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『双乗の剣 』
Spica=Virgia=Azlightja8786)&不知火あけびjc1857

 都内のとある町中を、二人の女性が歩いていた。
「今日はお疲れさまだったね、スピカちゃん」
「ん‥‥、アケビも、お疲れだった‥‥」
 不知火あけびとSpica=Virgia=Azlight。二人は今日、撃退士として依頼をこなし、これから学園へと帰還しようというところだった。
 依頼は首尾良く完了した。時刻はまだ昼過ぎだが、小規模な戦闘がいくつかあったために、二人とも疲労を感じている。
だ。

「スピカちゃん、この後時間あるなら、どこかでお茶でも──」
 あけびが笑顔で友人へ声をかけようとした、その時。

 ──ドオオォォオオン‥‥

「今の‥‥近い」
 肚の底を震わせる重低音とともに届いた爆発音。通りの向こうで、煙が立ち上っている。
「スピカちゃん!」
 二人は顔を見合わせると、小さく頷き、走り出した。

   *

 通り一つ向こうが現場だった。密集して立つ雑居ビルのうち一つが真っ黒に煤け、煙を噴き上げている。
「下がってください! 近づいてはダメ!」
 制止したのはたまたま居合わせたらしい警察官だった。
「何があったんですか?」
「天魔がいるんです! 早く逃げて!」
 女性警官の声は震えていた。襲われたら抵抗の手段がないのは彼女も一般人も変わらないのだから、無理もない。
「タイミングが悪いけど‥‥引く訳には行かないね」
 あけびは小さく苦笑して。
「大丈夫。私たちは撃退士です」
 勇気づけるように、警官の肩に手を置いた。
「避難誘導と‥‥学園への連絡‥‥よろしく」
 スピカは言い残すと煙の向こうへと進んでいった。



 建物に近づくと人影のようなものが見えてきた。
「敵、一体確認」
 スピカにも聞こえるようにあけびが呟く。
 その姿は、白の甲冑に身を包んだ兵士のようであった。だが瞳の収まるべき場所には、青白い炎が灯されていた。だらりと下げた右手には錫杖の様な武器を持っている。そして肩の付近に盾状の物質が浮遊していた。
 背丈は二メートル半といったところか。なかなかに大きい。
「サーバント‥‥?」
 スピカは首を傾げた。レート差を武器にする彼女にとって相手の属性は重要だが、同種の敵を彼女はこれまでに見た覚えがなかった。
「どっちだろうね」
 あけびにも分からないらしい。

 今頃学園には緊急の依頼が届いているはずである。遅くとも三十分──その程度待てば増援があるだろう。それまでは牽制にとどめておくのも一つの選択だ。

 だが、ここは町の中心地だ。人の数も多い。このままでは被害は拡大する一方だった。
「敵は、一体のみ‥‥なら」
 スピカの言葉を最後まで聞くまでもなく、あけびも既に同じ気持ちだった。
「うん、私たちなら、やれるはずだね!」

   *

「空から行く‥‥あけび‥‥援護を」
「了解!」
 スピカが銀の翼をその背に顕すと、あけびは一つ応えて駆けだした。
 姿勢を低くし加速する。そのまま敵前に飛び出し姿をさらした。
 巨兵の両眼に当たる青い炎が、あけびを捉えたかのようにきらめいた。錫杖が横に薙ぎ払われ、次いで上から振り下ろされた。いずれも最小限の動きで躱す。遅くはないが、見切れぬほどではない。
 あけびの四肢が淡く輝き、紫の花弁が彩った。
 小さく気合いを吐いて懐に飛び込む。すれ違いざま、刀を鞘ばしらせた。
 刃が一閃して甲冑の隙間を抜ける。一瞬遅れて、血しぶきの代わりに青い煙が散った。
 後方へ抜けたあけびは即座に身を翻してもう一閃。華麗な連撃を浴びせると元居た場所へふわりと立った。
「あんまり効いてないか‥‥」
 雑魚ならば一蹴できる技であったが、相手の立ち姿に乱れはない。
「でも、これで終わりじゃないからね」
 巨兵はあけびを敵として認識したようで、こちらが一歩下がると一歩踏み出してくる。あけびはゆっくりと距離をとって下がり、巨兵を道の中央まで呼び寄せる。
「私とスピカちゃんの連携は強いよ?」
 巨兵の後方に、銀の翼が光を弾いていた。

