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『特殊食材の研究の結果は…… 』
月乃宮 恋音jb1221

「よっようやく、完成しました……」
 最初の試食会から数ヵ月後、ゲッソリと痩せこけた恋音は一つのメロンを大事そうに抱えながら、研究施設の一室にフラフラしながら入る。
 研究をはじめたばかりの頃は新品だった白衣も、今では恋音の体調を表すかのようにボロボロになりつつあった。
 恋音が管理している畑で収穫した野菜や果物が、恋音のような特別な者達が食べると特殊な効果を発揮することが分かったのが数ヵ月前のことになるも、彼女にとっては昨日のことのように思える。
「最初の試食会では食材の効果にいちいち驚いていましたが、今ではもう慣れたものですねぇ……。うふふ……」
 精神的にも肉体的にも疲れている恋音は、部屋の隅に置いてあるテーブルセットへ向かう。
 そしてまな板の上にメロンを置くと、ここ数ヵ月の間に行った研究を思い出す。
「身体的に効果があるモノの中から、特に重さを感じる部分を削ることを最初は優先していましたが……。軽減することに成功したかと思いましたら、我を無くすほどの食欲増加の副作用が出ちゃいました……。しかもその副作用のせいで、体型の変化が起きてしまいましたし……」
 項垂れる恋音のスリーサイズは、研究前と大分変ってしまっている。
 副作用からいろんなモノを食べあさってしまったせいで、以前より胸と尻が大きくなってしまったのだ。
 そのせいで下着や服の買い替えを一気にしなければならなくなり、予想外の散財をしてしまった。
「……それでも根気強く研究を続けた結果、やはり重さを感じる感覚を弱くすることで、食欲増進効果が出てしまうことが判明いたしました……。しかも一定の食材を食べ続けることにより、肉体の一部が変化することも……」
 トマトの『肉体年齢変化』、バライチゴの『体重増加』であれば見た目は違和感のない変化で済むが、小玉スイカの『巨乳化』、ブルーベリーの『肉体膨張』、サツマイモの『臀部膨張』などは人目を引く変化になる。
 桃の『食欲増加』と落花生の『母乳噴出』は、その手の悩みを持つ恋音の仲間が研究に参加してくれており、今は任せていた。
 どうやら食材を一定の量を食べ続けることにより、効果は持続し続けるようだ。そしてその効果は永久に続くのか、あるいはいつかは終わるのか、そこらへんはまだ分かっていない。
 しかし肉体に変化を及ぼす成分は発見されたので、食材からその成分を取り出し、他の食材に移し替えるところまでは研究は進んだ。
 それはもちろん恋音の所有する畑の作物であり、今回研究材料になったメロンがそれであった。
「あの畑で育ったこのメロン自体には、特に効果はありませんでした。しかし他の作物の効果を移し替えて、受け入れられるという効果が発見されたのが結果として大きかったですね」
 大発見をしたものの、恋音の表情は暗い。
 今まで体験した食材の効果を考えると、複数が入り混じったこのメロンを食すことには勇気がいるのだ。
 それでも一人試食会をはじめるには理由があり、この体型を元に戻したいという願いがある。
「特注の下着というのは、注文の仕方も値段も面倒なことが多いんですよね……。特に布を多く使う大きめの下着を注文すると、金額の桁が違います……。胸とお尻が大き過ぎると動きづらいことこの上ありませんし、お気に入りだった下着を身に着けられないというのは思っていた以上に落ち込みます……。なのでとっとと元のサイズに戻りたいですね」
 暗雲を背負っている恋音の姿は、ここ数ヵ月の間に起こった苦労を物語っていた。
 しかしどれだけ時が過ぎようが、胸と尻のサイズは元に戻らず。
 他の研究者の意見を聞いてみたところ、『肉体変化の効果をもたらしたモノには、同じように効果を持つモノをぶつければ良いのでは?』と助言された。
 つまり特殊な効果を持つ食材の食べ合わせによって体格が変化したのだから、同じように食べ合わせによって変化するのではないかと言うことだ。
 なので造られたのが、このメロンである。
 どんな効果、あるいは副作用が出るのかは分からないので、今回も研究施設の一室を借りることにした。
 神妙な面持ちで、メロンを切っていく恋音。
「正直なことを言いますと、今回の成功率は限りなくゼロに近いです……。しかし成功への一歩だと思えば、何てことありません!」
 キッと表情を引き締めた恋音は、一口サイズに切ったメロンを次々と勢いよく食べていく。
「んんっ〜♪ 冷やしていたので、美味しいですぅ♪ こんなメロンなら、いくらでも食べられますねぇ」
 あまりの美味しさに、恋音は一時研究をしていることを忘れてしまう。
 だがメロン一個分食べ終えて満足げにため息をついた後からすぐに、肉体の変化は表れ始めた。
「あっあれ? 何だか身体がブルブルっと震えていますね……」
 思わず後ずさった恋音の身体は、小刻みに震えている。部屋の中心まで移動すると、肉体の変化は眼に見える形で現れた。
「きっ……きゃあああっ! おっお尻から太ももが、とんでもない大きさになっちゃっていますぅ! もしかしなくても、サツマイモの効果ですかぁ?」
 恋音の悲鳴が、部屋の中に響き渡る。
 尻から太ももが、百センチ近くに巨大化したのだから無理はない。だがすぐに、元の体型に戻る。
「継続時間は短いですけど……、嫌な変化を見てしまいました……。ううっ……! でもまだ身体が震えます……!」
 変化は続き、今度は身体がどんどん膨らんでいくのと同時に、ズシッと重くなった。
「くうっ……くっ苦しいですぅ……!」
 パンパンに膨らむと呼吸器官が圧迫されて、空気が吸えなくなってしまう。
 だがそれもすぐに収束していき、身体はまるで風船がしぼんでいくかのように元に戻っていく。
「いっ今のは、ブルーベリーとバライチゴの効果……ですね。ぜっ前途多難であることは分かっていましたが……、まさかここまでとは……」
 同時に複数の効果が肉体に起こる為に、疲労が凄まじい。大して動いてはいないのに、身体がグッタリしてしまうのだ。
 しかしまだ変化は続く。今度は胸が熱くなり、どんどん大きくなっていく。
「ひっやあああっ! どこまで大きくなるんですかぁ!」
 膨らみ続ける二つの胸は、部屋いっぱいに大きく成長した。しかしこれもまた少しの間の後、胸も元に戻る。
 どうやらトマトと小玉スイカの効果が、胸に同時に現れたみたいだ。
 度重なる肉体変化で疲れ切った恋音は、その場にバタリッと倒れ込む。
「よっ予想の斜め上をいく結果でした……。とりあえず、生きてて良かったです……」
 肉体はコロコロと変わることによって熱を持ってしまった為に、床の冷たさが今の恋音にはありがたかった。
「……しかしもうどこからどう改造したら良いのか、分からなくなってきました……。収穫物ももう残り少ないですし、この研究、一時凍結した方が良さそうです……。と言うより、私の身が持たないでしょう……」
 収穫物の効果研究より、己の身の安全を選んだ恋音であった。


<終わり>


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【jb1221@WT09/月乃宮 恋音/女/19/ダアト】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 このたびはご指名をしていただきまして、ありがとうございました(ぺこり)。
 畑シリーズ3部作も最終話ということで、心を込めて書かせていただきました。
 楽しんで読んでいただければ幸いです。

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エリュシオン
2018年09月18日

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