。その組み合わせは素敵よ」
「でしょ?」
 ニコッと笑う彼に頷きを返し、クレアは差し出された服に手を伸ばした。
 そこへ店内を物色に行っていたバーリグが戻って来た。
「ねえねえ、クレアちゃん。この服似合うんじゃない?」
 差し出したのは流行色のレモンイエローを使ったワンピースだ。
 ふんわりとした優しい印象の服は、彼女の青い髪を引き立たせてくれそうな、そんな雰囲気を持っている。
「…ふーん。バーリグにしては悪くない趣味じゃない」
「でしょー?」
 ふふんっと得意げに笑ったバーリグは取り合えず無視するとして、ジェシーはクレアに目を向けると「着てみたら?」と声を掛けた。
 これにクレアも頷いて試着室へ――そして、数分後。

「ふふ、似合うかしら?」
 ふわりとスカートの裾を広げて回る彼女に「おお!」と歓声が漏れる。
「いいわね。折角だし、その服に合うアクセサリーでも選ばない?」
 近くに装飾品のお店があるのはチェック済みだ。
 そもそもジェシーは元々そのお店に行く予定だった。それはクレアやバーリグにも共有済みの情報で、二人はすぐさま頷くと、他にも良い服がないかと物色してから次の店へと向かった。

 ***

 買った荷物は全てバーリグが持っている。
 当然の様にジェシーの手荷物もバーリグが持っているのが、これにはこんな経由がある。
「……クレアちゃんの荷物を受け取ろうとした隙を突いてくるなんて」
 女性の荷物を持つのは当然である。そう考えているバーリグは、荷物を持っている彼女に手を差し伸べた。
 そこに透かさず自分の手荷物を乗せて来たのがジェシーだ。しかも彼は笑顔で「あら、ありがと。気が利くわね」と言いながら、クレアの荷物も一緒に乗せた。
 つまり、ここで断ればクレアの荷物も断ることになり、自分としてはどうにもならなくなってジェシーに荷物も持っている。という訳だ。
「何で俺は……」
「あの……重かったら言ってね?」
 突然、顔を覗き込んで来たクレアに大きく首を横に振る。
「ぜんっぜんよゆう! こんなの重い内に入らないし、もっと持てるから気にしないで!」
 両手に持った荷物をダンベルを持つ勢いで上下に振って見せる。
 その仕草に安堵の笑みを浮かべたクレアを見て、結局は如何でもよくなってしまうのだからなんとまあ……。
「ねえ、コレとコレ、どっちがいいかしら?」
 装飾品店に足を踏み入れて少しした頃、クレアが店員と別の商品を見ている隙を突いてジェシーが話しかけて来た。
「……俺ちゃんは、そっちの黒い方かな」
「やっぱりそう思う?」
 何が。そう問わなくても、彼が持ってきた商品を見ればわかる。
 これはクレアへのプレゼントだ。
 そして二人が選んだのは柔らかい黒革の手袋――普段使いが出来そうで、気品があって、当然クレアに似合うもの。
 こうしたところで意見が合うのは気が合う証拠でもあるのだが、だからこその犬猿の仲なのだろうか。
「じゃあ、これにするわ。あ、そうそう」
 そう言葉を切って振り返った彼に嫌な予感がする。
「……何よ。おいちゃん、荷物ならもう少しだけなら持てるわよ」
「これくらい自分で持てるわよ。そうじゃなくて、この後紅茶が評判のカフェへ行こうと思うんだけど……あそこ、いっつも行列ができてるのよね」
 何となく合点がいった。
 まあ、残りの荷物はジェシーが持てると言っているし、何よりクレアが喜ぶのなら行列に並ぶくらいは余裕だ。
「したら、俺ちゃんが先に行って席を取っておきましょうかね。それでよろしいでしょうか?」
「ええ。よろしく頼むわ。クレアには『バーリグが率先して席を取りに行った』って伝えておくから」
 マジで?! そう身を乗り出しかけて踏みとどまる。
 元々席取りに行かせようとしてたんだから、ここで喜ぶのはおかしいんじゃないか? いや、でもクレアにアピールできるチャンスをくれたという意味も……。
「……まあいいわ。おいちゃん行ってくるわ。クレアのこと頼むぞ」
「当然でしょ。任せておいてよ」
 行ってらっしゃい。そう手を振る彼に肩を竦め、バーリグは目的のカフェへと急いだ。