 スピカはライフルの照準を合わせている。
「‥‥ロックオン」
 肩口に漂う浮遊盾の隙間を狙って、まずは一射。
 アウルの弾丸は想定通りの軌道に乗り、巨兵の右こめかみ付近に着弾する──はずだったが、直前で盾がスライドして攻撃を弾いた。青い火花が散る。
 あけびの動きに合わせ、弧を描きながら立て続けに撃つ。大半は盾に防がれたが、一発が敵の背中に入った。甲冑が砕け、青煙が吹き上がる。
 すると、巨兵が首を巡らせた。双眼の炎がこちらを見た、と思った瞬間光を増し、青い光線を放ってきた。
「‥‥っ」
 それまで見せていた錫杖の攻撃とは違う、予備動作の少ない一撃にやや反応が遅れ、光線はスピカの肩をかすめた。
 灼けるような痛みに顔を微かにしかめ、スピカは身を翻した。高度をとって一度、通りのビルの屋上に身を潜める。
 かすっただけでこの衝撃。でありながらスピカの攻撃にも動じない様子。示すところは。
「天界側の、強敵‥‥」
 依頼後なのに、とスピカは嘆息した。

 あけびは巨兵と斬り結ぶ。とはいえ錫杖の一撃は重く、まともに受けたら刃が保たない。ぎりぎりのところで引いて受け流す技量が必要だった。
 スピカが上空に現れ、射撃を再開した。だが浮遊する盾がその悉くを弾いてしまう。
(あれを何とかしないと)
 あけびは正眼に構えて距離を測ると、踏み込んだ。錫杖の突きを半身引いて躱し、小手を打って誘いをかける。すると相手は腕を振り上げ、大上段から錫杖を振り下ろしてきた。
(今だっ‥‥!)
 読んでいた一撃を躱すと同時に、忍軍本来の闇の力を発動する。踏み出された巨兵の左膝に足を乗せ、狙うは頭──。
 盾の一枚が攻撃を阻止しようと滑り込んできた。
 だがそれこそ狙い通り。あけびは刃を横に向けると、盾に向かって打ち付けた。がつんと重い反動があり、盾の動きが停止した。

 スピカはもちろんあけびの狙いを理解していた。あけびが押さえている間、盾は使えない。
 一方で、翼の有効時間が近づいていた。先の依頼の影響は確実にでている。スピカは地上に降り、足場を確保すると素早くライフルを構えた。
「ロックオン‥‥決める‥‥!」
 力の限りアウルを込めた光弾が放たれた。巨兵はあけびを纏わりつかせたまま、体を捩る。光弾は側面から首筋に着弾し、巨兵の後頭部を半ば削り取った。
「やった、スピカちゃん!」
 あけびが快哉を叫ぶ。
 巨兵は咆哮した。一般人なら間近で聞いただけで失神するほどの、撃退士の肚をも揺さぶる声で。
 続いて左腕を振るう。敵の上に乗ったままだったあけびは避けきれず、吹き飛ばされて建物に突っ込んだ。
 もう一度短く吼えた巨兵は、今度はスピカへ向かって突っ込んできた。後頭部からは絶えず青い煙を噴き上げているものの、動きに遜色はない。だが盾は頭部を中心に守っていたのだから、影響がないということはないはずだ。
 スピカは下がらず、槍を振りだし敵を待ちかまえた。
 距離が詰まりきる前に、巨兵が錫杖から炎を打ち込んでくる。スピカは右に飛んで躱すと、勢いを利用しこちらから接近した。
 武器持つ右手にアウルを込めると、槍は鎚へと変貌した。振りかぶり、相手の左すねを狙って思い切り叩きつける!
 確かな手応えがあった。巨兵の反撃はこない。これが好機と、スピカは精神を集中した。
 『書庫』への接続を完了する。右手の鎚はさらに姿を変えて剣となった。
「顕現せよ‥‥」
 だがまさに一撃を加えようとしたその時、眼前に盾が滑り込んできた。
「‥‥っ、まだ動く‥‥!」
 巨兵の意識とは無関係に動くその盾は、スピカの剣に食らいついてきた。刃は盾を半ばほど切り裂いたものの、巨兵まで攻撃を届ける前に『書庫』への接続は切れ、剣は元の三つ叉槍に戻った。
 決定的な一撃は届かなかった。そして、巨兵が意識を取り戻す。
 錫杖が横に払われた。まともに受けたスピカは前後左右も分からずに地面をごろごろと転がった。

「っ痛つ‥‥」
 瓦礫と崩れた建物の中から体を起こしたあけびが見たのは、まさにスピカが弾き飛ばされるシーンだった。
「スピカちゃん!」
 駆け寄って抱え起こすと、スピカは呻き、咳き込んだ。あけびの手に赤い飛沫がつく。
 重傷を覚悟したが、スピカは目を開けた。
「‥‥大丈夫‥‥回復、打ったから‥‥」
 弾き飛ばされる直前、敵に向けて放った吸魂符がぎりぎり間に合い、意識をとどめることに成功していた。
「でも‥‥このままじゃ‥‥」
 もう一度同じように攻撃を受けたら、今度は符を打つ余裕もないだろう。
 あけびも負傷しているし、先の依頼の影響もあってスキルの使用回数も残り少ない。時間をかければこちらがますます不利になっていく。
「アケビ‥‥」
 スピカが呼び、顔を寄せたあけびに何事か耳打ちした。
「たぶん、これが‥‥一番、確実‥‥」
 敵は動きを止めたわけではない。迷っている時間はなかった。
「わかった」
 スピカを立たせ、体を離したあけびは、再び迫ってこようとする巨兵を凛と見据えた。
「スピカちゃんの覚悟、無駄にはしない‥‥必ず、斃す!」

