『始まりの歌 』

狐中・小鳥（ka5484）

「人前で歌ったりするのは初めてじゃないけど……こっちは初めてだし、ちょっと緊張するんだよ」
　ばくばくと早鐘を打つ心臓を抑えるように、狐中・小鳥（ka5484）は深呼吸をする。
　今日は小さなライブハウスで初ライブを行う日だ。
　まだ単独ライブを行えるほどの実績がないため、複数人との合同ライブに参加している。
（うわぁ、他の人たちは堂々としててすごいなぁ……）
　小鳥以外の参加者は何度もライブ経験があるのか、堂々としていて貫禄さえ感じるほど。
「あなた、今日が初めて？　今日はよろしくね」
「よ、よろしくおねがいしますっ」
　隣にいた女性に話しかけられ、小鳥は少し上ずった声を出しながら挨拶をする。
「そんなに緊張しなくてもいいのに」
　くすくすと笑いながら、その女性は「お互いに頑張りましょう」と言って、ステージへと向かっていった。

※※

　ステージに立つと、小さいライブハウスながらも多くの人が集まっていることに驚いた。
「小鳥ちゃん！　頑張って！」
（わっ、わたしの応援に来てくれてる人がいる！　うれしいなっ……！）
　ほぼ無名で、自分目当ての人はいないだろうと思っていた小鳥にとって自分を目当てに来てくれた人がいたことに嬉しさとくすぐったさを感じていた。
「こんにちはっ！　狐中・小鳥ですっ！　今日はたっくさん楽しんでいってね！」
　小鳥の順番がやってきて、会場にいる人たちに話しかけるとわぁっとライブハウスが震えるほどの声援が返ってくる。
「今日は新曲と演舞を披露するんだよっ！」
　演舞とは、小鳥がクリムゾンウェストでやっている剣の舞のことだ。
　まだ子供っぽさが残る小鳥には不釣り合いな鋭い剣を持ち、情熱的な舞を披露する。
　子供ながらも色っぽさと激しさが絡み合う舞に、その場にいた人たちは声援を送るのも忘れるほど見惚れていた。
（……えっ！？　クリムゾンウェストでは結構評判良かったんだけど、だ、ダメだった？）
　声援がまったくないことに、小鳥は少し焦りながらも演舞を続けていく。
「え、えっと、も、もし面白くなかったら言ってねっ！」
　不安な気持ちを隠しながら観客席側に言葉を投げかけたのだけれど――。
「あっ！」
　何もなかったけれど、足がもつれてしまったのかステージ上で小鳥は派手に転んでしまった。
「大丈夫！？」
　予想以上に派手に転んだため、観客席側から思わず心配の声が出るのだけど――。
「えへへっ、転んじゃった。身体は丈夫だからこのくらいなんともないんだよ♪　心配してくれてありがとう！」
　ぱっと笑顔を見せて、小鳥は演舞を再開した。

※※

「今日はありがとうだよ♪　私の元気、少しでも皆に分けることが出来ていれば嬉しいな♪」
　そう言って、大きな歓声の中小鳥は舞台袖へと下がっていくのだった。

※※

「今日は来てくれてありがとうだよ♪」
　すべてのライブが終わった後、参加していた人たちで観客の見送りをすることになった。
「小鳥ちゃんの演舞、最高だったよ！　これからも頑張ってね！」
「はわわわっ、お、応援ありがとうだよ♪　これからもよろしくね♪」
　小鳥は来てくれた人全員に握手をして、感謝を伝えていく。
（小鳥のことを知ってくれている人はそんなにいなかったけど、帰りはたくさんの「頑張ってね」をもらったんだよ♪　えへへ、嬉しいなっ）
　たくさんの「頑張って」を言われるたびに、小鳥はどんどん笑顔になっていく。
「小鳥ちゃん、なんだか嬉しそうね」
「はい♪　だって、たくさんの人に聞いて、見てもらえましたからっ」
　すると、思い出したように一緒に参加した人たちが小鳥の演舞を褒めていく。
　ほとんどが「あんな風に動けるなんて、さすがね！」「今度は私も観客として来たいわ」など、小鳥の歌や演舞を褒めるものだった。
　たくさん褒められたことから、小鳥はくすぐったさを覚え、それが可愛かったのか別の女性にぎゅーっと抱きしめられるのだった。




━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

ka5484/狐中・小鳥/女性/12歳/舞刀士（ソードダンサー）

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛


狐中・小鳥さま

こんにちは、今回はご発注をありがとうございました。
せっかくご発注頂いたのに、体調不良で遅延をしてしまい申し訳ございませんでした。
今後はこのようなことがないように致しますので、
また機会がありましたら宜しくお願い致します。

それでは、今回は書かせて頂き、ありがとうございました！

2018/8/17

シングルノベル

水貴透子

ファナティックブラッド

2018年08月20日