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『閑話休題 孤独にはなれないって話 』
煤原 燃衣aa2271)&無明 威月aa3532)&阪須賀 槇aa4862)&アイリスaa0124hero001)&九重 依aa3237hero002

プロローグ

 その姿を私はずっと見つめていた。
 姉と慕う女性の手を引いて、楽しそうに山を駆けまわる彼を。
 …………私は追いかけた。
 一年に一度見かけるか見かけないか。お盆の時期に里帰りする母に連れられて叔母に会いに行き、3日4日過ごして帰る。そんな夏休み。
 それが毎年私は楽しみだった。
 夏休みはとても楽しくて、一緒に彼のあとをついては走った夏は忘れられない。
 そんな彼を好きになったのは、なにがきっかけだったか。
 膝をすりむいて泣いている時だったろうか。
 木から降りられない私を下ろしてくれた時だろうか。
 長くした髪を褒めてくれた時だろうか。
『あまり、しょげるな』
 私は落ち込んでその場から微動だにしない『煤原 燃衣(aa2271@WTZERO)』に声をかける。
 それは彼がラグストーカーと相対し、弟と愛でる人物を死の寸前まで追い込まれている時の話。
『外に行こう、そんな気分ではないのはわかっている。けれど』
 ここにいてもできることはない、そう告げると燃衣は立ち上がってくれた。
 一応合理的な男なのだ。彼は。

 私は今になってその時のことを思い出す。

「私にはこんなことしかできないからな」
 いくらかの公開と。大きな達成感。そしてこの思いを胸に秘めたまま逝く後悔。
「いつだって私は、遅すぎるんだ」
 私は折れた剣を杖に立ち上がる。
 最後くらい私が。彼の助けになって見せる。
 そう刃を握り直した。

●午前 昼下がり

 時刻は11時、晴れ渡る空には雲一つない、聞けば台風が過ぎ去ったあとというではないか。
 そんなことも分からないくらいに燃衣は疲弊して外の情報を遮断していた。
 そんな抜け殻のような燃衣に鎖繰は長い紙を押し付ける。
「これは?」
 燃衣が問いかけると『月奏 鎖繰(NPC)』は振り返って笑った。
「消耗品のリストだ。買い付けるぞ」
「密林じゃダメなんですか?」
「湿気たことを言うな。それに」
 鎖繰の前でバスが止まる。
「すでに匙は投げられた」
 そうどや顔で告げる鎖繰はバスに乗り込むと乗車券を抜き取る。
「え〜。あ……。まぁそうですね。僕も匙を投げたいです」
 その言葉に首をかしげる鎖繰、燃衣もバスに乗り込んでICカードをかざす。
 その後、匙ではなく、賽を投げるのだと教えると、鎖繰は真っ赤になって燃衣の肩を叩く。
 たどり着いたのは町のバスターミナル。フェリーターミナルも隣接されているので汽笛の音が聞こえる。
 鴎も飛んでいた。からっと乾いた風が気持ちいい。
「何が、匙を投げたいだ! そんなに私と出かけるのは嫌か」
「いえ、皮肉というか、なんというか、からかっただけなんです。すみません」
「からか……。ずいぶんと余裕があるようだな、そうかそうか。気分転換をさせようなど余計なお世話だったな!」
 そう踵を返しすたすたと歩き去ろうとする鎖繰。
 見ればいつもの戦闘服ではなく、黒髪はポニテで結っていて。少しダメージの入ったジーンズと体のラインが出るシャツでスッキリ決めている。
 少し地味めなのは、持っている服に動きやすいものが無く、その中から最も適した物を選んだからで。昨日徹夜で落陽メンバーで選び抜いた代物だ。
 化粧っ気のない顔は角度によってはかなり幼く見える。
 その表情に、かつての彼女を見た気がして燃衣は視線を伏せた。
「どうした?」
「いえ、なんでもありません。まずは銃弾やとぎ石なんかの武器弾薬系統からですね」 告げて燃衣が鎖繰を追い抜かそうとすると、鎖繰が手をさしだした。
「手を引いてやろうか?」
 その言葉にも痛みを感じる燃衣。昔彼女はそうやって自分の手を引いてくれたっけ。
 そう思うと、顔が似ているだけに余計辛かった。
「いえ、腕が痛いのですみません」
 告げて歩きだす燃衣。それを追いかける鎖繰。さらにそれを追いかける
『無明 威月(aa3532@WTZERO)』
「ななな……な、なな……な」
 すごく仲好さそう。
 そんな思いを口にできず胸にため込む乙女威月。
 そう威月は二人でバスに乗る燃衣と鎖繰を見つけて思わず後をつけてしまったのだ。
 そっとバス停の看板に身を隠して二人を窺う威月。
 その背後には首根っこ掴まれて連れてこられた『阪須賀 槇(aa4862@WTZERO)』
「威月たんがいきなり耳掴んで歩き始めた時はビビったお。けど、こういうことだったおね」
 首ではなく、耳だった。
「にしても、隊長。意外とやりてだったお。休日に、女の子と、女の子と。おおおおおおおおおんなのこととととと。でーとだなんてお」
 槇の拳が震え始める
「ぐぬぬぬおのれ隊長、喪男同盟を裏切ったのかお……ッ!」
 そんなどす黒いオーラむき出しの槇は放っておいて威月も自分の世界に没頭中である。
(わたしは、その姿を私はずっと見つめていた)
 潤んだ視線を二人に向けて威月は胸の中でそうつぶやく。
 そんな二人のあとをつける怪しい二人。そしてそんな怪しい二人を見つけてしまう『九重 依(aa3237hero002@WTZEROHERO)』
「何をしてるんだあいつらは?」
 そう首をかしげる依だったが、まずは自分の買い物が優先だと4人とは違う方向へ歩いていく。
「あいつなら追いかけるんだな、きっと」
 そう今はズタボロで動けない自身の契約者を想い、ケーキの一つでも買って帰るかとあたりを依は見渡した。

