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『●蒼い騎士の記憶 』
ユーリ・ヴァレンティヌスka0239

「……ようやく会えたわね」
 手にした大太刀を愛おしげに撫でるユーリ・ヴァレンティヌス。
 その日、彼女は待ち望んでいたその刀を受け取った。

 ――この刀は、神霊樹のライブラリに眠っていた記録から再現されたものだ。

 先日行われた大規模作戦。
 邪神、ファナティックブラッドが異世界より出現し、その時初めて、ハンター達は自分達が『戦っていたものの正体』を知った。
 数多の世界を滅ぼし力を蓄えるその歪虚。
 それは、立ち向かうにはあまりも強大で……。

 そんな中判明するクリムゾンウェストの過去。
 赤き大地は一度、邪神によって滅びの運命を迎えていた。
 そこでハンタースソサエティの総長であるナディアはある作戦を決行した。
 過去の記録を旅して、邪神に対抗する術を探す。
 未来でもう一度戦う時のために、『希望』を見つけ出す……そんな途方もないもの。

 だが、ユーリは信じていた。
 ――この戦いには意味がある、と。
 例えこれが記録だとしても。
 見ているものはただの光景で、何も変わらないとしても。
 彼女の想い、そして意思が――精霊達に伝わると、信じて刀を振るい続けた。
 繰り返される歪虚との死闘の果てに力尽きて……。

 ――そんな時。大精霊はユーリに触れた。
 力を失い、もう目は見えていないはずなのに。感じた暖かな光。
 何かを伝えたがっているが、言葉になっていない。
 薄れゆく意識の中で、大精霊から感じたのは……感謝と悲しみ。切なる願い。
 そしてもう1つ――青白い閃光を放つ、白銀の刀の姿。

 何故それが見えたのか。
 記録で死にかけた自分が見た夢だったのか。
 それとも大精霊がユーリに見せたかったのか。
 理由は分からなかったけれど。
 でもその刀が妙に心に焼き付いて、頭から離れなくて……。
 ユーリは大規模作戦が終わってからハンターズソサエティに籠り、ライブラリや記録をとことん調べつくした。
 その結果、あの刀は『蒼姫刀「魂奏竜胆」』と呼ばれるもので、既に喪われている刀だと知った。

 ――大規模作戦で記録上とはいえ一度死した自分。
 そして喪われた刀……きっとこれは運命だったのだろう。
 そう思ったユーリは、この刀の再現を決意した。
 愛用の振動刀を預け、長いこと待って……そして今日、ようやく『蒼姫刀「魂奏竜胆」』に会うことが出来た。

「貴方が再現されるのをずっと待っていたのよ。一度死んだもの同士仲良くしましょう」
 刀に話しかけるユーリ。
 ――そう。記録の上でだが、彼女は一度死んでいる。
 思い出すのは身体中を伝う血。吹き飛ぶ左腕。
 痛みは感じない。ただただ寒くて……急速に力が抜けて行って――。
 蘇る嫌な感覚に、ユーリの背筋にじわりと汗が伝う。
 ――あまり思い出して楽しい記憶でもなかった。
 夜の帳が下りた暗い道。ユーリはいつものように水浴びをしに湖へ向かう。
 肌に染み付いた嫌な感覚はきっと、湖が洗い流してくれるだろう……。

 湖畔はいつも静かで、穏やかで……独りを堪能できる場所なのだが。
 今日は様子が違っていた。
 いつもは誰もいないはずなのに、人影が見える。
 風に揺れる長いマント。暗い湖を背にして立つ白銀の騎士。
 月明りに輝く鎧が美しくて、ぼんやりとその光景を見つめていたユーリ。
 人影は振り返ると、彼女の方をゆっくり見据えた。

 ――貴女が来るのを待っていました。
「えっ……?」

 どこからともなく聞こえる優しい声。
 女性のものだろうか……?
 ユーリは声の主を探して周囲を伺う。

 ――私はここですよ、魂を奏でし者よ。
「……私に話しかけているのは騎士様、あなたですか?」
 ――そうです。

 何故話し掛けられているのか理解できずに困惑するユーリ。
 白銀の騎士はすっと、彼女が持つ大太刀を指差す。

 ――そんなに警戒しないで。その刀を……私を見つけてくれたことに感謝しに来たのです。

「……あなたはもしかして、この刀の……」
 今日完成したばかりの刀を抱きしめるユーリ。白銀の騎士はこくり、と頷く。

 ――その刀は私のもの。……私はあらゆる命を、世界を守るために戦っていました。

 次の瞬間、切り替わる視界。
 花と緑に満ちた大地。遠くに見えるのは神殿だろうか。
 聞こえてくる子供達の歓声。
 町は決して大きくはないが、人々は笑顔に満ちていて――。
 変わらぬ人々の暮らし。
 日に日に大きくなっていく子供達。
 それを見つめる騎士の心も穏やかで、静かな喜びに震える。

 それを打ち壊したのは邪神ファナティックブラッド。
 抵抗をしたが、邪神はそれをあざ笑うかのように。
 いとも簡単に全てを破壊しつくした。
 選択を迫られた人類は、この世界を捨てる決断を下した。
 ――逃げるしかなかった。
 この大地を捨てたくはないのに。
 人々を守りたかったのに……!

 騎士の心を突く慟哭。
 心が痛くて、苦しくて――ユーリは気づけば涙していた。

 ――私の祈りを、願いを。貴女に託します。
 ――人々に安寧を。人々が生きる大地に祝福を。世界を破滅に導くものに断罪を。同じ悲劇を繰り返してはならない。
 ――貴女達の往く道は長く険しいもの。
 ――蒼姫刀を継ぎし者よ。どうか……どうか。最期のその時まで諦めないで。

「待って下さい……! あなたは……!!」
 この先の運命を知っているのですか……? そう問おうとした時。
 景色は切り替わり、白銀の騎士は消えていた。

 ――不思議な出会い。
 名も知らぬあの人。
 どことなく私と似ていた。
 だから……蒼姫刀は私を選んだのかもしれない。
「騎士様。あなたの祈り、願い……受け取りました。全てを叶えるのは難しいかもしれませんが、それでも、手の届く限りは……。どうぞ、安心してお眠りください」
 首を垂れるユーリ。
 抜き放ち、銀色に……あの人に似た輝きを放つ光を放つ月に向けて、刀をかざす。

 ユーリの静かな決意を、湖は音もなく静かに見つめていた。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ka0239/ユーリ・ヴァレンティヌス/女/15/想いを継いだ蒼姫

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お世話になっております。猫又です。

ユーリさんと蒼姫刀のお話、いかがでしたでしょうか。少しでもお楽しみ戴けましたら幸いです。
シリアス風味ということでしたので今回は笑いどころ一切なしです!!
好き勝手色々書いてしまいましたが、話し方、内容等気になる点がございましたらお気軽にリテイクをお申し付け下さい。

ご依頼戴きありがとうございました。
WTアナザーストーリーノベル(特別編) -
猫又ものと クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2018年07月13日

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