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『『結婚式場でのふたり』 』
アレスディア・ヴォルフリート8879

 ジューンブライド、6月のある日。
 華やかに飾られた結婚式場にアレスディア・ヴォルフリートは、ディラ・ビラジスと共に居た。
 2人が式場に訪れたのは早朝。次第に人々が集まっていき、今日も式場は賑やかになっていく。
 アレスディアとディラは受付けを頼まれた友人でも、親族でも仲人でもなく、勿論警備の仕事。
 式を挙げる当事者などということは、全くあり得ない。
 梅雨のため、ぐずついた天気が続いているが、この大きな結婚式場は連日大盛況。
 というわけで、2人もこのところ毎日のように、警備のために式場に訪れていた。

 その日の新郎新婦は20代半ばのようであり、アレスディアとディラより少しだけ年上に見えた。
 親戚も、職場の人々も、友人達も2人の結婚を本当に喜んでいるようで、大変温かで、幸せそうな式だった。
 2人を、そして集まった人々を護る立場にあるアレスディアの顔も、自然とほころび、温かい目で見守っている。
 対照的にディラが新郎新婦やゲストを見る眼はただの警備としての硬い目であった。
「ディラ殿」
 だけれど、アレスディアが幸せそうな顔をディラに向ければ、彼の顔からも自然と凄みが消える。
「雨が止んだとのこと。この後のブーケトスは屋外の庭園で行われるそうだ」
「そうか。それなら俺は先に、外の見回りをしておく。アレスは誘導を頼むな」
 アレスディアが分かったと答えると、ディラは一人で外へと向かった。
 警戒を忘れることなく、アレスディアは幸せそうな人々の姿を堪能し、温かな気持ちに包まれていた。

 色とりどりの花が咲き誇る庭園で、花嫁は皆に背を向けて、ブーケを後ろへと投げた。
 弧を描き、落ちてきたブーケを掴んだのは、花嫁と同じ年頃の、友人のようだった。
 アレスディアは、会場の隅にいたディラに近づき、彼の隣でその様子を見守っていた。
「アレスは……結婚ってどう思う?」
 人々に目を向けたまま、ディラの口から小さく、そんな問いが発せられた。
「うむ……どう、といわれても」
 アレスディアは警備対象である人々を見守りながら、少々考え、苦笑気味にこう続けた。
「……どうにもそういったことに縁がなかった故……よくわからぬな」
「友人や仕事仲間の披露宴に出席したことくらいあるだろ? 今だってこうして新郎新婦の姿を見て、何も思わないのか」
「幸せそうでなによりだと思っている」
 アレスディアのそんな答えに、ディラはふーんとだけ、気のない返事を返した。
「そういうディラ殿はどうなのだろう? 結婚について考えたことはあるのだろうか?」
 アレスディアが特に意味などは無く、ふとした興味でディラに視線を向けて尋ねると、彼もアレスディアに目を向けてきた。
 ディラはアレスディアを見詰めて、口を開きかけ……軽く、目を逸らした。
「あ……った」
 アレスディアはその返答に、一瞬詰まったような様子を見せる。
「むぅ……そうか……ディラ殿にもそのようなお相手が……」
 思案顔なアレスディアを、ディラはちらりと見た。
「義理で、そういった式や宴に、何度も参加したことがある。その頃は漠然と、自分もそのうち適当な相手と、結婚するんだろうと思ってた」
 彼は苦笑して吐息をつき、どこか寂しげな――切なげな顔をした。
「今は」
「……今、は?」
「……ない」
 目を伏せてそう答えた彼に、アレスディアは苦笑気味に「そうか……」とだけ返した。
 ディラは何か、胸に秘めている。触れるべきではなかったことだろうか。そう感じる反応だった。

 その後、護衛として花嫁と共に控え室に入った際。
 遠慮がちに、アレスディアは彼女に尋ねてみた。
「……結婚とはどういうものなのだろうか」
 アレスディアより少し年上な彼女は、うーんと声を上げて考えてから、こう答えた。
「人それぞれじゃないかな。私、結婚願望なかったんだけど、彼と出会って、この人となら一緒に生きたい、家族になりたいと思ったから」
 照れながらの花嫁の言葉に、頷いて感謝の言葉を述べ、アレスディアは「末永く、お幸せに」と微笑んだ。
 ありがとうと、花嫁は彼女に強く頷いた。

 幸せそうに微笑みながら、共に歩んでいく新郎新婦。
 会場に戻り、2人の姿を見守っていたアレスディアは、ふと入口付近を護るディラに目を向けていた。
(誰かと共に同じ道を歩く……誰かと共に生きる……私は……)
 次の瞬間、アレスディアは我に返り、首を左右に振った。
(いやだから何を考えているのだ私は)
 視線を人々へと戻す。
 その後の彼女の顔は、幸せそうな人々を見守る、温かな顔ではなく。
 仕事モード。そう普段の、警備員としての真剣な表情になっていた。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/外見年齢/職業】
【8879/アレスディア・ヴォルフリート/女/21/フリーランサー】

NPC
【5500/ディラ・ビラジス/男/21/剣士】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ライターの川岸満里亜です。
新郎新婦に扮した、囮結婚式……なんて物語も、書いてみたい気がしましたが、ディラが花婿を演じられそうもないということに気付きました(笑)。
どのようなお気持ちであっても、ディラを意識してくださりありがとうございました!
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東京怪談
2018年07月17日

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