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『「帰り道でのお願いごと」』
ファルス・ティレイラ3733

 何処までも広がる蒼穹。
 その中をファルス・ティレイラ(3733)は飛んでいた。
 彼女は今日の分の配達の仕事を終え、家に帰ろうとしていた。
 (配達も終わったし今日は久しぶりにゆっくりと過ごそうかな)
 そう思っていた。その時。突然声が聞こえた。

『貴方にお願いがあるのです』

 声はティレイラの頭に直接響いていた。
 どうして声が自分の頭の中へと直接聞こえているのだろうか。そんな疑問と困惑をティレイラは抱きながらも、頭の中に直接語りかけてくる声は言葉を続けた。
『貴方に少しだけ外灯持ちを変わって欲しいのです』
 声は女の子の声だった。
 だがどうして自分に頼んで来るのだろうか。外灯を持つのを変わることぐらい他人に頼む事だって出来るはずだ。
 それをティレイラへと直接語りかけるようにしてまで。
 ティレイラは不思議に思いながらも特に断る理由も思い付かず、自分へと語りかけてくる女の子に向けて口を開いた。
「良いですよ」
『わぁ。有難う』
 了承したティレイラの言葉に女の子は嬉しそうに声を弾ませた。
「それで貴方は今何処にいるの?」
『うん。私がいる場所を今から教えますね』



 ティレイラは一つの小さな街へと降りだった。
 その街は賑やかな街とは掛け離れた場所で人の気配は少ない寂しい街だった。
 女の子の声に導かれるように、ティレイラは街の中を歩いて行く。暫く歩いた先に路地の入口があった。
『この路地に入って。その先に古い建物があるわ』
 ティレイラはその言葉に従い、路地へと足を踏み入れる。そこは狭く、薄暗い通路が続いている。
 地面も石畳でティレイラが歩く度に、彼女の足音が狭い通路へとカツン、カツンと音が反響し、響いていた。薄暗い所為もあり、より一層に不気味に感じてしまう。
 ティレイラは僅かな不安を抱えながら、やがて歩みを進めて行くうちに女の子が言っていた古い建物を見つけた。ティレイラは路地に面した建物の前にたどり着き、そして足を止めるとそれを見上げる。
 (わぁ……大きな建物。だけどすぐに壊れそう……)
 ティレイラは内心そう呟く。建物の外見は古く、今にも壊れそうな雰囲気をしていた。
 何だか少し不気味な感じもする……。
 ティレイラは僅かに不安になる気持ちを鼓舞すると意を決して建物の中へと入って行った。
 建物の中には広く、そして長い廊下が続いており幾つもの部屋があった。歩みを進めて行ったのち、その突き当たりで彼女は足を止めた。そこには外灯を持った石の彫像が存在していた。
『ここよ。この外灯を外して欲しいの』
 頭に響いてくる声に従いティレイラは彫像が手に持つ外灯へと手を伸ばす。
 外灯も彫像だ。当然それなりの重さだって存在する。だからきっと外すのは容易に簡単ではなく、きっと苦労するだろう……。
 ティレイラはそう確信していた。だがそれは以外にあっさりと裏切られ、簡単に彫像の手から外灯が外れてしまった。

 途端。

 彫像から一瞬白い光が放たれ、彫像は女の子の姿へと変化していった。
 そして。
『じゃぁ代役をお願いするわ』
 そう口にした瞬間。ティレイラの身体に強い違和感異変が生じ、彼女の身体が徐々に石化を初めていった。
「えっ!? 何これ、一体どう言う事なの!」
 変化していく身体にティレイラは戸惑い、あたふたとしながらもティレイラは自分の魔力で石化を止めようとするが、それは叶わなかった。
 止められないのならば変な格好だけは避けたい。
 そう思いティレイラは可愛らしい姿を意識し、そして彼女の身体は石化してしまった。石化したティレイラは魔力で意識を保ちつつ、ティレイラの目の前にいる女の子に文句を言い放った。
「どう言う事なの! 私を騙したの!!」
「人聞きが悪いわね。騙していないわ。言ったじゃない"変わって欲しい"って」
 女の子は余裕がある態度でティレイラへとそう返す。そして女の子はティレイラの体に手を触れ、目を細めて満足気な表情を浮かべた。
「まわりいい感じね」
「私の身体を元に戻して!」
「ごめんね。少しの間だけ変わってて、お礼に美味しいお菓子を持って帰って来るから。それからちゃんと貴方を元に戻してあげるから、だから安心してね」
 女の子はティレイラにそう告げるとその場から歩き出した。
「待って! お願い行かないで!?」
 ティレイラは心の中で女の子の後ろ姿に向けて悲鳴を上げた。
 だがその声は女の子へと届かない。
 そしてティレイラは誰も居なくなった廊下で、一人必死でもがいてみるがやはり身体は動けないままだった。やはりこの石化は女の子が魔法を解かない限り自分では解けないようになっているみたいだ。
 どうやら女の子の帰りを待つしか他に方法はないみたいだった。
 ティレイラは建物の入口の先にある路地を見つめる事しか出来ず、女の子が早く帰って来て欲しいと願うしかなかった。



―― 登場人物 ――

 ファルス・ティレイラ

 ――――――――――

ファルス・ティレイラ 様

こんにちはせあらです。この度はご指名の方有り難うございました。
今回はティレイラさんに女の子がお願いをすると言うお話しをとの事で、このような感じでお話しを書かせて頂きました。
少しでも楽しんで頂けましたら幸いです。
今回もティレイラさんの物語を書かせて頂き嬉しかったです。本当に有り難うございました。


せあら

東京怪談ノベル(シングル) -
せあら クリエイターズルームへ
東京怪談
2018年10月15日

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