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『パーティー前の二人の時間 』
荒木 拓海aa1049)&三ッ也 槻右aa1163

 温かく眩しい日差しが、カーテンの隙間から差し込んでくる。
 少し眉を顰め、荒木拓海はもぞもぞとベットから手を伸ばし、サイドテーブルの上の時計の時間を確認する。
「んー……もう少し寝れる……か……?」
 時計の針は、当初の予定であった起きる時間よりも一時間前を指していた。
「……よしっ」
 もう少し長く寝れそうだと心が揺れたが、少し気合を入れてベットから起きだす。
 着替えを持って浴室に向かいシャワーを浴びる。そして、いつものように洗濯機を回し、朝食の準備をし始めた。
「和食もいいけど……午後の事を考えると軽めがいいかな」
 今日はパンにしようとオーブンにバターロールを入れる。
 そういえば、貰い物のイチゴもあったなと野菜室の中を確認する。昨日つまみ食いした時にちょっと酸味が強かった気もする。
「少し酸っぱいから練乳かけて――」
 冷蔵庫から一緒に練乳も取り出し、白いお皿に赤い粒が並べられ、鼻歌交じりに準備をするうちに、ほんのりパンの焼きあがるいい匂いがしてくるのであった。

 ***

 体温で温まった布団の中で、ゆっくりと意識が浮上する三ッ也槻右の鼻を食欲を誘う香りがふんわりと運ばれてくる。そして、下の階から水道から水の流れる音、彼の動く心地よい音が聞こえてきた。
 昨年の生活では聞こえなかった音、それに小さな幸せを感じる。これは夢だろうか――
 寝ぼけた頭と思い瞼はまだ動きそうにない。微睡む耳に階段を上る音と彼の温かい声が聞こえてくる。
 トントントンと言う音が近づいてくるのに耳を傾けつつ、布団の中でもぞもぞと動く。
(んー、あと……もうちょっと……もう少し――)

 ***

「――槻右、そろそろ起きろ。パンが焼けるぞ?」
 上から優しく声を掛けても彼から反応が返ってくることがない。
「……起きようか?」
 もぞもぞと動く。
「……おーーいっ」
 ユサユサと揺さぶると「うーん」という小さな唸り声と共に寝返りを打つ。そして彼の可愛い寝顔が現れる。
 無防備な姿をさらす彼についつい表情が緩んでしまう。
「……きすけーーっ! 遅刻するぞ!」
 実際のところ、今日は休みなのだが仕事と言って鎌を掛けてみるも、全くもって起きる気配がなかった。
 そんな彼に愛おしさを感じつつ笑みをこぼす。
「ったく……寝坊助め」
 いつまでたっても起きない彼に、王子が瞼に目覚めのキスをする。
 静かな時間が流れてしばらくすると彼はゆっくりと目を開く。瞼を開いた彼にカーテンから注ぐ太陽の光が注がれる姿は、まるで毒リンゴを食べて眠ってしまった姫が起きたワンシーンのようであった。

 ***

 瞼にやさしく触れる感触が何なのかを理解しないまま、逆光で影になっている彼に手を伸ばす。
 さらりとした髪の毛の感触。時計じゃない、愛しき彼だ。
 しょぼしょぼしている目で見える彼はぼんやりと優しい光に包まれているように見えた。はっきりと姿は見えないけれど、彼が自分に微笑んでいるのはわかる。
「……拓海」
 小さく彼の名前を呼んで、自分も彼に微笑み返すのだった。
 まだ覚醒しきっていない頭のまま、一階へふらりと降りていく。いつものように顔を洗っている時に、ふと先ほど起き抜けに瞼に感じた柔らかい感触を思い出す。
(……もしかして、さっきの感触って――)
 急に恥ずかしくなってタオルに顔をうずめる。
 顔を洗った際に冷えただろう体温は熱くなり、少し眠気が飛んでいくのだった。
 リビングから彼の声が聞こえ、もう一度顔を洗った後に自分もリビングへと向かうのであった。

 ***

 ふらふらと美味しい匂いに誘われてリビングに行くと、机の上に焼きあがったパンやスープから食欲をそそられるような香りが部屋中に立ち込めていた。
 まだ少ししょぼついている目にはその空間が淡く光って見えているようだった。

