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『 崇め奉る者 』
火蛾魅 塵aa5095)&エリズバーク・ウェンジェンスaa5611hero001)&鬼子母 焔織aa2439)&人造天使壱拾壱号aa5095hero001)&犬尉 善戎狼aa5610

第一章 お金はどこにあるのかな?

 大の大人が震えている姿はなんと滑稽なのだろう。 
 そう『火蛾魅 塵(aa5095@WTZERO)』は思った。
 頭を抑え、太りきったケツをプルプルさせている姿を見ると蹴りたくなる。
 いや、そう思った時にはすでに蹴っていた。
 その男はつぶれたカエルのような悲鳴をあげて地面に寝そべるとさめざめ涙を流すことになる。
「ぎゃはははははは」
 塵は高笑いでその滑稽さに侮蔑と嘲笑を送る。
「アア。塵どの、あまリ苛められては。かわいソウデスヨ」
 そう焔織が塵をなだめるも、塵は笑うことを止めない。その塵にそっと『人造天使壱拾壱号(aa5095hero001@WTZEROHERO)』が寄り添うように立っていた。
「任務はいいが、問題はくいっぱぐれが無いことだが」
 『犬尉 善戎狼(aa5610@WTZERO)』が値踏みするように鮫組組長に視線を落とす。
「あん? ダイジョブだろ? いざとなったらここの金庫を襲えばいい」
 告げる塵は組長から受け取った資料を振って見せる。
 そこにかかれていたのはラグストーカー下部組織。暴力団の体裁をとる資金源組織であった。
 組織は社会のうらで霊力由来の薬、売買不可能なはずの霊力武装を取り扱っている。
「さぁて、ここで問題だ、金ってのは一体どうしたらうまれるでしょーか」
 塵が楽しそうに告げる。
 その言葉に成り行きを見守っているだけだったメンバーが口を開いた。
「仕事をこなす」
 犬尉のその言葉を鼻で笑う塵。
「ええ、そこら辺を歩いている血袋をちょっと脅せばポンポン吐くのではなくて?」
 そうエリズバークがいつもの笑顔で言うものだからあわてたのは焔織である。
「だめデす。だめですよ。エリズバークどの」
「はい、ぜーいんはずれ。正解は自分の欲望が満たされたときでした」
 告げると塵は資料内の一つの拠点を指さした。
「罪架教?」
 エリズバークは首をかしげる。
「最近都心で有名になってきた新興宗教だ」
 犬尉が補足した。
「罪は生きている間に購える、灌げるってのが連中の売りだ。罪が許されない限り現世では不幸が付いて回る、だから犯した罪は全て生きている間に生産しましょうって宗教だな」
「ここ、襲うぞ」
 告げると塵はトオイを探す。トオイは鮫島組長の目の前でぱちぱちそろばんをはじいていた。
「おい、トオイ。まちがってんぞ」
 告げると塵は珠を適当に弾いてとんでもない金額を表示させる。
「死んでしまう!」
「もともと誰かにくれてやる金なんだろ? だったら俺ちゃんたちによこしても、何も問題ないだろがよぉ!」
 そう理不尽に鮫島組長のけつを蹴り上げ塵は歩きだした。
「こっちがこのクソ製造機とっ捕まえたことが知れる前に襲撃して有り金全部強奪する」
「であればツイデニ刃を交えてイタダキタイ相手がイマス」
 焔織が告げた。
「だれだ?」
 犬尉が問いかける。その言葉に『鬼子母 焔織(aa2439@WTZERO)』は一つため息をつき、意を決したように口を開いた。
「沙悟浄。今回確認できてイル、ラグストーカーの刺客。その一人デス」

