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『『想いの形』 』
アレスディア・ヴォルフリート8879

 アレスディア・ヴォルフリートは常に、竜の紋章が彫られた灰銀のコインを首から提げている。
 これは彼女の父が出征の際に、アレスディアに譲り渡したものだ。
 特定のコマンドを唱えることで、彼女はこのコインを変化させることができる。
 『思い入れのあるものを、自らが最も欲している力の形に変える』……それが彼女が有する、特殊な力だった。
 彼女が最初に望んだ力は、誰かを護る力。
 故郷のまとめ役のような立場だった父のように、常に誰よりも前に立ち、如何なる刃をも寄せ付けない、堅牢な守りの力。
 コインは灰銀スクトゥム型の大きな二枚の盾に変化し、あらゆる敵の前に立ちはだかり、いかなる攻撃でも受け止め防ぎきる力となった。

 父と、故郷の男性たちが戦場に向かって数年後。
 アレスディアは故郷の人々を、護るべき人たちを、全て亡くしてしまう。
 何もかもが死に絶え、焼け野原と化した故郷を目にした彼女の心に、変化が生じた――湧き上がった感情は『憎しみ』。
 黒かった髪も、その時全て銀色へと変わった。

 助けてくれた聖職者たちに諭されたアレスディアは、命を粗末にするようなことはなかった。
 自分を生かそうと盾となった人々の死を無駄にしないために、それ以上の意味も目的もなくただただ生きているだけだった――時芽生えた憎しみの感情を宿したまま。

 そして、彼女に再び護る気持ちが湧き上がり、彼女はその気持ちに支配される。
 魔物に襲われている場に遭遇した時。
 何を考えるでもなく自然に飛び出した身体。
 気付けば彼女は人々を護っていて、人々が喜び合う姿に彼女の心は救われる。
「ああ、そうか。誰かに護られた命なのだから、誰かを護るために使い果たそう」
 そっと、人々の前から立ち去り、アレスディアはコインを握りしめた。

 故郷の人々を失ってから、アレスディアは、死ぬことも、敵討ちもできずに、生きてきた。
 弱者を踏みにじる者への憎しみを内に秘めたまま、流れていく日々を過ごしていた。
 彼女の身近に、護るべく人はもういない。討ちたい相手に挑むことも出来ない。
 そんな、ただ生きているだけの、価値の見出せない命。
「護られるべき、弱者はいくらでも存在する。護る意思――盾だけでは、護りきれない」
 呟きながら、彼女は歩いていた。
 山から下りると、沢山の人々の姿があった。
 山裾の農業が盛んな、のどかな集落だった。 
「この幸せを護る。護るための力――」
 アレスディアは願った。
 護るために、討ち滅ぼす力を。
 そしてそれは、どこかで自分の最期を望む力。
 自分への護りを一切捨てた滅ぼすだけの力。
 コインは、漆黒の両手槍に変化するようになった。あらゆる敵の、いかなる守りでも貫き通す力に。

*****

 東京。
 アレスディアが訪れた街の中では、戦争も争いも少ない、平和な街だった。
 日々、警備の仕事に携わってはいるが、この街でコインを槍に変化させて戦ったことは、あっただろうか。
 冬が訪れれば、この街に訪れて2年になる。
 なぜ、自分はこの街に長くいるのだろう。
 ふと、アレスディアは思った。
 今、危機に瀕している、護りの力を必要としている人々は、この世界の他の国にも大勢いる。
 弱者が強者に虐げれている場こそ。紛争地域こそが、自らの命を活かす場ではないのかとも、アレスディアは思うことがある。
 それは彼女の中の潜在意識――命を使い切りたいという思い。
 だけれど、何故だろうか。
 東京の街を歩く人々を眺めながら、この街にもう少しいたいという気持ちを抱いている自分に気付く。
 公園で遊ぶ子供達と、見守る親たちの姿。
 手を繋いで歩く、恋人達の姿。
 幸せそうな人々の姿に、アレスディアの心にも幸福感が生まれる。
 だが、彼女の心の奥底。
 潜在意識が、彼女の感情に小さな不安感を生みつけていく。

 それで、本当にお前は幸せか?
 自分が護ったわけではない、幸福を見るだけで満たれるのか?
 犯罪を防ぐための警備より、他にすべきことが――命の使い道があるのではないか、と。
 眠っている矛の感情が、時折、彼女に囁きかけていた。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/外見年齢/職業】
【8879/アレスディア・ヴォルフリート/女/21/フリーランサー】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ライターの川岸です。
アレスディアさんの能力についての理解が深まり良かったです。
私の能力不足により、物語性が少々薄くなっており申し訳ありません。
東京怪談ノベル(シングル) -
川岸満里亜 クリエイターズルームへ
東京怪談
2018年09月21日

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