   *   *
 
必要な物資を見つくろうと燃衣はシートに住所を書きこんだ。指定日は明日。午後であれば威月がいるだろうと時間を指定する。
「これで、紙や食料類はOKですね」
 そう 公園を横切りながら歩く鎖繰と燃衣。
 その燃衣が聞き覚えのある歌声を捕えた。
「月奏さん、あっちに行ってみましょう」
 そう鎖繰の手を取る燃衣。顔を赤らめる鎖繰。
 その光景に口を引き結んだ威月と、頭を抱える槇。
 様々な思いが交錯する中全員の耳にはただ一つの旋律が響いている。
「やっぱり? アイリスさん」
『アイリス(aa0124hero001@WTZEROHERO)』噴水の前に立ち優雅に声を響かせていた。
 その背後に煌く 水しぶきにいくつか虹が重なって、全く持ってファンタジーである。
 その周りに子供たちを中心に人だかりができていた。
「ああ、そう言えばこういうこともやってるって聞きました」
 燃衣が手を叩く。
 確かアイリスの妖精の歌を、こちらの人間に適した形にコンバートするために定期的に、ゲリラ的に歌を謳っているそうだ。
「コンバート?」
 鎖繰が問いかける。
「妖精の羽を楽器として使う上で『人間に聴かせるための調整』
 らしいですよ。妖精の音楽はそのままだとちょっと神秘的過ぎるので人間に合わせる必要があるとか」
 たしかになと頷く鎖繰。
 だって羽から聞いたこともない音が流れているし、アイリスの歌もなんだか二重奏くらいに聞こえる。
「巷ではちょっと有名ですよ。いつの間にか現れて、いつの間にか弾き語り、いつの間にか消えている、を繰り返す。神出鬼没の妖精歌手」
 まぁ、実際アイドルとしても名高いのだ。それくらいのネームバリューもすぐについてくるのだろう。
「といっても……」
 まさかこれほど大盛況だとは思わなかったが。
 そんな燃衣たちを抜け目なくアイリスは見つけていた。
 片目だけうっすら開いて、いつもの穏やかな笑みを浮かべる。何やら楽しそうな雰囲気ではないか。
 しかもあと二人、人の気配がする。
(面白いことになりそうだね)
 アイリスは音で、ソナーで二人を追跡することに決めた。
 基本的に妖精なんて歌で自分のテリトリーに誘い込み、散々いたずらして反応を楽しんでいるような奴らである。
 いつの間にか後をつけられているなんて普通。そして森の中で妖精を振りきれない絡繰りがこういうところにもあった。
「声をかけては悪いですね、またあとで戻ってきましょう」
「な、なぁ、燃衣。これではまるで、その」
 鎖繰が何事かを伝えようともじもじする。ただ燃衣は鎖繰の腕を引いてずいずい進むだけで振り返りはしない。                      そこに槇はピンっとキタ。
「まず、せめて、隊長の慌てふためく絵がほしいお」
「え?」
 威月が、それはどういうと問いかける前に槇はスマホをパシパシ叩く。
 次いで震える燃衣のスマホ、見ればそこにはこう書かれている。
『デートだお?』
 振り返る燃衣、顔を赤らめている鎖繰、繋がれた手、顔が赤くなる燃衣。
『デートだおね?』
 あわてて文字を撃ち返す燃衣。
『これは! 買い出しです!』
『でも、女の子と二人きりだおね? デートだお』
『ちがいますよ!』
『否定したら失礼だお。認めるお。デートだおね?』
 スマホと交互に鎖繰の顔を見返す燃衣。
 その光景がおかしくて槇は笑う。
 その槇にいぶかしげな視線を送る、その視線に問いかけに答えるように槇は笑いを抑えて告げる。
「威月たん、冷静に考えるお」
 首をかしげる槇。
「隊長が女の子二人で平然としてるのがおかしいお、それは鎖繰たんの事を女の子だと思ってなかったってことだお」
 再び槇はぱしぱしとスマホを叩く燃衣に視線を向ける。
「ってことは隊長が、これはデートだって思うようになれば、自然と緊張してきっとどこかでとちるお」
 実際燃衣は、鎖繰の手を大げさに振り払ってあたりを見渡している。いまさら会話に困ってしまっているのだろうか。
「そうすれば、デートは失敗だお。よかったおね、威月たん」
 またもや首をかしげる威月である。
「わ……わたしは」
「だって、隊長と鎖繰たんのデート面白くないおね? 隊長が好きだお?」
 その『好き』という言葉に実感が持てない威月、しかし次第にその言葉が頭にしみこむにつれ恥ずかしいというか。今にも隠れたいというか。複雑な感情がこみあげてきて。そして。
「いやああああああ!」
 なぜか槇をブッ飛ばしていた。
「鎖繰さん!」
 どこかで聞こえた悲鳴を皮切りに少し燃衣は平常心を取り戻す。
「走りますよ!」
「まかせろ、私は走ることが得意だ」
 燃衣はおそらく追っ手(槇)がどこかに迫っているのだろうと想い、走って逃げることにした。
「いったん私たちが入りそうにない場所に隠れよう」
「いいですね、でもそれはどこですか?」
 二人とも大きく腕を振りながら並走して街中を走る。
「そうだな、飯もまだだな?」
 そう問いかける鎖繰に燃衣は首を縦に振る。
「ではあそこはどうだ?」
 そう鎖繰が視線を向けた先にはHOTELの文字。
「え?」
「ああいうところに入るのは初めてか? 私はよく行くんだ、いいものだぞ」
 それってどういう意味? 
 今日一番の大混乱を抱えて燃衣はその施設に引きずり込まれる。

