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『男子会日和 』
水落 葵aa1538)&蛇塚 悠理aa1708


「一緒に買い物でも行かねえか? ショッピングモールをぶらぶらして丸一日のんびりゆったり」
 水落 葵(aa1538)がそのように声を掛けたのが、蛇塚 悠理(aa1708)との女子会……ならぬ男子会の切っ掛けだった。とある依頼から始まって今なお続く腐れ縁。もしくは運命共同体。一部の趣向の方向性が合致する稀な相手とも。全体的にいい年をした成人男子二人でぶらぶら。という誘いを断る理由は悠理の方でも一切なく。
「いいね、それじゃあいつにしようか」


 そんなこんなで数日後、二人は約束通りショッピングモールを訪れていた。まずは悠理が眼鏡屋に行きたいという事で、シンプルで素っ気なくちょっとお堅い感じの所、ではなく、オシャレ比率の高そうな店へ入る事にした。
「夏も終わりかもしれないけど、サングラスとか一つあった方がいいかなって」
 言って悠理はサングラスを一つ手に取った。「あと、葵くんがどんな眼鏡掛けるのかも気になる」という理由もあるのだが、そこはすぐに口には出さず、話の流れでさりげなく聞いてみる事にした。サングラスと一口に言っても様々な種類があり、自分に合うものを見つけるのが難しいアイテムの一つとされる。そこにさらに度入りかどうか、UVカット機能があるか、重さ、値段、普段のファッションに合うかどうか等条件を加味していけば、選ぶにはそれなりの時間を要する事になる。悠理は(黙っていれば)イケメンと言われる部類なので、適当に掛けたとしてもそれなりに様になるかもしれない。だがどうせ選ぶなら、やはり自分の好みに合った方がいいだろう。
「どんなのが必要なんだ?」
「度はいらないんだけど、日光ってあんまり得意じゃないんだよね」
「だったら偏光レンズとかの方がいいんじゃないか? あ、でも紫外線の影響を押さえるなら色の薄いレンズの方がいいってこの前テレビでやってたな……」
 悠理の意向を聞いた後、葵はサングラスを一つ選んで悠理へと手渡した。まずは最初という事でスタンダードに色は黒、フレームはウェリントンというベーシックなデザインを。悠理は試しに掛けてみて「どうかな」と葵に伺いつつ、話の流れで目的の一つを尋ねてみる事にした。
「葵くんはサングラスとか持ってる?」
「あー……家探せば出てくるかもしんねえけど、まあそんなレベルだな」
「せっかく眼鏡屋さんに来たんだし、葵くんも合わせてみたらどうだろう」
 これとかどうかなと悠理も一つサングラスを勧めてみる。まずは二人共スタンダードな黒いグラスを掛けてみて、フレームをサーモント、フォックス、ボストンと変えていく。レンズの色もグレー、ブルー、ブラウン、グリーンと一通り試していき……。
「こうやって見ると、同じの掛けても全然イメージ違うもんだな」
「軽い気持ちで買いに来たけど、真剣に選ぶとなると結構迷ってしまうものだね」
 などと会話を交えつつ、二人は一時間程サングラスを吟味した。最終的に悠理が予定通り一つ購入し、次に二人はフードエリアに足を向ける事にした。


 葵が悠理を連れてきたのは、モール内でもちょっと良いとこのイタリアンの店だった。アンティパストからドルチェまでコースもあるし、もちろん単品も好きに選べる。昼時は混むのが世の習わし。なので十一時半には店へと到着したのだが、その時点でも店内は既に賑わいを見せていた。幸運な事にラストワンで席があり、店員に案内されて二人は即メニューを眺める。
「俺はサラダバーとドリンクバー、それから渡り蟹のトマトクリームソースのパスタ」
「俺はピッツァにしようかな。このディアボラっていうのがちょっと気になる」
 悠理は結構即決で、葵はそれなりに悩んだ末にそれぞれパスタとピッツァを注文。周りの席では女の子が、きゃあおいしそうとか言いながらスマホでドルチェを撮っていた。見慣れないもので調べてみるとカッサータというアイスケーキの一種らしい。
「インスタ女子もすっかり当たり前になっちまったな」
「そうだね。今度また、お酒飲みに行きたいね。今度は日本酒とか……あ、でもここにもワインあるよね」
「せっかくだし一杯飲むか?」
 悠理の言葉に葵はにやっと笑みを浮かべた。まだ昼時ではあるが交通手段は電車だし、大人が一杯嗜むぐらい別に罪ではないだろう。葵くんが飲むなら飲む、と悠理はウェイターを呼び、一杯ずつワインを頼んでサラダとドリンクを取りに行く。
 葵が頼んだディアボラは「悪魔」という名のピッツァであり、具材はサラミ・チキン・唐辛子。チキンが羽根を広げた悪魔のように見える事や、唐辛子の辛さが悪魔を連想させる、というのが名前の由来という事だ。
 まずはワインで乾杯し、各々サラダやメインに手をつける。互いに互いの料理も気になるので、少し交換したりもする。女子会ならぬ男子会とは冒頭で述べた通りだが、「あっ、辛っ!」「パスタ旨い」などと言い合いきゃっきゃするノリはむしろ女子会のそれである。
「いやー、こういうのもたまにはいいもんだな」
「ここまでのんびりする機会もなかなかないもんね」
 折角だからとカッサータを頼んで二人で分け、ワインもドリンクも飲み干して二人は席を後にした。悠理が財布を出そうとした所で、葵の手が押し留める。
「ご飯代は奢らせてくれねえか。俺の方が年上だからさ。チンケなプライドだがな、満たさせてくれると助かるよ」
 言って葵は再びにっと笑ってみせた。外見年齢的にはほとんど変わらぬ二人だが、実は葵は外見年齢より一回り上だったりする。そんな言い方をされて遠慮するのはかえって失礼。
「それじゃあ、お言葉に甘えて」


