▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『夜宵さんの魔女訓練 〜魔女らしく戦えるようになってみよう〜 』
松本・太一8504

 無茶振りをされるのはいつもの事である。

 先輩魔女の皆さんも、自分の中に居る“女悪魔”も等しくそんな感じで人を振り回してくれるのはもういつもの事で、そんな傍若無人で妖艶で魅力的…な魔女さん方が集まる夜会に、その一員として――『夜宵の魔女』として呼び出されるのもいつもの事。そしてその度に色々あって凄まじく疲弊するのも――いつもの事。そう、今に始まった事では無い。何だかんだで日々振り回されている『夜宵の魔女』=『色々あって魔女(女)にならざるを得なかった普通の会社員の松本太一(男)』としては、最早諦めの境地に至っている――と言っても過言では無い。
 …いや、今回の場合、例え気紛れの産物であったとしても――たった二択でも選択肢が与えられたと言う時点でもう、この上無い慈悲だったかもしれない、とさえ思う。

 事の始まりは、先輩魔女さん方から――夜宵もそろそろ魔女らしく戦えるようにしておいた方がいいんじゃなぁい? と何かのついでに言われた事からだった(何のついでだったかまでは…もう覚えていないくらい些細な事だったと思う)。思い付きのように軽く言い出したのは確かに一人だったのだが、気が付けば皆がこぞって乗り気になり――じゃあ、アタシたちが手取り足取り――と恐ろし過ぎる話になり掛けたのである。
 が、その時点でこちらの顔色が真っ青だった事に気付いたのか、はたまた何か他の理由があったのか――もう一件、比較的無難な救済措置(いや、面白がっているだけな可能性も否定は出来ない)もまた俎上に上る。

 即ち。

 先輩魔女の皆で手取り足取り「実戦」を行い鍛えるか――つまり恐ろし過ぎる過酷な選択肢がこちら。
 専門家によるゲームを利用した「訓練」を行い鍛えるか――つまり比較的無難で穏便な選択肢がこちら。

 …の二択である。

 それは確かに今時のゲームと言うのは侮れないものも多いのだろう。特にFPS――ファーストパーソンシューティング、つまりプレイヤーの視点で動いて行く画面上に、次々と敵が現れ――それらを倒して行くと言う形のゲームともなれば、戦場やら銃撃やらの「実際の訓練に使われるシミュレータ」と大差無かったりするリアルな完成度のものもあるらしい。
 だから、ファンタジー系のその手のゲームで、魔女戦闘の訓練をしてみよう。

 …そんな話になった訳である。

 色々引っ掛かるところも無いでは無いが、敢えてそんな藪を突付いて蛇を出す度胸も無い。言われた通り、その二択の――穏便にゲームで訓練を、と言う方を選択し、その選択を受けた先輩魔女から紹介された『専門家』――と言うか、つまりゲームに詳しそうな人――瀬名さんでしたか――の元に、『夜宵の魔女』の姿で今向かっている。
 彼女、瀬名雫が入り浸っていると言う開放的な造りのネットカフェ。確か『ゴーストネットOFF』って言うんでしたっけ? と思うが、それで店名が本当に合っていたか自信は無い。ともあれ、太一、いや夜宵に教えられていた住所はその店である。…ネットカフェと言っても、昨今多いPC端末毎にプライベートスペースがかっちり分けられ、簡易的な寝泊まりにも使われるような造りとは違っていて、少々意外に感じもした。
 曰く、「ここ」なら当の専門家こと瀬名さんが経営側と懇意であるとか何とかで色々と融通が利くらしく、魔女訓練にもそれなりに便宜が図って貰えるだろうとの事。つまり下手すると店ぐるみでこちらの事情をある程度承知なのだろう相手と言う訳で…そこに思い至った時点で夜宵は赤面してしまった。…うう、こんな恥ずかしい状況にある事を、わざわざ広めたくなんて無いのに。
 羞恥に気が引けつつも、先輩魔女さん方に言われて選んだ選択肢である以上、足を止める訳には行かない。自分の中に居る“女悪魔”も確り夜宵の行動を監視している。結果、足取りが重くなりつつも――程無く、目的の店に到着してしまった。
 到着したその店は、壁がほぼ全面ガラス張り。設置されているデザイン重視な曲面のある長机に、余裕を持たせた等間隔でPC端末が置かれていて――…

