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『シルミルテの単独廃墟探索!! 〜本日のゴーストグルメ?〜 』
シルミルテaa0340hero001


『今回はコノ物件なノネー』
 シルミルテ(aa0340hero001)がその日訪れたのは、山の麓に建てられた木造の廃公園だった。廃公園。つまりかつては憩いの場として存在し、しかし今は訪れる者も廃れ果てた廃墟である。今回は「いつもの」清掃の他、近日人が入るので「安全確認」も行って欲しい、という依頼となっている。なんでも水落不動産が管理している廃墟は「訪れても心霊被害が(殆ど)無い」と極々一部で評判らしい。まあこういう依頼のおかげで、シルミルテの『お腹も』満たされている訳ではあるが。
 この公園は廃墟となって五年は経過しているそうで、入口の門は伸びた枝に覆い尽くされかけていた。門だけでなくブランコ、ジャングルジム、滑り台……と、ぱっと見えるほとんどが緑に彩られている。山の中に作られたため、植物達の侵蝕は極めて容易だったのだろう。中央に立つ白い時計は文字盤が砕けており、支えている錆びたポールには蔦が絡み付いていた。
『お邪魔しマース』
 今回も律儀に一声掛け、シルミルテは門を潜って公園へ一歩踏み出した。消えかけの案内板によれば手前はスタンダードな公園で、進んで左にアスレチック、右に動物とのふれあい広場、一番奥に斜面を利用したローラー滑り台があったらしい。水落不動産の話では崩れかけの場所もあるそうで、過去に確認されている安全地帯の再確認も依頼内容に入っている。
 とりあえず順繰りに見ていって、必要があれば「お掃除お掃除」、と歩きだそうとしたシルミルテは、そこでブランコの上に何か乗っている事に気が付いた。最初は豆大福かと思ったが、豆大福にしては大きいし、豆大福がこんな所で白いままでいられるはずがない。またその大福は一頭身(?)ではなかった。二頭身だった。
 豆大福を二頭身にしたような何か小さい変なものが、【不思議なイキモノ】と書かれた紙を持ってブランコの上に乗っていた。
『…………』
 これが一体何なのかは分からないが、自ら「不思議なイキモノ」を名乗るとは自己主張の強いイキモノである。
 自称不思議なイキモノは、艶のない黒豆みたいな目でブランコの上に乗っていたが、途中でシルミルテに気付いたらしく紙(?)の文字を【あ】に変えた。そしてテレビのテロップよろしく文字を次々変えていく。
【やべ】
【見つかった】
【えーと】
【こんにちはお嬢さん】
【僕は無個性な不思議なイキモノだよ】
【イエス】
【アイアム無個性】
【いえー】
 不思議でありながら無個性。とは。ツッコミ所が満載だが、生憎ツッコミ所、もとい不思議なイキモノっぷりではシルミルテも負けてはいない。多分。
 とりあえず名乗られたら名乗り返すのが礼儀だと、シルミルテは自称不思議なイキモノに近付いた。そしてシルクハットを脱いで、前に持って行きつつおじぎ。
『ワタシの名前はシルミルテだヨ。今日はコの公園ノ安全点検をシに来タノ。不思議なイキモノさん、ヨロシけレばオ付き合いしテもらッテモよろシイデすカ?』
 不思議なイキモノは考え込むような空気を微妙に醸し出した。そして紙(?)の文字を変えてこう言った。
【イエス】【おふこーす】