「次は本屋に行きたいんだけど」
 イタリアンを出た後の葵の申し出を悠理は二もなく快諾した。自分の用事は済ませたし、葵が行きたい所も気になる。
「いいね。買いたい本でもあるの?」
「ああ、まあ、色々と」
 本屋に行って葵が向かったのは洋書スペース、それも児童書コーナーだった。一冊二冊というレベルではなく、気に入ったら片っ端と言わんばかりにどんどん本が重なっていく。
「外国の児童書が好きなの?」
「好きっていうか、仕事の参考用だな。玩具店の店長しているもんで」
 答えている間にもどんどん本が増えていく。もはやごっそり買い漁っていると表現してもいいレベルだった。児童書以外の洋書にも手を伸ばし、さらに付属の文具コーナーでスケッチブックも吟味する。
「葵くん、絵を描いたりするの?」
「絵っていうかスケッチだな。オリジナルの玩具を作ったりもするんだけど、そのアイディア発想用に植物園でスケッチするんだ。仕事って言うより、半ば趣味みたいなもんだけど」
 知らなかった。悠理は葵の持つ籠の中身に視線を落とす。思えば知り合ってそれなりの時間が経っているが、プライべートを話した事はそうなかったような気がする。
 大量の荷物を幻想蝶に収納した後、二人はモール内にある喫茶店へと入っていった。アイスティーで喉を潤しながら、悠理は思い付いた質問を向かいの葵にぶつけてみる。
「玩具屋さんってどういうのなの?」
「大人向けの玩具店だな。言っておくがやましい方の意味じゃないぜ。本格的なSF洋画の米国産玩具をわりと多めに置いてある、そういう系統の玩具店だ。リビングデッドモチーフの人形を扱ってる、わりとガチ目なホラーコーナも一角に有る。苦手な人が目にしないようきちんと配慮してるがな」
「オリジナル玩具っていうのはどういうの?」
「塩ビフィギュア。俺がデザインしてるんだ。自画自賛になっちまうが、一部の層の一部に人気あるんだぜ」
 他にも米国で玩具の買い付けもしているとか、実は英語は普通に読めるとか、色々な話を聞かせてくれた。そう言えば英雄以外と二人きりで過ごすなんて久しぶりの事かもしれない、と悠理はふと思う。元々誰かを極端に好き嫌いしない性格ではあるのだが……ただし第一英雄は特別だが……ここまで関わっている友人は葵ぐらいのものかもしれない。
 その理由については悠理自身にも不明だが、ただ、葵と一緒にいると、なんというか気が楽だ。変に気を張らずにいられるというか、妙な安心感があるというか、悠理が悠理でも何かしても、葵は葵のまま接してくれるような気がするというか。
「もし良かったら、また一緒にお出掛けするのはどうかな。改めてゆっくりお酒も飲みに行きたいし、植物園もいいかもね。他の場所も行ってみたら、玩具のいいアイディアが浮かぶかもしれないし」
 悠理は半分思い付きで、しかし半分意図があってそのように切り出した。次の話をしてしまうのは、葵が重体になるという事態を経験してしまったから。約束があれば死なないのでは、なんて甘い考えは持てないが、半ば祈るような気持ちでそんな事を口にする。
「お、いいな。悠理サンはなんていうか、こうやって一緒にいても気が楽だから助かるよ」
 つっても始終ベッタリしたいわけじゃないから安心してくれ、と笑いながら葵に言われ、悠理もつられて笑みを返した。思えばこうして他の事に意識を向けた事があっただろうか。今まで一つのものにしか執着出来なかった自分が、ようやく外の物事に目を向け始めた、そんな感じ。とある依頼から始まって今なお続く腐れ縁。もしくは運命共同体。一部の趣向の方向性が合致する稀な相手。
 または親しい友人とも。
「まだ時間あるし、どうせなら他の店も見て回らない? さっき言ったアイディア発想の一環で」
「そうだな、それじゃあどこ行こうか」
「とりあえず適当に店を覗いてみるのはどうだろう」
 アイスティーを空にして二人並んで歩き出す。服屋を見て回るのもいい。アクセサリーを覗くのもいい。
「ゲーセン行くって手もあるな。どうだろう、一勝負」
「いいね。何で勝負しようか」
 とりとめのない会話をしながら子供のように笑い合う。ただただ日常的におでかけするだけ、そんな何気ないひと時を、今日を、思い切り楽しむとしよう。
 願わくばこれからも。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【水落 葵(aa1538)/外見性別:男/外見年齢:27/能力者】
【蛇塚 悠理(aa1708)/外見性別:男/外見年齢:26/能力者】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 こんにちは、雪虫です。この度はご指名下さり誠にありがとうございます。お二人がショッピングモールできゃっきゃうふふしてるイメージで書かせて頂きました。
 アドリブも加えておりますので、口調・イメージ等齟齬がありましたらお手数ですがリテイクお願い致します。
 今後ともどうぞよろしくお願い致します。
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2018年07月31日

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