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『紅と黒の女王 』
天谷悠里ja0115

 ある夜、天谷悠里(ja0115)こと紅の女王、美紅は黒の女王に呼ばれ彼女達の部屋を訪れた。

「いらっしゃい。わざわざ悪かったわね」

 部屋には黒の女王1人で姫の姿は見えない。
 だが、先程まで愛の営みが行われていたことを感じさせる部屋の香りに美紅の心は昂りを抑えられなかった。
 薔薇園での声や音、そしてこの部屋の濃密な香り。
 2人の間には甘く深い愛が何度となく交わされているのだろう。
 自分の姫だった時とはどう違うのだろう。
 それを考え想像するだけで自然と口元には笑みが浮かんでしまう。

「たまには2人でお話もしたかったというのもあるのだけど、今日は、改めて祝福させて欲しかったの。先日はいい式だったわ、美紅。本当におめでとう。花嫁はどう?」

 席と飲み物を勧めながら黒の女王はそう述べた。

「ありがとう。あの子は素晴らしいわ。私の言葉、動きの全てに反応してくれてどんどん新たな一面を見せてくれる。これからが楽しみだわ」

「そう、それは良いことね。私の姫はどうだったかしら、何か無礼な真似をしていなければ良いのだけれど」

 何も知らないわけでもないだろうに空々しい事だと美紅は感じた。
 だが、自分が彼女の立場でもきっと同じ様に振る舞うだろう。
 現に自分は白の姫が黒の姫に対し複雑な感情を抱きつつあることに気がつきながら見て見ぬ振りをしている。
 自分と目の前の女王にさしたる差はないのだろう。

「そうね……無礼なことなんて何も。以前の私の花嫁だった頃の愛らしい彼女も気に入っていたけれど、私への愛をなかったことのように振る舞える気高い今の彼女も私は気に入っているし、貴女達の愛の深さは見習いたいところだわ。私はどちらの姫もそれぞれに良いところがたくさんあって最高だと心から思っているわ」

 返答には少しだけ時間がかかった。
 それは、彼女たちがどれ程素晴らしいかを伝えたかったからだが、言葉を吟味してもやはり伝えきるのは難しいなと紅の女王は感じた。
 どちらの姫も言葉では言い尽くせない程に素晴らしいのだ。

「それは良かったわ」

 黒の女王は満足げに微笑み紅の女王の隣へと腰を下ろす。
 そして、美紅の前に足の高いグラスを置くとそこへ濃い赤のワインが注ぎながら女王がそう言った。

「あの子はもうすぐ全てを思い出すわ」

「全て?」

「そう。貴女から受け取った愛や快楽、それだけじゃないわ。貴女へ捧げた愛、忠誠、奉仕の喜びその何もかもを」

 悦びに口角が上がる。視線をあわせると黒の女王もまた同じ様に妖艶な微笑みを浮かべていた。

「紅に戻すも、このまま漆黒の道を歩ませるも、その両方に染めてしまうことさえも全て美紅の自由」

 耳元から聞こえる囁きは耳が感じる物理的な快楽と相まってかとても甘く魅惑的に聞こえた。

「彼女は貴女の姫なのに。酷い女王様ね」

「あら、そう?」

 揶揄する様に囁き返せば、そんなに酷いことかしら、と言わんばかりの答えが返ってくる。
 悠里はくすりと微笑んで黒の女王の腰に腕を回し、触れ合いそうなほど唇を寄せる。

「心の色をも支配し、愛する。究極の支配と愛の形。心から素晴らしいと思うわ。私の悩みも知っているのでしょう?でなければ、あんなことしないはずだもの。あぁ、誤解しないでちょうだい。貴女の趣向はどれもこれもとても素晴らしいと思っているの。心から」

 甘く背徳感に満ちた悩み。
 それすらも愉しみへと変える黒の女王の趣向を紅の女王は素晴らしいと思っているし心から楽しんでいる。

「高貴で美しくそれでいて淫靡。貴女こそが最高の女王だわ。外でも紅の女王として相応しい生をあげる。ずっと美紅のまま生きていける様にしてあげる」

 動じる様子もなく微笑み返し黒の女王の唇が囁いた。
 黒の女王の囁きに美紅の瞳がすぅっと細められる。

 過去の自分を捨て去り美紅として生まれ変わった彼女にとって、それは今までで衝撃的ではあったが動揺はない。
 その魅惑的な内容にただただ心が躍るばかりだ。

「ええ。これからもずっと『お友達』でいましょう」

 艶っぽく微笑み合った2人はどちらからともなく唇を重ねる。
 浅い息が漏れ、甘い声色の愛の言葉がメロディの様に流れ出す。その中に水音と衣擦れの音が合わさって蠱惑的な音楽を奏でていた。



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【 ja0115 / 天谷 悠里 / 女性 / 18歳 / 永久の女王へ 】

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龍川 那月 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2018年08月06日

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