 不思議なイキモノは「ユキムシ」と名乗り(「不思議なイキモノ」は名前ではなかったらしい)、シルミルテの帽子に乗って公園を回る事になった。何かあると帽子から身を乗り出して、手(?)に持った紙(?)を見せてくる。
【ここは動物とのふれあい広場】
【ヤギやうさぎがいたんだよ】
【こっちはハイキングコース】
【今はほとんど埋もれているね】
 などと道案内を受けつつ順繰りに施設を巡っていく。どうやらこの一帯に「そういう類」はいないらしく、濁ったり淀んだりといった空気は感じない。もっとも害の無いモノに関しては「いる」可能性は十分あるが、シルミルテの範疇外である。食べても味の無い綿菓子のようで美味しくはないらしい。
【この先はアスレチックだけど、腐り掛けている所もあるから足下には注意してね】
 この日は快晴という程ではないが天気はほどよく晴れていて、樹々の隙間から光が差し込み地上のものを照らしていた。アスレチックもブランコ達のように蔓草等に覆われており、そこに放射状に分かれた白い光が注いでいる。
『おおー』
【葉っぱが全部紅葉するとまた違う感じになるよ。冬もおススメ。雪が積もった朝早くとか】
『イイね』
【いんすた映えまったなし】 
 ユキムシの言った通り腐り掛けている場所も多く、特に奥の方は完全に倒壊していた。中程から折れてしまい、あとは植物に埋もれていくだけの木製遊具の成れの果てに、なんとなく手を合わせてからシルミルテ達は道を戻る。
【あとはローラー滑り台だけど、その前にちょっと休憩しようか。ローラー滑り台に行く途中にレストランがあるからさ】
 とは言え当然、レストランの営業はとっくの昔に停止したが。レストランの内部もまた植物の侵蝕を受けており、カウンターや椅子、テーブルにも蔓や葉が手を伸ばしていた。天井も壁も半ば以上が剥げ落ちているれっきとした廃墟だが、鮮やかな緑の上に、割れた窓ガラスから入る白い光が反射して、明るくも退廃的な景色を作り上げていた。
【ところでお嬢さん、その帽子はうさ耳用の穴が開いているのかな?】
『ないヨー。穴はないケド、帽子を被ッタ後に耳ガ貫通するノ。そして脱いだら元通り』
【ふしぎー】
『あ、ソウソウ忘れテタ。近々ココに人が来マス。廃墟撮影趣味ナ人が』
【りょうかーい。それじゃあローラー滑り台はぜひとも案内しないとね】
 十五分程休憩がてら雑談を楽しんだ後、それから一人と一体は山道を登っていった。樹々がさらさらと揺れ動き、緑に埋もれた廃墟を回る一人と一体を見守っていた。
 

『今日はオ付き合い下サりありがトウございマシタ』
【いえいえー】
 シルミルテがユキムシをブランコの上に置いたのは、もう少しで日が暮れるという間際の時刻だった。あの後ローラー滑り台に向かい、意外に頑丈だったのでせっかくだからとしばらく遊び、夕暮れ時のレストランやアスレチック跡を眺め……としていたらこんな時間になっていた。
【お嬢さん一人じゃ危ないし、送っていこうか?】
『ダイジョブ!』
 ユキムシの申し出にシルミルテは元気に声を返した。見た目は幼く可愛らしいがこう見えても英雄だし、『最悪たる災厄』を冠する魔女達の『愛し子』である。
 それに今のユキムシを連れて行くのはいささか心配な所があった。何故ならこのイキモノ、暗くなってきたと同時にぺかーと光り出したのだ。とは言っても豆電球ぐらいの明るさだし人には見えないかもしれないが、万一という事もある。またこのイキモノが「森」のイキモノなら連れ出すのは気が引ける。
【よかったらまた遊びに来てね】
 ユキムシはぺかーと光りながら紙にそう表示した。シルミルテは手を振った後ユキムシに背を向けた。門を出てから振り返ると、闇に落ちる寸前のオレンジ色の公園の中で、白く小さな灯りだけがぽつんと浮かび上がっている。
 シルミルテはもう一度手を振りながら『マタね―』と言った。それから、いつも通りの足取りでおうちへと帰っていった。しばらくして差し込んだ月明かりが、緑に埋もれゆく公園を白く浮かび上がらせる。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【シルミルテ(aa0340hero001)/外見性別:?/外見年齢:9/魔女の子】
【ユキムシ/不思議なイキモノ】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 こんにちは、雪虫です。二度目の廃墟探索ノベルご注文、誠にありがとうございました。不思議なイキモノを希望例に頂いた→不思議なイキモノがいるのは森や山中だろう→山の中にある廃公園とさせて頂きました。蔓草に覆われた廃墟ってめちゃくちゃ好きなのですが、いかがでしたでしょうか。お気に召して頂ければ幸いです。
 この度もご指名誠にありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願い致します。
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2018年10月02日

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