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『ならば意志で、抗いを! 』
松本・太一8504

●どうあるべきか
 ゲームの世界が現実となっている。
 誰かが作り上げた世界を異界に生み出し、世界に重ね、一つの分岐された未来としたのだろう。
 松本・太一には前の世界の記憶が残っており、様々な問題となって現在ある。
 もともとの外見ではなく、ゲームの画面を開いただけで強制的に作られたアバターの姿である。種族はラミアであり、【魔女】やよい、という名。
 ラミアの特性上、異性を誘惑し、生気を奪う。誘惑したあとすることが、男である太一を精神的に苦しめる。ラミアのやよいとして行動している間、太一が表立って行動してはいないが、感覚や記憶は共有に近い。
 さらにゲームの世界は、人類側と魔族側が争っている。決着がついた後も世界は続く。
 幾つかの問題から、太一はこの状況に流されるのは辛い。
 集めた情報も正確さもわからないし、分岐する前の世界がどう流れているかなどの情報もほしい。
(集中する必要がある……そうなると無防備になってしまう)
 安全な場所を探す必要があるが、魔の陣営の方がいいだろう。太一はあまりこちらを見ていなかったことを思い出した。
 街の作りは人間のものと対してかわらない。そこにいるモノたちの雰囲気が異なり、全体的に猥雑でいて、妙なエネルギーに満ちている。
 太一はふと、やよいの家はどこだろうと思う。ここの住民であるやよいの家または拠点はあってもおかしくはない。
 繁華街を抜け、見慣れた住宅地に出た。試しに、自分の住むアパートを探す。そこに現れたのは防犯もしっかりした豪邸だった。
「なんだ、これ」
「それは、あなたのご自宅ではありませんか」
 太一は振り返る。そこには慇懃無礼にお辞儀する、魔の陣営のトップの一人と思われる【執事】ノワールがいた。
「通りがかっただけですよ」
 驚いた太一にしれっと答える。
(これまでの言動から世界の状況を知っているはずだ、この人は。だから、私をつけていた? 観察されている?)
 太一は考えながらノワールを見る。
「何もしませんよ」
 ノワールは首をかしげる。
「邪魔はしないでほしいのです」
「しませんよ? あなたが人類側に寝返るとかいう面白可笑しいことをするならば、少し考えますが」
 肩をすくめる。
「拠点は基本的にはその人物の物です。非常事態でない限り安全地帯だと思っていただいていいですよ」
 ノワールが説明をして立ち去った。
 釈然としない部分もあるが、信じるべきと太一は考えた。
 屋内に入ると鍵をきちんと閉じ、魔法を使う。
 魔法の糸を時の流れに載せる。ふわりふわりと漂いながら、過去や分岐載っていく。
(世界や情報が多い……焦ると時間だけ立つ、落ち着こう、私)
 深呼吸をした後、太一は己の呼吸に意識を集中させた。

