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『『ハロウィンの悪戯』 』
アレスディア・ヴォルフリート8879

 10月31日。ハロウィンの朝。
 自室のベッドで寝ていたアレスディア・ヴォルフリートは普段通りの朝を迎えた……はずだった。
 目覚めて体を起こしたのだが、何かが違う。
 自分の部屋が、ベッドが明らかに広く大きくなっている。
「……なん、だ?」
 何かおかしい。自らの手を見詰めれば、傷一つなく小さい。
 視界の端で揺れる、黒い髪。
「…………」
 自らの身に起きた変化に、アレスディアの思考が一瞬停止する。
(一体何が……)
 今日はハロウィン。ハロウィンの悪戯? 一時的なものだろうか。
 前にもこんな事態に陥ったことがあった気がするけれども、今回は心当たりがなかった。
 混乱したまま、アレスディアはディラ・ビラジスに連絡を入れる。
「う、む……きんきゅうじ……いや、いのちにかかわるとか、そういうのじゃ、ないのだが……むぅ……とりあえず、来て、くれぬか……?」

 連絡を受けて、急ぎアレスディアの部屋を訪れたディラは、彼女の可愛らしい姿を見て固まった。
 そうアレスディアは、幼い子供の姿に変わっていたのだ。
「お前は……誰だ。何故ここにいる?」
「わたしだ。わたしはまちがいなく、アレスディアだ。おきたらこうなってた。かがみをみてかくにんしたが、どうやらからだだけ、こどものころにもどってしまったようだ」
「嘘をつくな。アレスの髪は銀だ」
 ディラはなかなか信じてくれなかった。
「いや、子どものころはくろかったんだ……それについては、きかいをあらためてはなす」
 困り顔でアレスディアはディラに近づくのだが、ディラは何故か後ずさり。
 そういえば、彼は子供が苦手だった。
「からだはこどもだが、あたまはわたしのままだ。すまないが、このからだではりょうりはできん。ごはんをたべにつれていってはくれぬか?」
 ぐーとアレスディアのお腹が鳴った。
 じーっと訝しげにアレスディアを見ていたディラだが。
 懸命にお出かけの準備を始めたアレスディアを見ているうちに、顔から険しさが消えていった。
「それじゃ、どこかで弁当買って、公園で食べるか?」
「う、うむ」
「あ、でも靴がねーな」
 服は結んだり、スカーフを巻き付けたりしてどうにかしたが、今のアレスディアに合う靴はなかった。
 ディラは両手をアレスディアに伸ばすと、ひょいと容易く彼女を持ち上げて、自分の肩に乗せる。……肩車だ。
「ちゃんと掴まってろよ」
「わかった」
 そうして、2人は外へと出た。
 だが。
 何度も、そう何度もディラは職務質問を受けた。
 その度に、ディラは不機嫌そうに警官を睨むものだから、余計に怪しまれてしまい。
 なかなか2人は目的地にたどり着けなかった。
 だけれど、警官とのやりとりで、大体事態は解ってきた。
 どうやら、アレスディアの身体の変化は、前日の仕事で伺った先の、座敷童の悪戯のようだった。

 店に入ると幼女誘拐犯と間違えられて通報されかねないからと、2人は弁当の購入を諦め、露天で焼きそばを買って、大きな公園のベンチで食べることにした。
「もう昼か……俺がなんか買ってくればよかったな」
「いや、このすがたでみるけしきは、しんせんでよいきばらしになっている」
 小さな体では見えないものが沢山ある。人の姿が視界の大半を塞ぎ、周りの状況が見えなかったり。
 だけれど、彼の肩に乗っていた時は、普段以上に様々な姿が見えた。そのおかげで逸早く発見ができ、警官も何度かやり過ごすことができたくらいだ。
「なんかさ」
「む?」
 焼きそばを食べながら、アレスディアはディラを見上げる。
 座っているのだが、彼の顔の位置は高くて。膝の上の焼きそばをこぼさないように支え、食べながら彼を見るという普段ならなんの問題もない動作が、とても大変だった。
「ん……アレス……かわいい」
「……は?」
 ディラの言葉に、アレスディアの手から箸が落ちる。
「なんか、悪戯したくなる」
 そしてディラは、ぷにっとアレスディアの頬を指で押した。
「は、ハロウィンにいたずらするのは、子どものほうだぞ」
「うん。その姿で、どんな可愛い悪戯してくれるんだ? 俺は菓子持ってないぞ」
 期待を込めた眼で、ディラはアレスディアを見詰める。
「む〜〜〜〜〜」
 アレスディアは口をへの字に曲げて考えるが、思いつかない……。
「それじゃ、部屋に戻ってから夜に、な」
 ディラは自分の割りばしでアレスディアの器の中に残った焼きそばを掴むと、アレスディアの口へと持っていく。
「食ったら戻ろうぜ」
「う、うむ」
 僅かに頬を赤らめて、アレスディアはもぐもぐと焼きそばを食べる。
 食べ終えると、彼が差し出した手を掴んでベンチの上に立って、屈んだ彼の肩に乗った。

「夕飯はどうする? 俺何も作れないけど」
「なべにしよう。れいぞうこにやさいとにくがあるはずだ。いすにのれば、りょうりもできる」
「いや、こんな小さな手じゃ、包丁持てないだろ。火傷なんかさせたくねーし。大丈夫、俺がアンタの手足になるから」
 和やかにそんな会話をしながら2人は戻っていく。そして、帰路では警官に止められることなくアレスディアの部屋に辿りついたのだった。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/外見年齢/職業】
【8879/アレスディア・ヴォルフリート/女/21/フリーランサー】

NPC
【5500/ディラ・ビラジス/男/21/剣士】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ご依頼ありがとうございました、ライターの川岸満里亜です。
私の感情的には、ぎゅっとしたい、ほっぺにチューしたい! でした。
子供が苦手なディラとしては、戸惑いもあり直後はこんな感じかなーと思いました。
他にも、エピソードは色々思い浮かびましたが、それはまた機会がありましたら描かせていただけたらと思います〜。
イベントノベル(パーティ) -
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東京怪談
2018年10月29日

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