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『『夢で見た眼』 』
アレスディア・ヴォルフリート8879

 一日が終わり、アレスディア・ヴォルフリートはベッドに横たわっていた。
 明日も早朝から仕事だ。
 だから早く休まねばならないのだが、どうしても気になることがあり、寝付けずにいた。
 それは、数時間前まで、共に行動していた人物のこと……。

 数日前――。
 仕事仲間、いや、友であるディラ・ビラジスと仕事で孤児院に行った時。
 孤児院の側で休息中に、アレスディアは夢を見た。
 孤独な幼い少年の夢。
 彼はアレスディアの脳が生み出した、ディラの子供の姿。
 アレスディアが無意識に感じとっている、ディラの心の姿が夢として、表れた……ような気がしていた。
 少年のディラは独りで居た。
 共に暮らす仲間がいるのに、近づく子供達を乱暴に退けているようだった。
 ただ夢の中で、母であった自分。アレスディアには愛情を見せてきた。愛を求めてきた。
 自分には、お母さんだけでいいと。お母さんにも自分だけ見てほしいと、純粋な少年の目でアレスディアを見詰めていた。
「あくまで、あれは夢でしかないが」
 それでも、現実のディラと重ねてしまう。
 現実の彼の体はもう立派な大人だ。
 だけれど、時折、少年らしさが垣間見えていた。
 屈託のない子供のような目を、アレスディアに向けてくることがある。
 夢の中の子供のディラが、アレスディアに向けた眼のうちのいくつかは――実際に、彼女が現実のディラに向けられた眼と相違ない。
 そして、アレスディア以外の者に向けられる背。必要最低限のコミュニケーションはとるものの、彼は他者に近づこうとはせず、近づけさせない雰囲気がある。
「私に向ける――そう、あれは」
 強く愛情を求める眼。
 気づいていなかったわけではない。
 自分を通してでも、社会と接していれば、いつか社会にも心を開いてくれる。
 そう、思っていたが……。
(それは心が満たされて、初めてできることなのかもしれない)
 就寝前、自室のベッドの中でアレスディアは一人、思考の沼に嵌っていた。

 日々のディラの姿が思い浮かぶ。
 彼が自分以外の者を見る目は、決して優しくない。
 警備の仕事の際に見せる真剣な表情。それは良い。
 それと似たような目で、鋭さを宿す目で、常々彼は人と接しているように思えた。
 だけれどそんな彼が、長時間穏やかな表情でいることもあった。
 それは――この部屋で自分と、2人きりのとき。
『俺は飢えているんだ』
 昨年の誕生日、彼の口から出た言葉だ。
 アレスディアと共に日々働いている彼は、食うに困っているということない。
 何が欲しい。何に飢えている……?
 その時、深く聞き返すことのなかった言葉が今、彼女の心に重く響いていた。
 出会った頃に比べて、良く笑うようになり、見せることのない穏やかな目を自分に向けてくるようになったことで、どこか安心してしまったのかもしれない。
(彼はまだ、満たされていない)
 ディラの孤独な後ろ姿、他者に向けられた鋭い目が、アレスディアの脳裏に浮かんでは、消えていく。
「命を護るだけが護ることではない。心まで護ってこそ。そう思っていたのに、一番身近な人の心にも気づけないとは」
 深く、ため息をついた。
 今、ディラはアレスディアにとって、一番身近な人になっていた。
 ディラにとっても、そうだろう。
 夢の中の少年が言っていたように、アレスディアだけ、なのかもしれない。
(……もうすぐ、彼の二回目の誕生日が来る。そのときはもう少し、きちんと彼と向き合ってみようか)
 目を閉じて真っ先に浮かんだのは、小さな少年の姿のディラ。
 振り向いた少年の顔が笑顔に変わり、手を広げて彼はアレスディアのもとに、駆けてきた。
 一歩、一歩近づく度に少年の姿は大人へと成長していき、彼女に抱き着く寸前に、大人の姿になった彼は立ち止まり、手を降ろして寂しげに微笑んだ。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/外見年齢/職業】
【8879/アレスディア・ヴォルフリート/女/21/フリーランサー】

NPC
【5500/ディラ・ビラジス/男/21/剣士】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ライターの川岸満里亜です。
この度もご依頼、ありがとうございました!
続く誕生日のノベルにつきましては、もう少々お待ちくださいませ。
東京怪談ノベル(シングル) -
川岸満里亜 クリエイターズルームへ
東京怪談
2018年07月27日

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