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『辺境巫女の心得 』
Uisca=S=Amhranka0754

「Uiscaは、辺境巫女だったでありますな?」
 どっから聞きつけたのかは謎だが、Uisca Amhran(ka0754)へ近づいてきたのは幻獣王チューダ(kz0173)。
 依頼で幻獣の森へ寄っただけなのだが、Uiscaの姿を目撃したチューダがどや顔でやってきた。次の依頼も決まっている為、あまり長居はできないUisca。正直、面倒ではあったが、ヘソを曲げればチューダが何を言い出すか分かったものではない。
「あの、なんでしょう?」
「我輩、てっきりハンターだと思ってたであります。辺境巫女であれば、我輩をもてなす権利を与えるであります」
 そう言いながら、チューダはごろんと寝転んだ。
 そして、Uiscaの足元で腹を全開。撫でても良い、というよりは腹へのブラッシングを要求しているようだ。
「ささ、遠慮無く我輩の毛並みを整えるであります。ぶわーっとマッサージを兼ねてブラシを……」
「この馬鹿っ!」
 突然響く大巫女(kz0219)の声。
 同時にチューダの腹に目掛けて大巫女の右足が食い込む。
 腹への一撃にチューダは悶絶する。
「ぬぉぉぉ! 我輩の腹を踏みつけるとは……」
「Uiscaに何やらせているんだい。そもそも辺境巫女はあんたの小間使いじゃないんだよ」
 説教する大巫女であったが、チューダは足元で転げ回って痛みに耐えている。
 日頃辺境巫女に甘やかされている為か、チューダは辺境巫女を見ると世話をさせようとする癖があるようだ。
「あの、大巫女。その……良いのですか?」
「ああ、あいつかい? いいんだよ。巫女とみれば自分の世話を焼かせようとするんだ。ちょっとは厳しくしたってバチは当たらないよ」
「酷いであります! 我輩はちょーーーーとみんなにチヤホヤされながら桃やナッツを食べさせてもらって、膝枕で寝ているだけであります」
 ふて腐れるチューダ。
 しかし、そこへ大巫女が叱りつける。
「お前はそれしかしてないじゃないか!」
「ズルいであります! 我輩も他の幻獣みたいに辺境巫女にお世話して欲しいであります!」
 ジタバタと地面で手足を動かすチューダ。
 その時にUiscaにふとある疑問が湧き上がった。
「大巫女、一つよろしいですか?」
「なんだい?」
「大巫女は何故、辺境巫女に幻獣の世話をさせているのですか?」
 その疑問はUiscaにとって当然の疑問であった。
 辺境巫女はそもそも辺境に降り立つ白龍に仕え、世話するのが役目だ。
 その為に素質のある者を部族から迎えて辺境巫女となる修行と儀式を執り行う。
 Uiscaにも覚えはあるのだが、白龍が消えた後に大巫女はこの幻獣の森で巫女達に幻獣の世話をさせている。何故、白龍ではなく幻獣達の世話をさせるのだろうか。
 その疑問を聞いた大巫女は、軽く笑みを浮かべる。
「そうかい、気になるかい。いいだろう。白龍が消滅したのは知ってるね」
「はい」
「白龍は消滅しても、またいずれ辺境の地へ降り立つ。あたしらは、次の白龍が聖地へ降り立つ日を待たなきゃならない。待つっていうのは大変だ。白龍は何十年、何百年後に降り立つか分からないんだ。それまで、巫女の持つ技術や仕来りを伝えていかなきゃならないんだ」
 白龍は消滅しても、巡り巡って聖地リタ・ティトへ降り立つとされている。
 辺境を守る存在として崇められる白龍だが、六大龍の一角であるが重要な存在でもある。次の白龍が聖地に降り立つのはいつか。それは誰にも分からない。
 だが、辺境巫女はいつ白龍が聖地へ降り立っても良いように白龍を迎える準備をしなければならない。
 それが遠い未来でも、辺境巫女の技術と伝統を語り継いでいく理由だ。
「巫女の技術……それは心構えや存在意義もですよね?」
「そうさ。巫女は他人を想う心が必要さね。それを新米巫女達は幻獣達から世話を通して学ぶんだ。その心を忘れなければ、きっと白龍は聖地に帰ってくると信じてね」
 Uiscaにも覚えがある。
 巫女とは、相手を慈しむ事から始まる。
 白龍に選ばれたのは素養だけじゃない。
 人を愛する事を知っている者が、巫女になる権利がある。
「巫女は、愛を知っている者……ですよね?」
「なんだ、覚えているじゃないか。そうさ、それを忘れなければあんたは何処にいたって辺境の巫女さ」
 大巫女は満足そうに頷いた。
 Uiscaはハンターになった。
 でも、辺境巫女だった記憶も知識も備わっている。
 それ以上に大事な事が、Uiscaの中に息づいている。
 それを再確認できた事はUiscaにとっても、大巫女にとっても嬉しい事だ。
「しっかりやんなよ。その心を忘れなければ、どんな困難にも打ち克てるだろうからね」
「はい。私もそう思います」
 Uiscaは、頷いた。
 今から向かう依頼にも全力で望めそうだ。
 そんなUiscaの足元でチューダが寂しそうに呟いた。
「し、死んでしまうであります……。さ、早く我輩のお腹を優しくさするでありますよ」

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka0754/Uisca Amhran/女性/16歳/聖導士】
【kz0173/チューダ/男性/10歳/幻獣(小)】
【kz0219/ディエナ/女性/90歳/聖導士】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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近藤豊でございます。
この度はおまかせノベルの発注をありがとうございます。
実はどこかで描こうと思っていた辺境巫女が幻獣をお世話する理由を元にノベルを書かせていただきました。ペットよりも大きい幻獣ですが、彼らを世話する事で学ぶ事。それをいつの日か降臨する白龍の世話へ反映されれば……。何百年先の降臨でも、彼らは辺境巫女のあるべき姿を未来へ伝えるべく学んでいくのでしょう。それが彼らにとって当たり前の日常であり、ハンターが守るべき光景の一つだと考えております。
それではまたの依頼をお待ちしております。
おまかせノベル -
近藤豊 クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2018年10月23日

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