    *   *

「周辺情報を報告する」
 潜伏していた犬尉は車両の中で待機していた塵たちに情報を送る。
 建物の内部構造。見張りの位置。敵の戦力。
 そして信徒の数。
 今回襲撃するのは敵の総本山。都心から少し離れた山奥の神殿というか、神社というか、教会というか。いろんな宗教的建物を集合させたような施設だった。
「大聖堂に信徒100以上。司教様とやらが祈りをささげてる。沙悟浄の影はない」
「で? 沙悟浄ってのは?」
 塵がそう焔織に言葉をふると代わりにエリズバークが答えた。
「同じ質問を二度するなんて、ついに耄碌いたしましたか?」
「そうじゃねぇよ」
 塵は硬い椅子に座り直して言葉を訂正する。
「何でお前が沙悟浄ってやつについて詳しく知ってるか知りてぇんだよ」
 焔織は視線を逸らした。
 焔織が『沙悟浄(NPC)』について最初に告げた情報はこうだ。
 沙悟浄とは通称、本名は別にあるが皆それを忘れてしまった。
 槍術の達人で。降魔の宝杖という三日月状の刃が付いた槍を得意とする。
 かつてはドレッドノートの英雄と契約していたと。
「なぜ、英雄まで知ってやがる。答えろ」
「これより任務にはカンケイがない事柄デシテ」
「おめぇの手が止まりそうだから言ってやってんだよ。いいからハケ。でねぇとテメェのドアタマ任務中にブチヌクゾ」
 少し焔織の口調を真似しながら塵はそう乱暴に問いかけた。
 塵の意見には賛成のようで『エリズバーク・ウェンジェンス(aa5611hero001@WTZEROHERO)』も先を促す。
「私ハ……暗殺教団ニ所属しておりました」
「知ってる」
「その教団デハ子供たちが殺シの英才教育を施されていました」
「それも知ってる」
「ソコデ一緒でした」
「なるほどな」
「彼ハ……」
「まて、めそめそした話が始まりそうだから俺ちゃんパスするわ」
 告げると塵は扉を開いて単身任務に臨む。
「ああ、またおひとりで勝手に。独り占めを……」
 告げつつエリズバークもその後ろに続いた。
 取り残される焔織。その焔織に犬尉が気遣うように言葉を投げた。
「ああ、焔織君」
「ハイ……」
「もし、殺せなさそうなら俺が代わる。こう見えて暗殺なら今の焔織くんよりも上手い自信はあるぜ」
「はイ。頼もしい限りです」
 そう声不安を宿しながら焔織は告げ。焔織も車を降りた。
 これからかつての盟友を殺すための戦いが始まると。何度も繰り返し胸に刻みながら。