 ***

「……美味しいわ。自分で淹れるのよりも、味に深みが出ていて……香りがとにかく良いわ」
 ほう。っと溜息を零すクレアに、ほうっと溜息を吐くバーリグ。
 二人とも意味合いは違うのだが、幸せそうで何よりだ。
 ジェシーは先程店で買った手袋の入った包みを差し出すと、少しだけ気恥ずかしそうにバーリグを見た。
「彼と二人で選んだの。良ければ使ってちょうだい」
「あ、ありがとう……開けてみても良いかしら?」
 勿論。そう頷く二人に笑みを見せ、クレアは包みから手袋を取り出した。
 手に馴染むとても素敵な素材。なによりクレアの好みに合った色合いと作りが、どれだけ二人が自分の事を想って選んでくれたのか想像できる。
「嬉しいわ。ありがとう」
 自然にこぼれた笑顔は何よりのお礼だ。
 バーリグは勿論、ジェシーもこの笑顔に笑みが零して顔を見合わせる。
 普段はカチンとくることもあるし、何気なく怒りポイントをぶち抜いてくることもある。それでも何となく憎めないのは、お互いが同じ人を大事に想っているから――。
「まあ、言わないけど……」
 意味合いも違うかもだし。と口中で零して、ついでにバーリグの足を踏んでおく。
 しかし当のバーリグはクレアの笑顔に釘付けで、足を踏んだことも気づいてない。
「……まったく。あたしはそろそろ失礼するわ」
 これ以上ここにいても収穫はないだろう。
 そもそもデートを企んでいた男の計画は潰したわけだし、目的のプレゼントも買えたわけだし。
「あら、もう行っちゃうの?」
「さっきのお店で買い忘れがあるのよ。今日はありがとうね」
 買い忘れがあるのは嘘だ。
 まあ、少しの時間くらい二人きりにしてあげても良いだろう。そう、少しくらいの時間、だけだが。
「私の方こそ、ありがとう。また三人で来たいわね。私、この時間が……この空気が、とても好きよ」
「そうね。また一緒に来ましょ」
 それじゃ、また。
 ヒラリと手を振って去ってゆくジェシーの姿を見送り、クレアとバーリグは顔を見合わせた。
「俺達もそろそろ行きましょか……ってぇーージェシー!!」
 少しはいいヤツかも。そう思った時もありました。
 ですが置かれたままの伝票を見て考えは一蹴! せめて自分の分の金は置いていけー! と、心の中で大きく叫んだバーリグでありました。

 ***

 夕暮れが迫る帰り道。
 バーリグはクレアの荷物を持ったまま、リゼリオの端にある洋館を目指していた。
「今日は楽しめた?」
 この声にクレアは素直に頷く。
 予定外に邪魔者は入ったが、最後はこうして二人きりで帰れるわけだし、何よりクレアが笑顔でいてくれたのが一番嬉しい。
「なら、良かった。俺の女神が楽しんでくれたなら、おいちゃんはそれで満足だからね」
 俺の女神。そう茶化して言うが、彼女は仕事仲間であり恩人だ。彼女が幸せであるのならそれだけで自分も幸せ。
 そこに下心がない……と言ったらウソになるが、まあ、楽しかったのなら本当に良かった。
「さてと、明日からまたよろしくね」
 洋館が完全に視界に入り、バーリグの足が止まる。
 他の面子に見つかって茶化されても面倒だ。ここで別々に戻るのが良いだろう。
 そう思って荷物を差し出そうとしたところで、クレアの手がバーリグの袖を引いた。
「ん?」
「今日は、ありがとう」
 ちゅっ。
 頬に触れた僅かな感触に目を瞬くこと数回。
 驚いて見詰めたクレアは微笑み、なんだかとっても綺麗な訳だが……えっと、今のは?
「誘い出してくれた、細やかなお礼よ……それじゃ、また一緒にお出かけしましょうね」
 ふふ、と笑って荷物を受け取った彼女は、小走りに洋館へ入っていく。
 それを見送るバーリグは頬に手を添えたまま呆然と立ち尽くすと、何とも言えない高揚感に雄叫びを上げたのだった。

ーーEND.

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 ka4299 / バーリグ=XII / 男 / 35歳 / エルフ / 猟撃士 】
【 ka4299 / ジェシー=アルカナ / 男 / 28歳 / ドワーフ / 格闘士 】
【 ka3020 / クレア=I / 女 / 20歳 / エルフ / 猟撃士 】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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こんにちは、朝臣あむです。
このたびはご発注、有難うございました。
だいぶ自由に書かせて頂きましたが如何でしたでしょうか。
この作品が思い出のひと品になる事を願っております。
この度は、ご発注ありがとうございました!
WTアナザーストーリーノベル(特別編) -
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ファナティックブラッド
2018年06月21日

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