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『露天温泉月下の戦場 』
鞍馬 真ka5819

 ぴちょ……。
 足先から水面に触れて、ゆっくりと。
「ふうっ」
 細いながらも鍛え抜かれた太腿、手ぬぐいを巻いた腰、そしてしまったウエストに色白の胸、なで肩に鎖骨と湯に漬かる。
「やっぱり温泉はいいな……」
 鞍馬 真(ka5819)、本日は戦闘で疲れた体を癒すため温泉を訪れていた。
「月下に湯煙、水面に紅葉……か」
 露天の月夜の下、湯に浮かんでいた紅葉の葉っぱを手にしてしみじみ。心まで癒される、と天を仰ぎ極楽気分に浸る。
(きょうはゆっくりしよう)
 そう、心の決めた時だった。
「きゃーっ!」
 響き渡る女性の声にがさがさっと激しく揺れる灌木の音。さらに何か獣のような啼き声もした。
 そして間髪入れず!
 ――どっ……だっぱーん!
「きゃーっ!」
「いや〜ん!」
「こんの、エロザル〜っ!」
 男湯と女湯を仕切っていた板塀が倒れ、人の大きさのサルが男湯に逃げ込んで来た。さらに勇敢な女性客の一人が逃げるサルに向かって竹やりを投げて……。
「あっ! 避けて!」
 投げた女性は蒼白になっていた。
 サルには当たらず、騒ぎで身を起こした真に向かっていたのだ。
「……これを使うか」
 こちらにやって来たサルを視界にとらえていた真。すっと身を横向きにずらして竹やりの直撃コースから最小限の回避をしつつ、胸の前でパシリとそれをつかみ取った。
「あ……すごい」
 女湯の女性たちは自らの胸や体を隠し屈めた状態で真の身のこなしにくぎ付け。
 そして真。
 竹やりをくるんと一つ回しつつ敵へ向かって一直線……。
 ではなく、まずは温泉から出た。最短距離では湯に足を取られ移動速度が激しく落ちるからだ。
 サルの方もバシャバシャと湯の中でもがくように逃げるのを早々にあきらめ、横の最短距離へと進路を変えていた。竹やりが大きく外れた理由でもあるが、真とサルの距離はさらに遠くなってしまっていた。
「よし」
 が、真の青い瞳にはむしろこれでいいとばかりに力がこもる。
 刹那――
 だっ、と真の後ろに引いた軸足が、跳ねた。
 加速。
 と同時に竹やりを投擲。
 横の位置関係になっていたサルの足元に見事引っ掛け転倒させた。
 真の方は投げた勢いそのままに……加速。
 その勢いに、湯につけまいと頭に巻いていた手ぬぐいがひらり。
 まとめていた黒髪がほどけた。風に波打ち自由に踊り、白く磁器のように艶やかに存在感を示していたうなじを撫でて流れる。
 一陣の風となった瞬間である。

 対するサル。
 足を取られたタケを横に投げ捨て体勢を立て直したところである。
 その後肢は、だっと逃げる体勢。すでに屈んでためを作っていた。
 が、逃げなかった。
 サルは目を見開き迫って来る真を凝視していた。
 足がすくんで逃げられなかったわけではない。
 逃げれば追い付かれ後背を晒してしまう、と判断したのだ。
 事実、すぐに真は追い付き裏拳が飛んで来た。
 大きな構えに大きなスイング。
 加速する腕の動きと合わせたものであるため身体全体の動きとしてはまったく無駄がないが、裏拳としての軌道としては無駄だらけ。キレがない。
「キキッ」
 サル、難なく身を屈めて横薙ぎの裏拳をかわす。
 その体勢から流れるように前転し初速を付けてそのまま逃げようとしたところ……。
 ――ぶうん……ばしっ!
「ギギャッ!」
 サル、両手で目を覆い転がった。
「手ぬぐいとはいえ水を含んでいる」
 真、一発目の裏拳を囮にして左手ですぐに追撃を放っていたのだ。髪の毛をまとめていた手ぬぐいで、遠心力を利かせた一撃にしていたため一呼吸遅れてサルに到達していた。これが見事に前転しようとしたところにカウンターで入ったのだった。
「終わりだな」
 そのまま首元を右手でつかみ押し倒し手ぬぐいで両手を縛る。
 つもりだった。
「なかなかやるのぉ」
「……え?」
 真、ひるんだ。
 それが命取り。
 サルは真の右手を中心にブレイクダンスをするように軽やかに身をひねり握力を奪うことで脱出。背筋の筋力を見せつけるようにブリッジ状態から跳ねるように身を起こして逃げて行った。
(人間……しかも老人のようだが)
 まだ戦闘状態の真顔のまま、サルの逃げた方を見送る。
「きゃ〜っ!」
 ここで再び響く女性たちの悲鳴。
 ただ、先と違い嫌悪や危機感にあふれたものではなく、やや歓迎の響きが交じっている。
「何? また何か……」
 背中越しに半身で振り返る真の目に、目元を隠しつつ指の間からこちらを凝視する女性陣が映った。
 視線を追い、気付く。
 月下に白く、自らの尻の双丘が晒されていることに。

「若いの、一杯奢らせてもらえんかの?」
 温泉上がりに、知らない老人から誘われた。
 ちびと飲んでいると、手ぬぐいを渡された。見覚えがある。
「兄さんに返しとこうかの」
 にやっ、と笑う。
(ああ、それで)
 真、腰の手ぬぐいが戦闘の激しさで落ちたのではないことを知り、にやっと返した。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ka5819/鞍馬 真/男/22/人間:闘狩人

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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鞍馬 真 様

 いつもお世話様になっております。
 今回は私自身が「温泉に行きたいな〜」な気分だったので温泉に。
 以下、製作前段階の覚書です。

 真さんをセクシーに描くこと。
 戦闘はテクニカルで頭脳的な描写を。
 最後に腰の手ぬぐいはぴらっと落ちて真さんのお尻が戦闘を見守っていた女性たちの目に晒されること(前は見られてません・笑)。
 敵のサルはややご都合主義なので、実はまるごとエロザル(【非売品】普通のまるごとサル(あるのか?)よりも助平そうな表情をしている。着る人によっては、自分がそのまま顔を出した方がより助平な感じになるという人にも対応できるよう、顔部分はパーカーのように背後にやることができる)を着込んだ助平男性ハンターというオチ。

 以上をポイントに執筆しました。

 なお、助平老人はわざと男湯に逃げてます。
助平老人「これで男たちも眼福で同罪じゃ。かっかっか」
 ……こまったおじいさんですよね。
 ついでにラスト、「一杯」としか描写していません。通常は酒と取りますが、真さんお酒どうだっけ、と思ったので酒以外にもとれる書き方にして……字数? いやそんなべつにもごもご。

 では、温泉でのんびりする真さんをお楽しみください。
おまかせノベル -
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ファナティックブラッド
2018年10月22日

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