● 午後 波乱の一時

 結論から言うとホテルはホテルだが高級ホテルだった。
 そして鎖繰が入りたかったのはホテルの宿泊室の方ではなく、ホテルの一階とかに入っているちょっと高めのレストランである。
「内装は綺麗だが昼間は混んでないんだ、だからゆっくりできる」
 告げると鎖繰はティーカップを下ろして窓の外を見る。
 すると窓の外を槇と威月が走り去っていった。さすがに室内の燃衣と鎖繰には気が付かないらしい。
 其れを見送って鎖繰は燃衣に語りかけた。
「まさか、こんな風に出会いなおし、お茶をしていると昔の自分が聞けば驚くと思うがな」
「ああ、そういえば僕ら、幼いことにあったことがあるんですよね」
 申し訳なさそうに燃衣は頭を下げる。
「覚えていないのだろう?」
「すみません」
「引っ込みじあんだったからな、仕方ない、ただ優衣の手を引くあなたの姿が印象的だった」
「僕が? 清君ではなく?」
「ああ、堂々と、楽しそうに、彼女の手を引いて歩く姿にあこがれたものだ」
 燃衣は首をかしげた。
「おかしいですね、だってあの時僕は」
 燃衣は幼少期を思い返すと嫌な思い出ばかりにぶち当たる。
 たとえば、派手にでは無いが『化け物』と地域の人々から疎まれていたこと。
 友達は黒日向くらいしか居なかったこと。
「信じられんな。私もしばらく交流を持っていたが、あの外道はどこまで行っても外道だった」
「それは……そうなんですか。でも僕と一緒にいる時はそうではなかったんですよ」
 ずっと一緒だった。そう燃衣は告げた。
「春も夏も、秋も。冬も。特に夏休み」
「…………夏休み」
 鎖繰は何かを思い出そうと額に手を添える。
「彼は凄い人なのに何故かボクをずっと守ってくれた。けれど」
 リンカーへの道を勧められる様になると、二人の関係はギクシャクし始めた。
「僕の何が、いけなかったんでしょう。僕は彼の何を傷つけてしまったんでしょう。ひょっとしたら僕が彼を歪めてしまったんじゃないんでしょうか」
「それは違う」
 鎖繰は首を振った。
「燃衣が気に病む必要なない、それ以上抱え込むな」
「いえ、僕がしっかりしていればどうにかなったことは多いんです。これまでも、これからも。僕はきっと選択を迫られる。そしてこれまでのように間違ったら」
 優衣を失う。
 弟を失う。
 それと同じ、それ以上のものを失う。
「僕は自身が無いんです。その時。友達を殺せるか」
「お前はまだ、あの外道を友だと思っているのか?」
 頷く燃衣。
「そしてこの戦いにみんなを巻き込んでいいのか、どうすればいいのか」
 もし、誰かが死んだら。その時は。
「その時は僕は」
 病室で眠る、彼の姿を思い出す。
 燃衣は拳を握りしめた。その手の中でフォークがぐにゃりと姿を歪める。
「僕はもう、一人で行くべきなのかも。でなければまた彼のような犠牲が」
 そう告げる燃衣に、鎖繰はこう言葉をかけた。
「優衣はどう、御前からみえていた?」
「優衣は小学校から同じだった」
 燃衣はすらすらと放しだす。
「お転婆な人だった。僕たちの中心みたいな人でした」
「でもすぐに勘違いするし、泣いたり笑ったり、面倒な人でもあった」
「ああ、そうですね。僕もよく優衣に振り回されてました。優衣に引っ張られての山を駆けずりまわったこともありましたよ」
「仲が良かったんだな」
「はい、でも優衣は清君を選びました」
 高校では清から告白し付き合ったが、別れてしまった。
「あの時から、清くんは何か変わり、そして……」
 そして思い出すのは紅蓮の夜。
「皆、死んだ」