第二章 救いとは

「あのバカ」
 作戦開始から五分。
 メンバー全員が敵の本拠地に乗り込む前に、塵が消えた。
「あのバカ」
 二度目の悪態をつく犬尉。
「これは、私が独り占めということでよいですわね」
「解ってイると思いまスガ。一般人は殺してはイケマセン」
 焔織がそうエリズバークの手綱を握る。仕方ないので一同はバルコニーからまず信徒が集まっている聖堂の二階に侵入。
 吹き抜けから聖堂の様子を見渡す。
 その真ん中では何やら儀式が行われているようだった。
 人里離れた罪架教、その総本山でしかこの儀式は行われないという。
 どんな儀式なのか興味があると共に沙悟浄が現れないか監視する目的だった。
 見守っているとやがて檻のようなものが運び込まれ、その扉が開かれると一人の繋がれた男が転がり出てきた。
「助けてくれ」
 震えながら叫ぶその男性の目の前で、信徒の一人がナイフを振り上げる。
 そして。
「頼む! たすけて! 御願いだ」
「あなたに救いを」
「「救いを」」
 そう信徒が声を合わせた瞬間。聖堂の真ん中に血の華が咲いた
「あん、ぐちゃぐちゃだろ?」
 突如通信回線に塵の声が割り込んだ。それに犬尉が反応する。
「なにがだ?」
「何で生きながらに罪をあがなえるって宗教の救いが。殺してやることになるんだよ」
「殺してるのは信徒じゃない。教えを受け入れなかった愚か者はこの宗教において、一生罪が許されない。つまり、一生苦しみ続けることになる。だからそんな人物を救うことで。自分の罪をチャラにできるらしい」
「あ?」
「俺だって奴らの理論はわからん。だがこの儀式ですくわれているはずのあいつ。目が腐ってる。結局救われないなら、人を救えるのは……紙じゃなく金ってことだな」
 犬尉は胸のペンダントに手を当てる。
 そんな中だ、司祭が被害者の心臓をえぐりだし、それを台に載せて運び出そうとする。それを遮るように何者かが大聖堂に姿を見せた。
「よぉ。思考停止中ののうたりん糞どもぉ」
 次いで塵が一足で司祭に歩み寄るとその髪の毛を引っ張って司祭を引きずるように前へ。
「俺ちゃん参上!」
「あのバカ!」
 そうスコープで塵の周辺を確認する犬尉。
 あんなに無防備に敵のど真ん中に姿をさらせばいつ奇襲を仕掛けられてもおかしくない。
 そんな犬尉の気も知らずに塵はその場にいる全員に語りかけた。
「ずいぶん楽しいパーティーじゃねぇか。俺ちゃんも混ぜてくれよ」
 告げると司祭が取り落した心臓を掴みあげ、それを片手でひねりつぶした。
「俺ちゃんもよぉ、罪を背負っちまってなぁ。親殺しに恋人殺しっていうんだけどよぉ」
 その塵の言葉に信徒の誰かが言葉を返した。
「懺悔する心がなってなければ罪は許されない」
 その言葉に連鎖するように信徒たちは告げた。
「罪びとよ、我らの儀式を邪魔した罪はあがなえぬ」
「あなたが邪魔をしたことでその人の罪が許されなくなった」
「悪魔め! 出ていけ」
 そのが鳴り声にも似た信徒たちの主張は波紋のように広がって聖堂いっぱいの声となる。
「邪教に神罰を」
 次いで司祭が短刀を振り上げ塵に叩きつけようとする。
 それを塵は避けるそぶりも見せない。
「犬尉殿!」
「解ってる」
 焔織の言葉に頷いて犬尉は司祭の手を打ち抜いた。
 悲鳴が二重に木霊した。
 司祭の激痛を示すための悲鳴と。司祭が打たれたことに関する恐怖の悲鳴。
 その中で塵の発した声が妙にはっきり、聖堂に響いた。
「『悪とは弱さより生じる全てである』お前等よぉ。罪って感じるくらいならやるなよ」
 塵は聖堂中心に躍り出る。
「自分で背負えねぇ、誰かの命で灌ごうと思えるようなことをよぉ。するんじゃねぇよ……。クソザコどもが!」
 次の瞬間燃衣が自分を中心に腐蝕の風を走らせた。
 ゴーストウィンドウ。
「一般人も巻き込むつもりですか」
 身を乗り出したのは焔織、二階から降りて塵の元へと向かう。
 それにエリズバークがわくわくした表情で続いた。
「悪とは弱さより生じる全てである、ですか……」
 焔織は衣服や肌を腐らせていく一般人をかき分けて塵に殴り掛かる。
 それを塵はたやすく受け流して見せた。
「な……」
「おうおう、焔織ちゃんよぉ。その程度で俺ちゃんを止められるっておもってんのかよ?」
 焔織の衣服が徐々に溶けていく。攻撃対象に焔織も追加されたのだ。
「強くて困る事は何一つない。弱くて助かる事も何一つない……誰だよ、こいつらくそ雑魚蟲野郎ども生きながらえさせたのはよぉ。おつむもよぇーから勘違いしちまっただろうが。弱いやつも生きてていいんだってよ」
「弱くてもイきていていいんです! そう言ウ世界ヲ私タチは目指しているハズでは?」
「あ? お前等ですきにやってろ」
 その塵の肩を光弾が射抜く。
 それはエリズバークのうち放った光弾であった。見ればその手に魔導銃を握っている。
「そうですね……人は弱いから嫉み奪おうとする。
 そして弱いものは自分は悪ではないと語る資格を持たない。
 強いもののみが正義を語れる」
 それはあなたとて同じ、そう冷え切った笑みをエリズバークは塵に向ける。
「ばばぁ、てめぇ」
「邪魔者は実力を持って排除せよとクライアントから案内されておりますわ。それに弱者をなぶるよりもあなたをなぶったほうが、おもしろそうですわよ」
 そう唇の上に指を這わせて微笑むエリズバーク。
「いいぜぇ、親玉が来る前のウォーミグアップだ」
「……本当、人も獣と変わりませんね」
 狭い聖堂内で戦闘が繰り広げらえる。
「おいおい、ターゲットが逃げるだろうが」
 その様子を冷や汗流しながら見つめているのは犬尉。
 とりあえず両名の手でも足でも撃って黙らせるか、そう思い銃を構える。
「腕も足も、千切れなけりゃ再生するだろ」
 その銃身を、誰かが握って天井にそらした。
「な?」
 まったく接近に気が付けなかった。
 いつの間にか犬尉の隣にいたその人物は三日月を模した刃を持つ槍を持っていて。 
「な……」
 犬尉の体を投げ飛ばして聖堂に叩き落とす。
 その落下をもってエリズバークと塵は争いをやめた。
 弐階を見あげる焔織、次いで焔織はその名を叫ぶ。
「沙悟浄!」
「まさか、生きていたとは、な」
 次いで槍を振りかぶりながら身を躍らせた沙悟浄。
 その槍は膨大な霊力を纏い冷気を発すると、周囲の水分を凍らせて巨大な刃と化す。
「マズイ」
「静謐にしてやる。何者も存在しない無の世界へ」
 叩きつけられた冷気と氷の刃は聖堂を粉々に破壊してリンカーたちを吹き飛ばした。

