『 求める先の情報 』

石井　菊次郎（aa0866）＆テミス（aa0866hero001）

　とある雑居ビルの中。
　薄暗い通路の中を石井　菊次郎（aa0866）と彼の英雄テミス（aa866her001）の二人は歩いていた。
「貴公、本当にあの者の話を信用するのか」
「確かに貴方が危惧するのも分かります。あの依頼人の話は少し妙な部分がありましたから」
　確認するように静かな声で菊次郎に訊ねるテミスに、彼もまた歩みを止めずに彼女へと答えた。
「ですが、あの依頼人は今回の討伐対象である愚神が私達が探しているものを知っているかもしれないと言っていました。情報が真実なのか、または嘘なのか確かめて見る必要はあるかと思います……」
　菊次郎はある愚神を追っていた。
　その愚神は彼の恋人を殺し、彼の眼を愚神と同じ紫で金色の縁取りの十字形の瞳孔へと変えてしまった。姿、形は変えてしまってもこの瞳だけは変えないと菊次郎に言い残し、去って行った。
　手掛かりとなるものはこの瞳だけ。
　何としても愚神をこの手で見つけ出さなければならない。

　そんなある日。
　エージェントの彼の元にある一つの依頼が舞い込んだ。
　依頼人の男はたった一人の妹を愚神によって殺された。男にとってはたった一人の家族で大切な妹だった。
　その日はいつもと変わらない毎日だった。
　仕事帰りにたまたま自分の妹と会い、そのまま一緒に帰宅をしている途中に愚神に襲われた。
　妹は愚神に殺され、彼は必死でその場から逃げ出した。その時逃げ出した際に男は愚神の瞳が妖しく五芒星に光るのを見た。
　それに加え、周りの目撃情報によると愚神がこの廃墟化さている無人の雑居ビルの中に入って行ったという証言があった。
　おそらく愚神は男の妹を殺したあと、この雑居ビルに住み着いてしまったのだろう……。

　菊次郎はその話を聞き、この依頼を引き受けたのだった。
　だが先程テミスが言ったようにこの話には不快な点がある。
　何故依頼人は愚神を前にして無事だったのか。
　愚神の瞳は五芒星と言っていたが、果たして自分が探しているあの愚神と本当に関わりがあるのか……。

（まぁ、何にしても確かめる必要がありますね……）

　菊次郎はそう思い、歩みを進めた。

　長い通路の突き当りにある階段を登ると、四階の通路には白い鳥の姿をした従魔がいた。見た限り数はそんなに少なくない。
　菊次郎とテミスの二人は近くの壁に身を隠し、菊次郎の顔を見てテミスは短く頷くと、彼と共鳴をした。
　共鳴した彼は従魔達の前へと出ると同時に、彼は手した魔法具からスキルを発動する。
　菊次郎の攻撃を受け、鳥の従魔は身体のバランスを崩しながらも菊次郎へと口から水の球を吐き出した。バシャ！　とした音と共に水の球が菊次郎へと直撃する。
　だが菊次郎はそれを避けて、再びスキルで従魔へとダメージを与えた。鳥の従魔達はギギギィと甲高い悲鳴を上げると、淡いライヴスの光になって空気の中へと溶けるように消え去った。

「貴公、この先にいるぞ」

　愚神の気配を感じ取ったテミスは菊次郎へと短く告げる。
　彼は通路の右側にある一室を見つけると、そこに足を踏み入れた。その一室は思ったより広く、周囲は所々破壊と崩壊した跡があった。
　そして。
　彼はそこにいる二人の人物へと声を掛けた。

「やはり貴方でしたか……藤崎さん」

　そこには黒いフードを被った一人の愚神と、菊次郎の依頼人である黒髪に銀縁の眼鏡を掛けた男……藤崎の二人がいた。
「おや、その口振りでは最初から分かっていたみたいですね。俺が能力者だと言うことに」
「貴方の話は幾らか不可解な点がありましたので……。妹さんが愚神に殺されたのに、貴方が生きている自体が不思議でしたからね」
　静かな口調で冷静に話す菊次郎に、藤崎は短いため息を吐くと、自分の隣に立つ愚神へと呆れた表情で言った。
「やはりあんな話だけでは騙せなかったみたいだな……」
『全く、だからお主は甘い。あんな作り話誰でも思いつくと言うものだ。だが我らの目的はエージェント。邪魔なエージェントを殺害し、邪魔者が居なくなった後に人間のライヴスを奪う。それだけだ』
「そうですか……。それが貴方達の目的だったのですね。でもその前に少し聞きたい事があります」
　そう言って菊次郎は愚神達の前へと一歩前へと出ると、
「これと同じ瞳を知らないか？」

　そう口にした。
　黒いフードを被った愚神の瞳は金色に妖しく光る五芒星の瞳孔だが、彼の探している愚神ではない。
　だが何かしらの手掛かり、あるいは情報を持っている可能性がある。
　そんな考えを抱いていた彼だったが、返ってきた答えは短いものだった。

『悪いが知らんな。我のこの瞳は我が存在した時にあったものだ。また貴様のような同じ瞳孔を持つ愚神を我は見た事はない』

「そうか、ならお前に───」
「用はない───」

　菊次郎の言葉をテミスが引き継ぐように、そう愚神へと告げる。
　菊次郎は素早く動くと共に愚神へと魔法具のスキルを発動し、攻撃をした。だが愚神はそれを俊敏の速さで避けると同時に藤崎の身体へと乗り移った。
　そして愚神は剣を出現させ、剣を手にすると菊次郎へと襲い掛かった。
　が、菊次郎はその攻撃を瞬時の速さで避け、そして後ろへと飛び退った。
　愚神が剣を空気を切るように勢いよくブン！！　と菊次郎へと目掛けて振るうが、彼はそれを許さなかった。愚神が攻撃する僅か数秒差で菊次郎は銀の魔弾を愚神へと叩き込んだ。

　そして。

　数分後。
　戦いの末に愚神は菊次郎達に倒され、ライヴスの光となってその場から消え去り、彼等の前には意識を失った藤崎が倒れていた。

「今回はハズレだったな」
「そうですね……。しかし被害が広まらないうちに愚神を倒せた。それだけでも今はよしとしましょう」
「貴公、この男はどうする？」
「縄で縛って、ここにおいて行きましょう。幸い丁度警察も到着したみたいですしね。先程電話で場所も伝えました。あとは彼等がこの男を回収するでしょう」

　菊次郎の言葉にテミスは眠っている元依頼人だった藤崎を一瞥した。そして藤崎を縄で縛った後、再び歩き出す菊次郎の隣にテミスは並んだ。
「さて、戻ったら報告書を出さないといけませんね」
　菊次郎は歩きながら、小さくポツリと呟いたのだった。






━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【石井　菊次郎(aa0866)　／　男性　／　25歳　／　リンカー】
【テミス(aa0866hero001)　／　女性　／　18歳　／　英雄】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

こんにちは。せあらです。
この度はおまかせノベルのご注文有り難うございます。
久しぶりに石井さん、テミスのお二人にお会いできて本当に嬉しかったです。
今回はおまかせノベルとの事で、このような物語を書かせて頂きました。
もし少しでも楽しんで頂けましたら幸いです。
リテイクなどありましたらお気軽にお申し付け下さい。
ご注文の方本当に有り難うございました。

せあら

おまかせノベル

せあら

リンクブレイブ

2018年10月29日