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『紅の女王と紅薔薇の姫 』
天谷悠里ja0115)&シルヴィア・エインズワースja4157

 女王の口付けは花嫁を紅に染めた。

『女王』への絶対の忠誠と愛はそのまま紅の女王へと向けられることへとなったのだ。

  ***

 天谷悠里(ja0115)もとい美紅の部屋に、足を運んだシルヴィア・エインズワース(ja4157)は真紅の女王の姿を認めると嬉しそうにそれでいてどこかホッとした様に微笑み跪いた。

「完成おめでとう。愛らしさに磨きがかかったんじゃない?」

「ありがとうございます。ユウリさ……」

「美紅、そう呼びなさい」

 そこまで動いた唇を人差し指でそっと止め、美紅が優しい口調でたしなめる。

「はい、美紅様。あの……私、どの位眠っていたのでしょうか?黒の女王様と一緒に行った部屋で急に眠くなってそこからの記憶がないのです」

「ほんの少しだけよ。でも本当に何も覚えていないの?」

 シルヴィアは悠里の指を大切なものでも握る様に両手で包みその体温に息を吐く。

「そうでした。怖い夢を見たのです。自分の心が美紅様から離れて別の知らない方に行ってしまう夢を。とても怖かった」

 夢を思い出したのかシルヴィアの目に滲む涙を唇で拭い胸元に所有の口づけを落としてから

「心配性ね。私のものという証明に姫としての名前をあげるわ。緋色の衣で緋衣。読み方は違うのだけれどあそこに飾ってある赤薔薇の名前よ」

 美紅が指差した先、ベッドの傍に大輪の赤薔薇が飾ってあるのが見える。

「ひい……」

 シルヴィアは薔薇を見つめ胸元の口づけを受けた部分に浮かんだ薔薇の紋へ視線を移したのち、己が主人を見つめた。
 与えられた名前を呟くだけで幸せな気持ちが溢れてくる。

「ありがとうございます。私はシルヴィア・エインズワースの名を捨て貴女様だけの緋衣としてこれから生きていきます。この愛も忠誠もこの身全てを美紅様に捧げます」

「ええ。紹介するわ。貴女の姉姫よ」

 ドレスの裾を持ち、白の姫が緋衣に頭を下げた。
 白の少女であった時とは全く違う、穏やかで落ち着いた微笑みを浮かべる少女にも違和感を感じない。
 緋衣にとって彼女はずっと姫であったし、今この瞬間から、姉と仰ぐべき美紅の第一の姫であり花嫁であった。

「よろしくお願いしますわ、お姉様」

 言葉にして命じられるまでもなく白の姫の前にも跪き、手の甲へと敬愛の口づけを捧げる。

「ええ、緋衣。仲良くしましょう」

「さあ、愛し合いましょうか」

 姫同士の契りの口づけを満足そうに見つめていた女王からの言葉に、2人の姫は顔を見合わせ微笑みあうと仲睦まじく手を取り合う。
 時折唇を交わしながら、女王の目を愉しませ互いを高め始めた。

(これは面白い)

 2人の異なる技巧を感じながら、美紅は目を細め喉を鳴らす。

 記憶がないと言っていた緋衣の手は黒の女王に奉仕していた時のそれだ。
 だが、その瞳も声も何もかもが純粋に自分に愛を向けている。
 黒の女王への背徳も心残りも感じさせない様子は本当に記憶を失っているのだろうと思われた。

「美紅様、もっと……もっと愛してください」

 口づけを落とし離れていく唇を緋衣の目が追う。
 イヤイヤをする子供のようにねだるその姿は凍るほど冷たい視線を投げかけていた姫と同一人物とはとても思えない。

「そんなに焦らなくても時間はたっぷりあるわ」

(後で黒の女王も愛してやらなくてはね)

 最高の趣向を用意した黒の女王へ礼をしなくては、そう考えながら2人の姫へ愛を返す。

 甘い声は夜が明けてもなお続いていた。

  ***

 最後の一粒まで砂時計の砂が落ちきった夜、

「お別れね」

 店の入り口で黒の女王がそう言った。

 彼女の前には美紅、緋衣、そして白の姫が立っている。

「着慣れないというか、なんだか変な感じがしますね」

 嫌味のないピンク色のワンピースの裾を摘み緋衣がそう言った。

「あら、似合っているわよ?とても可愛らしいわ」

 美紅の言葉にそうでしょうか、と頬を染める姿に姫騎士の面影はない。

「でも確かに。ずっとドレスだったから違和感はあるかもしれないわね」

 胸元が開き体のラインがくっきりと出る赤のイブニングドレスに身を包んだ美紅が白の姫の方へ視線を向ける。

 白の姫もやはり少し違和感があるのか白いブラウスや薄いピンクのカーディガンなどに手を触れている。
 暗めの赤いスカートに手をつけないのは姉姫としての落ち着きだろうか。

「これからは『美紅』として生きると良いわ」

 そう言って差し出されるのは一通の封筒。

「ありがとう。もう貴女を愛してあげられないのは少し残念だけれど」

 戯れに美紅がそう言うと黒の女王は笑った。

「大丈夫よ。愛してあげたくなったらこちらから出向いてあげるわ」

「そんなこと……貴女なら出来そうね」

 この店は魔法の店なのだ。彼女ができると言った以上本当に出来るのだろう。

「本当にお世話になりました」

 緋衣と白の姫が恭しく礼をする。

「ええ。3人ともお幸せにね」

 3人が店に背を向けると一瞬の強い風が吹く。
 振り返ると店のあった場所は空き地になっていた。
 さてこれからどうしようか、そ思った矢先、

 黒塗りのリムジンが3人の前に止まりスーツをきっちりと着込んだ女性が降りてくる。

「美紅様とその姫君様でいらっしゃいますね。黒の女王様より案内を仰せつかっております」

 美紅は満足そうに微笑むと2人の姫に微笑み言った。

「ええ、いきましょう」

 もう恋人同士だった天谷悠里とシルヴィア・エインズワースはいない。
 ここにいるのは、そしてこれからも存在し続けるのは真紅の女王・美紅と彼女への愛だけに生きる緋衣と言う名の姫なのだ。




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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 ja0115 / 天谷 悠里 / 女性 / 18歳 / 真紅の女王 】

【 ja4157 / シルヴィア・エインズワース / 女性 / 23歳 / 紅薔薇の姫 】
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龍川 那月 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2018年08月24日

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