●二人または一人
 太一は太一を見つけた。
(どうやって情報を得るか、どうやって聞くのか)
 画面の外の太一の声は届いている。パソコンの中にいるような状態の太一は、今がどのような時かなど情報を集める。数字だらけの情報が魔法を通じ、五感につながり伝わる。
 あの晩の自分だ。ゲームに問答無用で登録されてしまった。そのため、画面にはやよいがいる。
『少し話を聞いて、私!』
 太一はコンタクト方法としてやよいにしゃべらすことを選んだ。
 驚愕に満ちた顔の画面の外の太一は、じっと画面の文字を追っている。
『情報をください。世界が分岐して、私の可能性の一つのあなたに応えてもらいたいのです』
 画面の外の太一は、やよいを通した太一の説明にうなずいた。太一にとってこの画面の外の太一も分岐してしまった太一であるのだ。
「分かったりました。すでに、私も影響受ける可能性がありますね」
 画面の外の太一は何とも言えない表情になり、魔法を展開する。魔女の夜宵の姿となる。
(なんか変な感じ……自分と話し、自分の変身を見る……)
 しばらくすると画面の外の太一は告げる。
「分岐が複雑です。あなたも理解しているみたいですが、私もあなたにとっては分岐した世界の私」
 画面の外の太一は異界に関して情の集め説明してくれる。分岐は様々あり、どれがどうつながるはわからない。ゲームの世界をつなげるには相当な偶然の積み重ねがいるだろうという。
「正直いって触りたくないです、危険です」
『そうですか、世界が大幅に変わらない未来もあるのですね』
「そうです」
『人の手がかりは?』
「わかりません。ゲーム関連で調べると何かでますよ、たぶん。ただ、調べられることを前提に行動していると思います」
 太一はラミアにうなずく動作をさせた。
「世界が大きく変わるような改変や統合は、世界を破壊する可能性もあります……」
『私も考えなくはなかったです。……わかりました。協力してくださってありがとうございます』
「私にとっては心構えですが、ない未来であってほしいです」
 どちらの太一にもこの後何があるかわからない。
 二人は別れた。

●進むしかない
 太一はやよいに戻る。
 やよいはどこかに行きたがっている。空腹を訴え、異性の誘惑および楽しいことをしたいのだ。
 太一は試しに話し合いを持ちかけると返答があった。
『あたしは、でかけるのー。だいたい、ここはあたしの世界で、あたしの体なのー』
『もともとは私の物で、私が体を使う権利はあります』
 意識の世界の話であるため、口は動いてはいない。体は行く、行かないという信号の差で硬直している。
 やよいが言う空腹は太一も理解している。我慢するということでひとまず乗り越えようとする。やよいという人格の考えを受け入れるとしても、行動を受け入れるわけにはいかないため、必死だった。
 やよいは本能に忠実に行動する。そのため、今すぐ空腹を満たしたいため、必死に抵抗する。
 話し合いから取っ組み合いのようなものに発展し、空腹は徐々に大きくなる。
 やよいは逃げ出そうとした。太一はイメージとして彼女を取り込んだ。
 悲鳴も何もない。元の一人に戻ったのだから。
 一瞬、やよいがいなくなると体もと思ったが、さすがに何の変化もなかった。
 これで魔女・夜宵の時と同じ状態になった。外見は女、中身は男である太一。
「この世界で絶対に殺さないは無理。ならば、専守防衛もしくは正当防衛。生気は奪わないとならないから、殺さない程度に適宜もらっていく。なんとか生き延びる、頑張ろう。行けるところまで……」
 行きつくのはどのような未来か。
 すがすがしい気持ちになった。
「さて、食事に行こう」
 邸宅を出る。
「おやおや?」
 通りに向かう角にノワールはいた。夜宵を見た瞬間、何かに気づいたようだ。
「何がおやおやなんですか?」
 夜宵の言葉にノワールは首を横に振る。
「その答えは、面白いのでしょうか? 楽しいのでしょうか?」
 ノワールは少し口をとがらせる。
「あなたが決めることではないです」
「そうですね、まあ、改めてよろしくお願いしますね、夜宵殿」
 ノワールは名を呼ぶ。そして、すっと消えた。
 いや、消えたのではなく、移動しただけだ。これまでのやよいでは見えなかった動き。
(これで、あの男と同じ土俵に立ったということかな)
 夜宵は気持ちに余裕が生じ、自然と笑みが浮かんだ。
「行こう」
 夜宵は前を見据え一歩踏み出した、生きるために。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】
8504/松本・太一/男/48/会社員・魔女
????/ノワール/男/25/執事・観察者

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 こんにちは。
 時間の流れを考えると、結構複雑なんですよね、改めて。世界の構成については様々な見解もありますね。
 昔読んだ少女小説をふと思い出しました。
 いかがでしたでしょうか?
東京怪談ノベル(シングル) -
狐野径 クリエイターズルームへ
東京怪談
2018年10月22日

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