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『契りの儀式 』
天谷悠里ja0115)&シルヴィア・エインズワースja4157

 月明かりに照らされた薔薇園。
 色とりどりの薔薇がむせる程の甘く官能的な香りを伴って咲いている。

 その中心にあるガゼボには4つの影。
 真紅のウエディングドレスを身に纏った天谷悠里(ja0115)と純白のウエディングドレス姿の白の少女。婚姻の儀に臨む二人の側には見届け人として黒の女王とシルヴィア・エインズワース(ja4157)の姿がある。

 豪奢で高貴な雰囲気のドレスに合わせ悠里の黒髪はアップスタイルに結い上げられている。
 その中には深い赤の髪が一房。
 それが、透き通るような肌に浮かぶ赤薔薇の紋と相まって薔薇園の主人といっても過言ではない程の妖艶さを醸し出している。
 白の少女が纏うのは可憐で可愛らしいプリンセスタイプのドレス。
 どこかあどけなさを残したドレスは悠里とシルヴィアに既視感を感じさせるが、どこで見たのかまでは思い出せなかった。

 シルヴィアのドレスは以前黒の女王にもらったモノトーンのドレス。
 メイクや装飾品も上品なものでけして主張しすぎないが、彼女が黒の姫であることをしっかりと主張している。

 白の少女が、悠里の前に跪き誓いの言葉を口にする。

「悠里様に永遠の忠誠と服従を。この身が朽ちるまでの愛と奉仕を」

 恭しく頭を垂れ、悠里の手の甲へとそっと唇を触れさせると己が主人を仰ぎ見る。
 どこか不安げなその表情に悠里は微笑みで応え少女に立つよう命ずると、胸元に口付けを落とす。
 唇を離すと先程まで唇の会った場所に小さく赤い薔薇の紋が刻まれていた。
 これで白の少女は正式に悠里のものになったのだ。
 そう、全員が理解した。

 嬉しそうに微笑み何か言おうとする少女の唇を奪い深く深く口付ける悠里。
 時折溢れる水音を聞き、淫らに何度も重ねられる口付けを見て冷めきっていたシルヴィアの心はさらに冷えていく。

(誓いの儀式でこのような……)

 紅の女王へあまり良い感情を抱いていないシルヴィアにとってこの儀への参加は気乗りするものではなかった。
 当の本人が『貴女からの別離の誓いも兼ねている』と言うからそれなら、と参加してみたがやはり失敗だったのではと少しだけ後悔した。
 目の前の淫猥な女王がこの神聖な誓いの儀式を執り行うに相応わしいとはどうしても思えない。

「おめでとうございます。たった1人の姫君を大事になさって下さい」

 祝福の笑みを浮かべたまま祝辞を述べるシルヴィア。
 自分への懸想はもう間違ってもしないで欲しい、と言う真意も多少は伝わるだろうかと思ったが、紅の女王の笑みからは何も読み取れない。
 自分たちの前で契りを交わし、正式に少女を自分のものにしたのだからこれ以上こちらにちょっかいを出すこともないだろう、と思うと少しだけ安堵することができた。

 黒の女王からの祝辞にも応えた後、悠里が白の少女に何事か囁いた。
 少女の表情が喜びに変わるのと同時に庭の全ての薔薇が紅へと変わった。

「白の姫……」

 うっとりした声で白の少女、いや白の姫が悠里の言葉を唇でなぞると、今の今まで白かった彼女のドレスが裾から紅に染まっていった。
 幾重にも重なるチュールが赤からピンクそして白へとグラデーションになっていく様は姫の可憐さと愛らしさを引き立てている。
 その見覚えのある姿にいつかの、悠里に愛されていた頃の自分が重なったシルヴィアは少しだけ目を見開いた。
 少女のドレスへの既視感はこれだったのだ、そう気が付いてシルヴィアは悠里へ視線を向ける。

「白の姫を我が名としこの色を纏い続けていきます」

 喜びに震える姫の様子も相まって悠里は過日のシルヴィアを思い出していた。
 一気に染めてしまうのはもったいないと少女に与えた名は存外面白い方向へと転んだものだと、黒の姫となった彼女へと視線を向ける。
 過去の彼女と現在の彼女、どちらも愛している。そして今ならば両方愛することも不可能ではない、そんな風に感じていた。

 ***

「貴女も己が名として自分の本質を受け入れては如何かしら?」

 黒の女王の声に悠里は白の姫を愛でていた手を止めた。

「本質を?」

「ええ。今の名は貴女の本質を捉えてはいないと思うの。もし貴女がよければ私が名前を贈らせてちょうだい」
 
 悠里は考える。

(今ある名を捨て本質を受け入れれば今よりも高みへいけるのではないかしら)

 そう考えると生まれてから共に合った名前に未練はこれっぽちも感じなかった。

「ええ。是非お願いしたいわ」

「『美紅』というのはどうかしら?」

 美しい紅、名は体を表すというが、この名前こそが今の自分に相応しい気がした。

「みく……」

 新たな名前を反芻する。
 すると、過去のの自分は夢だったのではないかという思いが湧き上がってきた。
 悠里という少女のような女性は美紅という女王が見ていた長い夢なのではないか、そんな気すらしてくる。
 女王は自分の視界に入ってくる己が手先や胸元を見てやはりあれは夢だったのだ、と納得した。
 記憶の女性と今の自分の姿は違いすぎる。
 肉感的な体でいくつもの愛を楽しみ快楽を愉しむ妖艶で高貴な女王。
 それが本来の自分なのだから。

 悠里、いや美紅は満足そうに微笑んだ。

「素敵な名だわ」


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 ja0115 / 天谷 悠里 / 女性 / 18歳 / 二つの愛 】

【 ja4157 / シルヴィア・エインズワース / 女性 / 23歳 / 過日を見る 】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 こんにちは。
 今回もご依頼頂き本当にありがとうございます。

 今回、新しい名前をとのことでしたので色々考えましてこのようにさせて頂きました。名前を付けたりというのは、あまり得意ではないのですが気に入っていただけると嬉しく思います。

 お気に召されましたら幸いですが、もしお気に召さない部分がありましたら何なりとお申し付けください。

 今回はご縁を頂き本当にありがとうございました。
 またお会いできる事を心からお待ちしております。
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龍川 那月 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2018年07月31日

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