 …――取り敢えず、簡単に人目が忍べない、と言う事だけは良くわかった。



「いらっしゃーい、わお、すごーい。お姉さん、スタイルばっつぐーん」
「えぇと…あまり言わないで貰えますか…っ」
「? んーまぁいいけど。もっと自信持てばいいのにねー。あ、それでこの『訓練』って事かぁ」
 …迎えてくれた瀬名さんの様子からして多少誤解があるような気がするが、訂正はしない。
 何やら“女悪魔”が楽しそうにクスクス笑っているような気がしたが、そちらにも敢えて反応はしない。

 それより、本題。

「で、詳しい事は瀬名さんから聞くように、と言われているんですけれど…」
「ああ、使うゲームの事だよね? それならこっち。ちょうど良さそうなファンタジー系FPS見付けといたよ」
 キャラメイクの自由度が高めで、確り計画立てて作らないと実戦で使い物にならなくなっちゃったりもするちょっと厳しめな感じの奴ね。
「…それって」
「えっと、夜宵さんの場合って“情報”を上手い事活用する術を学びたいって感じなんだよね?」
 だからこれにしてみたんだけど。
「…」

 まぁ、その通りである。
 …事実、『夜宵の魔女』としての力は概念や事象等の“情報”を扱うものな訳で――つまりは単純な“力”のリソースだけなら訓練するまでも無く有り余る程にある。だがそのリソースを“適した形で扱う術”が覚束無い――そういう事になる訳だ。
 そしてそんな“能力”である以上、ただのゲームに対してであっても“きちんと意識して情報処理を行えた”とすれば、充分に己の能力を以って、望む形の影響を与える事が出来る。
 だから、ゲームでの魔女訓練も成立する…と言う理屈であるらしい。

「ってな訳で取り敢えずキャラメイクから始めよー」
「…は、はい」



 魔女だから、まずは「魔法使い(女性)」をキャラクターのベースに考える。外見…と言うか視点の高さ等については、自分の視点の高さそのままに設定。素早さや頑丈さ――HP等の基本的なステータスについては、課金アイテムで経験値を加算して底上げ調整する。別にLv1からゲームを楽しみたいが為にやっている訳では無いのだから、まずは自分自身を出来るだけ反映したベースキャラクターを作らなければその先に進めない。即ち、ある程度強く成長させた段階から、キャラクターを作成する訳だ。
 所持したい能力を考える。…ここがある意味、肝である。魔女の“情報”能力をキャラクターに反映させるとしたら、どんな形に設定するべきか。

「………………要するに、必要な事は“何でも出来る”んですよね」
「万能系かあ…それってゲーム的には茨の道だけど」

 初心者には優しくないよ、と言われても、魔女としての現実の能力上、そうせざるを得ないのだから仕方が無い。攻撃も防御も、回復も支援も、召喚も移動も――ゲームの魔法使いとして設定出来るスキルを、可能な限り詰め込む事になる。バランス上器用貧乏にならざるを得ないが、こうするしかない。

 にしても…これで本当に、魔女らしい戦闘訓練…が出来るものなのだろうか、とふと思ってしまう。
 そう、我に返るとそんな根本的なところから、実は結構不安だったりする。



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

■PC
【8504/松本・太一(まつもと・たいち)/男/48歳/会社員/魔女】

■NPC
【NPCA003/瀬名・雫/女/14歳/女子中学生兼ホームページ管理人】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

 松本太一様には初めまして。
 今回は発注有難う御座いました。

 そして初めましてから大変お待たせしてしまっております。
 当方毎度のように作成が遅くなりがちな輩で申し訳無い限りなのですが、どうか御容赦頂けると有難いです。

 また、西の方で大変な雨災害があったり、逆行台風があったりしましたが…もし被災されていたとしたならお見舞い申し上げます。
 近頃暑さが尋常ではない…かと思いきや地方によっては急に涼しい通り越して寒くもなったりし、温度差で体調管理が大変かと思われますので、熱中症等にもお気を付けてどうぞご自愛下さいませ(これは被災されていなくともですが)

 内容ですが…当方FPSにとんと縁が無く、初めましてなのでPC様の設定についても上手く把握出来ているのかどうか不安なところだったりするのですが、こんな形に纏めさせて頂きました。

 それと、実は今回諸事情ありまして、このライター通信部分や本題のノベルの方で普段やらないようなポカをやっていないかどうかが非常に心配な状況だったりしています。…自分では確りやっているつもりでも何かしらすぽーんと抜けている可能性がありそうな状況と言うか。
 取り敢えず、まともにこちらの意図通りにお届け出来ていればいいのですけれど。

 如何だったでしょうか。
 少なくとも対価分は満足して頂ければ幸いなのですが。

 では、次はおまけノベルの方で。

 深海残月 拝
東京怪談ノベル(シングル) -
深海残月 クリエイターズルームへ
東京怪談
2018年08月20日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.