▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『暗黒物質と乳の神』
月乃宮 恋音jb1221


 2019年、秋。
 異界にある「乳姫の宮島(ちきのみやじま)」では、新たな発見が続いていた。
 その中のひとつに、正体不明の漆黒の石があった。
 何か禍々しい波動を放つように見えるそれは、何年か前のホワイトデーに一世を風靡(?)した、あの「ダークマター(真)」を思わせる。

 その物質は、アイテムの変異を誘発する性質を有していた――というわけで。

「……本日は突然変異祭り、ですねぇ……」
 秋の連休の、とある一日。
 月乃宮 恋音(jb1221)は購買で買い込んだ安価な装備品や支給品と共に、持てるだけの「例の石」を携えて、学園の科学室を訪ねていた。
 今回は恋音ひとり、しかもお忍びだ。
 それもひとえに機密保持のため。だって、もし突然変異で神器並の超高性能アイテムが出来ちゃったりしたら……いや、出来ること自体は問題ないかもしれないが、その存在が世に知れてしまったら。
 怖い人に追いかけられるくらいならまだしも、世界の、いや宇宙全体のパワーバランスが崩壊しかねない。
 だからこれは、協力者である門木章治((jz0029)の他には絶対に秘密にしなければならない案件なのだ。
 まるで後ろ暗い何かを抱える人のように周囲を気にしながら科学室に滑り込んだ恋音の背後で、門木がそっとドアを閉める。
「誰にも見られなかったか?」
「……はい……そのはずですぅ……」
 防犯カメラも切ってあるし、ドアには内側から鍵をかけ、窓には暗幕を張ってある。
 ちょっとした犯罪者のようだとドキドキしながら、二人は錬成窯を挟んで向き合った。
「では、始めるぞ」
 手術開始前の外科医のような面持ちで、厳かに門木が告げる。
 錬成窯の低い唸りがわずかに高く変化した。

 まず最初はスキル使用時に犠牲となる生贄アイテムの代名詞、スクールジャケットで試してみる。
 どこからともなくドラムロールの幻聴が聞こえ――

 ちゃらーん!

 スクールジャケットは「うすいほん」になった!

 これは……人によって、ジャンルによっては嬉しいかもしれないが、今欲しいのはソレジャナイ。
 気を取り直してもう一度、そして二度三度、流れ作業のように右から左へ、入れては取り出し入れては取り出し――
 結果は「ポケットティッシュ」「カロリーブロック」「使い捨てカメラ」等々……って、商店街の福引の景品か。
 しかも末等とか5等とか6等とか、そのあたり。
 おかしい、こんなはずではなかった。
「……通常の変異アイテムを使うより、良いものが出来ると思ったのですがぁ……」
 これでは何も変わらないどころか、石としての性能が劣化しているではないか。
 元のアイテムが安物なのがいけないのかと、ちょっと高めの装備品も試してみたが、結果は変わらなかった。
 試しに使ってみた時には、かなり良いものに変異していた。
 だからこそ、これを使って仲間達の装備を揃えようと考えたのに。
「……終戦で籤品の販売が終了してしまいましたから……現時点で強力な装備を手に入れたいと思ったら、変異に頼るしかないのですよねぇ……」
 異界探索のために少しでも良い装備が欲しい恋音としては、このタイミングでこの石「ダークマター(仮)」が見つかったのは、まさに天の恵みとも思えたのだ。
 しかし、それなのに。
「……本番に弱いタイプだったのでしょうかぁ……」
 いやいや、きっと今はまだ波が来ていないだけだ。
 乗ってくれば豪華絢爛な装備の山が出来上がる、はず!
 そう信じて、恋音は黙々と作業を続けた。
 しかし生まれて来るのは相変わらず二束三文にもならないような日用品や食品ばかり。

