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『『IF――敵対――』 』
アレスディア・ヴォルフリート8879

「こいつは俺が殺る」
 アレスディア・ヴォルフリートの前に、1人の青年が立ち塞がった。
 黒髪、黒目の暗く鋭い目をした青年。年は自分と同じくらいだ。
 侵略国家の騎士であるその青年の名は、ディラ・ビラジス。
 ただ、命令に従い、刃を振るう青年のことが気になり、アレスディアは彼を追い回していた。
 だが――彼に、彼女の声は届くことがなかった。
 今、ここで止めなければ、彼はこの先の町へと行く。
 罪のない人々を殺めるために。

 彼と共にいた者達が、町へと向かっていく。
 小隊長である彼が行かねば、作戦が決行されることはないはずだ。
 ディラ・ビラジスが背負っていた剣を抜く――太く、身の丈ほどもある大剣だ。
 黒装束姿のアレスディアは、両端に刃がある槍を構えて間合いをとった。
 ディラが地を蹴る。
「何故、解らぬ……!」
 自分に繰り出された槍を、ディラは太い刀身で受け流す。衝突の力を利用し、剣を片手で真上に振り上げる。
 踏み込み、もう片方の手を添えてアレスディアに振り下ろす。
 槍で防ぐ時間はなかった。横に跳び、アレスディアは一撃を躱す。
 体勢を整える暇もなく、下方から鉄の塊がアレスディアへと飛んでくる。
 腰を使い、体を回転させてアレスディアは槍で鉄の塊を、ディラの刃を弾く。
 ディラは軽く体勢を崩すも、足を開き踏みとどまる。自身の武器に翻弄されることはない。
(身体能力は極めて高い。パワーも相手の方が上か……だが)
 アレスディアは知っていた。この男は精神面に弱点を持っている。
「奪われた者の深い憎しみが、いずれお前に襲いかかる。怖くはないのか」
「刃を奪ってしまえばいい。刃を持たずに向かってくるなら、寝てても殺せる」
 ディラは残忍そうな笑みを浮かべた。
 心を乱せば、隙が生まれる。しかし、今の彼の心は乱れない。
 決めたのだろう、一生、騎士として生きると。
「心を繋ぎ止める何かが、出来たということか」
 アレスディアの心の方が乱れていた。
 だけれど、彼女の繰り出す刃に乱れはもうない。
 彼を止める。例え――命を奪うことになろうとも。その覚悟は出来ていた。
 地を蹴りあげて、砂をディラの顔にかける。
 彼が片手で顔を庇ったその瞬間に、アレスディアは彼の間合いの外から、槍を突き出した。
 片手で持つ大剣に受け止められた穂先は、火花を放ち、ディラの脇腹を裂き、彼の身体から血が噴き出した。
 アレスディアが槍を引くより早く、ディラが渾身の力を込めて、大剣を打ちおろし彼女の槍を叩き落とした。
 手に衝撃が走った。思うように動かせない。
「くっ……」
 ディラは血が流れる脇腹を押さえて片膝をつき、大剣を地に落とした。
 アレスディアは槍を抱えて、ディラに近づき、その穂先で彼を――。
 貫け、なかった。
 生かしておけば、彼は多くの命を奪うだろう。
 それなのに。
「……なんてな」
 捕らえようとアレスディアが一歩近づいたその瞬間。
 ディラがギラリと光る眼を、彼女に向けた。同時に、彼の手から風の刃が放たれた。
 自身の首を狙う魔法を、防ぐ術はなかった。
 アレスディアは最後まで目を逸らすことなく、暗い光を宿した彼の目を見ていた。


「……っ」
 飛び起きて、荒い息を吐いた。
 汗で体がぐっしょり濡れている。
 冷房が止まっており、室内はかなりの高温になっていた。
 そのせいだろうか――あんな夢を見たのは。
 アレスディアは思わず、両手で顔を覆った。
 夢であったことに、安堵した。
 だけれど、心も体も酷く緊張している。緊迫感が抜けない。
 ベッドから下りて、洗面台に向かい、水を一杯飲んだ。
 鏡に映る自分の顔を見た。乱れた髪。強張った顔。
 まるで戦いの後のようだ。
 目を思い出す。彼の自分を睨む目を。
 もしも今、彼が……。ディラが騎士団に戻ったら。
「私は刃を向けられるだろうか。彼に」
 瞬間、大きく首を左右に振る。
「二度と闇の道は歩かせぬ。命に賭け……」
 呼吸を整えて、アレスディアは最後の言葉を言い直した。
「……何があっても」
 彼女の脳裏に、今のディラの目が戻ってきた。
 鋭くも、残忍さの無い眼。
 自分に向けられる、穏やかな笑い顔。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/外見年齢/職業】
【8879/アレスディア・ヴォルフリート/女/21/フリーランサー】

NPC
【5500/ディラ・ビラジス/男/21/剣士】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ライターの川岸です。
アレスディアさんの言葉に全く動じない、迷いのないディラを書かせていただきました。
感情を取り払った止めを刺すことが目的な戦いなら、アレスディアさんの方が強いと思います。
この度もご依頼、ありがとうございました。
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東京怪談
2018年08月20日

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