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『静かな秋は豊穣、散り行く花は2度と咲かぬ』
クリスティン・エヴァンスaa5558)&砺波 レイナaa5558hero001

 日本とは違い、一足先に秋を感じるイタリアのとある公園に足を踏み入れた。
 あの時は、白、桃、紅等の色とりどりの花びらで地面と景色は覆われていた。
 少し肌寒く、湿った花びらの感触ではなく軽い音を出す落ち葉がサカリと、歩む足で踏む度に音を立てる。
 雪の様に白い髪を深紅のリボンで2つにまとめ、月の様に丸くて金色の瞳でクリスティン・エヴァンス(aa5558)は足取り軽やかに実りの秋を感じながら園内を歩く。
 その後ろ姿を琥珀の様な金の瞳で見つめる砺波 レイナ(aa5558hero001)がふと、アイスブルーの髪を風に靡かせながら澄んだ青空を見上げた。
 彼女……『花を統べる女王アルノルディイ』が倒され、消え行く姿をただ見る事しか出来なかった。
(クリスが感じて、持っている感情は、きっとあの子の好奇心。それ以上でもそれ以下でもないもの。アタシとしては如何だったか……)
 花は季節になると花開き、季節が過ぎる前に散りながら種を残して再び咲く。
「もっと沢山知りたかったですの。アルノルディイさまの事を、ですの。知って何が解るかは、クリスにも分らないですの。でも、クリスはアルノルディイさまのこと、何も知らなさ過ぎた気がしますですの」
 歩みを止めると、クリスティンも秋の空を見上げた。
「……もしかしたら、もっと別の”何か”が在ったのかも……とか、ですの。友情とか愛情じゃないですの。ただ、アルノルディイさまがそこに在って、同じ場にクリスも居て、そして、その”意味”が知りたいだけだった……気がしますですの。だから、最後まで戦いたくなかったのかも知れないですの……」
 ゲンティアナの花を幻想蝶から取り出し、手のひらの中で咲く小さな花を見つめながらクリスティンは、戦場の真ん中でアルノルディイと対話しようとした時の事を思い出す。

 無謀、と思われたかもしれない。

 仲間は傷付いても、クリスティンの行動に咎める者は居なかった。
 ただアルノルディイが『愚神』で、クリスティンが『能力者』だけだった。

 その違いだけ。

 出会いは、必然な気がしたクリスティンは聞きたかった。
「もっと、もっと、お話がしたかった、ですの」
 しかし、世界の何処にも……もう彼女は存在しない。
 最後に仲間と話して、無邪気な笑顔を浮かべたアルノルディイは倒された。
「レイナねーさまは、アルノルディイさまの事をどう考えていたのかも知りたいですの。クリスにはクリスの想い。レイナねーさまにはレイナねーさまの想い。そして、アルノルディイさまのアルノルディイさまの想い」
 ベンチに2枚ハンカチを置いて、クリスティンはレイナに手で招いた。
『私は……桜へダイブしたかった……じゃ、無くて。咲き誇り、ただ、散る。アルノルディイもそうだったかしら。違うのは、アルノルディイは、もう咲かない。それだけ。花は咲き誇り、ただ散り、然しまた咲き誇る』
 隣に座るとレイナは、花壇に植えられたコスモスの蕾を見つめながら言った。
 季節が巡れば、枯れた花は再び芽を出して咲く。
 しかし、アルノルディイは愚神だ。
 花の愚神であろうとも、倒してしまえば2度と咲かぬ『花』。
『不思議なモノ。アルノルディイの事は何も知らないけれど、結果アタシ達の……敵。勝てば官軍なんて、馬鹿みたいで、そして……悔しいけれど、それが現実』
 紅葉した落ち葉がサカリと、レイナの額に落ちてきて秋の香りが鼻腔をくすぐる。
「何もかも知りたい……ですの。全ては無理なのも解っていますですの。でも、クリスが何か知っていれば、何か他のコトが出来たかもしれないですの。真実は一つではないですの。全ては数多に分れた道ですの。分岐……が、在るだけ。な気がしますの」
 と、言うとクリスティンは、太陽から月を隠すように瞳を閉じる。
『アルノルディイが何を求め、何を考えて、何をしてきたのか、アタシも何も知らないけれど、アルノルディイは其処に在り、其処で散った。もう何も解らないし、解ったとしても無駄だろうけれど』
 レイナが静かに答えると、立ち上がってクリスティンの頭を撫でた。

 聞けなかった、このゲンティアナの花の事を。

 でも、何故か分からないけど“また会える”気がする。
「紅茶、持ってくれば良かったですの……」
 そんなに寒くないだろうと、思って手ぶらで来たクリスティンは予想以上に秋の風が冷たくて、両腕を手で擦る。
 確信は無い、でも……戦場に居なかった姉妹に問う事は出来る。
 でも、アルノルディイ自身ではないので少し躊躇う気持ちが否定をした。
 白い守り刀に関しては、圓 冥人が皆のために作ったお守りとして渡してくれたのを聞いたのでちゃんとお礼の言葉を述べた。
『クリス、寒いから近くのお店で温かい紅茶と、ホットサインドイッチを買ってきたの』
 レイナから受けとると、クリスティンは紅茶に口を付けてゆっくりと飲みだす。
『どう? 試飲させてもらったの、結構美味しいかったのよ。紅茶はラ・フランスティー』
 レイナがホットサインドイッチを口にしながら、隣で飲んでるクリスティンの顔を覗いた。
「流石レイナねーさまですの。とても美味しい、ですの」
 考えすぎて、いたのだろか?
 レイナがくれた紅茶は、クリスティンの体を温まる心地好さに思わず笑みを浮かべた。
「クリスには未だ知らない事と、知りたい事が沢山ですの」
『あたしもなのよ』
 クリスティンが笑顔で言うと、レイナは同意するかの様に頷いた。

 アルノルディイさま、もし貴女がまた開花したらなば次こそはゆっくりと、じっくりと貴女の話を聞かせてもらいますの。

 アルノルディイさまは、居ないけれでも近しい存在がいる気がしますの。

 だから、その方に会ったら迷い無くアルノルディイさまの事をーー……

 オレンジ色に染まる秋空を眺めながら、クリスティンとレイナは温かい紅茶とホットサインドイッチを口にしながら、闇色になるまで眺めた。
 また、アナタに出会える予感を胸に秘めたまま。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【aa5558/クリスティン・エヴァンス/女/10/春を喜ぶ無邪気な蝶】
【aa5558hero001/砺波 レイナ/女/16/山瑠璃草】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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この度は、パーティーノベルの発注をしていただきありがとうございました。
しんみりしつつも、悲壮感や悔しさは出さずにやや前向きな感じにしてみました。
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
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2018年09月28日

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