「そろそろ休憩にするか」
 門木が声をかけた時には、ハロウィンで配るのにちょうど良さそうな、クッキーやキャンディが積み上がっていた。
 それを食べながら、お茶で一服。
「……この石は、先日のあれと同じように、異界ではわりと容易に手に入るのですよねぇ……」
 科学室の変異アイテムは、買えばそれなりの値段になる。
 その点、この石は実質タダで手に入るから好きなだけ試せるし、運が良ければとんでもないものに化けてくれるに違いない、と考えたのだが。
「……タダより高いものはない、ということでしょうかぁ……みゅぅ」
 え?
「……今、何か語尾がおかしなことになってみゅぅ、気のせいでみゅぅ」
 気のせい、ではない。
 そして、恋音の手がうずうずと胸元に上がり……ぷつん、ボタンを外した。
「おい!?」
 慌てた門木が止める間もなく、その手は胸に巻いたさらしを解きにかかる。
 それはどこかで見た光景だった。
 そう、いつかの新入生歓迎イベントで、突然変異料理のパーティをやった時。
 あの時も恋音は語尾がおかしなことになり、脱衣衝動に駆られていた。
 あれはどうやって止めたのだったか……いや、止まったのか?
 なんだろう、記憶がない。
 途中までは覚えているのに、そこから先の記憶がすこーんと抜け落ちていた。
 思い出してはいけないような、何かがあったのだろうか――
 などと考えている間にも、恋音のさらしはスルスルと解かれていく。
 心なしか、その中身もむくむくと膨らんでいるようで……

 ばぼぉん!

 爆発した。おっぱいが。まさに爆乳。
 しかし以前と同じように、本人にダメージはない。
 何故か? そんなこと知らん。

 その時、不思議なことが起こった。
 爆発の影響で吹き飛んださらしの代わりに、何かがふわりと恋音の胸に絡み付いたのだ。
 それは変異品の山に埋もれていた、淡く七色に輝く天女の衣のような薄い布切れ。
 綺麗な布だとは思ったが、それ以外は特に何の特徴もなさそうに見えたために、埋もれるままに放っておかれたものだ。
 しかし、それは何を隠そう乳神専用の「乳衣(ちちごろも)」だったのだ!

 それを身に付けた時、恋音は変わった。
 神々しいまでのオーラを纏った恋音は、次々に変異を成功させていく。
 購買の安物や支給品が、Sクラスのレア装備へ。
 そう、「ダークマター(仮)」は乳神ゆかりの島で発見されたもの。
 その性能を存分に引き出すためには、乳神のオーラが必要だったのだ……たぶん。

 変異祭りは無事に終了した。
 関係者全員に行き渡らせるのに十分な質と量の装備も確保した。
 これを更に「奇跡の石」で強化すれば、申し分のない性能になるだろう。
「……本日はお休みのところ、貴重なお時間をいただきまして……本当に、ありがとうございましたぁ……」
「いや、俺もどんなことになるか興味があったし」
 すっかり元通りに落ち着いて深々と頭を下げる恋音に、門木は首を振った。
 医学生はそれなりに忙しいが、カレンダー通りに休める点では社会人よりも余裕がある。
 それに残りの休みはきっちり奥様と楽しむ予定を入れているから大丈夫。
 なお爆発の瞬間や、その後の「中身」については見ていないし、見たいとも思わないのでご安心を。
「それより、お前の方こそ大丈夫なのか? いつ見ても忙しそうだが、ちゃんと休んでるんだろうな?」
 彼氏とのデートとか――とは言わないが、その辺りも気になるところだ。
「……御心配有難う御座います……」
 にっこりと微笑み、恋音は言葉を返す。
「……彼方の世界で、有効な対策を見つけられましたので、大丈夫ですよぉ……」

 恋音には「乳時間」がある。
 それは何かって?

 女の子とは、秘密が多いものなのです、よ?
 

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

【jb1221/月乃宮 恋音/女性/外見年齢二十代前半/その者、七色の乳衣纏いて】
【jz0029/門木章治/男性/外見年齢36歳/俺は何も見ていない】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

いつもお世話になっております、STANZAです。
この度はご依頼ありがとうございました。

口調や設定等、齟齬がありましたらご遠慮なくリテイクをお申し付けください。


シングルノベル この商品を注文する
STANZA クリエイターズルームへ
エリュシオン
2018年10月15日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.