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『幕開け〜あなたは幸せになる〜 』
桜憐りるかka3748

 日常が崩れるのは、予想していたよりも呆気ないものだ。
 今日と同じように明日が来る。
 それは、誰もがそれを当たり前に感じている。

 しかし、真実は違う。
 誰も明日の保証などしていない。
 日常は突如崩壊し、その立場を失う事になる。

「そこのハンター」
 桜憐りるか(ka3748)が呼び止められたのは、審問部隊『ベヨネッテ・シュナイダー(銃剣の仕立て屋)』のメイ・リー・スーであった。
 腰に差したレイピアを揺らしながら寄ってくるメイ。
 息を切らせて走ってくるが、その表情はかなり険しい。
「……なに、か?」
「ヴェルナー様……いや、ヴェルナー・ブロスフェルトを見かけなかったか?」
「…………」
 りるかは少しばかり口を閉ざした。
 やっぱり――案の定、という感情を胸の奥へと押し込めながら、りるかは頭を横へ振った。
「いいえ」
「そうか。見つけたら、必ず報告しろ。匿えば、ハンターであっても逮捕する」
 強い口調で言い切ったメイは、来た道を走って戻っていった。
 気付けばもう間もなく夕闇が落ちる。
 人通りも減れば、移動は難しくなくなる。
 ――予定通りだ。
 覚悟を決めて小さく頷くとりるかも走り出した。
 向かわなければならない場所へ。


「ヴェルナーさん」
 りるかは飛び込んだのは、要塞『ノアーラ・クンタウ』の郊外にある廃屋。
 あまり人が通らない場所にあるからこそ、一時的に身を隠すには最適だ。
 ここをりるかが訪れた理由――それは一つしかない。
「りるかさん」
 腰掛けていた椅子から立ち上がるのは、ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)。
 メイが追いかけている人物であり、ノアーラ・クンタウ要塞管理者……いや、ここは元要塞管理者と言うべきだろうか。
「ご無事でしたか」
「はい。……執務室から、これを持ってきました」
 りるかが手渡したのは帽子にステッキ。
 それに何通かの手紙の束だ。
「ありがとうございます。これがあれば状況を整理できます」
「あの……どうなっているのでしょう?」
 りるかは、思い切って聞いてみた。
 実はりるかは何故部下であるはずのベヨネッテ・シュナイダーにヴェルナーが追われているのかが気になっていたのだ。ヴェルナーに呼び出された後、理由を聞く間もなく執務室の手紙を持ってくるよう頼まれていた。
 この為、りるかは詳しい状況を知るタイミングがまったく無かった。
「ああ、これは失礼しました。
 実は……恥ずかしながら、私にはある嫌疑が掛けられています。ベヨネッテ・シュナイダーは職務を忠実に遂行しているだけです」
 嫌疑。
 何故かその言葉がりるかの胸に突き刺さった。
 ヴェルナーが誰かに疑われてる。
 その事が棘となってりるかの心を揺さぶった。
 しかし、それ以上に気になるのは、ヴェルナーが曖昧な表現を使った事だ。
「け……嫌疑って、何でしょう?」
「…………」
 ヴェルナーが敢えて濁した言葉をりるかは繰り返した。
 ヴェルナーが話したくないのは分かっている。
 だが、ヴェルナーの力となる為には、この先の言葉を聞かなければならない。状況や事態の重さを把握する事で適切な対応を取る為だ。
 りるかの必死さに気付いたのだろう。
 ヴェルナーは一呼吸を置いた後、ゆっくりと口を開いた。
「殺人です」
「!」
「あ、誤解しないで下さい。私は殺していません。濡れ衣ですよ」
 瞳孔を開かんばかりに驚いたりるかであったが、濡れ衣と聞いて胸を撫で下ろした。
 状況を話してしまった事から、ヴェルナーは事件のあらましを説明し始めた。
「事件はデッドウェスト・ジェイルで発生しました。囚人の一人が殺害され、床に倒れていたようです」
「何故……ヴェルナーさんに、嫌疑が?」
「私が殺害したのを目撃した者がいるそうです。私は執務室に一人で書類整理をしていました。そのおかげでアリバイはありません」
 ――目撃者。
 りるかはその目撃者を怪しんだが、その程度の事であればベヨネッテ・シュナイダーが既に調べているだろう。
 ヴェルナーが犯人でない場合、ヴェルナーにアリバイがない時間を狙ってヴェルナーになりすまして殺人を起こした事になる。
「おかしい、です。どうして、ヴェルナーさんに……殺人の罪を?」
「そうです。その鍵が持ってきていただいたこの手紙です。手紙は定期的に送られてきました。何通もありますが、内容は同じです」
 そう言いながらヴェルナーはゆっくりと手紙を開く。
 そこには万年筆で書かれた文字が躍っていた。

『裁きは下される。
 罪はめぐり巡って在るべき場所へ』

「どういう事でしょうか?」
「分かりません。ですが、悪戯にしては執拗なのです。気になります」
 ヴェルナーの言う通り、これが事件の鍵かもしれない。
 だが――。
「ヴェルナーさん、今はここから逃げましょう。きっと、ここも見つかります」
「何か逃走先にあてが?」
 そう言ったヴェルナーの言葉にりるかは笑顔で答える。
「はい。……参りましょう、私の故郷。東方へ」

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka3748/桜憐りるか/女性/17歳/魔術師】
【kz0032/ヴェルナー・ブロスフェルト/男性/25歳/疾影士】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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近藤豊でございます。
この度はおまかせノベルの発注をありがとうございます。
実はヴェルナー絡みの連動で温めていた企画ですが、ノベルの方が向いていると判断しておまかせノベルで書いてみました。この続きは……おまかせノベル企画がある時にご縁があれば筆を執らせていただきます。ちょっと長くなりそうですが。
りるかさんとヴェルナーの逃避行、先が気になりますね。
それではまたの依頼をお待ちしております。
おまかせノベル -
近藤豊 クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2018年10月25日

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