第三章 転生と昇格

「みナさん、大丈夫デスか?」
 上がる土煙、かぶさる瓦礫の中から焔織が身を起こすと、そのそばには頭から血を流した犬尉が座っていた。
「おもいだした」
 告げると犬尉は立ち上がり焔織の手を取る。
「何をですか?」
「焔織君が所属していた組織、そして沙悟浄。悟空、猪八戒」
「知っているのですか?」
「俺の最大の敵だったさ」
 命を狙われたこともある、しかしある日を境に活動がぱったりやんでいた。
 それ以来暗殺者の子供たちに合うことはなかったが今でもはっきりと彼らを覚えている。
「沙悟浄、能力は多彩。と言ってもほとんどAGW依存の能力だが。唯一特色をあげるとするならば場所を選ばない隠密行動」
 沙悟浄は周囲に霧を発生させることで自分の姿を隠す闇を作り出すことができる。
 その闇から、銀色の刃が伸びてきてそれを焔織は素早く打ち払った。
「く……」
 いつの間にか、自分の指先すら見えるか危うい霧が周囲を覆っている。
 人々の悲鳴が怨嗟のように聞こえ。沙悟浄の足音を隠してしまっていた。
「だが、何度もやりあっているからこそ、対処法はわかる」
 犬尉はそう地面に膝をつくと耳を澄ませた。
 大量に流れてくる音の波の中から敵を探り出す。
 そしてその手の拳銃から弾丸を放って敵の動きを止めた。
 足元、刃の切っ先。
 回り込んできた沙悟浄の腹部に弾丸を撃ち込むと何かが転がる音が聞こえる。
「仕留めたか?」
「マッテ!」
 焔織が呼びとめる間もなく立ち上がると、その喉元をかき切る軌道で刃が伸ばされた。
「しま……」
 しかしその刃は犬尉の首をかき切ることなく停止する。
「魔術か」
 沙悟浄の足を狙って魔法弾が何発は浴びせられるがそれを沙悟浄はバックステップでかわし、霧の中に姿を隠した。
 犬尉の鼻腔をかぐわしい紅茶の香りがくすぐる。今日はダージリンだろうか。
「エリズバークどの仕事を」
 霧の中でエリズバークはティーカップを持ち上げ、優雅に一口、口に含んだ。
「仕事はしているではありませんか。防衛の魔術、これで皆さんは傷つくことはないでしょう」
 エリズバークが広げたテーブルの周囲に人影が見える。ガンガン結界が叩かれるが、牽制程度の攻撃で破れるはずもない。
「貴方達の因縁に私は関係ありませんので。面倒事に巻き込まないで頂けます?」
「ちっ。焔織君」
「承知」
 犬尉の言葉で焔織は犬尉から離れる、犬尉は集中して音と嗅覚で敵の位置を割り出す。
「全員纏めて片づけてしまってもいいのですけど?」
「やめてくださイ。まだ一般人ノ方々ガ」
 ここは自分が何とかするしかないか。
 そう焔織は思い直すと、全身に霊力を込めた。
「身は炉、丹は鼎、仙気はふいごと成り、猛る三昧真火の劫火は天をも焦がす」
 その全身を炎が這った。その炎は焔織を焼き尽くすことなく抱く。
 これが焔織の力、決して消えない炎の力。
 その本質は超強力な結界を纏う術で霊的防御・貫通の双方を成す
「右だ」
 焔織は右に視線を向ける、沙悟浄の刃がぬっと白い闇を引き裂いて現れた。
 その刃の腹を叩いて焔織は攻撃をそらす。
 即座に沙悟浄は霧の中へ。
「速い……場合によって隊長よりも」
「霧で早く見えているだけだ! 左」  
 犬尉の射撃音。体制を崩したままに焔織に突っ込んでくる影。
 その影の腹部に蹴りを叩き込み。前のめりになったその背中に手をかけて、遠心力を利用して放りなげた。
 しかしそれは一般人である。
「死にたくない」
 そう血まみれの手を伸ばす男性。
「後ろだ!」
 焔織の背中に刃が突き立てられようとした瞬間防壁が発動。
 しかし防壁をわずかに切り裂いた切っ先が焔織の背中を撫でる。
 あわてて前に飛んだ焔織。
 背中にうっすら血の筋が付いた。
「そろそろ動きガ鈍クなっているのは、ありませんか?」
 焔織が振り返りながら告げた。
 焔織の能力は略奪。
 焔織の肌に触れただけでも霊力がごっそり奪われる。
 犬尉は白い闇の中で歯噛みした音が聞こえる。
 直後犬尉はその手のボタンに手をかけた。
 直後聖堂の真ん中が大爆発。
 人影が巻き上げられて焔織の前に転がった。
「『ALW』……アンチリンカーウェポンだ、お前らが開発したものだろ?」
 犬尉が沙悟浄の表情を見下ろす。全身激痛で動けなくなっている沙悟浄の四肢を容赦なく打ち抜いた。
「能力者を殺したい、裏社会の常人の間で出回ってる違法品。
 凄まじく高価だが、霊力を自身への攻撃へ転換させるリモート爆弾タイプの武器」
 ちなみに爆発はおまけである、犬尉が改造を施した。
「これでおしまいだな、この教団の金庫はどこだ?」
 犬尉が告げると、沙悟浄は面白がるように笑った。
「さぁて、どこだろうね、俺は知らない」
「そんな訳はないだろう。お前がこの施設の管理人のはずだ」
「俺はちがう、俺はね」
 次の瞬間犬尉は勝利を確信したことを後悔した。
「犬尉殿!」
 焔織がはじかれたように告げる。
 囲まれていた。
 しかも、全員が似たシルエット。
「分身……じゃない、単純に教え込まれたのさ。沙悟浄のすべてを」
 いわばここにいるのは沙悟浄の弟子であり、劣化コピーでもある。
 とはいえ、このコピーである沙悟浄もなかなかに強かった。このままでは数で押し切られて負ける。
 そう思った矢先。
「お茶が無くなってしまいましたわ」
 何気ない一言が聞えて暴虐の嵐が吹き荒れる。
「隠れて!」
 叫んだ焔織は横たわる沙悟浄コピーの体をかさにその嵐をやり過ごした。
 だがその暴虐の嵐の中で悲鳴が聞こえる。
「く……結局」
 焔織は歯噛みする。結局あの魔女は全ての息の根を止めるつもりだったのだ。
 霧は去った。白い闇がはれた先に待っていたのは、赤い世界の訪れ。
 むごたらしく体をバラバラにされた沙悟浄コピー、および一般人たちが部屋いっぱいに蠢いていた。
「茶番はつまらなかったですが、断末魔はいいですねぇ!」
 魔女の笑い声が聖堂に響いた。 