(うわぁ……ご飯……めっちゃ豪勢!)
 椅子に座るなり、料理の盛られたお皿を拓海が自分の前に置いてくれる。
「さ、食べよっか」
 槻右の対面に拓海が座り二人で「いただきます」と手を合わせた。
 香ばしいパンの香りに誘われ、手を伸ばし口へと運ぶ。
「美味しい……!」
 ふっくらとして、小麦本来の甘さとバターの塩加減が絶妙にマッチしている。
 思わずこぼした感想に、彼はにっこりとほほ笑むのを見て自分も笑みを返す。
 ゆったりと流れる何気ないこの時間が本当に幸せだった。
 焼きあがったパンに溶けたバターの香り、ほっと体の芯から温まるようなスープ、形の綺麗な目玉焼き、そのどれからも彼の愛情を感じるような気がした。
「イチゴも美味しいね……」
 酸っぱいのが得意でない槻右にとって練乳の甘さが丁度良いのだろう。嬉しそうに頬張っている。
「ほーら……ついてるぞ」
 彼が口の端についてしまった練乳を手を伸ばし指で拭き取ってくれる。そしてそのまま、その練乳をペロリと口にするのであった。
「……っな!」
 かあっと顔が熱くなるのを感じる。その姿を見てなのか彼はにやにやと笑みを浮かべた。
 少し恥ずかしいやり取りも、それができることが何よりもうれしく感じる。
 まだ少しぼーっとしている槻右に、拓海が世話を焼きつつ朝食の時間は流れていくのだった。

 ***

「食べたら引き出物の買足しに行ってくる。間に合うようレストランに行くから、規佑は挨拶状の追加印刷を頼むね」
 食事をしつつこの後の予定について話す拓海。
 昨年末に入籍をし、今日が披露宴代わりのレストラン貸切パーティ当日だった。予想よりも参加者が増えたため引き出物不足に陥ってしまった。それもまた嬉しい悲鳴なのだが。
「わかった。片付けと、印刷しておくね」
 スープに口を付けつつ、彼の言葉に頷く。

 トゥルル……トゥルル……

 話し終えたタイミングで、拓海の携帯から着信音が鳴り響く。
「あれ? 電話?」
 彼は「ちょっとごめんね」と食事を中断し、机から離れたところでかかってきた電話を受ける。
「おはようー! もしかして……あったか?! やったー! うんうん、出来たら色柄まで同じのを配りたいから……ありがとう助かった」
 聞こえてくる会話から察するに、知人に頼んでいたことで良い報告があったようだ。自分も立ち上がり、拓海の傍で彼らの会話に耳を傾ける。
「もしかして剣太さん?」
 その言葉に反応し、拓海はこちらに視線を向け首を縦に振った。
 知人である剣太に足りなくなった引き出物と同じものを探す協力を求めていたのだが、どうやら同じものが見つかったという連絡らしい。
「剣太もそのままパーティーに参加してくれるんだったよね。……うんうん、そうだね、現地でそのまま渡してくれれば助かるよ。ありがとう」
 彼との会話を少ししてから拓海は電話を終了する。
「規佑、剣太が見つけてくれて、少し早めにレストランに持って来てくれるって」
 会話の内容をそのまま槻右にも伝える。
「おおっ見つかったんだ! 剣太さん凄いね感謝だね」
 共通の知人に感謝をしつつ、二人で笑みを交わす。こうして自分たちを祝ってくれたり、協力してくれる知人や友人がいるのは本当にありがたい事だろう。

 ***

 知人に協力を求めたのは正解だった。これで安心だろう、支度も落着いて出来る。
「剣太のおかげで、買い出しもなくなったし……すこしはゆっくりできるかな」
 パーティーまでは二人でゆっくりできるねと槻右に微笑む。
「じゃ、もう少し一緒だね」
 彼も頷くと、目を細め自分に少し体重をかけるのであった。
 もしかしたら、違う引き出物にしなければならないかもしれないという焦りもあったが、無事問題も解決し、拓海は安心した表情を見せる。しかし、また表情は変わる。
「……でもやっぱり緊張は変わらないね」
 この後の事を想像し胸がドキドキと高鳴っているのに対し、苦笑を浮かべる。
 人生初の披露宴に、緊張しない者はいないのではないだろうか。
「僕も緊張してる……」
 その言葉に見せる表情に見惚れ、少しぼーっとなってしまう。
(そうだ……)

 ――チュッ……

 不意に拓海の頬に柔らかい唇が軽く当たる。照れつつも「さっきのお返しだよ」と言う彼に、拓海はにやけるのを止められなかった。

 少し気恥しさに身を悶えさせつつ、また朝食に戻っていく。
 残っていた料理をお腹に収め、この後のパーティーの為にゆったり準備をし始める二人なのであった。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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PC
aa1049@WTZERO 荒木 拓海 男 エージェント
aa1163@WTZERO 三ッ也 槻右 エージェント
NPC
az0094 剣太 男 23歳 H.O.P.E. オペレーター

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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いつもお世話になっております。
何度もリテイク申し訳ございません。
完成したノベルを楽しんでいただけたらと思います。
今後ともよろしくお願いいたします

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2018年06月27日

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