▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『『彼は自分にとって』 』
アレスディア・ヴォルフリート8879

 夏の休日、2人で過ごしたある日。
『あのさ、俺達の関係ってなんだと思う?』
 不意に、ディラ・ビラジスがそう問いかけてきた。
 アレスディア・ヴォルフリートの脳にまず浮かんだのは、友という言葉だった。
 続けて、ディラは彼女にこう言った。
『これからさ、アンタを紹介する時、俺の……相方だって言ってもいいか?』
 アレスディアはすぐに、返事をすることが出来なかった。
 それが困るからというわけではなく――。

「私とディラは、どういう関係なのだろう」
 就寝前、ベッドの上で天井を見ながらアレスディアは考えていた。
 少し前なら、アレスディアはディラのことを戦友と紹介していただろう。
 共に仕事をする彼は、アレスディアにとって大事な仲間の一人、だった。
 アレスディアにとってディラは……いや、ディラにとってアレスディアは、数年前まで紛れもなく敵であった。
 敵として出会い、いつの間にか行動を共にするようになっており、今はそれが当たり前になっていた。
(共に仕事をこなし、時に休日を過ごし、笑い合う。そういう関係を、なんて呼ぶのだろう)
 ディラは『相方』と言ってもいいかと問いかけてきた。
 彼にとって自分は『相方』という存在なのだろうか。
 多分それは、他人に紹介する時の呼び方で――彼にとって自分は何なのだろう。
 彼が警備の仕事を請ける理由は、アレスディアだ。アレスディアが警備の仕事を請けるから、彼も請ける。
 彼は自分にどんな感情を抱いている? 唯一の友、親友? それともただの、依存なのだろうか。
 それよりも、自分にとって彼は?
 これまで、アレスディアは誰もが等しく大事だった。
 どこの誰であろうと、危機に瀕しているのであれば、いつでも命の限り護る。
 勿論、ディラもその一人だ。
 彼が助けを必要としているのなら、何処であろうと何であろうと迷いなく力を尽くす、大事な一人だ。
(……けど本当に、それだけだろうか)
 アレスディアは、きっかけは彼に求められたからではあるが、ディラのことを名前で呼び捨てで呼ぶようになった。
 人を名前で呼ぶのは、何年かぶりであり、その時彼女の胸の奥底から、熱が湧き上がってきた。
 その熱の正体は、自分でも解らない。
 この熱は、得体のしれない感情?
「等しく大事な1人……で、括られるものだろうか」
 知り合い?
 それは違う、その程度の関係ではない。
 友人?
 親しみを覚えるのは間違いない。だけれど、何か違う。心のどかかが友人という括りを否定する。
 それならば、好敵手? 戦友?
 戦い、そして共に戦い抜いてきた友ではある。でも、それもやっぱり違う。
 なんだろう。
 それだけでは、いや、それだけでもなくて……。
(この気持ちは一体何なんだ)
 ディラの姿が思い浮かぶ。敵に向ける顔、自分に向ける顔。
 共に敵に挑む時の、彼の背。深追いしそうな自分を止める彼。
 相対ではなく、隣にいることで感じる、ほっとする思い――安心感だろうか。
 アレスディアは自然と、胃のあたり。じわりと熱が湧き上がる部分に、手を当てていた。
「いつか理解できる日がくるのだろうか」
 軽く息をついて、アレスディアは目を閉じた。
 明日もまた、警備の仕事だ。
 誘ったわけではないが、当然のようにディラも一緒。
 事実上、仕事の相棒になっていることは確かなようだ、が……。

 仕事の相棒、パートナー。
 それでは何か……足りない気がする。
 仕事の関係者に彼をそう紹介するのは、間違いではないのだけれど。
 
 眠りに落ちていくアレスディアの脳裏に、大切だった人々の姿、自分に向けられた顔が浮かんでいく。
 両親、幼馴染たち、自分を守ってくれた大切な故郷の人々。
 忘れてはいない。だけれどずっとずっと遠ざかっていた感情が溢れてくる。
 父を、母を、身近な人を想う気持ち。
 そこには、過去の自分の姿もあって。
 その世界は、笑顔と優しい愛に包まれていた。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

【整理番号/PC名/性別/外見年齢/職業】
【8879/アレスディア・ヴォルフリート/女/21/フリーランサー】

NPC
【5500/ディラ・ビラジス/男/21/剣士】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

いつもお世話になっております、ライターの川岸満里亜です。
アレスディアさんがディラに抱いてくれている情が、どんな感情なのか。
私もアレスディアさんと共に知っていきたいと思います。
この度もご依頼、ありがとうございました!
東京怪談ノベル(シングル) -
川岸満里亜 クリエイターズルームへ
東京怪談
2018年09月05日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.