 燃え盛る屋根。悲鳴。人の群。
 絶叫、絶命。絶望。
 これがこの世界に本当に存在するものなのか目を疑い。
 そして。笑いながら弟は殺された。
「私も姉と慕う優衣が死んだのはつらかった。燃衣には兄弟は?」
「いましたよ、10も離れた弟でとても可愛かった」
 その話を威月は盗聴器越しにきいていた。
「阪須賀家特注、77の秘密道具」
 思いつきで適当を言いながら燃衣のスマートフォンにアクセス、通話機能を無理やりつなげたのだ。
 割と始めから二人は燃衣の話を聞いている。
「隊長は……」
 その話を聞いてか細く威月は口を開いた。
「私と何が違うのでしょう」
「どういうことだお?」
 威月は思うのだ。
 復讐者となった隊長、ならなかった自分の差は何だろうと。
 自分は今は、居場所を見付けて幸せと言えるけれど、そう思っていない隊長と私の差は何だろうと。
『僕は死神か、なにか……いえもっと単純に化物なんですよ。きっと周りの大切なものも自分で壊してしまう』
 燃衣の言葉が電子ノイズ交じりに聞こえた。
 なんだか威月は寒くなったような気がしてギュッと縮こまる。
 燃衣の姿を思った。思い出すのは燃衣の背中、
 最初は、笑顔の下に明らかに鬼の仮面が潜んでいて、怖かった。
 色んな人が暁を訪れて、そして去って行った、その苦悩も知っている。
 その時の落胆も、仲間が傷付いた時の憤怒も、難しい選択の苦悩も、知っている。
 そうして変わっていった、隊長は変わった。
『僕は昔から変わらない。ダメな奴のままだ』
 出来るならば、今すぐ出て行って隊長はそんな事ない、自信をもって下さいと叫びたい。
 だが出来ない。
 だっていつだって自分は燃衣の後ろを歩いていて。後ろからじゃ彼に言葉は届かないから。
 その時である。ぱすんっと紙質な音が盗聴器越しに聞こえた。
「あたた、あれ? 珍しいですねこんなところであうなんて」
 そう告げて燃衣が顔をあげるとそこには依が立っていた。
「何うじうじしてる」
 告げると依は近くから椅子を引っ張ってきて二人のテーブルの横につける。
 持っていたコーヒーを一口すすると店員にケーキをオーダーした。
「依さん」
 燃衣が罰がわるそうによりを見あげると、その姿を見て依は笑う。
「そんな目で見るな」
 依は一つため息をついて言葉を続ける。
「話は聞いていた。言いたいことも分かってる。けど俺たちの事も考えてみてほしい。化け物をそんなに慕うやつがいるか?」
 そう依は問いかける。
「本当に慕われているのか」
「慕われてるさ誰よりも仲間を思い。
 人の気持ちを大事にする隊長だから。
 ……誰よりも人間臭いお前だから。
 皆ついていくんだろう」
 告げると依は窓ガラス越しに見知った二人を見つけて一瞥、すぐに燃衣に視線を戻した。
「隊長の仲間が隊長を一人にするはずないだろ」
「依さん……」
 だがそれは少し、願いも入っているのだろう。
 だって、依も忌み子だったから。
 忌み子として世の中から疎まれ戦い抜いて死んだ依
 だから燃衣には救われて欲しかった。
 依は想い返す、常に浴びせられていた怨嗟の声。
 忌み子は『先祖返り』
 人と妖が繁栄の為に交わり、長い時の中で失われたはずの妖の力が色濃く出てしまった呪われた子。
 その力を目にした時の。人間たちの顔。
 自分に利用価値があると知った時の、下卑た表情。
 その後依は戦場で使い潰されることになる。
 愛も仲間も与えられず、ただただ兵器として。
 だが、燃衣は違う。今ここにいる彼を心配する人間は多い。