 決意に呼応するように、あけびの体から光が湧きあがった。その背に現れた翼が一度大きく羽ばたく。
 その時にはもう、駆けだしていた。翼は光とともに消えたが、燐光のように尾を引いていく。目を奪われたかのように、巨兵は体を巡らしあけびを追った。

 スピカは意識を集中した。体に残る痛みが容赦なく突き刺さったが、おかげで視界もぼやけない。
 もう一度『書庫』へと接続し、三つ叉槍に剣を投影する。
 あけびが巨兵と正面から斬り結ぶ。その瞬間を狙って、背後から突進した。
 浮遊盾がそれを察知し、巨兵とスピカの間に割り込んでくる。だが構わず、先ほど自身がつけた傷を狙うようにして、スピカは剣を突き入れた。
 盾が剣を受け止める。光纏の銀と、盾の纏う青がせめぎ合い、火花のように激しい光を放った。
 巨兵が向きを変えた。スピカにとどめの一撃を放とうと、錫杖を振りかぶる。
 その光景を見ながら、なおもスピカは意識を剣先に集中した。
「‥‥顕現せよ、"破滅"レーヴァテイン!!」

 巨兵の意識が離れたことを察知して、あけびは接近しつつ背中へ回った。
 刀を握る手の内に、小さな銀のアウルが輝いている。それは、『書庫』へのアクセスキーだった。

 ──私の、剣‥‥アケビに託す‥‥

「確と」
 口中で呟く。
「これは友達の魂そのもの。確と受け取り、応える!」

 巨兵の背中へ足をかけ、一息に駆け上がる。半ば崩れた敵の首筋に合わせた切っ先は、いつしか刀ではなく、スピカが手にして入るものと同じ、剣の形を取っていた。
 巨兵を挟み、二人が鏡写しのように。

「やあああっ!!」

 切っ先を突き入れる。刃がずぶずぶと敵の体に落ち込んでいく。
 巨兵は再び咆哮した。痛みにのたうつかのようにして、体を暴れさせる。それはあけびを振り落とさんとするかのようでもあった。
「くっ、まだ‥‥!」
 あけびの表情が歪んだ。まだ、足りないのか。
「それ、なら‥‥」
 スピカは足を一歩、踏み出す。剣を受け止める盾の亀裂が、徐々に深くなる。
「くうぅっ‥‥!」
 ありったけのアウルを込めて押すと、盾は一瞬青の光を強くはなった後、ついに砕けた。後は煙となって消え果てていく。
 そして遮るもののなくなったスピカの剣は、巨兵の甲冑を易々と砕いてその身に正面から突き立った。

 激しい咆哮。だが、それもやがて力がなくなっていく。
「わっ、と」
 体勢が崩れ、あけびは巨兵から飛び退いた。いつしか右手のそれは愛刀の姿に戻っている。
 巨兵はがしゃりと膝を突く。そして青い煙を吐き出すと、ぼろぼろの甲冑のみを残して崩れ去ったのだった。
 あけびが胸を張った。
「言ったでしょ‥‥私とスピカちゃんの連携は強いって、ね?」

「ふぅー‥‥」
 スピカがぺたりと尻餅をついた。
「大丈夫?」
「ん‥‥疲れた‥‥」
「本当だね‥‥」
 あけびもそう言ってスピカの隣に座り込む。二人とも疲労困憊だ。

 後始末は応援に任せるとしても、これから戻って学園に経緯を報告して‥‥と考えるだけでうんざりする。
 そもそも何故町中に、これほど強力なサーバントが唐突に出現したのだろう?

 考えればきりがない、が──。

 今しばらくは戦友の肩を貸しあって、心地よい疲労にだけ体を委ねることにしよう。
 二人はそれぞれにそう思い、つかの間目を閉じるのだった。





━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ja8786/Spica=Virgia=Azlight/女/18(外見年齢)/託した友とともに】
【jc1857/不知火あけび/女/16(外見年齢)/託された友とともに】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 お待たせいたしました。二人共闘の戦闘ノベルをお届けいたします。
 敵の指定が無かったこともあり、今回、敢えて連続シナリオの初回っぽい雰囲気で書いてみました。
 何故、これほどの敵が突然現れたのか‥‥きっと理由があるはずです。
 私が続きを書くことは叶いませんが、それだけに自由に想像を膨らませていただくことが出来るのではと思います。
 ご依頼ありがとうございました。少しでもお楽しみいただければ幸いです。
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嶋本圭太郎 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2018年10月31日

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