エピローグ

 塵は大聖堂の爆発音を聞いてゆったりとその方角を振り返る。
「おうおう、派手だねぇ」
 そう楽しそうに笑う塵は一人この施設の心臓部へと向かっていた。教祖の部屋だ。
 だがその部屋には門番がいる。
 その門番はお得意の潜伏で塵の背後からちかよって喉元に刃を突き立てようとした。
 しかしそれに塵は超速で反応。
「俺を殺せるって? バカが!」
 陽炎結界で敵を感知、意識加速で素早く敵の背後に回る。
 そして沙悟浄へ一撃加える。
「もう聞いてんだよ。御仲間からな」
 塵には聞こえていたのだ。死者の声が。
 沙悟浄は一度振り返り塵を凝視すると告げる。
「その顔、覚えたぞ」
 霧が出た。それはあっという間に沙悟浄の姿をかくし、そして霧が晴れるころにはその姿はなくなっていた。
「河童ふぜいがよ」
 悪態をついて、扉をけ破り、金品を強奪する塵。
 その姿を見てトオイは思うのだ。
 これが彼の宿命、なのかと。

 繰り返す輪廻。時のゆりかご。
 因果は絶対であり性質は受け継がれる。
 塵はこの後どんな生き様をみせてくれるかはわからない。しかしそれは明るいものではないだろうと、異世界のイブウィルは直感する。
 同時に塵がそれを直感していることも知っている。
 塵は己が願いをなすためにすべてを切り捨てる。
 全ては輪廻。このシステムを破壊するために。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『火蛾魅 塵(aa5095@WTZERO)』
『エリズバーク・ウェンジェンス(aa5611hero001@WTZEROHERO)』
『鬼子母 焔織(aa2439@WTZERO)』
『人造天使壱拾壱号(aa5095hero001@WTZEROHERO)』
『犬尉 善戎狼(aa5610@WTZERO)』
『沙悟浄(NPC)』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 いつもお世話になっております。鳴海です。
 この度はOMCご注文ありがとうございます。
 ちなみにまいかい、悪役ノベルを書かせていただくときは、ブラック●グーンを書いている気分でやってます。
 もうちょっと粋なやり取りを混ぜたかったのですが。割と教団描写に文字数をとられてしまいました。
 沙悟浄についてはまだ顔見世の段階かなぁと散ら魅せさせていただきました。
 もう少し強い力を持っていた方がいいでしょうか。
 ご意見あればお申し付けください。
 それでは鳴海でした。ありがとうございました。
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2018年09月28日

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