「俺は慕ってるお」
 槇が燃衣に歩み寄りながら告げる。威月もその背に隠れている。
「なぜここに?」
「すまんだお、隊長。隊長がおれを裏切ったと思ったんだお」
「私もね、君が周りから疎まれているようには思えないんだよ」
 全員が振り返ると窓ガラスの手前にアイリスが立っていた。
「いつからそこに」
「いつからだろうねぇ」
 そう、アイリスはいつものように笑って見せた。
「って。やっぱり皆さん僕をつけていたんですね」
 燃衣が戸惑いの表情を槇に向けると槇は言った。
「いや、いきなり威月たんが俺を引っ張ってバスに乗せるんだお、でつくなりもの影に隠れて、ごふっ」
 依が素早く槇に歩み寄るとその肘鉄で槇を沈めた。
「あまり人の秘密にしたいことをさらすものではない」
 消沈する槇である。
「せっかくだから私たちもお茶して帰ろうか」
「いや、俺はケーキがまだなんだが」
 そう気を使うアイリスに引きずられるように燃衣と鎖繰を残して 一行は外に出た。
「いつだって君の周りは騒がしいな」
「ええ、楽しいことです」
「そうだな……そうだ。伝言がある」
 告げると鎖繰はカップを飲みほし、燃衣に告げた。
「明日の事なんて分からない」
 その口調が、言葉がかつて失った女性のものと重なって燃衣は目を見開いた。
「だけど明日は必ずくる」
 いつだろう、空を見上げてそう彼女が言っていた気がする。
 具体的に思い出せない。
 何気ない日常の中の記憶なんだろう。
 その記憶が、今はとても愛おしい。
「だから行動をする、夜に向かって、朝に向かって」
 その言葉を告げると鎖繰はじっと燃衣の反応を見ている。
 その視線を受けて燃衣は何事かを考えたあと、立ち上がり鎖繰をまっすぐ見つめた。
「そうですね、忘れていました。僕たちは夜を終わらせるために戦っていること」
 そして、もう自分一人の戦いではないこと。
「ならば立ち上がって戦うだけだ、どんな運命が待っていても」
 燃衣は告げるとジャケットを羽織って立ち上がる。
 其れを振り返る鎖繰。
 最後に鎖繰はこう告げた。
「では、支払いはよろしく」
「……え〜」
「ふふふ、冗談だ。一度言ってみたかったんだ」



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『煤原 燃衣(aa2271@WTZERO)』
『無明 威月(aa3532@WTZERO)』
『阪須賀 槇(aa4862@WTZERO)』
『アイリス(aa0124hero001@WTZEROHERO)』
『九重 依(aa3237hero002@WTZEROHERO)』
『月奏 鎖繰(NPC)』


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 いつもお世話になっております。
 鳴海でございます。
 今回は鎖繰にスポットをあてたお話としつつ。皆さんの燃衣さんに対する立ち位置がはっきりするように書いてみましたがどうでしょうか。
 さらにこの作品は鎖繰が最後の瞬間を思い出しているという設定で書いてみました。
 時系列が未来に過去にと忙しい作品ですが楽しんでいただけると幸いです。
 それでは鳴海でした、ありがとうございました。
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2018年10月15日

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